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22 あなたのことをちゃんと分かっている



 それに……。



「ジェイがフリッツの補助が上手かったとしても、それはフリッツの優秀さを損なうものじゃないわ」


 困った顔でそう言うわたくしに、フリードリヒは驚いたような顔をしています。


「俺は、優秀なんかじゃない」

「……フリッツ、本気で言ってる?」

「え? それはもちろん……」

「フリッツって本当に酷いのね」


 恨みがましい目で見るわたくしに、フリードリヒは目を瞬くばかりです。その様子にわたくしはさらにぷんすかと怒りを露わにします。

 どうやら、フリードリヒは本当に、何がわたくしを怒らせているのか分かっていないようです。


「わたくし、フリッツの優秀で素敵なところ、沢山沢山知っているわ。そういうところを見る度に惚れ直してしまって、だから中々諦められなくてずっと悩んでいたんだから。なのにまさか、散々翻弄したわたくしの前で、自分は優秀じゃないだなんて!」

「あーなるほどそういう理屈……。いや、でもな……」

「さっきだって颯爽と現れてスマートに助けてくれて、とても格好良かったわ!」

「あんなの、ジェイだってできる……」

「そうかもしれないけれど、フリッツが格好良かった事実は変わらないでしょう。フリッツが素敵だってことにジェイは関係ないのに、すぐジェイのことを引き合いに出して」


 フリードリヒはジェイラス殿下を意識しすぎなのです。

 同じくらいわたくしのことも意識してくれればよかったのにと、何度思ったことでしょうか。


「本当にもう、フリッツはジェイが大好きなんだから」


 呆れながらも憤慨するわたくしに、フリードリヒはしばらく呆然としていました。

 そうして、最後にはくつくつと笑い出してしまったのです。


「そうか。エリーは凄いな」

「凄いのはわたくしじゃなくて、フリッツとジェイよ」

「……なるほど、俺の自虐はこう聞こえている訳か」


 笑いながら、フリードリヒはわたくしの頭をぐしゃぐしゃと撫でます。

 髪をぐちゃぐちゃにされたわたくしは、抗議の声を上げました。


「ちょっと、フリッツ!」

「ちゃんと話をしていれば良かったな。本当に悪かった」

「……わたくしも、ごめんなさい。ちゃんと、いろんなことをフリッツに伝えていれば良かった」


 素直に謝ってくれるフリードリヒに、わたくしも心がほぐれて、素直に謝罪することができました。


 わたくしは臆病でした。

 最初から、フリードリヒを信じて相談していれば良かった。

 わたくしは結局、嫌われるかも、面倒に思われるかも、また迫られてしまうかもと思って、正面から向き合うことを避けてしまっていたのです。

 今日の様子を見ても、ちゃんと相談していたら、彼はきっと私を助けてくれていたに違いありません。

 何も知らないフリードリヒが怒ってしまうのも当然のことでした。

 わたくしも悪かったのです。


「俺さ、ちゃんとエリーのことが好きだったよ」

「……えっ!?」

「だった、ってのも変か。今も好きだよ。……ジェイへの対抗心がなくても、俺はエリーと婚約したと思う。俺にとってエリーは昔から、大事な幼馴染の女の子だから」


 そう言って笑ってくれる彼に、初めて好きと言われたわたくしは、嬉しくて微笑んでしまいます。

 彼の『好き』は、わたくしの『好き』とはきっと違う。

 けれども、そこにはっきり触れずに好意を伝えてくれた彼の優しさが嬉しかったのです。


 そんなわたくしを見たフリードリヒは、わたくしの大好きな意地の悪い顔をして、今度は意地悪なことを言ってきました。


「でも、エリーは今、ジェイのことが好きなんだろう?」

「え!?」

「最近あいつに追いかけ回されてるけど、悪い気はしてないんじゃないか」

「そ、それは、あの……」

「いいって。エリーは俺のことをよく分かってるだろうけど、俺もちゃんとエリーのこと分かってるからさ」

「わ、わたくしのこと?」

「ああ。エリーって、どマゾだろ?」


 目が点になるということは、このことでしょうか。


「フリッ……え? ………………え?」


「エリーは、どMだもんな」


 フリードリヒったら、二回も言いましたわ!?



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