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不穏な影

2話同時投稿 2話目です。




学年の違う楊花とは一旦別れ、二年の下駄箱で靴に履き替える──すると、聞き覚えある声に呼び掛けられた。


「後輩くん、今帰り?」


声のする方を向くと、昼食を共に食べた高宮生徒会長と弥支路さんが立っていた。目が合うと二人は手を振ってきたので、こっちも同じように手を振り返した。


「お疲れ様です、坂本さん」


「生徒会長、弥支路さん、お疲れ様です」


生徒会はサボりだろうか?

いや、生徒会長だけならそれも有り得た。でも弥支路さんが一緒だから今日は単に休みなのだろう。


彼女は真面目だからな………いや生徒会長も真面目だったわ、失敬。

でもあの人学校にトランプ持ち込んでるしなぁ~……真面目枠に入れて良いのか微妙なんだよ。


俺が会長の評価に頭を悩ませていると、その生徒会長が吃りながらある事を提案してきた。



「後輩くん、良かったら一緒に、か、帰らない?」


「ええぇぇ……?」


「なんで死ぬほど嫌そうなの?」


「どうせ姉ちゃんの愚痴聞かされるんでしょ?」


「そ、そうじゃなくって……あの──」


──高宮椎奈は返事に困り果てる。

雄治の姉とは関係なく、ただ一緒に帰りたかっただけなのだが、性格上、自分の気持ちを上手く伝える事ができないのである。


そうこうしている内に、靴に履き終えた楊花が三人の前に姿を現した。



「坂本先輩、早く行きましょう」


「え?……後輩くん、この子は誰?」


「あ、中川さんお疲れ様です」


「……お疲れ様です」


二人は知り合いか?……と思ったけど、楊花と弥支路さんは同級生だったわ。

しっかり者具合が対照的なので本気で忘れてたし。



「その……坂本先輩と私は付き合ってるんです。だから先輩にはあまり絡まないで下さい」


「……え?……付き合ってるの……?」


突然カミングアウトされた雄治は驚きを隠せなかった。何故それをこの場で口にしたのか流石に理解出来ない。



「……楊花、なんで言っちゃうの?」


「いえ、徹底した方が良いと思いまして」


「碓井と一緒の時は言わなかっただろ?」


「……だって、あの人……多分……先輩が……と、とにかく、生徒会長さんは別っす……!」


「別って……楊花、生徒会長には──」


生徒会長は事情を知ってるので『演技しなくても良いのに』と雄治は言おうとした──


──だがそれを遮るように、楊花は雄治を強引にその場から連れて出してしまう。

突然のことにされるがままとなる雄治だが、流石に何も言わず立ち去るのは失礼だと思い直し、二人から完全に引き離される前に別れの挨拶を口にする。



「生徒会長!!弥支路さん!!さようなら!!」


「……後輩くん……さよう……なら……」


「……さようならです」



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



~高宮生徒会長視点~



──高宮椎奈は去り行く二人の後ろ姿を寂しそうに見詰めた。まさか彼女が出来ていたとは思っておらず、焦りと動揺が隠せない。



「そうか……彼女……居たんだ……そうだよね、幼馴染さんが居なくても後輩くんカッコいいもんね。それにしても振られたばかりなのに……彼女さん出来るの早過ぎるよぉ……」


雄治を好きかどうかは高宮自身も良く分かってない。

ただ、楊花が彼女と名乗ったとき、大きなショックを受けたのは事実なのだ。

高宮は酷く落ち込んでいるが、弥支路は別の意味で驚きを隠せなかったらしい。それについて高宮に語り始めた。



「いや、いやいや高宮先輩!!おかしいですよ!!」


「……え?何が?」


伏せていた顔を上げ、高宮は自分より身長の高い後輩女子を見上げる。

すると次の瞬間、弥支路は信じられない事を口にした。



「だって中川さん同じクラスの町田くんと付き合ってるんですよ!?」


「……え?」


若干失恋に近い感傷に浸っていたが、それも一瞬にして吹き飛んだ。それほどの衝撃である。

高宮は未だに頭の整理は出来ていないのだが、弥支路も余裕がないらしく、止まらずに話し続ける。



「勘違いじゃないです!中川さんが二人で話をしてるのも聞きました!!」


「……え……え?後輩くん、二股されてるって事?」


「多分、そうだと思います……坂本先輩、あんな良い人なのに……高宮先輩の話なんかでも真剣に聞いてくれる優しい人なのに……」


「……ひ、酷い」


ふざけてる……もしそうなら許さない。弥支路ちゃんが言うように、彼は本当に優しくて良い子なんだ……それなのに……


あと弥支路ちゃんも私に対して何気に酷い。



「どうしますか?今すぐ追い掛けて坂本先輩に真実を教えに行きましょうか?」


聞かされた瞬間はもちろんそのつもりだった。

けど、ただでさえ幼馴染に振られて落ち込んでるんだ……それなのに彼女が浮気していると正面から教えれば、彼をもっと傷付ける可能性がある……だから直接言うのは得策じゃないと高宮は考えていた。


それと、高宮はもう一つの可能性を考慮する。



「うぅ~ん……やっぱり確認してからじゃないと。私達が分からないような深い理由があるかも知れないし……一度、坂本ちゃんに相談してみるから、それまで待ってね?」


「わかりました……高宮先輩がそうおっしゃるのなら……でも確かにそうですよね。心配する気持ちが強過ぎて焦っていました……」


「いいえ。弥支路ちゃんが優しいだけだよ」


「……ありがとうございます」


後輩くん……大丈夫だよね?


変なことに巻き込まれたりしてないよね……?




──状況を良く知らない二人は、今すぐ雄治達を追い掛けずに、この場は様子を見る事に決めた。


周囲をしっかり固めてから行動するつもりなのだ。


冷静な判断……しかし、二人は今すぐ動かなかったのを心から後悔する事となる。





まさかの日刊(恋愛)ランキング2位に輝きました!!


別作品で10位までは行きましたが、一桁に入るのは初めての経験なので本当に嬉しいです!!


明日も18:00に投稿します。


また、都合が良ければブックマーク、ポイント評価を頂けると非常に有り難いです……!!


これからも宜しくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >──高宮椎奈は返事に困り果てる。 雄治の姉とは関係なく、ただ一緒に帰りたかっただけなのだが、性格上、自分の気持ちを上手く伝える事ができないのである。 [一言] こーすれば三人称視点…
[一言] フリだし特に問題ないはずなんだけどこの後告白して正式に付き合うとか?そして一瞬で彼氏がいることがばれて…とかですかね?さっさとメールでもなんでも別れておけば良かったのに…って展開だと別れるつ…
[気になる点] 後輩ちゃんの彼氏が二人の馴れ合いを見て、「人の彼女に手を出すんじゃねえ」と言って主人公を殴る。 後輩ちゃんは恐くなって「主人公に脅されて付き合う振りをしただけで私は悪くない」と嘘を付く…
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