第315話 丁々発止
また遅れました( ノ;_ _)ノ
【ちょっとした愚痴と言い訳】
海外に来てまで色恋沙汰というか半分犯罪紛いというか変なことを考える人達に脱帽する今日この頃。
マジで金払ってまで何しに来てんのよ……そんで同じ建物に住んでる身にもなってくれよ……勉強も執筆も全然捗らないじゃんかよぉ……(*´;ェ;`*)
「な、何だいこの感じっ……!? 帝都が……いや、大気が震えてっ……っ、この魔力反応っ、遅かったか……!」
ロベリアに次ぐ可変機体シヴァトのコックピット内。
操縦桿を強く握りながら、フェイは敏感にソレを察知していた。
「戦場で私情は不味いんだよ大将っ……ま、同じ激情型としちゃ、わかってたところでってぇのはあるけど……ねぇっ!」
戦闘機形態から人型へ。
飛行速度を落とさずに空中変形し、突撃を掛ける。
『くっ……! その機体っ、フェイですね!? 何故、私と同じ武装をっ……!?』
周囲を取り巻くモニターは全方位の視界をクリアにし、音を拾う。
アップになった金色の機体は本来唯一無二の獲物だった刃でこちらの剣を受け止めていた。
『流石は絶機っ……絶対なる機体ってなぁっ、伊達じゃないかっ!』
熱した金属粒子同士をぶつけてる訳じゃあるまいし、ゼーアロット戦からしれっと拝借、分解、解析。帝国の技術とシキの絶大な魔力量でコピー再現したフォトンソードは超高熱のビーム部分ではなく、その発生器である短剣と短剣が擦れ合い、鍔迫り合いの状態を維持している。
『小娘がっ、また邪魔をしてっ……!』
単純な運動エネルギーの差から最初は押せていたのが、独特な形状の背面スラスターを作動されたことで両者、機体の細部までを小刻みに振動させながらその場に滞空する。
『貴女の役目は陽動でしょうっ、私に構っている暇があったら……艦隊でも片付けたらどうですっ!?』
その咆哮を機に、人間のように頭部やカメラアイを動かし、蹴りを入れてくるロベリア。
そして反対に、その軌道を先読みして後退し、再度加速接近してビーム刃を振るうのは例えまた容易く防がれたとしても、まるで自分がシヴァトそのものになったような感覚がして気分が高揚した。
『はっはぁっ! んなもんっ、とっくに終わらせたからアンタんとこに来たんだろうっ!?』
ガキンッ、ガキィンッ……! と、ただチャンバラするのにも空戦ではモノが違う。
姿勢制御に必要なアポジモーターの細かい出力調整、繊細なマニピュレーターや反撃、激しい揺れに相応のG、マナコンデンサーが示す魔力残量を気にしての操縦……
その一つ一つがベテランパイロットとしてのフェイの矜持を保たせる。
『っ……!? でええぃっ……! 勝手に動いておいてっ、たかが一機と巡洋艦一隻ごときに遅れを取るとは何て使えないっ!』
『とうとう連合の手綱も握れなくなってっ……良い気味だねっ、女王サマっ、えぇっ!?』
如何にもなMMM戦から一転、同時に変形してのドッグファイトも同様。
戦闘中の余所見すら許すほどの性能差だとしても技量で補い、最小限の機動、最小限の反動で艦隊の退いていった帝都の空を駆けていく。
『アンタさぁっ、大将が一番大事だってぇ女とっ……魔王とやらと同じなんだよ!』
『何がっ……!』
どうせ墜ちるならと墜落途中だった艦を盾にしようとするロベリアから離れ、反対側に回って魔銃を掃射。向こうからも飛んできた光線を魔障壁スレスレの位置で躱し、すれ違い様に片腕だけ動かして斬り付けたようとしたものの、鏡合わせのように刃が伸びてきた為、緊急逆噴射を掛けることで敢えて体勢を崩して回避する。
見ればロベリアもまたその手法で距離を取っていた。
しかし、善戦が出来たのはここまで。
『く、うぅっ……!』
『一刻も早くあの二人の元に行かなくてはならないというにっ……小賢しいっ!』
相手は現存するMMMの『最強』であり、シヴァトの完全上位互換。
生身の……それもステータスを持たない人間が乗っている模造機体程度では文字通りの差が出てくる。
戦うこと自体が土台無理な話なのだと痛感するような、圧倒的な差が。
だとしても。
『行かせるわきゃあってね……! 大将がアタイに任せると言ったんだ! ここで退くようじゃっ、ヴァルキリー隊の名が廃るってもんさっ! そうだろっ、皆ぁっ!?』
シキからの信頼、散っていった仲間達への想いで堪え、脂汗を垂らしながら食らい付く。
『〝力〟ある者にゃっ……責任が生まれるってことがっ、わからないのかいッ!?』
機動戦ならと超接近し、剣を、蹴りを交わしては至近距離でビーム発射。武装も形状も同型なだけあって細かな違いはあれ、同じことをされる。が、それはこちらもだと返すように機体を反らし、あるいは変形して、あるいはマニュアル操作で発生させた魔障壁でやり過ごす。
『相変わらず手前勝手なことを言うっ! 指示を仰ぐことなく行動する愚者はっ、消えなさいなッ!』
専用のパイロットスーツには定期的に回復薬が注入される管もある。Gや反動で血反吐を吐いたところで問題にはならない。
そんな判断からスラスター噴射による目眩まし、からの袈裟斬りをソードで防いだことが祟った。
『ぐぁっ……!?』
機体は僅かに後退しただけ。
しかし、コックピット内のフェイはその衝撃をモロに受けてシートに頭を打ち付け、流血。ぐわんぐわんと揺れる視界と激痛に笑みを浮かべて返す。
『へっ……へへっ……その指示を出す側が……トップが情けないことを言い始めたら誰だってっ……!』
『勝手に期待してっ、勝手に押し付けてっ! 上の都合も考えられない女がっ……!』
装甲と装甲が、金属と金属が、そして獲物と獲物が擦れ合い、何とも不快な不協和音と揺れを起こす中。
真下……ちょうど、帝国城の方向から異常な魔力と殺気の衝突を感知し、揃って後退した二人はちらりとそちらを確認してから再激突した。
『だったらせめてっ……野望の一つや二つくらい、教えてくれたって良いだろっ!』
『それがっ……何になりますかっ!』
この距離で魔銃を構えようものなら結果は察せられる。
それを理解しているからこそ、フェイは一時的に推進力を一点集中させて両機体のバランスを崩し、地に落とす勢いで降下を試み……
逆にロベリアも敢えて受け、何なら加速を付けるという選択を取る。
ふわりとした浮遊感に加え、視界は反転。オートで作動したベルトは痛いほどに身体を締め付け、固定してくれた。
『向かうべき道を大人が示さないでどうするのさ!?』
『良い歳をした大人がそれを言う! 訓練学校で何を学んできたのですっ!?』
逆さのまま斬り合い、蹴り合い、離れ、近付き、取っ組み合って燃え盛る帝都の中へ。
『ハッ、アンタとアンタの世代が作った型嵌め工場のっ……間違い、さねっ!』
あわや地面に、という寸でのところで同時に逆噴射。全長の大きいシヴァト側がのし掛かるような状態で、姿勢はそのまま街中を駆け抜ける。
それこそ帝都の中心にいる二人のような、特殊なエンジンと特殊なスラスターがそれを可能としていた。
『失敗作のくせにっ、他責思考だけは一丁前でっ!』
風圧が火を消し、燃え上がらせ、ブロックで舗装されていた道路とただでさえ爆撃でボロボロだった建物は引っ掛かった看板や屋根の破片がトドメを刺す。
そうしてめぐるましく変わるモニター画面の真ん中で、魔銃の振り下ろしは頭突きをしてでも、腕部の装甲がひしゃげても防御し、光の軌跡だけは回避か同じ武装で受けて立っていたフェイは漸く血が止まり、傷口が完全に塞がったことを自覚した。
『歳をとることがそんなに偉いのかいっ!?』
思考がクリアになれば、痛みがマシになればこっちのもの。
シキの立体機動的な動きと度胸をなぞるが如く、金色の機体を引っ張るようにして体勢を入れ換えると、言いながら推進エネルギーの向きを調整し、地面をヤスリに見立ててギャリギャリと押し倒し進む。
『うぐううぅぅぅうぅっ!!?』
巨大な背面のソレの出力を全開にしていたロベリアをしても、やはり人間らしい。重心に沿って地を削り、装甲の表面を粗くされ、相変わらずの人間臭い苦悶の声を漏らしていた。
『無能の台頭を許しっ、のさばらせっ、組織を腐らせてきた癌があぁっ!』
地面との接触の際、余波で機体関節を破損。フォトンソードと魔銃は殆ど同時に何処かへ消えていっている。
素手同士、そして馬乗りのこの状態なら重い方がとロベリアの頭部を掴み、よりめり込ませた次の瞬間。
『このっ……簡単に、言ってくれる!』
ガンガンと殴り付けてきていた金腕はシヴァトの肩と脇に、忘れ去られていた金脚は腹部装甲を押す形で蹴り上げてきた。
所謂、巴投げ。
『代わりなど幾らでもいる若造に何を言われたところでっ、はいそうですかとっ……!』
油断はなくとも、まさか機械の身でここまで精密に人間の格闘術を再現されるとは夢にも思わない。
『言えるわけっ、ないでしょうがッ!!』
『う、わっ……ちょぉっ……!!?』
姿勢制御に手を出そうにもくるくると回転させられた状態では手の打ちようがなく。
フェイは成されるがまま建ち並ぶ建造物の群れに投げ込まれ、ありとあらゆるものを薙ぎ倒し、跳ね……
命拾いの種でありながら食い込んで骨を砕くシートベルトと人間シェイク器と化した機体に悲鳴すら上げられないまま静止した。
「ぐ……ぎっ……し、しくっ……た……!」
指一本動かすだけで脳天を貫くような痛みが突き抜け、カメラも破壊されたのか、モニターの殆どが死んで砂嵐を映している。
ピッチリとしたパイロットスーツに温かく冷たい血がゆっくりと染みていくのがわかった。
「大将……ゴメン……ごめ、ん……よ……」
激痛と失血によるショック、失意の中、フェイが意識を手放すのとは裏腹に。
『…………』
ロベリアの方も制止が間に合わず、城壁に正面衝突しており、崩れた瓦礫に埋まって沈黙していた。
こちらも汚れや傷に負けない黄金が見えこそすれ、反応がない。
遥か上空、遥か遠く。
何処からか飛んできたターイズ連合の旗艦が全速力で離れていた残存艦隊に合流。僅かな間を置いた後、一斉に砲門を開いても両機動かない。
『『…………』』
そして更に追加で数秒後。
ロベリアごと潰さんと放たれた大量の砲弾が雨のように降り注ぎ、再び帝国の地を破壊し始めても同じ。
『ぶひいいぃっ、せ、船体を傾けて引っ掛けるんですぞっ! ていうかいっそぶつけてでもっ……ぶひいぃっ!? また被弾したぁっ!? もう嫌なんですぞっ、お家に帰りたいんですぞぉっ!!』
危険を承知で降下してきたディルフィンが影を落としながらシヴァトの元に向かう横で、帝国城の周辺だけが狙われているかのように土煙と爆煙を巻き上げ出す。
その中心ではおぞましく神々しい二つの魔力が、紫炎と白雷とが交差し、最早廃墟の街になりつつある帝都の色を変え続けていた。




