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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
最終章 異界戦国時代編
332/345

第303話 止められない歩み

遅れた上にクッソ長くなってもうたので切りました( ;∀;)


次話更新は明日か明後日になります(_ _(--;(_ _(--;


「お疲れ様ですわ、旦那様」

「ん。……にしたってだけどな、色々と」


 それまでの空気を一変させ、だらりと脱力。寄ってきたルゥネを膝上に乗せて抱き締める。


 小柄な身体に見合わぬ腹の大きさは少し違和感があるものの、フェイとはまた違う香水だか石鹸だかの匂いがするサラサラヘアーの金髪やじんわりと伝わってくる体温が心地良い。


 これで銃やら仕込み刀やらプロテクターみたいな武装が当たってなければもっと良かっただろうに……とは常に暗殺や襲撃を警戒しなければいけない立場的に口に出せん。


「本来の王族、皇族、貴族じゃなく、一平民に過ぎない……それどころか異世界の人間がこうしてこの世界はああだこうだって口喧嘩してるんだぞ……その時点で破綻してんだろうが……」

「それを言われると生粋の帝国人としては耳が痛いですわねー。大体が何処からか流れ着いた放浪民ですし。しかも多分賊……」


 自嘲気味と言ってもトップの俺達が弛緩したからか、周りの雰囲気も柔らかなものへと変わり出した。


「二人ともおっつー。ボクももう疲れたよぉ……」


 フェイやヴァルキリー隊、メイらと共に各地を転々としながら攻め落とし、ついさっき合流したばかりのココを皮切りに各々も口を開く。


「あー……ユウちゃんさ、めっちゃ強がってたけど、技術屋連中からの泣き言ちゃんと聞いてやれよ?」


 アリスからの指摘はごもっとも。確かに略奪した領土への対応に人員を割きまくってるからマジでそろそろガス抜きしないとヤバい。


「シャムザと『海の国』の同盟脱退が響いてるんですぞ。属国を増やしたところで元が貧乏だから瞬間的に肥える訳でもないというのも……ぶひぃ……」


 現実的なジョンの言うことも同じ。ナールやちょびハゲには何度も考え直してくれって内容の書簡を送っているが門前払いだ。よっぽど人の愚かさが身に染みたらしい。


 少しずつ増えている植民地もそもそもが何かしらの強味がないから小国やってた&弱いから落とされた訳で。人が多いとこや作物を期待出来そうな土地は連合に吸収され済み。自ずと帝国も戦力やら何やらを分散させざるを得なくなる。


「あの……んっ……はぁ……はぁ……ね、ねぇ王様……? ウチ、次はいつ交尾すればーー」

「ーーはいストップにゃ姫様ー? 故郷を出れば文化の違いというのがありますにゃ。言うまでもにゃいと思って忘れてたあちきらも悪かったにゃー……けど、アウトにゃ。痴女判定待った無しにゃよ今の発言」


 おずおずとしながらもズイッと近付いてきたレヴィはアリスの相方が止めてくれた。


 上気した頬、若干潤んだ瞳に熱い視線、荒い呼吸、もじもじと擦り合わせている太腿と言ってきたこと以上に様子の方がコメントに困ってたから本当に助かった。


 何か……嫌いは嫌いでも強い=正義な種族性なんだそう。


 後、多分屈服させられることに興奮するタイプだ。強ければ強い奴に憧れる奴だ。目がルゥネとフェイにそっくりだし。


 最初はどうしようかと思ったけど、アリスや副長を見るに皆が皆、帝国人みたいなイカれた感性してるんじゃないと知って安心するんだか寒気がするんだか……。


「……大丈夫かな、この布陣で」


 不安になり、つい小声で溢すと、ルゥネ&ココの帝国親友コンビに笑われてしまった。


「ハッ、良いではありませんか旦那様っ? 私とアンダーゴーレム女、エナ、そこの牝猫……何が不満なんです?」

「あっはっはっ……ボクのルゥちゃんを奪っといて何その言い種? そういうナヨナヨムーブがいっちゃん気持ち悪いんだからね」


 口調は明るく、しかし、目は全く笑ってなかった。


 鋭い眼光……というか殺気を感じた。


 マジで言ってやりたい。


 いや先ず体力が持たないんだわ。


 と。


 揃いも揃って戦闘の前後と手前勝手なタイミングで発情しよってからに……


 フェイ達が居ないからまだ良いものの、メイなんて未だに古典的な誘惑してくんだぞ。園児よりも前からの幼馴染みに今更興奮なんかするかってんだアホか気持ち悪い。


 と。


 何なら喉元まで出かけた。


 が、真意はバレてるとわかってても見栄を張る。


「ポジティブに言えば世界を変えようって運動に跡継ぎがなんだのと今重要じゃないことを抜かされちゃ困るんだよ。大体、した回数と飯の内容を測られて何とも思わんのか。江戸時代の殿様じゃないんだからさ」


 何処の一族とは言わんが、古来、日本にはそういう風習があったと聞く。元一市民の人殺し万歳系野蛮人としちゃ嫌なことこの上ない。つぅか勃つものも勃たん。この前なんか賢者タイム中に「何か気配感じんなぁ……」と事後にベッドの下覗いたらトカゲの部下達だった。目が合っちまったよ。護衛らしい。あれホント止めてほしい。いやマジで。


「ふーん……それ、仮にも史上最大の大事件を起こした人が言うことかな、ユー君さん?」


 そりゃまあ女側の方が嫌だろうけども、とは思いながらの返しはブリッジに入ってきたエナさんのジト目で相殺された。


 腕には俺とムクロの間に生まれた赤ん坊の姿もある。


 こちらは先日迎えの魔国艦隊と共に再会しており、小さな角と小さな牙が見え隠れする一見普通の赤子も「だぁぶっ」とこれまた小さい小さい手を伸ばしてきている。超可愛い。


「世襲制でなくとも血筋の存続は王の義務ですわ。〝力〟を行使した者には相応の責任というものが生まれて然りでしょう」

「ほー……嫌なら世直しなんてさっさと止めて世捨て人になれば良いのに。ねー、ばぶちゃーん? べろべろばーっ」

「う、ウチも一人娘だし、お国のこと考えたら……」


 耳に痛恨の一撃を連続炸裂させられた気分だ。特にルゥネとレヴィ。


 俺の子を変顔やら翼を広げて驚かせたりやらしてるココだってルゥネに唆されたのか知らんが、風呂とか寝床に侵入してきてるからな。


「将来が有望……あるいは今が花で今後も続きそうとなれば……ねぇ?」


 エナさんにはジト目で言われた。


 重荷だな。これでは道化だ。


「見込みがあるだけで勝ち確じゃない。あのクソッタレ勇者はメイの兄。そう軽くは……見れんよ」


 フェイを含め、大半は分散させた艦隊と一緒に行動しており、領土を着実に増やしている。


 その中でも特にメイは突出して強い。


 潜在能力も固有スキルも精神性も全てにおいて並みじゃない。


 事実、降伏に至るまでの速度だけなら俺を上回ってるし、相性的に直接対決すれば俺は負けるだろう。


 となれば……ライはその更に上を行っていると断言しても良い。


 雷擊を自由に扱える奴と雷そのものに変化出来る奴という括りなら話は別だが、装備が違う。


 ライは魔帝軍で最速の俺と同等のMFA『聖装』を装着している。


 その上で俺以上のスペックを持ってやがる。


 ライ&メイ兄妹ならやはり兄の方に軍配が上がる筈だ。


 人を殺しまくってるお陰で俺もステータスだけは追い付きつつあるが……


 才能だけはどうしてもな。


「「「「「っ……」」」」」


 大半が楽観的な中、仮面を外して見せた俺の真剣な表情に皆が言葉に詰まったような反応をする。


 現在の俺達は旧イクシアの上部領土を切り取りつつ、北上。魔国に向かっている最中。


 王位簒奪後、大した説得すら出来ずに出国した身に魔族の信頼は半々。


 ムクロの優しさと甘さに慣れている連中には定期的に俺という存在をアピールする必要がある、という理由からの航行である。


「それがわかってるから殆ど勢力分断済みの今の時代、態々どちらにも反抗して見せる国があるんだろうさ」


 『宣言』の日から進めていた侵略&支配作戦成功の報は日に日に増えている。


 領土で言えば大体、後一ヶ月もしない内に連合軍と魔帝軍で完全二分が可能。寧ろ+αで成果を出せるくらい。


 にも拘わらず、これまでと同じ『逃げ』、あるいは『守り』のスタンスを崩さないのだからどうしようもない。


「抑止力足り得る『ターイズ連合』、『メサイア』が機能してない証拠だ。未だに『きっと誰かが何とかしてくれる』、『勇者様が救ってくれる』などと思い上がっている証明だ」


 物事を俯瞰的に捉えることが出来る、出来ているだろうに、誰もが儚い希望を抱いている。


 それこそ人の愚かさだろう。


 俺だってそうだ。


 感情を捨て切れればもっと無慈悲に、そして簡単に世界を変えられるだろうに……。


 そうして訪れた静寂の間を、まだ一歳児にも満たない赤子が理解出来る筈もなく。

 

「だぁっ……あぶぅっ」


 と、本人なりの意思表示で打ち破った。


「ほらこの子も言ってんぞ、順調に世界征服が進んでてパパ凄いって」

「……翻訳スキルってそこまで万能でしたっけ」

「……いや絶対に幻聴ですね。会ったら絶対抱っこして歩きますし、こう見えて親バカなんですよユー君って」


 ルゥネとエナさんがドン引きしたような顔でコソコソ話し出すが、如何せん密着してるので丸聞こえだ。


「はぁ……そうやって話をはぐらかせるから……」

「「「「「どの口が」」」」」


 呆れてたらこの場の全員にツッコまれてしまった。


 そのタイミングで、真面目に働いていたオペレーター数人が声を上げる。


「報告。前方、有視界に目的地捉えました」

「十分ほどで到着します」

「警告の準備は出来ているとのことです」


 それを聞いたジョンは「では、戦闘配備に付くんですぞ」とオークの身体を揺らしてブリッジを出ていった。


 ヴォルケニスと連結飛行中のディルフィンに向かったんだろう。


「むしゃくしゃしてたところだ、丁度良いな」


 立ち上がる代わりにルゥネを艦長席へと座らせると、俺は背筋をグッと伸ばして続けた。


「先行する。いつも通り俺だけで良い。俺が出たら念の為、魔素撹乱頼む」


 通信系魔道具の妨害電波ならぬ専用魔粒子の散布は最早必須になっている。


 たかが小国、されど国家。連合に救援要請なんて頼まれちゃ事だ。ライの奴なら単独出撃からの接敵もあり得る。


「旦那様も人の子ですわね」

「すーぐ逃げるんだから」

「こういう人になっちゃダメでちゅよ王子様~?」

「きゃっきゃっ」


 ルゥネ、ココ、エナさんのしつこい追及は見ない振り聞こえない振りでやり過ごし、廊下に出る。


「何かあったら呼べよユウちゃん」

「う、ウチも……」

獣人族(あちきら)が魔帝軍傘下にゃってアピールしなきゃですしにゃあ」


 背中越しに届いた声に手を上げて応えたらさっさとカタパルトデッキへ。


「あの緩みよう……信頼の差か、気質……いや、経験の差か……?」

『警告開始までカウントダウン始め。……旦那様? 前も言いましたけど、()()()()は今後禁止ですわよ? 如何に旦那様の最強形態だからと最高硬度を誇る『邪装』の装甲を溶解させる火力なんて尋常じゃありません。溶けた皮膚を剥がして治療する苦労と痛みをわかってくださいな』


 準備中にボヤいていると、艦内放送でも説教された。


 ゼーアロット戦で俺が編み出した、今までに得た技術や〝力〟の全部乗せ状態のことを言ってるらしい。


 あの後、骨すら飛び出てたという全身の大火傷をマナミに『治』してもらっても尚、意識を失ってたのは記憶に新しい。


 幻視痛にも似た苦い思い出に思わず身震いし、「わかっている。確約は出来んがな。ま、痛いのは俺なんだ。無理なくやるさ」と小さく返す。


 【以心伝心】で繋がってるってのに注意してきたのは部下への配慮だろう。


「閣下! いつでも行けます! ご武運を!!」

「了解した。城の制圧が済み次第、兵を出させる。お前らも備えてろよ」

「「「「「はっ!」」」」」


 ルゥネだけでなく、航空兵、整備兵らに見送られ……


 本来、飛行用MMMの発進補助器だったシステムによって弾かれるように艦を飛び出した俺はヴォルケニスを置いていきながら加速。目標である連合の一国、王都目掛けて空を駈けるのだった。


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