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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第64話 原石

お読みいただきありがとうございます。


以前とは話数が変わっておりますがお気になさらず。

 ニヤリと笑った男を前に私は頭を回す。


 カルトラはこう言ったのだ。文字も読めない年齢で、一人で『魔術』を駆使する子どもがいた話と。


 これは間違いなく私のことだ。オレンジジュースをあえて言ったのだから間違いがない。

 いつからバレていた? 文字も読めないような年齢と男は言ったが、これは多分はぐらかしだ。正確にはわからないから、言葉を濁している。


 しかし、そんなことは本題ではない。本題で問題なのはその先。


 魔法、ひいては魔術が使えること、バレた?


「ところでステラちゃん、どうしたんだい? そんな動揺して」

「あんまりにもあなたの話が興味深くて、ついついね」

「そんなぁありがとう」「こいつっ!」


 何をとぼけた表情をしてやがりますの!


 まてさて、冷静になれー私。まずは原因だ。どうして。


 魔法を使うときにはカーテンを閉めていたし、目視であることはない。


 だとすれば探知系魔術? 可能性としてはあり得る。しかしそれはかなり高度な魔術だ。

 基本的に、見えないところを操る魔法はかなり難しい。多くの人間にとって、この魔術はたくさんの訓練の末に習得する技術であるのだ。


 逆に言えば、この技術を持っているのだとしたら、それは高確率で訓練をする環境にあったということを意味する。探知系魔術を? 一般兵士すら訓練しないような魔術を?


 つまり、この男がもし探知系魔術を使ったのだとすれば、この男は訓練する場所、すなわち何らかの機関にいた人間だという可能性が高い。これは非常にまずい。


「バレるのがそんなにまずいのかい?」

「ええ、特にあなたがお喋りならね」

「ふむ、なるほどねー」

「何が『なるほどー』なんですか!」

「いやはや、ステラちゃんは危機感が足りないなーと思って」

「ほんとにもう! 分かってますわよ!」


 分かっている。この世界において、魔法を本来習得しないはずの家庭で、まだ魔法を学んでもしない子どもが魔法を使えるという状況がどれだけまずいかくらい。


 しかも、よりにもよって、何らかの機関に属するであろう人間にバレるのが、どれほどまずいかなんて。


――――――――


 原石。


 生まれながらにして魔法の才に恵まれた者。


 それらの者を、人は原石と呼ぶ。


 もっとも、昔は先食者(ナレッジイーター)であったり選ばれた者(ファインダー)であったり、他にも色々呼び名があったんだが、今の一般的な呼び名は原石らしい。直接聞いたことがあるかどうかは忘れたが、図書館にあった本で読んだのでおそらく間違いない。


 さて、私が知る限りの現代における魔法は、一部の選ばれた貴族たちのみが専属教育の末に扱える専門的な技術、という立ち位置にある。実際はそんなことはないだとか、貴族に対する諸々の文句はさておきつつ。


 そんな環境において、たとえば下町の子どもが突如として魔法を使えるとして、何を感じるだろうか。


 魔法という貴族たらん技術を持たざるはずの人間が持つことへの怒りだろうか。

 もしくは、社会への力を持たない貧乏人に社会、物理を超過した力が与えられることへの恐怖かもしれない。

 はたまた、魔法についてもっと知れることへの興味なのかもしれない。


 そして、それらの感情がその子どもにぶつけられた結果がどうなるか。


 その一例を私は知っている。少なくとも、その身勝手な発想に傷つけられた人間を一人知っている。


 生まれながらに電気魔法を使い、それのせいで貴族に高く売られた、かつての後輩、彼女の名前はネール。今でこそ変態で魔法が使える一般人だが、彼女の生い立ちに関しては少し過酷でかなり複雑だ。


 彼女は子供の頃、魔法の解明のため、それにより原石がこれ以上自然発生しないために、貴族が高く彼女をかった(・・・)。そしてその日から、彼女は過酷な実験に付き合わされた、らしい。家族はその金額を前に喜んで彼女を売ったのだとか。彼女の痛みは私には到底計り知れないので、私は彼女の生い立ちを曖昧に表現するしかないのだが、それでも耐え難い辛さであることは見てとれた。


 今は、魔法研究が進んだことや貴族社会の瓦解もあって、彼女のようにひどい待遇を受けることはないだろう。加えて私だって魔法は与えられないと言われる家が出身だと言えども、言わずと知れた貴族、の子どもである。非人道的な扱いを受けることはまず考えにくい。


 それでも、ここは金と権力があれば黒が白になる貴族社会だ。何があってもおかしくない。

 だから原石だと思われるような行動は慎むべきだと考えて、私は行動していた。


 行動していたにも関わらず、バレたのだが――


――――――――


「ところで君はどの程度の魔術が扱えるんだい?」

「……」

「へぇー、ダンマリか。ま、いいや。君が話してくれるまで僕も勝手に話すとするよ」


 何も言えずに言葉を詰まらせていた。一方でカルトラは、それを見るのが楽しいのか、一方的に話を進めていた。あまり状況は良くないな、どうする。


 まず、私は言葉を慎重に選ばなければいけない。言葉は情報で、話すことは相手に情報を渡してしまうことだから。


 ……そうか、いや、それもそうだ。


 言葉が情報なのだから、今は相手の情報を根こそぎ奪うチャンスなのだ。自分の守備に浮かれて、ついつい忘れてしまっていた。


 言葉は情報だ。だから、ペラペラと話す言葉に耳を傾ければ、相手の情報が得られるはず。


 ならば相手にこのまま話させろ。男の持つ情報を吐き出させろ。


 何を知り、何を知らず、何を欲しているのか。言葉から情報を盗み出すんだ。




 そう決断し、私は黙って男の言葉に耳を傾けた。


お読みいただきありがとうございます。


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