21 フリードリヒの気持ち
「フリッツ……」
「……」
「フリッツ、フリッツ」
手を引かれながらわたくしはフリードリヒを呼びますが、彼はこちらを見ずに歩みを進めてしまいます。
そうして裏庭に辿り着いたところで、彼はわたくしを振り返り、次いで呆れたような笑ったような顔で、ハンカチを差し出してきました。
「エリーは相変わらず泣き虫だな」
「フリッツ、ありがとう……」
わたくし、怖かったのです。
本当に本当に怖かったのです。
だから、フリードリヒが助けてくれて、本当に安心してしまったのです。
手を引かれている時点から既にポロポロと涙をこぼしていたわたくしは、フリードリヒのハンカチを借りて、マスカラがつかないように頬の涙を拭いました。
懐かしいフリードリヒの香りに、わたくしはようやく心を落ち着けてほっこりします。
「……悪かったよ」
フリードリヒの珍しい言葉に、わたくしは驚いて彼をふり仰ぎます。
バツが悪そうな顔をした彼は、わたくしと目が合った後、気まずそうに地面に目を逸らしました。
「姉さん達から、聞いた」
「フェリシア様と、フィオーネ様……?」
「ああ。……エリーが、化粧を濃くしたり、服装を変えたりしていた理由」
な、なんてことでしょう。
わたくしが男性に絡まれがちだったことを、バラされてしまったのです。
お姉様達、急にどうして……!?
「自力で気がつくまで言わないでおこうと思ってたって。気がつかないまま婚約解消するなんて大馬鹿だって罵られた」
「……お姉様達……」
「確かに、俺は大馬鹿なんだろうさ」
ふうと息を吐きながら、フリードリヒは観念したように話を進める。
「あれから、色々と考えたんだ。お前の言ってたこと」
「……わたくしの?」
「その……あいつばっかり見てる、ってやつ」
わたくしが喧嘩の時に、フリードリヒに対して叫んでしまったアレですわね。
取り乱してしまったあの時のことを今思い出すと、とても恥ずかしいわ……。
「確かにそうなんだと思う」
「フリッツ」
「俺は、いつだってジェイに劣っていて、……エリーがあいつを好きになったら、もうあいつに敵うところなんてないと思って。だから、エリーの気持ちが俺に向いていることが嬉しかった」
「敵うところがないだなんて、そんな……」
「ないんだよ。あいつは、自分の方ができるくせに、俺の前だとすぐ爪を隠すんだ。それでいて、一歩下がって俺のできないところを余裕綽々でフォローして、見せつけてくる……」
そんなことありませんのに。
ジェイラス殿下はフリードリヒといるときは、肩に力を抜いて、フリードリヒの補佐を楽しんでいるように見えます。見せつけるためではなく、心の底からくつろいでいるといった印象です。
それに……。




