第78.5−2話 幕間の間 おしごと! 児童誘導編
お読みいただきありがとうございます。
先週よりはタイトルがマイルドですね!
話数の数え方を変えましたので話数が変わっていますが、内容と順番は同一です。
――――――――
カルトラから貰った地図を思い出しながら、私は子どもたちに足並みを揃えて図書館見学をしていた。うん、この角の後くらいだな。集中集中。
「こちらのお部屋が本の修理室です。こちらを見てください。ここで本を整えてから、皆さんが手に届く場所に本が置かれるのですよ。分かりますか?」
「「「はーい」」」
前方で説明をする男性はただの文学者。多少この施設には詳しいだろうが、動き方を見てもわかるように警護は素人に等しい。しばらく私が集団から離れても気づかないだろう。
「先生、もう少しゆっくり歩いてください」
「すみません、わかりました」
問題は今喋った私の右後ろにいる寡黙な女性。スーツ姿の女性は前方の彼のアシスタントに見える。
でも私には分かる。彼女はこの文学者とは無関係であり、言うなれば今回のツアーの監視役である。
……おい普通にいるじゃねぇか警備、カルトラの嘘つき!
とまぁ、それを責めても仕方がないので、ひとまずカルトラへの断罪は脇に置いておき、これからの動き方を考えることにした。
といっても、彼女がこちらを見ている以上、不審な動きはできない。なので、ミスディレクション辺りの技術を使ってどうにか彼女の視界から外れる必要がある。
そう考えながら角を曲がり、しばらくすると地図に示された場所が見えてきた。おぉ、地図通り。
なるほど、実際に観察すると確かに、ここは建物のセキュリティホールだ。外と繋がっているドアは各方面から死角となっており、さらに動線が内からも外からも整っている。
第一段階、到着することはクリアした。さて次はっと。
当然ながら来ることは全く難しくない。本当にしないといけないことは鍵を壊す、ということである。
しかし問題はその鍵の形状である。
これはカルトラから教わったことだが、無策に鍵を壊してはいけない。何故かというと、最近では魔力や衝撃に反応して大音量を鳴らす魔法具が存在するからである。「ちゃんと壊して良いか確認してね」とのことだ。
「そんなこと言われましてもわかりませんわよ」
「ん、それは今から教える」
その後みっちり教えてもらい、一通りは理解したものの、どうしても今の知識量では近くで見ないと判断できない。かといって一人で近づいて行っても怪しまれるだけ。
つまり、どうにかして疑われずに近づく必要がある。どうしようものか。
……よし、決めた。
私はぱっと思いついた作戦を実行することにした。
――――――――
まず、子どもたちの間を移動し、やんちゃな子どもの隣に立つ。そして光の点滅を魔法で作り、やんちゃ者の視線をドアの方向へ誘導した。
事前の準備は整ったので、私はやんちゃ者だけに聞こえそうな声で喋った。
「あれ、ピカピカしていて楽しそう!」
「え? 何が?」
それから点滅を少し添えた。その子は次第に、その方角に何があるのか気になってきたようだ。うん、悪くない流れ。
子どもは大人が見落とすような些細なことに気がつく。不規則な光の点滅だとか、誰かの小声だとか。
そしてもう一つ、大人でも見落とすあることに、子どもたちは気づくのだ。
それは周りの人の視線だ。
近くの人間の関心がどこに向いているのかに彼らは気づく。気づいた人間はどうするか。そんなもの決まっている。
「あれがどうしたの」「あれってどれ?」「あれだよ、あれ?」「どれどれー?」
そう、気になるに決まっているのだ。
気がつけば周りの子どもたちも、次第に鍵の方向に注目していた。光の点滅をやめた後も、子どもの関心はその方向に向いていた。
これで完全に準備は整った。あとは導火線に火をつけるだけ。
皆の関心が一方に高まった頃、私は腰を屈めて前方へ移動した。それから先頭の子どもを少し押した。
するとどうだろうか。
流れは流れを生み、一人の子どもが前に進むから二人が前に進めるようになり、二人の子どもが前に進みだし……
そう、そうやって、子どもたちが次第にまとまって向かいだしたのだ!
「あ、こらこらダメですよ」
「先生、ここは私が」
しかしここで問題が発生した。
前方の男性はあわあわしているので問題なかった。その一方で後方にいたはずの女性は迅速に対応を始め、先頭はすでに勢いがなくなろうとしていたのだ。
優秀な彼女は、ものの一瞬で子どもたちの動きを封じ込め、私はもちろんそれに巻き込まれ……
巻き込まれるなんて、私があるわけないでしょう?
だって一瞬の隙があれば十分ですもの。
私は、彼女が瞬きする瞬間を狙って横をすり抜け、瞬時に鍵の形状を目に焼き付けた。そして間髪入れずに子どもたちの中に身を隠した。
ふぅ、一つ目の問題はクリアしましたわ。では次に行きましょうか。
――――――――
目に焼き付けた記憶を元に、鍵の形状を照合したところ、その鍵は壊せるものだった。
ならば話は簡単だ。
さて、ぶっ壊しましょうか。
お読みいただきありがとうございます。
もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。




