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トラウマを克服する為に

2話投稿 2話目です


昼休みの後はつつがなくイベントは進行してゆき、遂に別れの時がやって来た。

寂しくて泣きそう……はははっ。



「うぇ〜〜んッッ!!お兄ちゃんと一緒にいだい〜別れたくない〜!!」


「そうかー、俺も寂しいぞ!」


「ユウジ、またレイナと絶対に遊ぼう?ね?」


「おう!もちのろん!」


(す、凄い棒読みですわ)


側で観ていた可憐は適当なことを言ってると気付く。

しかし、夕美はすっかり騙されてるようだ。



「それとねお兄ちゃん、御飯中におトイレに行くのは行儀が悪んだよ〜?」


「その件はあまり触れないでくれます?」


結局、最初から最後まで纏わり付かれたな……主にレイナと夕美の二匹に。

途中までは瑠美っていう子も面倒臭かったが、狂犬二匹の凄まじさに圧されて大人しくなってくれた。


……そう言えばコイツらってなんて苗字だっけ?


周りが名前で呼んでたから知らないんだよな。自己紹介はあんまり聞いてなかったし。

最後だから一応聞いておくか。



「夕美ってなんて苗字なの?」


「ゔぅ……ふぇ?」


めっちゃ泣いてるじゃん。

ここまで別れを惜しんでくれる子には愛着も湧くだろう……少し前の俺だったらだけど。

でも今の俺はそんな風には思えず、むしろ抱き付かれたりするの嫌だから、この聖堂小学校周辺には二度と来ないと思ってる。


そして、夕美は涙を流しつつ質問に答えてくれた。



「町田……ぐずっ、町田夕美。さっき教えた番号に必ず連絡して来てね?絶対だよ?」


「うん!絶対にするよ!」


町田夕美か……ん?

なんだ、この聞き覚えのあるような違和感は……同級生に町田って居なかったと思うんだけど?


………


………ま、いっか。



「わたしはねー、レイナ=クイーンブラッドって言うんだよー!」


「……すげぇ」


こっちは全然聞き覚えなかったわ。なんてロイヤルな苗字……いや、ファミリーネームなんだ。


そんなクイーンブラッドさんは、俺の足元まで近づいて来る。またさっきの町田みたいに抱き着いて来るんじゃないかと警戒したが、彼女は触れたりはせず、フワッとした笑顔をみせた。



「またね、ユウジ」


「……おう」


「へへー、どうせ連絡してこないでしょー?」


「……やるし」


「………じゃあまたねー」


「……………おう」


こうして子供達と別れを済ませる。

町田夕美は最後まで泣いており、クイーンブラッドさんは別れ際まで笑顔を絶やさなかった。

残りの二人も寂しそうにしており、特におかっぱの女の子は金城さんとかなり仲良くなったらしく、長いこと抱きしめ合っていた。



「楽しかったですわね」


少し涙目になりながら金城さんはそう話す。



「……う〜ん」


ずっと警戒し続けた1日。

いつ迫って来るか得体の知れない子供が二人もいた所為で、休まる暇の無かった壮絶な1日。

ハッキリ言って、数十人を相手にした方がよっぽど気が楽だっただろう。


それでも──



「そうだな、そこまで悪くなかったかも」


「ふふふ、お疲れ様です」


……ま、まぁ、ちょっと位なら連絡してやらんこともないかな。

それに、今日は金城さんの事も良く知れたし、相手が小学生とはいえ、女子とも少し話すことが出来た。

こうやって少しづつでも前に進んで行きたい。



「そうですわ!」


「どうしたの?」


「ええ、ちょっと……」



──そう言うと、可憐は別れたばかりの小学生達のところに小走りで向かった。

かなり彼女に懐いていたおかっぱの子と、瑠美が笑顔を見せるが、可憐の目当ては別にあるようだ。


おかっぱの子と瑠美に笑顔で挨拶を交わした後、金城可憐は目的の人物に話しかける。



「クイーンブラッド、今日は一日楽しかったですわ」


「わたしもー、膝の上に座らせてくれてありがとー」


「では失礼します」


「うんー、お父さんによろしくー」


そんな簡潔な挨拶を交わし、雄治の側に戻る。



「……彼女何者?」


「……大フランシア王国の第四王女様ですわ」


「……?」


「今は我が金城財閥の保護下にあります。尤も、そんな堅苦しい外交目的ではございません。いわゆるホームステイという扱いですわ」


「…………??」


「私と一緒に居れば、また会う機会があると思います。その時は是非よろしくして差し上げて下さいまし」


「??????????????」


…………


…………


もう全く以て意味が分からないっ。

王女がホームステイってどうなってるの?第一、それっぽい振る舞いなんて無かった……いや待てよ?



「もしかしてアレか?将棋で負けたのも、王女的な力が働いた所為か!」


「それは単に実力ですわ」


そんなハッキリ言わなくても……時折、金城さんは容赦がない。まぁ将棋ネットでしかやったことないから別に良いんだけども。



「……まぁそれは良いんだけど。でもやっぱり金城さんって凄いんだなぁ」


「私ではなく、金城家が凄いだけですわ」


金城さん自身の力も十分有ると思うけどね。

立ち振る舞いや歩き方も完璧だし。


このまま金城さんとも解散……いや、これから会う約束をしている『あの子』のところへ、一緒に来てくれないだろうか?大変な1日だったから疲れてる筈だけど……試しに誘ってみようかな?



「金城さん。実はこれからある女の子の相談に乗る事になって……近くのファミレスで待ち合わせしてるんだ。良かったら一緒に来てくれない?」


二人っきりで会うのは抵抗あるしね。

本当は姉ちゃんを呼ぶつもりだったけど、今日の姉ちゃんヤバイし、金城さんの方が頼りになりそうだ。



「え?!!雄治様と一緒に居れる至福の時間は延長もアリですの!?」


延長って……この子も偶にアホなんだよな。



「うん、まぁ……姉ちゃん来ないうちに行こうぜ」


姉ちゃん、生徒会長、石田、弥支路さんは離れた所で違う子供達と戯れている。

絡まれると面倒くさいメンツだし、ガキに気を取られてる隙にトンズラしよう。



「ガッテン承知ですわ!!!」



──なんかテンション高くて怖いな。



ちょっと不安になって来たぞ?

大丈夫かなこの子?



ポイント評価やブックマークをして頂けると非常に嬉しいです。

それだけで次話投稿へ向けてのモチベーションがかなり上がります。


次も明後日に投稿する予定です。

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