第63−2話 本日の話題は誰のこと
お読みいただきありがとうございます。
以前とは話数が変わっておりますがお気になさらず。
「はいどうぞ」「ありがとう」
オレンジジュースを頂いて、私はさっそくケーキを食べることにした。
「そういえば、昔はあなた、私の家にたくさんケーキを届けてくださったのに、今は持ってきてくれないのね」
「まあ、その必要がなくなったからね」
「必要?」
「まあ後ほど、いつものお話コーナーにて」
「あんまりいらないですわねぇ」
昔からこの男は、妙に情報通というか、ミーハーなのだ。だから、ケーキと一緒にちょっとした話をたくさん持ってきていた。
別に楽しみにしたことは一度もないが、この男のおかげで、情報を得る手段がない幼児の時も、なんとなく情勢を理解できたのも事実なので、そうそう馬鹿にできないのが悔しいものだ。
「安心しなよ、そして期待しなよ。今日は君だけのための特別な話があるんだからさ」
「ちょっと気になるわね。お話くださいな?」
「君が食べてからごゆっくり」
「皆様もったいぶるのが好きなのね、もう」
やはりカルトラの考えていることはよくわからない。しかし、どうも食べないと話してくれなさそうなので、私は味わって食べようとした。
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今思えば、この男の判断はまったく間違っていなかったと思う。その話を聞いた直後にケーキが喉を通るとは、とても思えなかったから。
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私はふと疑問に思った。私向けの話とは一体なんだろうか。
勇者に関する最新情報か? んなわけねぇな。順当に行くならば、女の子のおもちゃらへんか? おあいにくさま、私向けではありませんわ。ならば、お勉強の話? それこそ私向けがどの年齢の勉強かは知りたいですけれどね。
そんなことを考えているうちに、ケーキがなくなってしまった。味わわずに食べるなんて、もったいないことをしてしまった。大反省。
「ではお話を聞かせてくださいな?」
「うーん、どこから話そうか……そうだな、物珍しい子どもがいたって話から始めようか」
「まるで物語の冒頭ですわね」
「実話ではあるんだけどね。でも、確かにこの話は物語みたいだから、あながち間違ってないかも。もっとも、これが本当に実話かどうかはこれからわかる話なのだけど」
「どういうことかしら?」
「そうだね、まあ話そうか……」
これから何がわかるというのだろうか。私はワクワクしながらカルトラの言葉の続きをまった。
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今日は色々と違和感があったのだ。そして、やはり違和感にはきちんと理由があったのだ。
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あまりにも焦らすので、私は少し冷静になった。冷静になると、今日ここまでの違和感が沸々と思い返される。
今日、私はここに一人できた。その理由は、アルカ含め、全メイドに用事があったからだと聞いている。
そんなことってあるか? 多少慌ただしい降臨祭といっても、そこまでブッキングすることはあるのか? もしくは、誰かが意図的にこの状況を作った?
違和感はまだある。私はここに来て、玄関で挨拶をした。家にはカルトラのみがいて、ケーキを餌に部屋まで案内された。暖かい部屋に、それからオレンジジュースと共に。
やはり……季節外れのオレンジジュースまで完備しているなんて準備が良すぎるのだ。まるで、私が一人で来るのを知っていたかのようで。
もしかして、この状況はすべてカルトラが作ったものではないのか。
そう考えると、それを裏付けるための言葉はいくつかある。
彼は私が玄関にいた時にこういったのだ。「待っていたよ」と。それに、「ステラのために準備した話」があるとも言っていた。
しかしだ。もしそうだとしたらなんのため? きっと、ケーキだけではない。むしろ、先ほどの口調から察するに、ケーキはあくまで「手段」でしかないのだ。
だとすれば、今からカルトラが語る話が本題か。すなわち、これからの話はきっと、私のために準備された、私以外に聞かれてはならない、私が慄くような話。
一つだけ心当たりがあった。当然ながら懸念すべきことはあったのだ。
しかし、それはあり得ない。常人が気づく程度の証拠は隠蔽した。だから、そんなことがあるはずはない。
そう、この男がそういう能力を有していない限り――
考えれば考えるほど、ワクワクが緊張に変わっていく。次第に顔も険しくなっていく。思わずオレンジジュースを飲む手が止まってしまう。
「物珍しい子どもって言っても、これは数年前の話からしたほうがいいのかな? その子どもが生まれて二年か三年かした時の話から」
「それはどこの、『お嬢様』のお話かしら?」
私はあえて自分から切り出した。
念の為、確認の為、最悪の可能性を除去して不安を取り除く為に。
きっと違うはずだと信じて。
「お嬢様? なんの話だい、この子どもはお嬢様ではないよ?」
「そう……なのね」
ふう、一安心。さすがに私の考えすぎだったよう――
「お嬢様は、オレンジジュースを選ばない」
「!?」
思わず手の力が抜け、ジュースが床にこぼれた。私の心すら読まれてしまっていた。これは……マズイ。
「物珍しい子ども……文字も読めない年齢で、一人で、『魔法』、いや『魔術』を駆使する子どもがいた話をしようか、ねえ、ステラちゃん?」
――男はそう言ってニヤリと笑った。
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