表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

16 フリードリヒとの決裂 前編



 わたくしは我慢できなくて、ある日、フリードリヒの家を訪問して尋ねてしまいました。


「フリッツはわたくしのことが嫌いになったの?」

「別に、そんなことないけど」

「わたくしのこと、避けているでしょう」

「避けてるのはエリーの方だろ。学園だとあの変な化粧してるから、恥ずかしくて近寄れないって言ってるのに、俺が言ってもやめないじゃないか」


 ぐい、とわたくしを抱き寄せるフリードリヒに、わたくしは慌てます。

 フリードリヒとちゃんと話がしたかったので、今日は濃い目化粧をしていないのですが、濃い目化粧をしていない日は、彼のスキンシップも過剰になってしまうのです。


「フリッツ! 待って」

「エリー、なんで逃げる」

「近すぎるからよ」

「婚約者なんだ。これくらいなんてことない」

「そんなこと……」


 わたくしは、いつもと違う距離に迫ってくるフリッツに、顔を真っ赤にして俯いてしまいます。


「それとも何。やっぱりあいつがいいの」

「え?」

「俺なんかより、あいつの方がずっと優しいもんな。いつだってエリーは、俺なんかよりあいつに心を開いてる」

「……別にそんなことは」


 静かに言葉を返す私に、フリードリヒが自嘲するように笑います。


「誰のこととは言わないのに、すぐジェイのことだって分かるんだな」


 嘲る視線に、わたくしはそっと目を閉じます。


「ジェイの方がいいんだろう? 学園での濃い化粧だって、俺がやめろと言っても聞かないけど、あいつが言えばやめるんじゃないか」

「そんなことないわ」

「じゃあなんで学園に行く時だけ化粧が濃くなった。今日は薄化粧なのに……噂どおり、学園で男遊びでもしてるのか」

「おとっ……わ、わたくしにそんなことできると思っているの!?」

「……」


 ……できるとは思わなかったようです。

 気まずそうに目を逸らすフリードリヒに、わたくしも微妙な顔になってしまいます。


「とにかく、男遊びなんてしていませんし、ジェイも関係ありません」

「どうかな。そんなふうに男好みの格好をするくせに、相変わらず俺には指一本触れさせないじゃないか。他に好きな男がいるんだろう」

「違うわ! わたくしは」

「俺はもう諦めたよ。お前の心が俺になくても別にいいさ。立場上、お前は俺のものなんだから。笑えるよな。あいつは何でも持ってるくせに、これだけは手に入らなかった……」


 そう言って、フリードリヒはわたくしの顎に手を添えます。近づいてくるフリードリヒに、わたくしは……。


「――いや!」


 わたくしは思わず、フリードリヒを押し退けてしまいました。

 フリードリヒは目を大きく見開いた後、顔を歪めてわたくしに詰め寄ります。


「なんだ、やっぱりジェイの方が……」

「フリッツのばか!」


 わたくしはボロボロ泣きながら、フリードリヒを睨みつけます。

 フリードリヒはわたくしが怒ると思わなかったのか、心底驚いた顔をしています。


「フリッツは相変わらず、わたくしのことではなく、ジェイのことばっかり!」

「……え?」


 フリードリヒは、わたくしの言葉が理解できないのか、ぽかんとしてしまいました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ