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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第2章 戦争編
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第54話 戦争会議

話のオチの付け方って難しいですよね……(´・ω・`; )


 騎士相手に無双した結果。


 ある意味当然だが、俺達異世界人の戦場は最前線になった。


 無論、望まない者や向いてない者は別。とはいえ、マナミのように有能過ぎる能力者は本人の意思に関係なく前線に置かれる。


 となれば……そりゃあ色んな問題が出てくるわけで。


 ほんの数ヶ月前まで右も左も知らない雑魚共だったという前提の中、一国の大隊規模を壊滅させて見せたのは余程脅威と捉えられたらしい。


 日が沈み掛けるかどうかの時間帯。


 会議と称しつつも参加者は青い顔してるマリー女王と側近数人、グレンさん他軍の関係者のみの簡単なミーティングを終え、俺達は揃って黙り込んでいた。


「魔族が率いる推定二万匹のオークの軍勢か……」

「数が多過ぎます。幾ら【起死回生】の力が必要だからってーー」

「ーーだ、大丈夫だよライ君。後方に居たら皆を支えられないし……」

「うーん……言い方は悪いけど、末端兵を不死身にさせる固有スキルだからねぇ……」


 俺の独り言が口火を切る形となってライ、マナミ、リュウと会話の流れが出来上がる。


 問題その一。最強の回復役であるマナミが最大の真価を発揮する為には最前線が最適だが、肝心のマナミ自体の戦力は並み程度。かといって敵の数が膨大なので護衛を付けたところで……みたいな感じになってしまう。


「……僕としてはあまり頼るのも悪いと思うな。能力範囲や修復速度が異常でも頭や首、心臓といった急所を狙われれば死んでしまう」

「とか何とか言って、お前は自分(テメェ)の【唯我独尊】が邪魔になるのが怖ぇんだろ?」

「はぁ……私情は兎も角、相性を考えればマナミとイサムは離すべきよね」


 問題その二。トモヨが補足してくれたように、味方同士でも戦う位置を決めておかないと互いの足を引っ張りかねない。


「アタシ達もパスかなー? まだ魔法だけで何とかなる実力じゃないし、アタシはパンチとか蹴りがメイン。シズカも回復とか支援向きだし」

「ですぅ……」

「俺なんか商人だよ? 後ろで控えてても回復アイテムくらいしか生成出来ないよ? というか出来たところで誰が前線に届けるのかって話」


 問題その三。前述したように、そもそも向いてない戦闘スタイルの奴や『多』を相手にするにはちょっと……って奴が多い。


 因みにイクシア軍は都民を徴兵すれば敵と同じかどうかって数で、一人一人の平均戦力は一般的なオークと比べ、1/3から1/4。


 総じて、物量差と戦力差エグすぎぴえん。


 詰まるところ……


「勝てなくね?」


 俺は真顔で結論を呟いた。


「そんなっ……困りますっ」

「いやそんなこと言われてもこっちが困るわ」


 女王相手に思わずタメ口で返してしまったが、周りを見てみればイケメン(笑)や早瀬ですらウンウン頷いている。


 威勢の良い奴等のことだ。いつもなら腰抜けとか言ってきそうなもんなのに、今回ばかりはマジで俺と同意見らしい。まあ無理難題を「お得意の異世界人パワーで何とかしてくだせぇ」、言われても「そら無理やろアホか」って思うのが普通か。


「ジル様に土下座して頼んでみたらどうです? それか国宝か何かを褒美にするからとか言って」


 一縷の希望的な意見に見せ掛けて俺の中の最大の代替案を出してみる。


 何て言ったって、あの人の本業は傭兵。金さえ積めばと思わなくもない。いやまあ金積んだ結果、希望の勇者じゃなくて宗教観的に最悪な『闇魔法の使い手』を弟子に召し抱えられた上、一国の王と大臣だか何だかはブチ殺されたんだけども。


「っ!!!」

「……ユノ、一応訊いておくが、能力の効果範囲のほどは?」

「私を中心に円が出来るイメージで半径三十メートルくらい……です。多分、戦線の維持すら出来ません。二万の兵が丸々横に広がることはなくても、百メートルじゃ利かないですよね……?」


 無理無理無理無理! みたいな、今にも泣きそうな顔で首を横に振りまくるマリー女王はさておき、グレンさんは冗談だと思ったようで、何やら思案していた。


「仮に回復が間に合ったとて、その者の精神ダメージは如何程か……」


 何か胃を痛そうにしながら言ってるけど、重ねて言えば前線が持つ前提でそれだからな。単純な戦力差を思えばちゃんとした訓練を積んだ兵が三人がかりで一匹を倒せる計算。民兵なんかは腕振るわれただけで即死する。


「……マリー、冒険者や傭兵関係のギルドには協力を仰げないのかい?」

「既に国境付近は閉鎖し、戦争に参加するよう呼び掛けています。他国への救援要請も含め……しかし、間に合うかどうか……」


 「うへぇ、強引……今何とかなっても戦後響くだろそれ……」と思うのと同時、「こいつらいつの間に仲良くなったんだ……?」とも勘繰ってしまう。


「因みに予想だと猶予はどれくらいなんです?」

「国としてはオーク軍が王都へ辿り着くのは一ヶ月程度だと予想しているが……斥候や俺の見立てだと二週間もないだろう」

「に、二週間!? そんなっ……私達が巨蟲大森林へ移動するスピードと同じじゃないですか!」


 イケメン(笑)の質問にグレンさんが渋い顔で答え、マナミが驚愕の声を上げる。


 馬車を使っての移動と同じ行軍速度と言われれば驚きもするが、二万匹ものオークを養う飯がどこにあるんだって考えりゃ強行軍も頷ける。


「餓死や士気の低下、他国からの支援……全てが全て上手くいった場合で五分五分の勝率、ですか」

「あまり大きな声では言えんがな」

「私達魔法師団も頑張りますけどぉ……如何せんオークは頑丈でしぶといですしぃ、お腹が減ってなりふり構ってられないでしょうしねぇ……」


 ライがそうやって締め、リンスさんも入れて皆でまた無言になる。


「目下、ユノの力をどう活かすか……これが最大の問題か」


 取り敢えず、と言わんばかりに決められる部分に焦点が当たった。


 が、まあ……何と言うかそこに関しては案があったり。

 

「あー……ライとマナミさえ良けりゃ俺がおぶって戦場駆けまくろうか? 自分で言うのも何だが、デカい口叩いてる割に、俺も俺でライやそこの勇者&不良タッグほど戦闘向きじゃない。どうかな?」


 要はマナミ本人が走り回って力を行使するより速くて自衛と護衛が最低限出来る奴がおんぶでもしときゃ良くねって話。


 ロープか何かで縛っておけば固定も出来る。


 今言ったように、俺自体はライ達ほど貢献出来るかっつったら大して……って感じだし。


「「「「「う~ん……ん……? うぅん……」」」」」

「おい、ハモるな。仲良しかお前ら」


 イケメン(笑)達を除いた、交流のある異世界人全員に難しい顔で首を傾げられ、ついでに唸られた。


「いやだってお前、結構動いて戦うタイプだろ。マナミの負担も相当だぞ」

「まあ……」

「……ユウ君、えっちなこと考えてるでしょ」

「お前は状況考えろ?」

「おぉ、ナイスアイディアだ。お胸様とか押さえるようにお尻様とか色々……ふぅっ、わっふるわっふるっ」

「殺意が芽生える」


 ライの指摘は置いておくにしても、マナミが恥ずかしそうに胸元を隠してくるのとリュウのニマニマ顔には青筋が浮かぶ。


 他も似たような意見らしい。


「じゃあ他にどうしろってんだ。同じ女が良いってんならトモヨ達になるが」

「は? 嫌よ、私。誰が一番危険な最前線なんて……」

「悔しいけど、アタシはやっぱ実力がねー」


 シズカさんはそもそも戦力外の部類なのでパス。


 つまり……代替案はないと。


「我が儘言ってる場合かっ。それと、本音を言えば俺だって御免だ。それこそ誰がマナミみたいなまな板娘のペチャパイになんか欲情するってんだ。同じ壁なら俺ぁジル様が良いねっ、ジル様がっ。あの美貌を思い出してみろっ、何回か踏まれたけど、脚とケツなんかやべぇぞっ? 何回勃ち……」


 ついカッとなって言い掛けてから失言に気が付いた。


「は?」

「最っ低」


 ライの「お、やる? やっちゃう?」みたいな反応とマナミのゴミを見るような目はまだ良い。


「あー……ユウさんや? すぅっ……う、後ろに……ね……?」

「やったねー……さ、もう暗くなってきたし、寝る時間だ!」

「自業自得よ」

「ユウ……南無……」

「ひいぃっ、ですぅっ」

「うわっ、出たっ、蜥蜴女だっ」

「お、おいイサムっ、行こうぜっ」

「っ……!?」

「……姫様、時間も遅いですし我々は退散するといたしましょう」

「で、ですねーっ」


 外野が俺の背後を見て何やら大量の冷や汗をかき始めたと思ったらスタコラサッサと逃げ出していった。


「は? 何だあいつら? 急に何ビビって……」


 思わず振り返って問題その四の発生を知る。


「テメェ……人を素で性的に見てんじゃねぇよ……」

「あー……ユー君? あからさまにそういう目されるのは女の子側としては普通に気持ち悪い、よ? ちょっとは隠してほしいなぁ、なんて……」


 いつの間にか後ろに立ってたジル様とエナさんが盛大に顔をひきつらせていた。


 前者は心底嫌そうに、後者は気まずげに。


「かはぁっ……!?」


 変な声が出しながら絶句する。


「鳥肌がやべぇ」

「あ、あはは……まだ掛かるのかなぁって様子見しに来ただけだったんだけど……いやぁ……きんもー……」


 多分、ライ達はジル様のことをよく知らないからまた俺が半殺しにされるとでも思ったんだろうけど、違う。


 ドン引きを超えてガチ引きだ。


 百歩譲ってエナさんは良いけど、ジル様のそれは俺に効く。


「あっ、いやっ、今のは違くて、ですね……」

「すいません、話し掛けないでもらって良いですか?」

「敬語っ!? あのジル様がっ!? 心の距離いきなり離れ過ぎぃっ!」

「ったく気持ち悪ぃなぁ……うぅっ、キモいキモいキモいキモいキモいっ」


 ツッコミを入れた直後、本気で両腕を擦ってるのを見せられて心が折れた。


「ぐおおおおっ……! こ、これならいっそ殴り殺された方がマシだっ……何でだっ、真面目に意見出してただけなのにぃっ」


 俺の心の叫びは「オレなんて何の関係もないのにスケベ面した愛弟子にいきなりスケベ心見せられた上に何度か……とかエグいことカミングアウトされたんだが?」という冷静かつ無慈悲な返しで黙殺された。


 畜生っ、ぐうの音も出ねぇっ……!!


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