家庭教師
「ねぇせんせい? せんせいには赤ちゃんいないの?」
「ええ、いないわよ……どうして?」
「だって、せんせいみたいなキレイな人の赤ちゃんがいたら、ぜったいにかわいいに決まってるもん! 女の子だったら結婚してもらおうと思ったのにな。」
「あらあら! おませさんだこと! ……わたしは女神アルテミスに愛されていなかったみたいなの。ごめんなさいね。」
ーーこの世界に転生してから三年が経った。
この世界でのボクの名前はコウ ランドール
ランドール男爵家の長男だ。
父は王宮勤めで法衣貴族のために領地は無いが、貧乏という訳でもない。
家庭教師を付けるくらいは余裕がある家庭だ。
ーー「父さま、書斎の本を貸して下さい。」
ボクは歩けるようになるとすぐに勉強を始めた。
全ては復讐のためーー神殺しの神器を探すためだ。
『わたしを殺したいなら、それこそ神殺しの神器じゃないと傷一つつかないわよ?』
あの女はむかし、そう言っていた。
このファンタジー感溢れる世界ならどこかに必ずあるはずだ。
ーー父も最初は暖かい目でボクをみていたが、本の内容を理解していることに気づくと家庭教師を付けてくれた。
ーー
「女神アルテミス?」
「ええ。妊婦の守り神よ。だから、わたしは赤ちゃんが出来ないの。」
この人はヘルミーナ先生だ。
歳は二十八で子どもはいない。
法衣貴族の夫を持つが流産を繰り返し、子どもは諦めたと聞いた。夫婦関係も冷めてしまっているそうだ。
「せんせいかわいそう……だったらボクがせんせいの子どもになってあげるよ!」
「コウちゃん……ありがとう……」
ヘルミーナ先生は涙ぐみながらボクを優しく抱きしめた。
ーー
「せんせいは神さまに詳しいの?」
「それなりには知ってるけど、どうして?」
「アルテミスについて知りたいんだ。こんなに優しいヘルミーナせんせいに加護を与えないなんて、何か理由があるはずだよ!」
「……わかったわ。明日は神さまについてお話するわね!」
「うん! お願いします!」
今日の授業が終わり、ヘルミーナ先生は帰って行った。
ーーこの世界に来てすぐに、フォルトゥナは天界に戻ると言った。それ以来、僕に試練は訪れていない。
「今のうちに、力をつけなければーー」
神は気まぐれだ。またすぐに現れるかもしれないし、死ぬまで来ないかもしれない。
ーーボクは自分の部屋に戻り、魔法書を開く。
すでに自分の中の魔力を感じとるところまでは実践できている。
今日は次の段階に入る。自分の使える属性を調べるのだ。
ーーこの世界の魔法は六つの属性からなる。
火・水・地・風・光・闇ーー無属性というのもあるらしいが、まだ解明されていない。
ーー魔法書の最初のページは白紙になっている。
そこに手をあて魔力を通すと、自分の使える属性に合わせて紙の色が変わると書かれている。
ーーボクは集中して魔力を感じとり、魔法書に手をあてた。
「これでいいのかな?」
魔法書から手を離すと白紙だったページが光を放っている。
赤、青、茶、緑、白、と順番に光り、最後にまっ黒になった。
何度かそのサイクルを繰り返しだんだん光りが弱くなってきた。少しずつ魔力が消費されているためだ。
やがて光りは消え白紙のページに戻った。
ーーどうやらボクは全ての属性を使えるみたいだ。
赤から白までの光る時間は短く、まっ黒になっていた時間が長かった。つまり一番適正があるのは闇属性ということだ。
「闇属性か! ボクにぴったりだ!」
ーー闇属性は精神操作系の魔法が多い。そのため良いイメージがなく好まれる属性ではない。
しかし、使い方によってはとても強力な属性だ。
ーーしばらくは闇属性魔法の習得のために時間を使おう
ボクは無言でこれからの計画を練り始めたーー




