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12 わたくしから見た風景


エリザベスの回想に入ります。




 公爵令嬢であるわたくしと、侯爵家の令息であるフリードリヒ、それから第三王子であるジェイラス殿下の三人は幼馴染です。

 わたくし達のお母様同士が学生時代の友人同士で、わたくし達はお母様達がお茶をしている最中に、庭でうろちょろ遊んでいた仲なのです。


 わたくしは小さな頃から、沢山の遊びを思いつくフリードリヒが大好きで、フリードリヒに追いつけなくて転ぶわたくしを、ジェイラス殿下が後ろから支える、という状態が日常になっていました。



 ある日、わたくしは、フリードリヒについていけなくて、怪我をしてしまいました。


 領地にある小さな森の中に川があるのですが、フリードリヒはその川を、飛び出ている石伝いにどんどん渡っていってしまいます。

 わたくしも頑張って石伝いに飛び跳ねていたのですが、結局足を滑らせて、川に落ちてしまったのです。


 怪我自体は捻挫程度で済んだのですが、少し肌寒い4月の上旬に川に飛び込むことになったわたくしは、3日間、熱を出してしまいました。



 熱に浮かされて3日目、わたくしは、自分のベッドの横に、誰かが立っていることに気がつきました。


 ぼんやりと分かったことは、その人はわたくしと同じ子供で、金色の髪の男の子だということです。

 その人は、「守れなくてごめん」と言うと、わたくしの右手に、わたくしの大好きな白詰草で作った指輪をはめて、その指にキスを落としました。



 翌日、熱が下がったわたくしは、自分の右手の指輪を見ながら、熱とは違った意味で胸がドキドキしているのを感じました。

 いつもの、フリードリヒやジェイラス殿下のことを好きだと思っている気持ちとは違って、なんだか浮き足立つような、不思議な心地なのです。



 その日も、フリードリヒはお見舞い……というか、謝罪に来てくれました。

 なのでわたくしは、白詰草の指輪のことについて尋ねました。


 フリードリヒもジェイラス殿下も、髪の色が金なのです。

 そして二人とも、わたくしが絵本や小説にかぶれていて、こういうお姫様のような扱いをされることを好んでいることを知っています。


 だから、二人のうちどちらが、わたくしに指輪をはめてくれたのか、わたくしには分からなかったのです。



 フリードリヒは目を瞬いてしばらく考えた後、「お前が好きそうだったからな。お詫びだ」と言って、わたくしの頭を撫でました。


 そう、わたくしに指輪をはめてくれたのは、フリードリヒだったのです。


 わたくしはきっとこの時、恋に落ちてしまったのでしょう。

 嬉しくて、でもなんだか恥ずかしくて、はにかみながらお礼を言うと、フリードリヒは赤い顔をしながら「喜んだならいい」と言って帰っていってしまいました。



 同じ日、フリードリヒの後に、ジェイラス殿下もお見舞いに来てくれました。

 わたくしが、フリードリヒが白詰草の指輪をはめてくれたのだとはしゃぎながら話すと、ジェイラス殿下は驚いたように目を丸くしていました。


「……あいつが? そう言ったの?」

「ええ! わたくし、とっても嬉しかったの」


 頰を染めて喜ぶわたくしを見て、ジェイラス殿下は何かを言いたそうにしていました。

 けれども、彼は結局何も言わずに、「よかったね」と私の頭を撫でてくれました。


 その時のわたくしは、フリードリヒのことで頭が一杯で、ジェイラス殿下のその寂しそうな顔に気が付かなかったのです。



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