幕間の間 噂が確かとするならば
お読みいただきありがとうございます。
番外編、というより別視点のやつ。
話数の数え方を変えましたので話数が変わっていますが、内容と順番は同一です。
「これは使えるかもしれない」
カルトラがそう思ったのは、彼女の学園で起こした事件の噂を聞いた時だった。
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ラメル家の少女、ステラ。
カルトラにとって、その少女はノルンとは別の意味で観察対象だった。それは何故か。
「状況証拠から見るに、彼女はどういうわけか魔法を使える」
彼女の家のメイドと家族構成を考えると、彼女が魔法を外部から教わることはない。しかし、彼女が魔法を使えることを裏付ける証拠は探せば色々と見つかっていた。
すなわち、彼女は原石である、と言えた。
原石とは学なしに魔法を使える才能のある人間だ。かつて貴族が魔法を牛耳っていた世界においては、彼ら彼女らは最も危惧すべき人間であり、それらは貴族によって買われているろくでもない惨事が日常茶飯事だった。しかし、勇者グランの活躍によって、魔法が貴族以外の手にも渡るようになるとともに、原石の売買に対して各国の監視の目が高まった。そのため、原石の売買は公には行われなくなった。
あの勇者の活躍は世界を大きく善い方向に変えてくれたのだ。
しかし残念なことに裏の社会ではそういうわけにもいかなかった。
元々人身売買から奴隷の貸し借りまでなんでもありの裏社会だ。当然、原石だって売買されていたわけで、それがそう簡単になくなるわけがなかった。
カルトラの情報網を持ってすれば、それは不可能ではない。加えて彼女は貴族の娘だ。通常価格ですら高いのに、原石ともなれば、相当高く売れるだろうとも考えられた。
しかしカルトラはそれをしようとはしなかった。理由は色々あるが、彼は自分ではこう言い聞かせていた。
「俺の方がうまく彼女を利用できるはず」
とはいうものの、彼女を観察し続けて数年が経ったが、カルトラがアクションを起こすことはなかった。
いい利用案が思いつかなかったからだ。
非人道的な扱いをするならば、いくらか利用価値があったかもしれないが、それは短期的な利益にしか繋がらない。しかし、長期的に扱おうにも、彼女は未知数であり、そもそもカルトラは彼女をそこまで信頼していない。下手すれば彼女を経由して自身にも損害が出かねない。
カルトラはそう考えていたのだが、彼女の様々な噂を聞くにつれ、彼女への信頼は定かなものとなっていった。
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一つ。彼女は賢い。
噂を聞いていてもそうだし、実際に話してみると、より一層そう思えた。
小学生にしては賢い、なんてレベルではない。大人として利用しても問題ない、そう思えるほど彼女は賢いのだ。
それも、知識がある、といった賢さではない。実践的な賢さを彼女は持っていた。少々頭が硬いところはあったが、それを鑑みても十分仕事を任せられる、そうカルトラは思っていた。
しかし、ただ賢いだけでは、カルトラは動こうとは思っていなかった。子どもを酷使したところで、ほとんどが壊れてしまうことを彼は知っていたからだ。それに耐えうることができるのは、賢くて、ずる賢くて、それでいて強い子どもだけ。
聞けば、ステラは学園の体育でもあまり動こうとしないらしい。以前会った時とは勝手が違うとは思ったが、その話自体に嘘偽りはなかったので、そういうものだと考えていた。
だから、カルトラは彼女を使おうとは考えていなかったのだが……
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状況が変わったのは、彼女に関する二つ目の噂を聞いた時だった。
「あの子が机を使って人の頭上を飛んだ? ……え、何それ、めっちゃ野蛮じゃん」
初めてその噂を聞いた時、カルトラは思わず笑ってしまった。何があったらそんなことになるのか、さっぱり想像がつかなかった。不良か何かにでも目覚めたのだろうか。
その一方で、カルトラの頭には一つの考えが浮かんだ。もしその噂が本当ならば、彼女は結構動けることになる、と。
しかし、その噂の裏を取るのは意外にも難儀した。学園に聞いてもそれらしい返答がなかったのだ。最終的に、ステラの担任と町外れのバーで席を一緒にすることで、その噂をほとんど確信に変えることができた。
さらに、おまけのように多くの話を聞くことができた。
男児に混じって球技で遊ぶステラの噂。体育で一番を余裕で取るステラの噂。学園を走り回るステラの噂。
他にも、彼女が急に動き出した話を聞いて、カルトラの中での彼女の評価は一変した。
「これは使えるかもしれない」
そして可能性を確信に変えたのは、ある事件に彼女が関与している可能性を知った時だった。
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