第72.5話 幕間の間 休憩中
お読みいただきありがとうございます。
幕間です。本編に入れるには冗長だったので番外編になりました。
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魔法の練習もひと段落したので少しの休憩を挟むことにした。
本日は、隣の家の執事に私が魔法を使えることがバレるという大惨事(正確にはバレていたことを告知されていたのだが)から始まり、すこーし逼迫感のあるお話をして、それからノルンも交えた会話が始まったかと思えばいきなり魔法の先生を任されて(正確には押し付けられて)、そして今。
すごい疲れた。まだ夕方にもなっていないのが信じられない。
……ちなみにこのパイは、私たちが必死にノルンに魔法を教えている間にカルトラが買い物していたお土産である。いやほんとマジで執事としての仕事しろってな。こちとら火を使った魔法の特訓してるんだぞ。危ないだろうが。まあその特訓方法を始めたのも私なのですが。
「まったくもう、仮に私が制御をミスってノルン様に大怪我をさせてしまったらどうしますのよ。私責任取りませんわよ」
「いやそれは取れよ」
「とるわけないでしょう? 子ども相手に何言っているのかしら?」
「ふーん、まあいいや。最悪ステラちゃんは魔法で治療もできるんだから問題ないよね」
「……あなたの前で治癒魔法を使った覚えはないのですが?」
「あ、そうだったね。じゃあ今のは忘れてね」
「もしかして交渉がお下手?」
うーん、私が治癒魔法を使ったのなんて生涯に何度かしかないし、それも人にバレないようにしていたのに、どうしてばれているのだろうか。大変気になるが、ノルンがいる前で話す内容でもなかったので、その話はまた今度に持ち越すことにした。
というわけで、その話は他所において、ほっと一息ティータイム。
「ところで、ノルン様が順調に魔法に慣れていきますので驚きましたわ。普通、初めての人はこんな上手くいきませんもの。何か専門的な本でも読まれましたの?」
「うーん、専門的な本は読んだことないかな。でも魔法を使う本なら読んだことがあるよ」
「あら、興味深いですわね。どんな本ですの?」
「ええっと、それは……」
興味本位で尋ねてみるも、ノルンは黙ってしまった。少し下を向いて、なんだか恥ずかしそうだ。あまり公に出したくない本なのだろうか
「もしかして、禁書?」
「きんしょ?」
「……すごく早く忘れてくださいませ」
思わず口にしてしまったことを深く後悔し、私は思わず顔を赤らめる。
いけないいけない。私は今、女子小学生なんだぞ。そして将来はお嬢様。安全で健全な人生を歩むべき私がノルンも知らないような『禁書』なんて言っててどうしますのよ。注意せねばなりませんわね、まったくもう。
「でも別に問題ない本なのでしたら教えてくださいましても問題ありませんわよね」
「えー、言わないとダメー?」
「もちろん。何せ私は先生よ。大先生なのよ」
私は胸を張る。胸を張ると、俯いているノルンより大きく見えるので俯瞰的に見たときに少し見栄えが良い。一人勝手に満足しつつ。
「うーん、じゃあいう……えっとね、どういう話かというと」
ついにノルンは観念し、少しモジモジしながら本の内容を話し出した。
ふむふむ、小説なのか。内容はというと、主人公の少女の家の隣に魔法が使える男の子が引っ越してきて、そこから男の子の魔法に女の子が助けられたり助けたり…………
「あぁ、それ『マジック・キャサリン』じゃありませんの」
「うぅ、やっぱり知ってた……」
どうやら図星だったようである。ノルンは私の反応を見てさらに顔を俯ける。
しかし、そのタイトルと知ってノルンの反応にも納得できた。なんてったってこの作品は――
「その作品って少女向けですわよね」
「うぅー」
最近女の子の中でもっぱら話題の少女向け作品だからだ。ノルン様はそれを恥ずかしがっているのだろう。
「そんな恥ずかしがることはありませんわよ。私としてもあれはいい作品でしたもの」
「ステラちゃんは女の子だからねぇ……」
「うーん、まあ確かに」
つい最近アルカが仕事中にこっそり読んでいるのを目撃して、以降私も借りて読んだのだが、なかなかいい作品だった。具体的には、魔法の描写がなかなかリアルだという点においていい作品だった。……あ、神様そんな冷たい目で見ないでください、こんな歪んだ読み方しているのは私だけなのは重々承知ですので。知っていますので……!
なお、内容については甘々の胸キュンで私にはまだ早かったです。……だから神様、そんな可哀想な目で私を見ないで? これから学ぶのよ、成長期はこれからなのよ私は!!
しかし、こんなことでいちいち恥ずかしがるノルン様には少し可愛らしらを覚えてしまう。なるほど、これがあの時男の子が女の子に抱えていた気持ちか。……そっちが分かってどうする!?
思わず首を振って気持ちを入れ替える。性別はもうとっくの昔に入れ替わっているので、気持ちを切り替えるだけですわ。
「ま、そんな気にすることはありませんわよ、ノルン様。あなたの趣味嗜好なんて私これっぽっちも興味ありませんわ」
「それならいいのかなぁ?」
「でも、せっかくマジキャサを読んでいるのでしたら、そのお話をしませんこと?」
「あ、いいね。どのキャラが好きとかかな?」
「そうそう、そんなお話ですわ。そうねぇ、私の好きなキャラは……」
それからしばらく私たちはマジキャサトークで盛り上がった。
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