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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第67話 安心安全なんてない、この世界はそういうもの

お読みいただきありがとうございます。


以前とは話数が変わっておりますがお気になさらず。

「私は合格かしら?」


 カルトラにそう尋ねた。

 ほら、尋問ではありませんでしょ? というのはさておき。私の予想が正しいのであれば、カルトラは私を試していたのだ。


「…………うん、合格」


 彼がこう発言した、この瞬間まで。



 一体何を?

 怪しい人間に対してどのように話すか、どのように話さないか。

 情報を得るためにどうやって動くのか、動けないのか。


 というのが一つ。そしてもう一つ、カルトラが私を試していた項目がある。


 それはきっと、あの危機的状況下で私がどう動くか、だろう。


 明らかに自分(ステラ)にとって不都合な状況でどう行動するか、それを問われていたのだ。


「安心したよ、ステラちゃんが交渉なんて言い出さなくて」

「あら、あくまで私は交渉をしようとしましたが?」

「首に跡までつけておいてよく言うよ」


 交渉なんて互いに対等な人間が行うもので、そうでないものはただの搾取か、あるいは温情に過ぎない。そして温情がなかったあの場であるのは搾取のみ。それはいけない。


 ならばあの場ですべきことは、逃げるか、自分と同じ土俵に引き摺り落とすかしかない。もちろん逃げても無駄なので、私はあの場では刃を向けるしかなかったわけだ。


 図らずも私は最適な動きができていたわけである。


「それで、私はあなたを信用していいのかしら?」

「いいよ……とでもいうと思った? いいわけないだろ、どう考えても」

「その言葉を聞いて安心しましたわ。自らを信用していいという人間ほど信用できないもの」

「ただ僕が君のことを評価しているのは確かだよ。少なくとも、今後しばらく君のことは誰にも話さない。なんたって、君という駒を手放すのは惜しいから」

「駒ねぇ。駒と言われる時点で気に食わないですが、そうは言いましても駒の種類によっても事情が異なりますからね。私はチェスで言うとどの駒ですの?」

「そうだねぇ、……サクリファイスだね」

捨て駒(サクリファイス)!?」


 駒の名前とかじゃなくて、作戦で使う捨て駒(サクリファイズ)ですの!? せめてポーンにしてくださいませ!?


「嘘だよ流石に。ルークくらいは評価してる」

「あら、随分高く評価してくれてるのね」

「さほど罪悪感もなく敵地にとりあえず送れるからね」

「やっぱ捨て駒じゃありませんこと!?」

「ところでステラちゃんってチェスできる?」

「ちょっとは嗜みますわ。お嬢様ですもの」

「いいね、また今度やろうか」

「え、嫌ですが」

「傷つくなぁ」


 私が知る限り、カルトラのような性格の人間はチェスとかすごく強いのだ。そしてやっていて腹が立つプレーをするのだ。だからカルトラとはチェスなんてしたくなかった。


「ま、いいや」


 傷ついたふりをやめて、カルトラは本題に戻った。


「君に君のことを打ち明けた理由はいくつかある」

「確かにそれは気になりますわね」

「ちなみに心当たりは?」

「あればこんなとこ来ておりませんわ」

「そりゃごもっとも」


 一安心すると少しお腹に余裕が生まれたので、栄養補給ついでにお菓子を食べつつカルトラの話を聞くことにした。


「まず、打ち明けた理由その一。これは一言でいうと警告だ。対策もなしにそう易々と魔法を使うべきじゃない」

「そりゃもちろん分かっておりますわよ。ですので外では極力使わないように――」

「外だけじゃなくて家の中でもに決まってんだろ」

「嘘でしょ!?」

「いやいや、そんな困る? 家に敵がいるわけでもないのに」


 いやいや、めちゃくちゃ困る! 魔法練習は女の子遊びに飽き飽きした私の家の中での楽しみの一つなのに!


「私から趣味を奪わないでいただけるかしら?」

「……趣味?」

「趣味で悪いかしら?」

「いや、悪いというか頭が悪いというか」


 酷い言われようである。趣味魔法のやつ、私何人も知ってるもん! ……いや、よく考えたらまともな奴がいないな。


「ともかく、家の中の私のことを規制する必要はないでしょう? それこそ、あなたみたいにいやらしく人の家を見る人なんていませんもの」


 ただし、家の行動まで規制されるのは話が違うと思い、反論した。それこそ、こいつみたいな悪い人間でもいない限り、問題はないはずだ。


「はぁ。ステラちゃん、あのね、一つ大事な話をするよ」

「ええ聞きましょう、どんな言い訳かしら?」


 こいつは今更弁解でも始めるつもりだろうか。弁解したところで、人の部屋を毎日観察する変態だということは変わらないぞ、まったく。

 さて、見苦しい様でも拝め――


「この世界は、君が思っているほど良い世界じゃない」


 その言葉を聞いて、私は我に返った。

 その言葉は私にとって予想外で、グラン(わたし)にとってとても重いものだった。




 昔に比べて世界は変わったと思っていた。


 工業製品が生まれ、経済のシステムは変わった。街を彷徨くごろつきや飯を求める貧困者、そして勇者や冒険者も減った。

 電気が生まれ、人間は夜を克服した。統一された軍隊によって街の安全は保証された。


 かつてグラン(わたし)が幾度となく救った世界は、きっと良いものになった。そう信じていた。


 それはきっと幻想だったのだろう。ただ、見えなくなっただけ。


 もしかしたらお嬢様になって見える世界が小さくなっただけで、本当は何も変わっていないのかもしれない。



 それはなんというか、どうしようもなく悔しかった。


 私がお菓子を取る手を止めると、すぐに私のお腹がぐぅと鳴った。

 きっとお腹を満たすほどたくさんお菓子を食べたけど、そこに必要な栄養はなかったからだろう。


 きっと、グラン(わたし)の行動に意味はなかったんだろう。


「……お菓子、もっといる?」

「いいえ、もう結構。もう十分いただきましたもの」

「そっか。じゃあ話を続けようか」


 カルトラは、当然ながら先ほどまでと変わらない様子で話を続けた。


お読みいただきありがとうございます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。

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