13 初めての恋
それから、わたくし達の関係はほんの少しだけ変わりました。
わたくしは明らかにフリードリヒに対して恋情を抱くようになりましたし、フリードリヒはそれを自慢に思っていて、ジェイラス殿下はそれを見守るような笑顔で見ていました。
けれども、三人で遊ぶこと自体は変わりませんでした。
「エリーは、あいつと二人きりになりたいとは思わないの」
ある日、わたくしはジェイラス殿下に聞かれました。
今日はわたくし達のお母様は、わたくしの家である公爵家でお茶会を開いていて、わたくし達三人は、わたくしの家の割と大きめの図書室で過ごしているのです。
フリードリヒはいつもどおり外に出たいと言っていたのですが、お母様達が、たまには勉強しなさいとわたくし達を図書室に閉じ込めてしまいました。
だから、拗ねたフリードリヒは図書室のソファで寝ていて、わたくしとジェイラス殿下だけが、机について本を読んだり、宿題をしたりしています。
「二人きり?」
「うん。エリーはあいつが好きだろう?」
「ちょっと、ジェイ!」
「あれは寝てるから聞こえてないよ。それに、エリーも大して隠すつもりはないんだろう?」
ジェイラス殿下は、急になんてことを聞くのかしら。
顔だけじゃなくて、耳まで熱いですわ。
「三人で遊ぶのが楽しいから、これで良いのです」
「で、本当のところは?」
「……フリッツと二人にされても、ドキドキしてどうしたらいいのか分からなくて困るのです。フリッツも、三人で遊びたいと言いますし」
目を瞬いたジェイラス殿下は、「そう」と呟くと、なんだか傷ついたような顔をして俯いてしまいます。
わたくしは首を傾げながら、言葉を続けます。
「そういえば、ジェイと二人でいるときは、とても気楽で楽しいですわ。たくさん話が湧いてきますもの」
「……そうなの?」
「ええ。いつまでもお友達でいてくださいませね」
そう言って微笑むと、ジェイラス殿下は「君には敵わないな」と言いながら、自嘲するように笑いました。
わたくしは、その大人な笑い方がなんとなく悲しくて、その日はジェイラス殿下が笑えるように、沢山話しかけてしまいました。
本を読むのを邪魔してしまったけれども、最後はジェイラス殿下は楽しそうに笑って帰っていきました。
わたくしはこの、胸のうちがむずむずするような気持ちの正体が分からなくて、けれども口に出してはいけないような気がして、誰にも聞かずに、その気持ちにそっと蓋をいたしました。
12歳になったある日、お母様が「フリードリヒ卿かジェイラス殿下と婚約なんてどう?」と聞いてくださいました。
わたくしは喜んで、フリードリヒと結婚したいとお願いしました。
お母様は何故か、「ジェイラス殿下じゃないのね」と驚いた顔をしていましたが、フリードリヒと婚約できるという事実に浮き足立っていたわたくしは気がつきません。
そして、フリードリヒとわたくしは、婚約関係となったのです。
フリードリヒは、婚約した後、わたくしのことを好きだと言ってくれました。
わたくしが、「わたくしのこと、好き?」と聞いて、「嫌いじゃない」という程度のものでしたが。嫌いじゃないということは好きということです。好きと言ってくれたも同然ですわよね?
わたくしがフリードリヒのことを大好きだと知っているジェイラス殿下も、おめでとうと祝ってくれました。




