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10 続く片思い ※ジェイラス第三王子目線



 エリザベスはあからさまに、フリードリヒに恋情を向けるようになった。


 僕は傷ついた。

 だって、僕はエリザベスが好きなのだ。


 だけどエリザベスが好きなのはフリードリヒ。

 そして、フリードリヒはそのことを自慢に思っているようで、僕に見せつけるように自慢げな顔をする瞬間がある。


 僕は耐えかねて、ある日、エリザベスに聞いてしまった。


「エリーは、あいつと二人きりになりたいとは思わないの」


 その日は、僕達が母上達によって、勉強しろと図書室に閉じ込められた日だった。

 フリードリヒは拗ねてソファで寝ていたので、僕とエリザベスは二人で机について勉強していた。


 僕の質問に、彼女は最初のうちはとぼけていたけれども、最後には本音を漏らしてくれた。


「……フリッツと二人にされても、ドキドキしてどうしたらいいのか分からなくて困るのです。フリッツも、三人で遊びたいと言いますし」


 僕は「そう」としか言えなかった。

 やっぱりエリザベスは、フリードリヒのことが好きなのだ。

 じゃあ、僕は応援するぐらいしか、できることがない。



 そして、12歳になったある日、エリザベスとフリードリヒは婚約した。

 僕はやっぱり傷ついた。

 日中は平気そうな顔をしていたけれども、夜はしくしく泣いて、枕を濡らしまくっていた。

 初恋だったのだ。

 なんなんだあの二人は。こんな若いうちから、婚約までしなくたっていいじゃないか……。


 そんな僕を見て、母上は「初恋は実らないものよ!」と言いながら爆笑していた。

 適当な母である。最後に側室に入った、嫉妬とかしそうにない雑で能天気な人なのだ。その辺が、王妃様や他の側室や、何より国王陛下(ちちうえ)に好かれているらしい。



 二人が婚約してから5年間、結局僕は、エリザベスのことが好きなままだった。だから、婚約話も全部蹴り飛ばしていた。母上は、「18歳で成人するまでは好きにしたらいいんじゃない?」と、まだ爆笑していた。


 けれども、エリザベスは婚約者のいる貴族令嬢。昔みたいに頭を撫でることも、二人きりで話をすることもままならない。好きにするというか、本当にただ(はた)から見ているだけの一方的な片思いだった。


「エリーが今日も可愛い。女神だ。あの笑顔で今日も一日生きていける」

「殿下、いいかげん諦めてください」

「ここで諦められるようなら、ここまで拗らせていない」


 僕の不毛な片思いを知っているのは、僕の側近候補達と、エリザベスの友人のキャロライン嬢だ。

 毎日毎日垂れ流される、僕の僕のための僕によるエリザベス日報に、彼らはうんざりしているようだ。


 ……いや、彼らは不毛だと言うけれども、まだ分からないじゃないか。

 エリザベスとフリードリヒの仲は、理由は分からないけれども、上手くいっていないようなのだ。


 エリザベスはフリードリヒの好みに合わせて大人っぽい装いをしだしたけれども、フリードリヒにはまだ指一本触れさせていないようだった。


 それに、学園に通うようになってから、エリザベスは不思議なことに、目化粧を濃くした。

 あまりに似合いすぎて、魔性の女か魔女のような妖艶な魅力が出てしまっている。ただし、あまり男受けは良くないようで、フリードリヒにすら避けられ始めているようだ。

 この点に関しては、エリザベスが一体何をしたいのか、僕にはよく分からない。本人に理由を聞いたけれども、はぐらかされてしまっている。


 けれども、とにかく、二人の仲はあまり良くないようなのだ。長年、初恋を拗らせている僕が希望を抱いてしまっても、無理はないではないか……。



 そんな中、エリザベスとフリードリヒが、よりにもよって貴族学園の教室内、公衆の面前で決裂したのだ。



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