姉の見送り
昼から休みになったんで書きました。
予約投稿なしですが宜しくお願いします。
そして日曜日も予定通り書きます。
『最近、なんか冷たいんじゃないの?』
「そんなこと無いって、愛してるよ」
『愛してるだなんて……照れちゃうわ、私っ!』
雄治が愛の言葉を囁くと、それを受け電話の相手は嬉しそうな声を上げた。その相手と雄治は、かれこれ30分近く電話を続けている。
「あ、このあと用事があるから、もう電話を切って良いか?」
『なによ!私と用事どっちが大切なの!?』
「もちろん君だよ」
『やだもぉ〜雄治ってばぁ〜』
「………………なんか付き合うの面倒くさくなって来たし、そろそろ切っても良いです?」
『何よそれっ!?私との関係は遊びだったと言うの!?酷いわ雄治っ!ぴえーんっ!』
「……碓井」
『嫌だって言ってるでしょ!?何度も言わせるなっ!何度も言わせるなっ!何度も言わせるなっ!』
「分かったから何度も言わせるなって何度も言うなっ!ライアー碓井っ!」
『……じゃあ辞めるか、恋人ごっこ』
急に冷めやがって……まぁ良いけど。
「そういや、何で始めたんだっけ?」
『俺がこれから合コンだから、恋人作る方法を話してたらそうなったんだよ』
「だったら俺が女役やるべきじゃね?」
『お前が断ったんだろっ!?』
「そうだったそうだった」
実に他愛もない会話。
最近はいろいろあって碓井と話をする時間が無かったが、こうして全力でふざけられる相手が、今の雄治にとって本当に有難い存在であった。
日頃おちょくっては居ても、碓井とは雄治にとって悪友であり、何処までも心許せる親友なのだ。
『分かった。じゃあまた明日学校でな。また暇な時はこうして電話っすから暇だったら出れよな?』
「おう、じゃあな」
『あっ!ちょっと待て、用事ってまさか女じゃないよな?俺らノーガールフレンド同盟結んだの忘れてないよな?』
「そんな同盟なんて結んだ覚えないから、忘れようがないわな。つーか彼女作る方法聞いといてズルくね?碓井の分際で殺しちゃうよ?校舎の裏に埋めちゃうぞ?」
『俺が個人的に結んだんだよ!ってか怖いこと言うなよっ!──ま、今のお前に女は出来ないと思うし、しばらく同盟は維持出来そうだなっ!』
「ふ…… 一体いつから、待ち合わせの相手が女じゃないと錯覚していた?」
『なん……だと……?』
「昨日知り合った女子小学生だよ」
『──クソッ、羨ま………ん?それヤバくない?』
「まぁ色々あってな。それじゃあ明日学校で」
『ちょっ、待っ──』
結局、30分ほど電話で話をしていた。
お互い特に用事もない暇潰しの電話だ。
電話を切る直前にマウントも取れたし、これからの待ち合わせも気合を入れて望めそうだ。
碓井は変な勘繰りをしてたけど、今回の待ち合わせはそんなロマンティックなモノじゃない。
俺は碓井からの着信を無視して玄関へ向かう。既に身支度は整っている。明日文句を言われると思うが大丈夫だろう、きっと。
そのまま特に何も考えず、ぼっーとしながら靴を履いてると──
「わあっ!」
「うわあぉっ!」
姉ちゃんが背後から驚かせて来やがった。
臭いと言った仕返しだな……腹立つぜ。
「遊びに行くの?」
そして何事も無かったかの様に話し掛けてくるが、なんか凄く良い匂いがする。
昨日の事そこまで気にしてんのか。だとしたら悪いことしちゃったな。
ここは反省の気持ちも込めて、突っ掛からずにちゃんと答えるとしよう。
「うん、そんなところ」
「どこ行く感じ?」
「ん〜、駅前かな?」
「じゃあさ、ジャトレーセでモンブラン買って来てよ。雄治の分もお金出すから二人で食べよう」
「わかった」
「ほい、お金。釣りは貰っときな」
「いや、千円でもお釣り来るのに何で3000円もくれんのよ?」
「遊びに行くんだから多めに持っといた方が良いんじゃない?使わなかったら返せば良いしさ」
「……あ、ありがとう」
「じゃ、モンブラン宜しく〜」
そう言って手を振りながら、優香は部屋へと戻って行く。こうして顔を見せたのは見送りたかっただけで、モンブランなど雄治と話をする為の口実に過ぎない。
加えて、可愛い弟にお小遣いも渡せたし、優香は充分なほど弟成分を堪能する事が出来た。お陰様でもう気分はウキウキである。
「姉ちゃんっ!!」
「ん?どした?」
「……姉ちゃんに相談したい事があるんだ。俺の気持ちが落ち着いたら、その話……真剣に聞いてくれる?」
「……んなもん聞くまでもないし。いつでも好きな時に話していいからそういう事は──それに姉ちゃんは、多分、雄治が何をやらかそうとずっと味方だよ。例えば犯罪を犯しても最後まで何があっても見捨てないよ……ただし、その時はめっちゃ叱ると思うけど」
「………じゃあ……行ってくる……」
「う、うん」
(うわぁ……さすがに引かれたか。相談を聞いて欲しいって言われたのが嬉しくてちょい言い過ぎたかも……反省しなきゃヤバめだね)
──玄関を出た雄治はしばらく動かなかった……というより、動く事が出来なかった。
そのまま数分ほどが経過し、そこでようやく目元を拭い歩き出す。
「──まさか姉ちゃんに泣かされる日が来るとは……俺の姉ちゃんがあの人で本当に良かった」
優香の不安とは裏腹に、今回の一件で弟からの好感度は相当上がったようだ。
活動報告やメッセージにお姉ちゃん推しの方が多かったので、エピソードを差し込みました。




