第40話 はぁ!?
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「はっ!」
目が覚めると、そこには路地裏の景色が広がっていた。
私はちょこんと女の子座りをして壁に体重を預けていた。
「うーん、えい。いたい……」
頬をつねってみた。いたいなあ。
ありがたいことに生きてはいるようだ。
「しかし神様の部屋からは弾き出されましたか」
『うん、おかえり、というかおかえれ?』
「急に押しかける真似してごめんなさいね」
『困ったものだよ、いやほんっっと』
「ところで、私がここにいるということは失敗したってことかしら?」
『さあね。そこのドラゴンにでも聞いてみたらどうだい?』
「そこの?」
「ウシロダ」
「ギィャァァァァ!」
上を向くと、ドラゴンの顔があるものだから私は思わず変な叫び声をしてしまった。そもそも今、私が壁だと思っていたものはドラゴンの体であり、私は今ドラゴンに体重を預けていたらしい。
「感謝スル。アノ日ノ敵ヨ」
「正気に戻られましたのね。それは良かったわね」
どうやらドラゴンは奪われていた心を取り戻すことができたらしい。
『にしても、さすがに驚いた。今も変わらずそれほどまでに死にたがりだったとは』
「死んでもいい、までは考えたことはありますが、死にたいと考えたことはありませんわよ。勘違いしないでくださいませ」
『生物学的に異常であるという点ではどっちも変わんないね。神様にはさっぱりだ』
それから、ドラゴンから話を聞いた。
私と同じく、ドラゴンもあの瞬間に意識が現実に戻り、そこにはステラが倒れていたので、自分に寄りかからせたということらしい。
「しかし、これほどまともにドラゴンと話ができるとは思っていませんでした」
「我々ハ人ノ言葉ヲ理解シテイル。言葉ヲ交ワスモノハ少ナイガナ」
「言葉はわかるのに話せないのは辛いですわよね、よく分かりますわ。うんうん」
私は、転生してからの二年間ほどを思い出して深く深く頷いた。あれは辛かった。流石に精神年齢が大人でも泣くわ。
「それで、気絶してどれほど経ったのでしょうか」
神様の世界にいる時間は、神様によると現実世界にして一瞬らしい。だから気絶していた時間が浪費した時間と言って差し支えない。
入学試験について、先ほどまではそんな余裕がなかったから仕方なく頭から切り離していた。ただ、ようやくことが済んだため、そちらについて考える必要があるわけで。
「ステラ様! ……」
そんなことを考えているとき、アルカが私の魔法による土壁を壊してこちらへやってきた。どうやら私の気絶と共に土壁が脆くなっていったようだ。どのみち合流しないとだし、それに今の状況を知りたかったのでありがたい。
「ああ、アルカ、ちょうどいいとこ――」
「……ってキャァァァァ」
そして私を見てなぜかアルカはすごく衝撃を受けていた。
ところで、お嬢様よりあなたの悲鳴の方がいつも可愛いのは反則でしてよ?
「だいじょーぶ? ステラちゃん」
「あら、メメさん。大丈夫よ。ちょっとドラゴンとお話ししていただけよ」
「あれ? ドラゴンさんがいい子になってるね」
「あなたの目はどうなっているのですか、まったく……」
アルカに続いてメメもやってきた。仕方ないものの彼女まで巻き添えにしてしまったのは少し申し訳ない。
ところでどうしてそんなジロジロ見るのですか? ああ、後ろにドラゴンがいるから――
「おでこから血が出ているよ?」
「まじ?」
おでこに触ると、確かに血が出ていることが確認できた。なるほど?
『まあそりゃドラゴンに超特急でぶつかりに行ったんだもんねえ』
「後のことまで考えていなかった自分が本当に悔しい」
この傷、消えなかったらどうしよう。お嫁に行けなくなりません?
――――――――
後のことを考える余裕は残念ながらなかったので、おでこについても致し方ない。と思い込もう。うん、大丈夫。魔法で消せる、いや消す。そんな魔法を作り出す。
「それで、ドラゴンについては本当に大丈夫なんですよね」
「ええ、今のドラゴンは無害よ」
ひとまずアルカと情報を共有する。
私はまったく無事であること。ドラゴンが先ほどまで錯乱状態であったこと。魔法をぶつけたら思いの外効果があったこと。そしてそれによって錯乱状態が解けたこと。
言っていないことは多々あるが、嘘は言っていない。というか神様のことなんて言ってたまるかっての。
アルカからは、メメは無事で済んだこと、先ほどから十五分ほど経ったという情報をもらった。メメについては一安心だ。しかし時間についてはそうもいかない。
「本格的にまずい時間ですわね。入学試験には間に合う気がしませんわ」
「流石に特別措置があると考えて、なるだけ早く行くしかありませんね」
「しかしドラゴンにあっていざこざに巻き込まれたなんて話信じてもらえるでしょうか」
「街も被害甚大ですし、まあ信じろとしかいえませんね……」
そう、人にこそ被害が少ないものの、ここも含めて街は被害が出たのだ。
ならばそろそろ警察やらなんやらが動き出すに違いない。私たちもだが、ドラゴンも即急に動いた方がいいだろう。
「にしても」「ええ、そうですね」
「メメさんはすごいですね」
私たちが黙々と話し合っている間に、メメはなんとドラゴンと話しているのだった。
「今の状況わかっているのでしょうか」
「急がなきゃね! と先ほど仰られていたので、一応理解してはいるらしいです」
「ならどうしてあんな呑気で楽しそうにドラゴンと話しているのやら……」
メメは一応ドラゴンに吹き飛ばされていたのである。元気だからなんでも良し、とでもいうのだろうか。まったく、恐れ知らずというか、世の中のことをみんな善だと思っているというか。
「ねえねえ! きいて!」
「あら、どうしましたか、メメさん」
「時間はないから手短にお願いね。つまり、パパッと言ってちょうだいね」
「うん! えっとねえっとね!」
メメはすごく興奮しながらこちらにやってきた。
さて、そこまで重要なことなのでしょうか。まったく何をいうのやら。
「ドラゴンさんがね、あのね、乗せてってくれるって!!」
「「……」」
言葉の意味を飲みくだく。のせる……のる……乗る…………
「「はぁ!?」」




