第3話 魔法を使おう! 無理!
お読みいただきありがとうございます。
今回の話は魔法に関する説明が多い話です。
後々ストーリー上で説明するでも良かったのですが、まあ一言二言三言くらいの説明は入れておきたいところです。
というわけで改めて説明が多い話です。
現状の整理から始めよう。
宝石は棚の上にあるようだ。
一歳の女の俺の身長では見えない位置にあるので少し下がってベッドの上から眺めてみることにした。
ふむ、どうやらあの箱の中だろう。
場所の確認は済んだので早速動かしたいところだが、そう簡単に魔法を操れたらどれほど楽なことか。
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魔法にはいくつか段階がある。使う魔法の難易度による段階はもちろんのこと、同じ魔法によっても簡単なことと難しいことがあるのだ。
数ある魔法の中で比較的簡単なことは、ありきたりなものを生成する魔法である。その中でもっとも簡単なものが、自身のすぐ近くから詠唱によってありきたりなものを生成する魔法だ。
例えば、手から水を生成するとか、手から風を生成するとか。
ちなみに手から火を生成して火傷するというのは魔法を学ぶ初心者が初めに通る道だ。そういう時はアロエがいいぞ。
次に見える範囲の近くから見える範囲の近くに向けて詠唱でものを生成する魔法である。
例えば、近場に火を起こすとか、それを風で強めるとか。
そこから水を生成して消そうとするも、うまく生成できずに大惨事になるのも初心者が通る道だ。その時のためにバケツにたっぷりの水を汲んでおこうな。あと火傷した時用にアロエは八百屋で買っておくと便利だぜ。
それよりちょっと難しいのが、近くだけど見えない範囲、例えば後ろに詠唱でものを生成する魔法だ。例えば背中とか。
かつて背中の近くに火を生成させようとして何度火傷したことか。アロエは箱買いがおすすめだぞ。
今までより難しい状況としては、さらに遠い場所であったり、まったく想像もつかない箱の中であったり。こうなった時に人はアロエ……じゃなくて初心者から卒業だ。
なお、ここまではすべて詠唱することを前提としたお話だ。無詠唱となると話が変わってくる。というか普通はできない。
理由として有力なのは、無詠唱というのは一種のデタラメ行為だから、ということらしい。
……とはいうものの、俺の周りにいた連中は、全員無詠唱で超強力魔法をぶっ放していた気がする……あいつらほんとデタラメばっかだな。
とまぁ、若干話がアロエに逸れたが、要するに見えない範囲や遠い範囲は難しいということだ。
ただ、見えないことと遠いことのどちらがより難しいか、については、人による、としか言えない。教科書によれば、遠いほど集中力を必要として、見えないほど想像力を必要とする、ということらしい。
では、これらを考慮して、俺なりに必要な魔法とその技量について考えてみよう。
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まずは手段。すなわち宝石を取るために何の魔法を使うか。
風魔法だな。強い風を局所的に作り、宝石の箱を風で動かすのがちょうどいい。
次に難易度。特に問題となる点、それを解決するために必要となる技量は何か。
一つ目の問題点として、メイドがいることが挙げられる。そのため、彼女にばれないようにする技量が求められる。自然に、そして手短に済ませる必要があるわけだ。
二つ目の問題点は、魔法の難しさだ。ただ、これは俺の居場所によって変わる。
ベッドの上に立ち、宝石の箱を落とすのであれば、遠いところに魔法を生成する技量が求められる。反対に、棚の近くで宝石の箱を落とすなら、棚の上という見えない部分に魔法を生成する技量が求められる。
ではどちらを選択するか。
実はもう決まっている。それは、棚の近くから宝石を落とす方法だ。理由は二つある。
一つ目は、遠くで箱を落としたら、あのメイドが私より早く行って奪ってしまう恐れがある。
二つ目は、この体で集中しようとすると相当の体力を使ってしまうことからである。集中力が持たないのなら遠くから魔法を放つのは不適切だ。
やることは決まった。さっそく実行……というわけにもいかない。
俺が先ほどの計画に見合った能力を有しているか、そこからだな。
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無理でした。無理無理でした。そりゃそうかー。
一度、手元で魔法を出してみようと試みたのだ。
「『ウィンド』、対象は手のひら。大きな風よ吹き荒れよ」
これは最も簡単な風魔法の詠唱だ。風が出る、という単純なもの。その結果は……
うーん、そよ風―。
せめてものプライドを保つため、ついでに火の魔法、水の魔法も試してみるが、蝋燭程度の火とそれがギリギリ消えるほどの水しか生成できなかった。プライドは潰えた。
やはり訓練なしに魔法を出すのは厳しいらしい。
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一般に、魔法には才能と訓練が必要とされる。
魔法全般の基礎となる実力として単純な器用さ、体に魔力の蓄積量、そして魔力効率の良し悪しがあり、ある程度は訓練で伸びるものの、その成長速度は人によって様々である。この成長速度が一般的に魔法使いとしての才能である。
さらに、一部の者のみにしか使えない特殊魔法、一般的に魔術と呼ばれる魔法を使えるものは魔法使いの上位の存在として「魔術師」と呼ばれる。
比較的使える人間が多い魔術としては、回復魔法、氷魔法、布魔法があり、滅多に使えないものとして使役魔法、封印魔法、呪いとかがある。ちなみに魔術も一応気合の習得ができる。滅多に習得する人はいないけど。
訓練によって成長することは確かなのだが、体の成長と魔法の成長の相関関係は明らかにされていない。そもそもそれは当たり前で、一歳から魔法を学ぶバカがどこにもいないからに違いない。
しかし、魔術の操作には体力を使うので、総体力量の少ない俺のような一歳の場合、訓練できる時間が限られている。そのため、結果的に一日あたりの成長は少なくなった。
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というわけで、メイドの隙を見て魔法の練習をするという日々が始まった。
もちろん、訓練をした後はすぐに眠くなるため、昼寝の時間は欠かせない。
「ステラ様、こんなところで寝ないでくださいー」
「ねむねむー」
「はー。ほら、おんぶしますから」
側から見ると、またもや一歳らしい言動をする日々が続いた。
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