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家に帰ってから

今日から連載を開始します。


これからは毎週日曜日20:00に投稿します。

宜しくお願いします。


今日は随分遅くなってしまった……少なくとも女子小学生が出歩いて良い時間ではない。

なので今日は解散し、明日に眉浦桃花と改めて会う。


その時に詳しく話をする事にした。

日曜だし、丁度良い。


来週まで待つのは考えなかった。

きっと、少女の気持ち的に一刻の猶予も無いだろう。今のあの子は日に日に心が沈んで行ってる筈だ。

この件だけは半端な気持ちじゃ望まない……あの子の為に……そして俺の為にも。



──家に帰ると姉ちゃんが腕を組みながら出迎えてくれた。少し怒り気味なのは黙って居なくなったのが原因だろう。

相談の為とはいえ申し訳ない事をしてしまった。


……いやでもこの女なんかニンニク臭いぞ?ラーメンと餃子食べて来たな、きっと……腐っ。



「ただいま姉ちゃん」


「おかえり雄治、何か言う事ないかね?」


「ラーメン食べて来た?なんかニンニク臭いけど?」


「え!?ちょ、ちょっと待ってなっ!」


姉ちゃんは洗面所へと向かった。

どうやら歯を磨いてるらしい……いや、此処は怒るところだろ。なんで口内環境整えに行ったんだよ。

まぁ確かに臭かったけど、別に我慢出来ないことも無かったの──


「……おぇ、やっぱ無理だ、臭すぎる」



──五分後──


雄治がソファーで寝転んでると、優香がはあーはあーと自分の息を確認しながら雄治の元にやって来た。

彼女にとってとんでもない誤算だ……まさかそんなに臭いがするとは思ってなかったのである。

また優香としては、他の誰かに言われる分には構わない──だが、雄治に言われるのだけは嫌だった。


この日より、坂本優香はブレスケアを常に携帯する。

またそれが何故なのか、彼女は生涯誰にも明かさなかったという。



「………まだ臭う?」


「……大丈夫。もしかしてニンニクマシマシ激辛豚骨ラーメン食べた?」


「ど、どうして分かったの?」


「そんな匂いがしたから──鼻を突くような刺激臭、およそ他の料理では醸し出せないそんな匂いが姉ちゃんからしたから。偏食の極み、それを食べ続けることで身体に悪影響を及ぼし、いずれその臓器を破滅へと導く……そんな匂いが姉ちゃんから漂って来た」


「嗅覚ヤバくない?つーかなんなの?ニンニクマシマシ激辛豚骨ラーメンがそんなに憎いか?ええ?」


「うるせぇっ!帰って来て早々にニンニクマシマシ激辛豚骨ラーメンの匂いを嗅がされた弟の身にもなってみろ!」


「……私は別に……雄治からニンニクマシマシ激辛豚骨ラーメンの匂いがしても何とも思わないし……」


「え……あ、ありがとう。その、臭いとか言ってごめんね?」


「もう良いよ。たださ……少し傷付くから、臭いとか面と向かってあんまり言わないでこれからは」


「うん、分かった」


雄治と優香は互いに手を差し出し、和解の握手を交わすのであった。



「あ、服にも匂いが残ってる……くっさ」


「は、話が違うんだけどっ!?もう言わないって握手までしたのにっ!!」


優香は慌てて部屋に戻り着替えるのであった。


因みに、一緒にラーメンを食べた高宮生徒会長は、ヘルシー塩ラーメンを頼んだという。

優香と高宮とでは女子力があまりにも違うのだ。



─────────



──夕食後、部屋に戻った雄治は今日の出来事について考える。


見ず知らずの女の子を助ける義理なんて本来ない……しかし、奇しくも自分と重なった眉浦桃花の状況が、雄治の心を突き動かした。


そして雄治にとって意外だったのが、金城可憐もこの問題に協力してくれることだ。彼女には何のトラウマもない筈……だから本当に意外だったのである。


これが他の女性だったら企みでも有るんじゃないかと疑ってる所だ。ただ、可憐を雄治は信用している。だから邪険に等せず、素直に彼女の助力も借りる事にした。それに元々、眉浦桃花と二人だけではキツいと内心思っても居た。



「それにあの子も……」


──今日話をした眉浦桃花にも拒絶反応が現れなかった。それは眉浦桃花が自分と同類だったからだろう。同じ痛みが分かるもの同士、何処となく信頼してしまうんだと思う。人間の心理みたいなモノか……?


「細かい事は明日考えるとして……寝る前に一度、メールを確認するかね」



母親からは少し前に、後輩と夕食へ行くと連絡が入った……それ以降音沙汰はない。

恐らく、その後輩と羽目を外してるんだろう……この前もその人とステーキ食べに行ってたし。

ただそれで良い……俺に縛られる理由なんてないんだからな。

俺の方も母親からの連絡がない方が心休まる。やっぱり落ち着くまで距離を開けた方が効果的か。



「でもあの人はそれを分かってくれない」


そういう所も嫌なんだよ。



後は他のメールもチェックする。

そこには毎日寝る前の恒例行事になっている、楊花からのメッセージが届いて居た。俺はそのメッセージを開いて内容を確認する。



『お疲れ様です。今日は小学生との行事があると聞きましたっ!先輩は優しいですからっ!きっと子供達とも仲良くなれたんじゃないですか(笑)^ ^ そう言えば今日、ラーメン屋さんでお姉さんを見掛けましたよっ!なんか凄いラーメンを食べてたんで、私も今度食べてみようかと思いますっ!そして先輩のお姉さんみたいに強くてカッコいい女性になりたいと思ってますっ!それでは先輩っ!お休みなさいっ!(^-^)v』


「…………」



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



〜楊花視点〜


「あっ!先輩からの返信だっ!何かなぁ〜?」


『メールありがとう。今日は疲れる1日だったよ。楊花の言う通り無駄に懐かれた所為でしんどかった。お陰でヘトヘトのまま寝る事になると思ったけど、楊花のメールを読んで元気になった……ありがとう』


「………ッ!!」


メールを読んでいた楊花は、まだ途中だと言うのに読むのを中断し、あまりの嬉しさに顔を枕に埋める。



「私のメッセージで元気になったって……!私のメッセージで元気になったって……!!──嬉しいっ!嬉しいっ!先輩からそんなふうに思われるなんてっ!」


ベッドに寝転んでた楊花は足をパタつかせ、更に喜びを露わにした。今宵の楊花はきっと、雄治以上にぐっすりと眠れる筈だ。



「くふふ……えっとぉ〜……続きは、っと」


表情を綻ばせながら楊花はメールの続きを読み進めて行く。



『──ただし、姉ちゃんの食べたラーメンだけは絶対に食べない方が良いよっ!!死ぬほど臭いからっ!今も数分置きに思い出すしっ!!聞けば一緒だった高宮生徒会長はヘルシー塩ラーメンを食べたというじゃないか。女の人でアレを食すのは家の姉ちゃん位さっ!絶対に真似しないでねっ!!食べた後の口臭う◯こだからっ!』


「こ、これは酷い。店の外から観たんだけど、あのラーメンってそんなに臭いんだ……う◯こって……」


『──ただ……姉ちゃんが強くてカッコいいのは確かだな。後は案外優しいとこもあるぞ?』


「………ぷ、くく……なんだかんだ言って、先輩も結構なシスコンですよね」


『それじゃ、お休み楊花。また明日も気が向いたらメールくれな』


「はい……お休みなさい先輩……愛してます」



楊花はそう独り言で呟き、送られて来たメッセージに口付けをした。













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