第13話 すごいアホには感謝感心することも
お読みいただきありがとうございます。
そういえば、私は関西住みなんです。小説ではそれっぽい言葉回しは避けているんですが、それでもついつい使ってしまうことってありますよね。
人が宙に浮かされるときはどんな時だろうか。怪人に投げ飛ばされた時? 魔法で吹き飛ばされた時? はたまた死んじゃった時? それはもちろんあるだろう、いやないか。
でも最も初歩的で並の人間でも味わうことがあるだろう。
高い高いである。やめろや。
「こんなところにこんな可愛い女の子!いいですわね!!めちゃくちゃ不機嫌そうな顔もいいですわね!」
「分かっているのならおろしてくれると助かるのですが」
「もう少しだけ、もう少しだけいいですか? 可愛いねえ!」
私は絶賛それをされている。周りにほとんど人がいないからまだ耐えられるがこんなものを大衆に見られていたら恥ずかしくてもう一度転生できる。
「ええ、存分に可愛がってあげてください。その子の名前はステラです。あんまり人と話すことに慣れていないだけですごくいい子なんですよ」
「私の名前はネールよ! ステラさん、可愛い名前ですわ。いい子なのはもちろん分かりますわよ! この不機嫌ながらもいい子なのが漂ってくる感じ!」
アルカは私たちを楽しそうに見ている。今お前の育てている子どもが誘拐されかけているんだぞ。
「ステラちゃんみたいな可愛い子どもがこんなところに来るなんて滅多にありませんから!!! ……ところでなんでこんなところへいらしたの?」
「それがですね、ステラ様がなぜかここに来たいとおっしゃるもので」
「子供の頃から魔法を学ぶのは実にいいですわね! そんなあなたにとっておきの魔法を見せて差し上げますわよ」
こうなることは分かっていたが、やはり芸を見せられる事になった。昔からこんなことをしているから近所の子どもたちにはえらく人気なそうで。
芸を見せるためか高い高いから解放されたので私の心は高い高い。彼女の魔法は雷魔術であり、見えるレベルの電気を流すとなると実はとても危険な魔法なので、アルカのそばに一旦退避した。
「危険なのでそこから見ていてくださいね。少しお待ちを」
『神よ、願わくば私にひとときの癒しを、私の服にもう一度祝福を、私を芯として雷華雷蝶を』
彼女の周りに電気が流れ始める。次第にそれはまとまりを持ち、いくつもの美しい花と蝶を形作る。花はクルクルと飛びまわり、蝶はヒラヒラと舞う。幻想の蝶は花にとまるものもいたり、彼女の手にとまるものもいたりと自由自在である。
「どう? 綺麗でしょう? もちろん私以外が触っちゃダメですよ。意識が吹っ飛びますので」
「これはまたすごいですね」
「……そうですわね」
改めてただ感服せざるを得ない。綺麗なのはもちろんのこと、魔法の観点から見ても群を抜いている。今発動されているそれぞれがおそらくかなりの上位魔術なのだ。
それに、以前見たものと比べても大幅に進歩している。前はそもそも花だけだったし、こんな動かすこともなかった。動かすとなると相当な練習が必要だろう。見ていないうちにも日々の鍛錬を欠かしていないのだろう、関心である。
「ステラさん、少しは機嫌を直してくださいました?」
「いや別に機嫌はわるいですわよ」
「ええ! がっくし」
もう少しこの魔法を楽しんでいたい気持ちはあるが、ここでネールに時間を浪費するほどの余裕はない。もうそろそろ日が暮れてしまいそうだ。
さっさと魔導書を借りて家に帰ろう。ええっと、今から借りたい本はあれとこれとそれと。アルカに持たせるには、流石に限界そうだなあ……こんな時にちょうど子どもの機嫌を伺っていて、なんでもいうことを聞いてくれそうな、都合のいいお姉さんがいればいいのだが……
「ところでネールさん、少しお願いがあるのですが」
「ええ、なんでもいいわよ!」
「少し手を貸して?」
――――――――
と、いうわけで借りる本を全てアルカとネールに持たせて馬車のところまで帰ってきた。
「本当にすみません、こんなところまで運んでいただいて」
「いいですわよ。可愛いステラさんのためですもの」
「ありがとう、ネールさん。それでは、さようなら」
「ステラさん、またお会いしましょうねー♪」
「はい、さようなら」
ネールにはきちんと今際の別れを伝えておく。
今日1日は、久々に色々あった。やはりまだこの体での他人との会話には慣れない。あと子どもや子どもみたい女は苦手だ。
そして、ここからは行きと同じように酔いとのバトルになる。いや、むしろ行きよりも初めから気分が少し悪い分しんどいのかもしれない。いっそのこと意識を失えたらどれほど楽なことか。
もう一度今日1日を振り返る。意識を失えたら?
アホに感化された名案を思いついた。アホだけど感謝しておこう。また今度見かけた時も他人のフリをせずにきちんと話してあげようと思う。
「アルカ、今からものすごい熟睡に入るので、帰りには担ぎ上げてください。明日には目を覚ますかと思われます」
「は?」
「それでは」
アルカに了承を得てから心の中で魔法を呟く。これ、本当にうまくいくのかな。
心のなかで一言唱える。作戦はうまくいったようで、その直後に私はしっかりと『熟睡』をした。
――――――――
ふと目覚める。このよくわからないふわふわした感じは間違いなく神様のところだ。うまく意識を飛ばすことができたのだ。よしよし。
『ねえ、ステラ君』
神様の姿は見えないが、声は聞こえた。
「はい、なんでしょうか」
『自身に魔法をうつネールさん、アホだと思わない?』
妙に神様の呆れた声が聞こえる。なんでそんな呆れているのか、不思議でならない、ということはなく。
「思いますわね」
『自身に魔法をうつ人、アホだと思わない?』
当然かなりの心当たりがあるわけで。
「そうですわね」
『自身に魔法をうつステラ君、アホだと思わない?』
「あほですわね」
簡単なこと。自身にスタンを打っただけだ。うん、アホだな。
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