第81-3話 Day1昼:そういうのは得意でしてよ
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「切れましたわね。グスン」
「ごめんなさい、玉ねぎ、任せちゃったから」
「グスン、気にしないでくださいませ。痛みはありませんわ」
問題なくすべての野菜を切り終えたので、早々に男子達のいる炊事場に向かった。この調子だと他の班より一足先にカレーが食べられそうだ。
「しかしあいつら、一向に野菜を取りに来ませんわね」
「ぇと……そうですね」
準備が整い次第、野菜を奪いに来る約束だったのに。まったく、呑気に遊んでいるのだろう。そう思い、文句を考えながら炊事場に野菜を持って行ったのだが。
あまり事態は芳しくないようだった。
到着して始めに目に入ったのは、火がついていない炊事場。とはいえ、彼らが仕事を放棄して遊んでいたわけではなくて。
「ミズリィ、説明よろしく」
「それがですね――」
どうやっても火が付かないらしい。おそらく昨日の雨で薪が湿ったせいだろう。
周りの班も同様に火がついておらず、なんなら先生ですら焦っているのを見るに、おそらくかなり深刻な事態だ。
「メラク、調子はいかがかしら?」
「うるせぇ、もうすぐ付くって」
「ほんとですのー?」
「だからできるってば!」
火の前に座り、じっと薪を見つめているメラクに声をかけた。
やはり火を付けようとムキになっている。とはいえ、ここにいるだけでは火を付けるのは無理だろう。
「さて、困りましたわね」
「女はなんにもできないだろ、お前みたいなボンボンはとくに。下がってろよ」
「メラクさん、あなたねぇ?」
まったく、少し協力しようと思えばこの仕打ちだ。お腹が空いたのもあってイライラする。
そもそも私、野菜を切るより火を付けるのほうがよっぽど得意なのだけれど。
――そうだ。良いことを思いついた。これはチャンスだ。
そう、メラクに文句を言い返す、最高のチャンスじゃないか!
「メラク、ナーコ。選手交代よ」
「は?」
私はおそらくこの状況下で火を付けることができる。というか、こういうことは前世で何度もやっている。当然、経験も知恵もある。
そのことをメラク達が知らないのは当然だ。それ自体は問題ない。
「私が火を付けますわ。だから選手交代ですの」
「お前ができるわけねーだろ」
「あら、私もずいぶん見くびられたものね」
かといって、女だから、お嬢様だからといって、できないと勝手に断定されるのは腹が立つ。いいタイミングだし、少し反省してもらおう。
「あまり偏見に囚わないほうがいいですわよ」
「……え、できるの?」
きょとんとした表情でナーコが聞いてきた。
その言葉に対して私は断言してみせた。
「えぇ、もちろん」
すでに策はある。
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