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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第72−1話 火をつけましょう手の上に

お読みいただきありがとうございます。


以前とは話数が変わっておりますがお気になさらず。

「あわわわ。何!?」


 私につられ、慌ててノルンは立ち上がる。


 ノルンの手を掴んだまま、その姿を眺める。どうやら彼は私とほとんど同じ身長らしい。まあ小学生の男ならこんなものだろうか。


「まだまだあなた、小さいのね」

「これから大きくなるから!」

「安心なさい。きっと私の分まで大きくなるわ」

「私の分までって――」「忘れなさい」


 しまった。思わず私の願望が口に出てしまった。こんなところで転生したのがバレてしまうわけにはいかない。


 ただまあ、一つ言えるのならば……ノルンよ、頼むから君は大きくなってくれ。私はとっても期待しているぞ。


「ところで、急に僕を引っ張って、何かするの?」

「あら失礼、確かに何もいってませんでしたわね」


 説明もなく引っ張られたのだから困惑するのも無理はない。私はノルンの手を掴んだまま説明することにした。


「カルトラがいうとおり、私は魔法が使えるのよ」

「うん、それは知ってる」

「というわけで、私の魔法で火をつけますわ」

「うん。どこに?」

「あなたの手のひら」

「うん。手のひら……ええ!?」

「では早速……」「うわぁ!!?!」


 ふはははは。ノルンは驚いて離れようとするがもう遅い。私はすでにあなたの手をしっかり握っているのだ!


「うー、離せー!」

「男なら力ずくで離れてみなさいな!」

「うー! なんで離れないのー!」

「それはあなたが弱いだけですわ!」


 よし、私はノルンより握力があるらしい。そして、ノルンに私を持ち上げたりするほどの力はない。

 つまり、今のノルンは私から決して逃れられないわけだな。


 私はノルンの手の甲の部分を手首ごとがっしり掴み、ノルンの手が上になるようにしつつ、それぞれの手のひらを上に向けた。


「観念なさいな」

「うぅ、逃げられなかった」

「では早速!」


 ちゃっかり着火っと。


「ひぃぃ……」

「せっかくなので降臨祭らしく。『蝋台に灯る祈りの聖火(ホーリーキャンドル)』」


 ノルンの手のひらの上にほんのりと火が灯る。


「ぁわぁぁ……あれ?」


 ノルンは、自分の手のひらと火に目を向けて困惑の表情を浮かべていた。


「火があるのに、熱くない」

「あなたの手についているわけではありませんわ。ただ、ある程度感覚的に分かりやすい場所に火がある方がいいでしょう?」

「よくわからないけど、なんかすごい!」

「あなたも練習すればすぐできますわ」

「今日、これするの!?」

「今日は火をつける練習自体はしませんわ」

「そっか…… しないんだね」


 それを聞いたノルンは、口には出さなかったものの、目にみえるように落胆していた。

 やはり自分も魔法を使ってみたかったのだろう。ごめん、それはまた今度。


「でも火は使いますわよ。特にこの火をね」

「どうやって?」

「ええ、今日はこの火の大きさ、形、色を、魔法で変える練習をしますわ」

「……どうやって?」

「それはさっきも言いましたでしょう? あなたの思いを伝えるのよ」


 私は、ノルンがする練習について事細かに説明した。


 今日のトレーニングは、魔法を出すための練習ではあるが、魔法そのものではない。魔法を出すためのプロセスのうちの一部、主に魔法の『想像』と魔素への『伝達』に関する練習だ。

 ノルンがこのトレーニングですることは主に二つ。火の姿を想像すること。そして、その想像を火に伝える想像をすること。

 するとびっくり、魔法によって思い描いたような火に変化するのだ。


 どうして、想像するだけで火が出るのか。その答えは簡単、そこに私がいるからである。


 正確にいうと、魔法を出すにあたってノルンがした行動以外、主に魔素の操作を私が気合いで補完しているのだ。

 魔素をノルンに持っていき、ノルンの思いを魔素にのせるわけなので中々難しく、そう簡単にできるものではない。たまたまメイドのアルカでもて遊ん……練習しておいてよかった。


「魔素については意識しなくてもいいですわよ。まずは火を想像するところから始めてみましょう。そうね……では、簡単なところから。準備はいいかしら?」

「うん、準備できた」


 ノルンは、グッと体に力をこめてそう言った。そんなに気張らなくてもいいのにね。まあ、そう言っても余計に緊張するだけなので、今はこのままで。


「それではまず、この火を大きくしてみましょう。想像して下さいませ」

「うん、大きく、大きく」


 魔素がノルンの感情を受けてほんの少しずつ流れていく。微量だが、ノルンが真面目にやる限り、その思いは確実に届く。


 しばらくして、目にみえるほどに日は変化していた。


「おお、大きく、なった!」


 火がなければ今にも飛び回るテンションでノルンが喜ぶ。ほんの少しだけれど、自分の手で変化させられたのだから、これほど嬉しいことはないだろう。

 まあ、だいぶ私も補助したけれど、野暮な話には蓋をすることにしまして。


「上手ですわよ。でも考えるのをやめると、すぐに火は元の大きさに戻ってしまいますのでご注意あそばせ。ほら、今だって」

「あ、ほんとだ、しゅん」

「落ち込まないでくださいませ。初めのうちはそんなものですわ」


 今は意識的に考えているが、慣れてくると無意識で思考を展開することで魔法を制御することができるようになる。どうせ慣れるので、そんなに気にすることはない。


「ではノルン様。次に逆に今よりもっと火を小さくしてみましょう。できそうですか?」

「うん、やってみる。小さく、小さく……」


 心の声を口から連呼しつつ、ノルンは火に集中する。その思いはきちんと伝わったようだ。


「……小さくなった!」

「いい感じですわ。でもまだまだ、これからが本番。今度はそうね、――」


 こうしてノルンの特訓が始まった。


――――――――




お読みいただきありがとうございます。


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