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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第3章 冒険者編
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第77話 パーティへの誘いと初の依頼



「……何故止めたんだ?」



 リーフ達がよく行くという酒場で一杯ずつ頼んだ後、無言の二人と違い、相変わらずテンションの高いリーフに関係なかっただろといった感じで訊く。



「いや、何つぅか……お前が怖かったから?」

「……何がだ」

「何がって……あんな殺気出せるくせにお前……まあ良い。取り敢えず、バッカスは勿論として、ギルマスやセーラの嬢ちゃんにムカついてんだろうな~、いつプッツンして皆殺しにしようか考えてんだろうな~って思って邪魔したんだよ」

「失礼な。俺がそんなにイラついてるように見えたのか」

「「「見えた(な)」」」

「……人を何だと思ってんだ」

「化け物だろ?」

「化け物」

「化け物だな」

「お前ら……」



 俺が今にも暴れだしそうだと感じたらしい。

 確かにイラッとはしたけど、別にそこまでは思ってなかった。



 俺は仮面のせいだろうと一笑し、ウェイターの少女が運んできたエールらしき酒を手に取る。

 リーフ達もそれだけじゃねぇからと笑いながら酒を手にしたので、無言で乾杯し、一瞬だけ仮面の口部分を開いて飲み干した。



 ――……クソ不味いな。何だってこんな温くて美味くもないものを……



 【抜苦与楽】で体の中からアルコール成分や体に悪いものを『抜』きながら思う。

 この世界では15から成人したと見なされる。だから酒も飲めると言えば飲めるが……これは望んで飲もうと思える味じゃないな。酔いたいとも思わないし。



「……何だお前。まともに話せるんだな。俺はてっきり……」



 何杯目かのエールで顔を赤くし始めたフレアが染々とそう言ってきた。

 やはり殺気のことで悪印象だったんだろう。



「理由があってあまり目立ちたくないんだ。悪かったな、昨日はあんなことして」

「いや、俺の方こそすまない。度々、失礼な態度をとっていた」

「がははははっ! なぁに下らねぇこと気にしてんだよお前ら! 良いから飲め飲め! 辛気臭ぇぞ!」

「……リーフはお酒臭い」

 


 ぐびぐびと飲むリーフに対し、アクアはあまり酒を好まないようでツマミの肉ばかり食べている。と言っても量はそこまででもないが。

 フレアも俺を警戒していただけで悪い奴じゃなさそうだ。



 その後、色々話している内に何となくこの三人の人となりがわかってきた。



 緑髪の大男、リーフは普段はずぼらでだらしないが冒険者としての腕は確かであり、背中の大剣と意外な洞察力が武器。

 赤髪の魔法使い、フレアは冷静なように見えて感情で動くタイプ。リーフとは度々、意見が食い違うことがあるようだ。

 青髪のシーフ、斥候職であるアクアは明らかな女顔だが女ではないと主張している。性別は置いておくとして、性格は冷静沈着。このパーティのリーダーであるリーフを強く信頼している。



 前衛と後衛、斥候か。回復役が居ないのが気になるが良いパーティだな。付き合いもそれなりにあるようで仲も良さそうだ。



「それで、だ。シキ……だったか? お前さん、冒険者になったんだろ? 周りが新人潰し新人潰しって煩かったしな」

「ああ。知っての通り、戦いに関しては多少覚えがあるからな」



 こと対人戦闘に関しては、だが。



 現地人であるリーフ達からすればそれでも十分強い部類に入るんだろうが、魔物相手は魔族(オーガ)になり、皮膚とかも固くなった今でも攻撃力と防御力の差による反動でダメージを受ける可能性がある。というか実際、戦争時にオークキングと戦った時実感した。

 レベルが高いから大抵の魔物には通じるとは思う。しかし、オークキングのような例外的化け物相手では、やはり攻撃もまともに出来ない。なら冒険者には向いてないんじゃないかとも思うが……まあ、上を目指さなければ良いだけのこと。そもそも人と接する仕事と違って、変に気を使わなくても良いというのもある。



「多少、ね……」

「「…………」」



 俺の返しに三人は盛大に顔をひきつらせている。

 それだけ化け物なんだと言われているようで少々気まずい。



「どう考えても多少を大幅に越えているが……まあ、良い。昨日、話し合ったんだがな? その力を隠したいってことは訳ありなんだろ? その仮面とか他のこともだがよ」

「……まあ、な。と言っても仮面に関しては訳ありって程でもないんだが。リーフかフレア……は痛そうだからアクア、悪いが俺の仮面を引っ張ってくれるか?」



 唐突な俺の願いに三人は顔を見合わせ、アクアが不思議そうな顔で俺の仮面に手を置いた。



「この仮面、『呪い』が掛けられているみたいでな。外れないんだ。だから取れない。偶々、戦場で見つけて仲間に冗談で付けられて以降、外れなくなった」

「あ? そ、そうなのか?」

「アクア、試しに」

「わ、わかった」



 『呪い』というのはそのままの意味で呪いだ。

 魔剣とかも物によっちゃ『呪い』扱いされる。俺の剣や爪とかもとてつもない切れ味を発揮し、斬撃を飛ばすことが出来る代わりに、常に極少の魔力を吸われ続けるというデメリットがある。



 魔力が少ない――と言っても平均よりは二倍以上あるだろうが――前衛かつ消費の激しい魔粒子ジェットを多用している俺が「地味に吸われてるんだよな~」程度にしか感じない時点で『呪い』とは到底言えないがな。

 『呪い』らしい効果と言えば、寿命やHP……生命力を吸う魔剣なんかは呪われてると言われる。後は破壊衝動や殺人衝動に襲われるとかな。



「……っ」

「……本当。取れない」

「今、腰持ち上がったぞ。何もそこまで力入れなくても……」



 女だろうなと思っていたからか思った以上の力で引っ張られてビックリしたが俺の角と穴の接着面に絶対に離れない性質である《闇魔法》の〝粘纏〟をくっ付けている為、仮面は微動だにしなかった。

 即席という程でもないが多少の信頼を得る理由付けにはなっただろう。人は秘密の話、「お前らだけには特別に言うが……」みたいな感じの話に弱い。相手は自分達を信用して話してくれたんだという印象を受けるからな。それが真っ赤な嘘だとしても。



「マジか。……ってことはジンメンに顔をやられたってのも……成る程な。無傷で逃げ出せたか倒せるという実力を隠す為の……」

「うぅむ……『呪い』か……それは災難だったな」



 アクアは驚いた後、勝手に色々想像してくれているリーフの話に頷いており、フレアは同情の目を向けてくる。

 予想通り、信用してくれたようだ。



「顔に……痛そう。ゴメン、結構力入れちゃった」

「お前な……はぁ……気にするな。まあ、『呪い』と言っても外れないってだけで他に『呪い』らしい効果は何もないんだがな? 食事用なのかこうやって仮面の形を変えることも出来るし」



 別に顔の皮膚にくっついているとは言ってないが、『痛そうだから』という俺の事前の言葉でそういうイメージが根付いたんだろうと思いながら仮面の口元の形状を変えて口を見せ、直ぐ様戻した。



「おおっ、すげぇっ! マジかよ!?」

「……尚更不気味な仮面だな」

「今の肌艶……もしかしてシキ、結構若い……?」

「と、まあ仮面に関してはこういう訳だ。年齢は訊かないでくれ。後、単純な強さについては戦場で生き残り続けたからレベルが高いってのと自他共に最強と言われる師匠が居たから、だな。……それだけでは到底信用出来ないだろうが大まかに言うと事実だ」



 嘘は言ってない。

 修行でも戦場でも生き延びたからレベルも高いし、師匠は世界最強と名高いジル様だからな。まあ仮面に関しては全くの出鱈目だが。



「そう、か……」

「話の腰を折って悪かったな。話し合った、というのは?」

「ん? おおそうだったな。俺達はちょうどもう一人くらい、パーティメンバーを募集していてな。本来なら回復系の職業が一番良いんだが……実力を隠したいってほどのお前さんの力を見て、俺達の仲間に誘おうぜって話になったんだよ」

「フレアはずっと反対してたけどね」

「なっ、アクアっ、何故それを本人の前で言うっ」

「だって――」



 またああだこうだと問答が始まったが、俺は思いがけない申し出に固まっていた。



 ――……仲間、か。リュウ達を思い出すな……あの時は俺がリーダーで……でもあいつらは食われてる俺を助けてくれなくて……頑張ってくれたのはわかったけど………過程はどうあれ、結果が伴わないんじゃ頑張ったところで意味はない……そう感じて、俺は……



「……どうした? やっぱ気楽に一人でやっていきたいか?」



 少し俯いていた俺を心配そうな顔で見つめるリーフ達に罪悪感を覚える。



 良い奴等なのに、嘘ばかりで本当のことはあんまり言えないなんて……



「いや、それは有難い。有難いが……この町を拠点にしようと思ってなかったものでな。金を貯めたら色んなところを転々とするつもりだったんだ」

「あ~……んじゃあちょっとキツいかもな~……俺達はこの町で生まれ育ったんだ。だから、死ぬときもこの町でって決めてる。旅がしたいお前さんとはあんまり合わない、か……」

「無理強いは出来ないな。敵なら兎も角、仲間ならとても頼りになりそうだと思ったんだが」

「……付き合わせるのも悪い。諦めよう」



 「残念だが……ま、仕方ないだろう」という雰囲気を三人で醸し出し始めたので慌てて声をかける。



「あっ、いや、俺がこの町に滞在する期間、臨時のパーティとしてなら寧ろこっちがお願いしたいくらいだ。俺は冒険者としての知識はからっきしと言って良い。力があったところで他が何も知らない、出来ないじゃ意味がないからな。俺の為にも是非、パーティに入れてほしい」

「おっ、マジか!? なら宜しく頼むぜ! 旅に出るってことは当分この町に居るってことだもんな! 良いねぇ、シキが居るならもう少し冒険出来る! ジンメン相手でもまともに戦えるかもしれねぇ!」

「助かる。先輩として知識ならあるからな。知識なら」

「ふふっ、臨時パーティ結成、だね」



 素性の知れない俺をパーティに誘ってくれるのは今後リーフ達だけかもしれないし、何より先人の知恵というのは馬鹿に出来ないものだ。今回のことは必ず俺の為になる筈。



「よっしゃあっ! なら俺達の新たな仲間と門出に乾杯と行こうじゃねぇか! おーいっ、アニータちゃん! エールを追加で四杯頼むっ!」

「はーいっ、わっかりました~! 今、行きまーすっ!」



 こうして、俺は新たな仲間を手に入れた。いや、入れられ、酒場兼宿屋らしいその店に泊まり、夜が明けていった。










 


「頼む! そこを何とか!」

「すみませんが規則なので……」

「うぅっ、それは確かなんだけどよおっ、シキは大事な仲間なんだっ、頼むぜセーラ嬢!」

「そ、それはちょっと……」

「クソおおおぉぉっ!」



 朝っぱらからギルドの受付、セーラの前で絶望の声を上げているのはリーフだ。

 冒険者ギルドでは『リーダーの冒険者ランクと同じかそれに近いランクがなければパーティには加えられない』というルールがあるらしく、Fランクの俺はCランク冒険者であるリーフ達のパーティには入れないと言われてしまったのである。



 実力やランクがあまりにかけ離れているとちょっとしたいざこざも起きやすくなるし、虐めのような事態に発展したりすることもある。事実、新人をパーティとして連れていき、囮にすることで依頼を楽にしようと考えた非道な輩が居たらしく、そういう規則となったようだ。

 理由を聞かされると納得するが互いが知り合いの場合とかでも例外が認められないのはちょいと厳しいとも思う。まあ、一度でも認めたらどうしても緩くなってしまうから常々厳しく取り締まっているんだろう。



「すまないな、皆。直ぐに追い付けるよう努力する」

「クソ、脳筋野郎共のせいでぇぇっ……っと、気にすんな。お前さんのことだから大丈夫だろうが、焦って死んじまったら元も子もないからな。ゆっくりで良いぜ。どうせ新人の稼ぎなんて大したもんじゃねぇからな!」



 受付の前でチラチラと見ながら言っているせいでセーラも「あはは……」と、困り顔だ。



「規則か……俺としたことがすっかり忘れていた。酔ってたせいだな……」

「大きいようで小さいのがリーフ。普通に小さいのがフレア」

「んだとコラっ」

「喧嘩を売っているのかアクアっ」

「ふっ、小さい小さい……」

「「こいつっ……!」」



 ならず者らしく、殴りあいの乱闘になってるけど良いんだろうか。……良いんだろうな、昨日のこともあるし。



「良かったですねシキさん! リーフさん達のパーティ、『御三家アトリビュート』はランク上はCですが実力はAランクなんですよ!」

「ぶふぉっ!?」

「だ、大丈夫ですかシキさんっ……」

「いや、気にするな。ちょっと噎せただけだ」



 御三家アトリビュート(属性)って……



 どうも過去に「『火』、『水』、『風』は色的に御三家と言うんだ!」と言った馬鹿勇者が居たらしく、殆どの人がそのように呼ぶようになったことは聞いていたが……安直にも程があるだろ。噎せるどころかずっこけそうになったわ。

 確か、昨日聞いた感じだとリーフが『風』、フレアが『火』、アクアが『水』の属性魔法が使えるんだっけか。



 名は人を表すというが何も髪色まで合わせなくても……と思わないでもない。まあでもこの世界の人達、基本的に持っている属性に影響されて髪色が変化する不思議体質らしいから仕方ないんだけど。リーフ達も髪色で名前決められたとか愚痴ってきたし、そういうものなんだろう。実際、リーフは兎も角、フレアとアクアはありふれた名前らしいし。

 「風なのにリーフはおかしい」、「草だろ」、「僻みか? おぉん? 僻みか? 火と水さんよぉっ」という下らない喧嘩は見ていて面白かった。



「実力とランクが噛み合っていないのはリーフ達の意向か?」

「はい。ランクが上がると必然的に危険な依頼も増えますし、Bになると強制で受けさせられる依頼、Aとなれば指名される依頼等もあるので……こちらとしては上がって欲しいんですけどね~……」

「成る程」



 昨日、散々命あっての物種が信条だと豪語していたリーフらしい。まあ、そういう依頼でこの町から離れざるを得ない状況になるのを嫌がったのが一番の理由だろうがな。



「では採取依頼と討伐依頼を受けたいんだが」

「はい。Fランクの採取、討伐依頼は冒険者の皆さんが採取物、討伐部位でお金が発生するので提示板から依頼書を取ってくる必要はありません。サインとかも要らないです。出来れば今回のように事前に報告していただけると助かりますけどね」



 採取した薬草や討伐部位を買い取る形で依頼を達成扱いにするから態々頼む必要はない。

 そして、ギルドとしては帰ってこなかった時とかに何かあったんだと判断しやすいから報告はしてくれた方が助かる、と。成る程な。



「わかった。次からもそうすることにしよう」

「お願いしますね。……それでは貴方の冒険に幸があらんことを!」



 仲間の二人に拳骨を食らわせてピースしてくるリーフや笑顔で見送ってくれたセーラに手を振りながら俺はギルドを出て、道具屋に向かった。

 薬草や討伐部位を入れる袋としてマジックバックを使うのは良くないからな。同様にそれらを刈り取るナイフとかも欲しい。あるにはあるが、刃こぼれもあるし、予備が欲しかったのである。



 結局、背負うタイプの収納袋を一つに腰に付けるタイプのものを一つ、それと大振りの解体ナイフと薬草の刈り取り用に鎌を買って町を出た。










 昨日の飲みの席と言い、今回のことと言い、出費が激しすぎる。ムクロに感謝しないとな……等と考えながら町の側にある、林に近い森を散策する。

 昨日の本の知識とセーラからしれっと訊いておいた助言を頼りに薬草がありそうなところへ進む。



 多少周りに警戒しながら歩いていくと、やがて薬草と雑草が生い茂る草むらを見つけたので背負うタイプの収納袋を置き、さっさと薬草を鎌で刈り取っていく。

 知識以前に《鑑定(全)》スキルを持つ俺からすればどれが薬草でどれが雑草かなんて一瞬でわかるのだが、一つも間違いなく、大量に薬草を持っていっても注目されるだろうし、第一生態系を崩しかねない。



 大量にあるということはそれだけ何かに需要があるということ。魔物か人かは知らんがある程度は残さないといけないだろう。

 そう思い、草むらの四分の一程を雑草も適度に込みで刈り取りながら移動を重ねる。



 採取するのはヒット草、マナ草、気付け草の三種類である。

 ヒット草はあの意味わからん回復力を発揮する回復薬に、マナ草は魔力回復薬になるらしく、需要が尽きない。が、生えるのは基本的に人の手が加えられていない場所に限定されるらしいので、冒険者くらいしか取ってこれないんだとか。まあ、人が居ないってことは魔物が跋扈してるってことと同義だしな、この世界だと。



 気付け草はその名の通り、気付けに使える薬になるらしい。

 神経毒のような麻痺状態でも無理やり飲ませれば体がカッと熱くなり、苦しさや激痛はあるものの、動けるようになるらしいのでこちらも需要はあるとのこと。主に冒険者に、だが。後は医者とかに愛用されるとも聞いたな。何でも全身が痛くなるから麻酔代わりになるらしい。確実に使い方間違ってるよな。荒療治にも程があるだろ。



 と、まあそんな感じで刈って移動して刈って移動してを繰り返す内にゴブリンやコボルトとも遭遇するので練習がてら大剣で倒してみた。

 が、返り血が思った以上に出たので即座に止めた。



 出てきたのは数匹であり、討伐依頼も何匹倒してこいというものでもないから別に良いっちゃ良いけど……今度から短剣で喉元か心臓を狙おう。装備と服を毎回洗う羽目になる。



 ――虫魔物ばっか相手にしてたのと何かと便利な爪斬撃のせいでどうも無理やり叩き斬る癖があるみたいだな……今の俺は短、長、大剣が主な武器だから爪に頼らないようにしないといけないってのに……



 戦闘スタイルを変えるというのはどうにも難しいものだ。

 右腕の手甲が丸っとないのも違和感を感じて変な動きになるし。


 

 俺の現在の装備は爪付き手甲(左腕のみ)、胸当てと動きやすさを重視した脚甲と鉄板の入った安全靴。頭部は鉢がねを外しているので仮面くらい。武器の方は短剣六本、長剣を二本、大剣を一本、目潰し用の砂爆弾と鬼畜仕様(唐辛子みたいなものの粉バージョン)の砂爆弾と鬼畜仕様Mk-Ⅱの砂爆弾(巨蟲大森林で出てきた蛾が撒く心臓麻痺待ったなしの粉バージョン)だ。大剣以外の武器には殆どジル様の爪や鱗が使われている。

 後は……魔法鞘に入っているショートソードと短、長剣数本、対剣士用の奥の手であるショーテルだな。



 他にも役に立ちそうな魔道具はあるがマジックバックの中だし、武器かというと微妙なものばかりだ。

 正直、かなりの過剰戦力であり、雑魚相手では無駄が多い。が、それらを持ちながら動くというのも訓練になるだろう。何かあった時にすぐ使えるし。ということで常に全武装装備している。



 ……ま、当分大したことは出来ないな。下手に強い魔物を倒しても扱いに困る。目立ちたくない、ではなく、目立ったら命に関わる可能性が生まれるってのは中々良い制限だな……ったく。









 夕方。



 気付いたらかなりの量を採取しており、魔物も疎らに採取するために色んなところへ行ったからか結構な数の奴等と遭遇してしまったので、新人としては怪しまれるくらいには倒してしまった。

 傭兵崩れとはいえ……流石に多いから半分くらいにしておこう。



 という俺の予想は間違っていなかったらしい。

 受付に出したところ、「度々、雑草も入ってますが頑張りましたねー! 討伐部位もこんなに……まさか大量発生してたんですか?」とセーラとは別の受付嬢に言われてしまったのだ。



 歩き回って一つの箇所で取りすぎないようにしたからか魔物と遭遇することが多かったんだ、という言い訳で納得してもらったが……もう半分どうしようか。



 ……あ~……別の日に行ってきたとか言っても俺以外にも結構冒険者居たからなぁ……目撃者も居ないのに持ってきても怪しまれるか……



 案外、こういう面倒が嫌でフィクションの主人公達は異世界あるあるの一つ、「目立ちたくないから」とか言うくせに「あれ? また何かやっちゃいました?」をやるのかもしれない。



 テンションの高い受付嬢に気付いて「初依頼でこの量は……Dランクくらいの方が取ってくる量ですよシキさん! 凄いですね!」と態々褒めに来てくれたセーラを前に深くそう思った俺だった。



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