第83-2話 Day1昼:目的とお言葉はお忘れなきよう
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私は少し下がって、余りものを持ち、また前に出た。
「あ、それ、全部燃や――」「却下ですわ」
ナーコの案は華麗にスルー。……ちょっとやりたいけど! とはいえ今回はおあずけ。
先ほどと同じように私に視線が集まる。集まっている人数を確認して……まぁ、この人数なら大丈夫だろう。
なんの余りものかって? それはもちろん――
「皆さま。火を付けるなら、ぜひこちらの布を使うといいですわよ」
そう、余った布だ。
流石にこの人数に火のついた薪を分けるのは厳しい。
ただ、火を点けるという目的なら、間接的におすそ分けをすることはできる。簡単なことだ。知識と小道具さえあれば、たいして難しいことでもないしね。
「わーい、ステラちゃん優しい!」「え、いいの!?」「それってなーに」「せんせー、」「ええっと(泣)」
「はいはい、ちゃんと説明いたしますから。班ごとに順番に並んでくださいな」
私はみんなにいくつかの布を渡し、ついでに燃えやすい枝が落ちている場所も説明した。
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布を配り終えている間に肉と野菜に火が通り、あとは魔法の茶色い粉を入れてコトコトと。
あら不思議、カレーができてしまった。いや何この茶色い粉、すごい、というか怖い! と、小学生なのに時代に取り残されそうだと不安に思いつつ。
何はともあれ完成したので、手順通り先生からパンを貰い、他の班より一足先にご飯を食べはじめることになった。
ではさっそく一口。パクッ。
「あらおいしい」
今の体の私は辛いものが苦手である。それでも、このカレーはそこそこ美味しく食べられた。たしかに辛さはあるが、それはほんの少しで、どちらかというとおいしさが勝っている。
それに野菜がおいしい。これは間違いなくチエさんのおかげだ。切り方ひとつで変わるんだな、初耳だ。
「ちょっとからいたいー」
「ナーコさんのいうとおり、辛さと痛みというものは本質的にウンヌンカン――」
「ミズリィうるさい」「シュン」
いつの間にか、ミズリィを含め、この班の男子たちは仲良くなっているようだ……多分。ミズリィがしゅんとしているけど、多分仲は悪くないはず。本当にすごいな、小学生の適応力。
まぁ、当然ながらチエさんはおとなしい。大人らしいともいえる。小学生らしからぬ大人らしさだ。
「チエさんはどうかしら?」
「え、あ、はい。えっと、から……いえすみません、おいしいです」
「いや辛いと正直に言ってもいいのよ?」
「はい、あ、すみません」
うーん。こんな感じでいいのか? わからないが、これ以上話してもさらに謝らせそうだ。
「とはいえステラ、あれでよかったのかよ」
ちょうどメラクが私に話しかけてきたので、チエさんとお話はできたということで完結させ、メラクとの話に移ることにした。今後の会話に乞うご期待ってことで。
「えっと、あれって?」
「ほら、みんなに布を配っちゃったじゃん」
「あぁ、そのことね。それがどうかしたのかしら?」
「あれがなきゃ、俺たちだけがご飯を食べれたんだぜ?」
私が布を配ってから起きたこと。
それは単純だ。私が布を配り、燃えやすい枝の在処も伝授したことで、少しづつだが火が付く班が増えた。今はどこも火がついており、ぼちぼちと料理が完成しつつある。
まぁ平たくいえば、私は勝負するはずの他の班に手を差し伸べた、というわけだ。
「ステラって、けっこう負けず嫌いじゃなかったっけ?」
「あら、流石メラクさん、よくご存じで」「流石ってなんだよ」
勝負でなれ合うのは好きではない。さすがに魔法を使って私の班だけリードする、といったことをするつもりはないが、とはいえ全力で他の班と勝負するつもりだ。
ただ、それは明日以降でいい。
「今日は問題ないと思いましたのよ。先生のお話を聞いている限り、今日はポイントも加算されないですし。なら今日は他の班と勝負する意味はありませんわ」
それに、せっかくならみんなの仲が良くなることに悪いことはないからね。
実際、それによって、全体的に和やかな雰囲気の中で料理が食べられているわけだし。
「とはいえ――」
他の班というものに、自分の班の中は含まれていないわけで。
「私、ちゃんと勝負はしておりましたわよ?」
「そうなの?」
「えぇ、あなたに忘れてもらっては困るのですが……ね?」
私はメラクをじっと見つめた。
目が合うこと数秒、ようやく標的が自分だと気づいたらしい。
「俺?」
「えぇ、メラクさん。あなたが言ったことを思い出してほしいのですが」
「なんか言ったっけ?」
「具体的には、私が火を点けようとする前に言ったこと、覚えているかしら?」
メラクが言った通り。私はけっこう負けず嫌いなのだ。
バカにされたのなら、それを見返してやりたいと思う程度には。
そして、はっきりと言われた侮辱の言葉を、きちんと謝らせたいと思う程度には、ね。
「えぇっと」
ようやく思い出したのだろうか。メラクは目を逸らし、少し困ったような顔をした。
私はすっと立ち上がり、メラクの目線の先へ。逃げるなよ?
「あら、どうしたの? 何か言いたいことがあるの?」
「……いやごめんって」
ふーん、そんな軽口で済むとでも?
「『おんなのおまえができるわけないだろ』といってすみませんでした、でいいわよ?」
ダメ。メラクにはちゃんと謝ってもらわないと。
なにせ、それが私の一番の目的ですもの。
「…………おんなのおまえができるわけないだろ、といってすみませんでした」
「ふふふーん、まぁー仕方ありませんわね。また私の勝ちってことで今回は許して差し上げますわ」
「こいつぅ!」
まぁ、わからせることもできたわけだし、この辺で許してあげるか。
私は席に座り、ニマニマしながらカレーを食べた。
うん、やっぱり。
心なしか、とっても満足する味になった。まったく、ご飯が進みますわね♪
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