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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第71−2話 早速やってみよう、私と一緒にね

お読みいただきありがとうございます。


以前とは話数が変わっておりますがお気になさらず。

「教科書、持ってきた」

「何度もご苦労様。ジュースはいかが」

「ステラちゃんが用意したわけではないよね……でもいただきます」

「お気になさらず」「だからステ――」


 私はノルンから教科書を受け取った。そして教科書を何ページか読み進め、そして予想通りの内容だったので再び閉じた。


 これなら、うん。そうだな。


「教科書、使えそう?」

「せっかくのご厚意を無下にして申し訳ありません。ですが本日は使いませんわ」


 今日は教科書を使う予定はない。先程まで教科書が手元になかったからではなく、今日は教科書通りのことをするつもりがなかったからだ。


「じゃあ今日は何するの?」

「今日は魔法を体験していただきます」

「……?」

「まぁ、そう言われてもよく分かりませんわよね。まずは魔法を出す方法に関する補足説明からいたしますわね。紙を拝借しまして――」


 説明のために紙と鉛筆を預かり、その紙に簡単に描きつつ説明した。


「魔法を一言で表すとこの絵の通り、思考して、それを魔素を使って具現化する、ということでしたわよね。ここまでは覚えていらっしゃる?」

「うん、それはなんとなく」

「この魔法を放つ行為なのですが……実は魔法というのは、このように単純に『考える、そして出す』だけではありませんのよ」

「違うの?」

「意識的にはそう。でも無意識領域に足を広げますと、そのプロセスはいくつかの工程を含んでおりますの」

「無意識?」

「そう、無意識。第一に『想像する』という過程。火を出したければ、火を想像する。大きな火を出したければ、大きな火を想像する」

「なるほど、想像する……想像しただけで火が出ちゃうの!?」

「そんなことがあったら今頃世界は混沌の海ですわよ」

「だよねぇ」


 実は過去に、想像するだけで魔法が出てしまうという超大災害があったのだが、それはまた別のお話で。……あれは本当に死ぬかと思った。いや、その数年後に本当に死ぬんだけど。


「第二に『伝える』という工程。世界に溢れる魔素、もしくは自身が蓄える魔素にその思いを伝える」

「……どうやって?」

「まあ、そういうイメージを持てってことですわ。天才でもない限り鍛錬なしに魔素を認知するのは不可能なので」


 私は、いや正確にはグランは、魔素を認知する技術を身につけるのに三年以上かかった。ちなみに後輩のネールは半月くらいで身につけたらしい。ちょっと悔しい。


「第三に『操る』という工程。魔素の位置、速さ、その形を操りますの。そして、魔素が火になり水になる。操ると言っても、当然魔素は見えませんので、これも最初はイメージですわ」

「なるほど、うん。なるほど……?」

「見えないものに思いを伝えるのはまだしも、見えないものを操るとなると当然難しいですわよね。でも案外単純なことですの」


 パントマイムのように、見えない球を空中に作り、ノルンに投げるふりをした。ノルンは私の趣旨を理解したのか、その見えない球を受け取る仕草をした。さすがは子ども、イメージ力はしっかりあるらしい。


「つまり今みたいなことですわ。見えないものを操るのは、やっぱりイメージすることが大切というわけでして」

「あはは、分かりやすいね。そいっ」


 そういってノルンは先ほどの球を私に投げ返してきた。


「あら、お返却ですのね。キャッチしまして」


 私も受け取り、机の下に置くそぶりをしてから話を本題に戻す。


「さて、ボールは置いておくとして、話を戻しますわね。こんな感じに魔法という行為は分けられるのですが、特にこの第二と第三が通常は無意識でなされるところですの。『いい感じに形の魔法出ろ』って考えている間には、これらの一連のプロセスが隠れているというわけですの」

「無意識のうちに、色々するんだね」

「そう、普通は無意識。でもあなたには、後々魔法を練習する際にはこれを意識的にしてほしいのよ」

「なんだか難しそう?」

「確かに初めはちょっと手こずりますかも。でもね、これを意識できたほうが上達しますわ」


 魔法を訓練するとは、より強い魔法を放てるようになったり、より繊細に魔法をコントロールすることである。しかし、漠然と魔法を放つだけでは、意識するべき所がどこか分からない。


 先ほどのプロセスを意識するメリットは、訓練の際に足りない部分を明確化できることにある。どの部分が自分に足りていないか、どの部分をさらに意識すべきかを明確化することは効率の良い自身の成長につながる。せっかく若い頃から魔法を練習するのだから、小手先の技術だけでなく、原理的なところから学び始めるほうが後々のためになる。


 私はノルンにそのことを説明する。


「分かったような分からないような?」

「今日はそんなところで十分ですわ」


 子どもにも分かるように説明を試みたが、ノルンの反応にあまり手応えはなかった。しかし、このあたりの理解は今日は不要なので、わざわざ詳しく説明する必要はない。


「さて、それはさておき。本日することは単純ですわ」

「ゴクリ……」

「本日は、第一の工程とちょっとの第二の工程、つまり魔法を『想像』して、魔素に『伝える』という工程をして魔法を体験していただきますわ」

「『想像』して『伝える』だね。なるほどなるほど……」


 ノルンは絵を見ながら私の説明を思い出して、それから少し考えた。そして困ったようにこちらを見つめてきた。


「ステラちゃん、それ、おかしくない?」

「悪くない直感ね。さて、それはどうしてかしら?」

「それだけじゃ魔法はできないよ」

「そう、勿論その通り」


 魔法における一連のプロセスが欠如しているのだ。少し考えれば魔法に至らないことがわかる。


「でも大丈夫」


 どうしてか。それは単純な理由だ。


「だって私がいますもの」


 そういって私は立ち上がった。


「こっちにきてくださいませ」


 そして私はノルンの手を取った。




お読みいただきありがとうございます。


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