第90.5話 幕間の間:ステラ休憩中
お読みいただきありがとうございます。完全に番外編です。読まなくてもストーリー上は問題ありません。少女が休憩中の話です。
時はさかのぼり、アイラにあった直後の話から。
アイラの提案の元、私たちは少し留まることを許された。
よし、ここでしっかり休憩だ。
ちゃんと休んで、体力を補充して、今日も明日も――
「やだよ、お茶なんていらねー。お前らそんなことより遊ぼうぜ」
「僕は少し興味があるのでせっかくなので――」
「おーい、メラク、あっち、川がありそー」
「おっしゃいくぞミズリィ」
「うわぁぁぁぁぁ」
ちょっと楽しそうだけど、それはさておき休憩しよう。
――――――――
それから右往左往、上下左右、紆余曲折あってから。
ようやく妖狐は飛び跳ねてどこかに行き、私にとっての脅威は消え去った。
そんなわけで、しばらく休憩しまーす。よっこいしょっと。着席。
思わぬ全力ダッシュもしたし、集中力も魔力も使ったし、今度こそ――
「・・・---・・・」
あー、聞こえない聞こえない、神様の声なんてこれっぽっちも聞こえません。
……いや、これは神様の声じゃなくてミズリィの声ですわ。なんか助けを求められている気がしますの。
私は下げた顔をあげ、ついでに腰も上げた。
「ステラさーん、たすけてくださーい」
「ごめんなさい、私疲れておりまして、できれば後にしてくださると……あら、もしかして?」
ひょっこりとミズリィとメラクが寄せあう肩の間に挟まり、彼らと同じく下を向く。するとそこには目を回したナーコが座っていた。どうやら、先ほど飛び跳ねていった妖狐を律儀に観察していたらしっかりと目を回し、そのままフラフラしているらしい。
「少し失礼」
あの小さな魔物と異なりナーコは引っ搔いてこないので、了解を得ずに顔を近づけ、そのまま目をこじ開けて観察する。
ふむ、私の動きに合わせて瞳孔は動いている。グルグルは回っているけれど、動きから察するに神経に異常はなさそうだ。
「ナーコさんはとくに問題ないわ。ちょっと混乱しているだけよ」
それを伝えると、ミズリィはほっとしたような表情を浮かべた。一方、メラクはというと。
「つまり、ちょっとくらいイタズラしても問題ないか?」
すごく悪い顔をして、顔をニヤつかせていた。
「……まぁ、度を超えない範囲なら?」
なんか面白そうだけど、私は休憩しよう。
――――――――
また少ししてから。
「よっし、おいミズリィ、ナーコをこっちにもってこい」「まっかせてください!」
メラクに水を掛けたりかけられたりと楽しそうにしている彼らをよそに、私は今度こそ休憩することにした。
彼らから少し離れ、川辺に座り込む。どうしてわざわざ水辺かというと、それはもちろん暑い体を効率的に冷やすためである。
「っと、この辺なら大丈夫かしら」
川辺にある、少し大きな石に座り、川の一角を確保する。
そして、私は少し体を下にやり、川に腕を付けた。
はぁぁ、きもちいぃ
腕、手、首、顔、そのあたりを冷やすと、体が効率的に冷えるらしい。詳しい話は専門家に聞かないと分からないが、涼しくなった気がするから多分合っている。
経験だけで語るのは、あまりにも愚者の発想である。
よし、同じ愚者ならば、せめて巨人の上に立たなきゃ損である。どうやら、足も冷やすと猶更良いらしい。やってみよう。
私は彼らから背を向けて靴を抜ぐ。もちろん靴下も脱いで、靴の中にしまい込む。
それから、ゆっくりと足を水につけ――
「きゃ、つめたい」
思わず乙女チックな声をあげてしまった。ついうっかり。注意注意。
はぁ~
しかしほんとうに心地が良いものだ。
のんびりできて最高だ。暖かい温泉もいいけれど、冷たい川も癒される。川に来たのにのんびりしないなんて間違っていますわ~~♪
……………………
後ろを向くと、バカをやっている男子たちがいた。
天気がいいとはいえ、そんなに濡れてどうするのやら。まったく男子ってバカねぇ。
『君もあっち側では?』
「まったく神様、何を言い出すかと思えば。私はお嬢様ですわよ? あんな子どもみたいにはしゃぐなんて」
『でもほんとのところは?』
「そりゃもちろん」
私はバカではないので、もちろん――
――――――――
……ちょっとする間もなく。
「そんな楽しそうなこと、私が参加しないと思いまして!?」
「やっぱり来やがった! お前ら、ステラを倒すぞ!」「やれるもんならやってみんしゃいですわ! シュバッ!!」
私は休憩を捨てることにした。
よく考えたら、川に来たのに川遊びしない方が間違っていますわ!
そうして、ついうっかり遊びに参戦してしまい、さらに体力を使う羽目になった。
『おいおい、君は本当に……まぁ、楽しそうだからいっか』
お読みいただきありがとうございます。
なんだか、特に問題に遭遇せず年相応に楽しんでいる彼女が書きたくなりました。たまには彼女にも余白で楽しんでもらいたいです。
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