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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第6章 世界崩壊編
298/334

第278話 呉越同舟

書けたので……(;^∀^)

来週も遅れるかお休みするかもです。


 いがみ合ってないで助け合いだってことで、立場も思想も過去も関係なく、全軍の全員がバタバタと動き出した。


 頼みの技術者集団『天空の民』とルゥネを含めた帝国の技術屋は各分野、各地に散って打ち上げ用のロケットと全兵の強化兵装、配給兵器の新造、研究準備に。


 ライやノアのように転移魔法を使える聖軍、聖神教の出の奴等は物資調達、各国への応援&救援要請、戦力の増強に。


 マナミとメサイア兵は前回の戦争で方々に逃げ散っていた兵や艦を再集しての完全修復、更には兵糧や弾薬、砲弾、回復薬の複製に。


 俺率いる魔帝軍と正規の帝国軍は聖騎士を使った最速の伝令で本国や同盟国への説明&全戦力の召集に。


 アリス達は通信機材と技術者、調査隊を連れて国許へ。


 大して影響力のない末端兵は炊き出しをさせたり、技術屋達の手足要員に当てたり、【起死回生】を活かす為に色んなもんを割らせたり、買い出しに行かせたりと文字通りの全員だ。


 帝国の転生者組や艦に乗っていた帝国上層部の政治家等もライ達に付かせた。集った魔族や獣人族の有志もまた自分の意思で。これまで敵対関係にあった連中が揃って緊急事態を伝えに来れば事態の重大さは伝わる。そうなれば中立や無関係を決め込んでいた小国連中も他人事じゃないと集まってくるだろう。


 そうして一日、二日と時が経つにつれ、戦力は続々と集まり、時は刻々と進んでいった。


 残念なことに新世界創造軍(ニュー・オーダー)の侵攻を遅らせることは敵わず、幾つかの国が滅びた。


 実験のつもりか、威力確認か、核の使用は時々で兵力が増えていくことだけしかわからない。


 俺達臨時同盟軍が追い付けない、別の策を講じているからと外部に協力を頼んでも、その俺達ですら相手にならない超常の奴等だ。並みの軍隊じゃ足止めすら出来ないのは明白だった。


 しかし、そのことが逆にゼーアロット抹殺、原爆排除に対する同調意思を招き、ビビった遠方国までもが支援物資を送ってきて……と、良いんだか悪いんだか何とも言えない現象を引き起こしたりもしている。


 とはいえ。


 俺達が向こうの状況をある程度掴んでいるように向こうもまた俺達の動きに気付いている。


 分隊は各地に散り、本隊は追おうともせず別方向に突き進む。


 ゼーアロットはさぞ俺達の行動を不審に思っていることだろう。


 魔粒子……ロベリア達が魔素と呼ぶ魔力の粒は古代技術の昇華機構で強力なエネルギーになる。だからそれをその状態のまま転移魔法に転化出来れば全ては無理でも、重要戦力は先回りさせられるとの理屈でフル総動員されている聖騎士達だが、奴等は回復魔法もゾンビの浄化も可能。あまり転移だけに使い潰したくないのが本音だな。無い物ねだりだとも思うが。


 ……というかそんなことが出来るならスカイアークに直接乗り込めないのかと訊いてみたら魔障壁で弾かれて目の前か別の座標に飛んでしまうという答えが返ってきた。世の中、そう上手くいかないらしい。


 しかし。


 大陸中の力自慢や傭兵、冒険者、騎士、兵の集結は大きい。国によっては軍部どころか民兵を募って送らせてきたくらいだ。


 気になる強者連中はというと聖軍序列上位の聖騎士達は勿論、リヴェインやケレン爺ら魔族の特級戦力、俺がその殆どを殺してやったクラスメートの生き残り数人、戦争は懲り懲りだと隠居していたメイの友人達……


 その中には『海の国』が泣く泣く出させたジル様の姿もあった。


「クハッ、まさかあんなに尻の青かったクソガキ共がこうも世界を動かすようになるとはな」

「……ケツ見せたことあったっけかな」

「うんにゃ、風呂とか着替えとか覗いてた。前もバッチリ見たぞ」

「はっ!? 嘘っ、何で!? 可愛い弟子にそんなことしてたの!? きっしょっ、変態かあんたっ!」

「テメェだって何度か覗いてたろうが! 知ってんだぞっ、オレの下着幾つか持ってんの!」

「へぶらっ!? ちょっ、止めろ!? 部下に見られたらアウトアウトっ、一発で士気が下がる! 後、人のマジックバッグにパンツとか着替え突っ込んでたのはアンタな!? 何俺がパクったみたいに……あふんっ!?」


 なんて。


 尻尾ビンタを食らい、顔面パンチ、腹パンをもらいと懐かしいやり取りをしつつ。


 乱雑に肩組んできて「このオレ様を使()()()だなんて良い度胸じゃねぇか。えぇおい?」と頭をぐりぐりされた。


 とか何とか言いながら協力を約束してくれた最後のセリフが「ま、人類滅亡なんざオレだって御免だ。美味い飯も食えなくなるし、殺し合う相手が居なくなるからな」なんだから頼もしいやら怖いやら。


 久しぶりの元最愛との再会は良い匂いがして、とても温かく、闘志が湧いてきた。


 再会と言えばセシリア姐さんもだ。


 一度だけだが、助太刀への感謝を伝えに顔を見せに行ったら思いっきり抱き締められ、存分にそのデカい胸に顔を埋めさせられた。


「この仮面、まだ付けてるの? 痛いんだけど。ていうか顔を見せにきたんじゃないのかしらぁ?」

「う、うるひゃいな、離せっ……ぷはっ、ったく……」


 気恥ずかしい挨拶から無理やり逃れたら『砂漠の海賊団』の連中に笑われてしまい、心が安らいだ。


「おうおう久しぶりだなシキっ、ぶっ飛ばすぞ!?」

「畜生っ、相変わらず俺達の船長に好かれやがって! 爆発しちまえ!」

「アタシ達には強気なくせにねぇ?」

「あはははっ、この女の敵ーっ!」


 嘗て一緒に戦った奴等から新参まで一同これである。


「とんだ挨拶をしてくれる……姐さんのせいだぞ」

「あらぁ? そんなこと言って、口元が緩んでるわよぉ?」


 地理的に合流出来ず、『天空の民』の亡命組がもたらした通信技術でしか会えなかったこの世界の親友達もだ。


『シキ君!』

『こ、こらレナっ、止めんか皆の前でっ、ただの画面だぞっ』


 周りの反応からしてスクリーンにドアップで映っているらしいレナに苦笑いで返し、その横で慌てふためくナールを詰ってやる。


「よぉ豚王子。ちったぁ痩せたか?」

『ふん、言ってろ魔帝。そういうお前は会う度に四肢や目玉を失くしているな?』


 直接会えてれば握手くらいなら交わしてただろう。


 今は二人の近衛兵をしているというヘルト&アカリ夫妻もそう。


『殺す殺す殺す殺す殺す死ね死ね死ね死ね』

『嫉妬は止めてくださいヘルト。……シキ様、またお会い出来て嬉しいですっ』


 少し前のメイみたいな怨み言に血涙を流す悪友の顔を幻視し、口元が緩んだ。


 また、以前は仲間で俺の奴隷だったアカリは何と懐妊していた。


 前会った時は結婚したてで自慢してきたくせに……全く。


『今年産まれるんだってよ。オイラ、今からドキドキしちまって……お前だって子供居るんだろっ? 知ってんだかんなっ』

「お、じゃあ俺達の子は同い年かっ、何か良いなそれっ、大きくなったら遊ばせてやりたいな。……つっても、こんな時代だ。会いたくてもな……」

『身重なので後方支援に回りますが、出来る限りの協力はさせてもらう所存です。………………あの……む、ムクロ様は……その……?』

「……アイツには眠ってもらってる。〝力〟のある奴がそれを使わなければその言動には一定の説得力が生まれる。大衆や遺恨、畏怖のある他種族にもわかる慈愛と自己犠牲の精神はそうしないと保たれないんだ、わかってくれ」


 姐さん達も表向き賊を名乗ってるだけで正規の軍に近しいが、ヘルトらシャムザの正規軍と付近の聖軍、こちらに集まった上級騎士数人で先回りし、新世界創造軍(ニュー・オーダー)を迎え撃つようだった。


 転移魔法があるなら、と思ってしまうのは持たない者の考え方だろうか。


 あの魔法は発動者単体を飛ばすだけでも大量の魔力を消費する特殊なもの。幾ら転用技術があると言っても急拵えで奇襲と撤退を繰り返してのゲリラ戦や足止めは難しいと聞いては如何ともし難い。


「……死ぬなよ」


 ふと訪れた沈黙を破る。


 我ながらやたら重苦しい言葉が出た。


『それは聞けない相談ね。残念ながら』

『世界の危機とあらば不要な争いをしている場合ではあるまい? 何より、我々の背後には祖国があるのだ。我々程度の犠牲で彼奴等を倒せる可能性が少しでも上がるのなら足掻く価値はある』

『何かすげぇ作戦があるんだってな。時間稼ぎなんて地味な役よかオイラもそっちが良かったぜ』

『今回の戦での時間には千金以上の価値があります。それをわかっているからこそ、聖軍も他国も力を貸してくれるのです』


 全員の返答に覚悟があった。


 皆は謂わば決死隊。


 増援にも限りがあるし、負けると知っていながら好き好んで死地に赴こうという国なんぞ居ない。何なら殆どの小国は魔物や食糧といった現実的な問題を無視して逃げ惑い、勝手に自滅しているところもある。


 皆は前代未聞の奇襲案に、成功するかどうか、安全かどうかも全てロベリア達任せの策に……いや、違う。


 俺達に賭けてくれたんだ。


 例え死んででも、時間を作ると。


「ッ……」


 無意識に握っていた机の角を握り潰してしまい、バキバキと凄い音が響く。


『ハッ、まさか泣いているのか?』

『おーおー、魔帝ともあろう男が弱気だねぇ』

「……ヴァルキリー隊と連合のフルーゲル隊を応援に行かせる。危ないと思ったら逃げてくれ」


 それほどの覚悟を持った相手にバカを言うなとは言えなかった。


 アカリの言う通りだ。


 今この時、この瞬間にも奴等の進撃は止まっていない。緩んでもない。


 一分でも十分でも遅らせることが出来たなら……。


『私達は助かるけど……』

『フェイ様? の機体はシキ様にとっても肝なのでは?』

「行くと言って聞かないってのもあるが、あれはあれで引き際はわかっている女だ。大丈夫だろうさ。それに……ゼーアロット本人が出てくるか、核でも使われない限り、ゴーレム乗りは無双出来る」


 アンダーゴーレムは硬さが取り柄。シャムザ軍には量産地上型のバーシスや空戦用のシエレンも居る。フルーゲルは装甲が薄い代わりに完全飛行型で素早く、逆に防御力が極端に低いゾンビ共を蹴散らせる。


 だからゴーレムに関してはどんなに居ても問題はない。


 フェイの我が儘にも困ったものだが、今回ばかりは助かったというのが本音だ。


 連戦を覚悟しての提案。


 戦闘欲だけがアイツを駆り立ててるようにも見えなかった。


「悪いが、何としても増援は向かわせる。これは決定事項だ」

『心配性ねぇ……私達がそう簡単にやられると思って?』

『既に散った他国とは違い、シャムザ軍と向かえるだけの聖軍です。数だけなら半分か、それ以下。1/10、1/20という話ではありません』


 レナとアカリの強がりに対しても、返せる言葉がなかった。


 古代の遺跡が大量に見つかるシャムザの恩恵を最大限に受けた合同軍だ。確かに他を凌駕する戦力がある。


 だが……俺達のような特級クラスが居ない。


 上級騎士も強いには強いが、ノアが俺に勝てないように、今や俺やライの足元にも及ばない。ルゥネ、ココ、テキオにも恐らく……


 結局、弾薬が尽きるのが先か、ゾンビ兵の数に飲まれるor時間を取られるなら核で吹っ飛ばした方が早いと思われるのが先かという戦だ。兵力故に初っ端から核を使うとも思えないが、心配するなという方が無理がある。


 そうして旧友達との擬似的な再会を終えた後は敵とも味方とも言える複雑な関係性の奴との通信だ。


『気弱なシズカを戦争なんかに駆り出して、その上私まで戦場に出させるとはね』


 開口一番、不機嫌な声色を隠そうともせずにそう告げてきたのは同じ理由で合流出来なかったトモヨ。


 話に出たシズカはというと戦争中、能力のせいでルゥネ同様……否、それ以上に大量の人間の〝死〟を身の内に受けて昏倒。マナミに治してもらっても尚、意識不明の状態で眠り続けている。


 本人の心情は兎も角、俺としてはルゥネですら顔中から血ぃ噴き出して気絶したってのに、よく死なずに生き残ったものだと感心する。


 多分、ショック死するより先に意識を失い、脳の損傷だけで済んだんだろう。


「本人が志願したことだ、知ったことか」

『貴方ねっ、あの子の世界への恨みをわかっていながら……!』

「ハッ、保身に走って見放すような国にそのお友達を捨て置き、その挙げ句、すったもんだあって会えたら途端に親友面で迎える奴は言うことの説得力が違うな。あまりの重みに恐れ入るばかりだ」

『……ええそうね、大切だ大事だ愛してるだなんて言いながら最愛の人を刺せる人にはわからないでしょうね?』


 よっぽど戦いたくないらしい。


 シズカのことはほんの僅かしか触れず、徹底して戦いたくないオーラを出された。


 だが、四天王の座を得た以上、トモヨは召集を断れない立場にある。断れば折角築き上げた信用を失うんだからな。


 賢しさ故に逆らえず、こうして最後は戦争に参加させられる。救えない女だ。


「ほざけ女狐。コソコソ隠れて自分だけの戦力を集めてたのも知ってるぞ。我が身可愛さにゼーアロット側に何らかの交渉を持ち掛け、むざむざ断られたこともな。これ以上好き勝手動いてみろ、国家転覆の疑いで俺自ら処刑してやる。死にたくなければ黙って手伝え」

『っ……あの女帝っ、もしかして部下からっ……何キロ先まで読めるのよっ、厄介な固有スキルねっ……』

「それより『付き人』はどうした。まだ帰らないのか?」

『……あの方が戻ってたら貴方なんかにこうまで好きにさせないわ』


 どうだか。


 あの人にしたってコイツの利用価値は四天王の座の保持程度。いずれ切られるとわかっていながら尻尾を振り続けるのは悪手だろうに。


 相手はジル様やムクロ、件のゼーアロットをも越える強者。生物としての格が違う奴を、下側の奴が完全に理解するなど不可能だ。


「お前が持つ命への執着もまた、ロベリアの言っていた欲だ。死にたくないという慎重さと臆病さは己を守るかもしれないが、そればかり気にしていればいずれ足をすくわれるぞ」

『偉そうにっ……』


 これでリヴェイン達よりかは古代技術の扱いに長けているのがな……


 ま、ぐだぐだ言われようと、シャムザ軍と共に防衛戦という名の人身御供になる気がないなら例の作戦に組み込むまで。


「適材適所だ、旧魔王軍の艦隊指揮は任せた。四天王や軍団長クラスならいざ知らず、他は戦争なんざ経験のない烏合の衆。精々生きる為にしごいておけ」

『言われずとも。そっちこそ、この私がベットしたんだから絶対に勝ちなさい』


 その返答は傲慢な性格の表れというより、本当に自分だけが大切なんだっつぅ意思表示なんだろうなと思わせた。


 今までもこれからも自分が生き残る為には何でもする。そんな自分がお前に賭けたんだぞ、と。


「クハッ、半か丁かも決められない奴が何を言う。状況で仕方なく嫌々賭けただけだろうが」

『白か黒しかない世界の方がおかしいのよ。貴方だってその犠牲者でしょうに』

「TPOの話だ。そういう風にしか見れない我が身を呪え」

『はぁ……私のことをどう思っているのか知らないし、知る気もないけど、私は私でそれなりの道を通って地位を得たの。自分の方が頑張ってる、みたいなマウントなら聞きたくないわね』


 話にならんな。


 俺は無言で部下に通信を切らせると、やれやれと肩を竦めながら艦長席に座り込んだ。


「ったく、たまに居る何でもマウント認定厨は何なんだ? それこそ俺の捉え方が悪いのか? ウザいったらありゃあしない……」

(わたくし)から言わせてもらえば気にする方が悪ですわ。ムカついたら殴ってわからせる。どうです、世界は単純でしょう?」


 思わず出た悪態に反応したのは丁度、背後の扉から入ってきたルゥネ。


 椅子の後ろからくるりと空中一回転して俺の膝上に乗ってくるのは良いとしても、うんうん頷いてんのが近くで控えてるトカゲや帝国兵くらいなことを自覚してほしい。


「やはり暴力……暴力は全てを解決する……」


 ……メイ、お前もか。


 同じくしれっと近付いてきながらボソッと聞こえてきたセリフに呆れて返す。


「おいお前はこっち来んな。後、散々っぱら弱肉強食論を唱えといてアレだけど、九割くらいだから。時代とか世論とかもあるだろ」


 最初から話し合いだけで物事を決められるなら〝力〟なんて本来は要らない。争うのは人間がそういう生き物だからだ。世が世ならムクロやライ、マナミが謳う、歯が溶けちまうような甘々な戯れ言も罷り通っていただろう。


「もうっ、ユウ兄ってホント自分勝手っ! 聞いたんだからねっ、ルゥネさんも子供出来てたってっ!」


 義手の手のひらを広げて押し出し、明確に拒否の意思を示すと何やら本気の怒りとなって返ってきた。


 嫉妬とかじゃなく、論理の方にイラついているらしい。まあムクロや子供の件で前々から反感を持たれてるっぽいからな。未だに《光魔法》の気配を感じる時あるし。


「……因みに誰から?」

「転移魔法覚える為に色々見て回ってたらうちのバカ兄貴が妊婦さんに負けかけたのかってショック受けてるとこ見かけたよ。何かマナミさんが『再生』の力を通した時に何となくそう感じたみたい」


 へぇ、【起死回生】にも感触や俺の実感みたいな能力が付いたのか。


 何て考えながらも、首に手を回して甘えてくる愛しの女帝の頬に軽くキスしたりして和み、横からキレられること数分。


 そろそろ……みたいな雰囲気でルゥネが切り出した。


「懸念していた通り、獣王がこちらの要求を拒否したそうです」

「……マジか。ガチで頭固いなーアイツ……」


 流石に再生せず、けれども肩くらいまで伸びてきた甘い匂いのする髪を撫でつつ、再度椅子に全体量を預ける。


「いや何友達みたいに言ってんのユウ兄。会ったこともないくせに」


 チクリと飛んできたツッコミもスルー。


 王をやるのは中々に疲れる。


 何聞いても何でやねんってなる。


「調査も断られたそうでアリス様が憤慨してましたわ」

「んー……国の遺産を戦争に使わせてくれは無理がある……か……?」


 いやでもそんなこと言ってる場合じゃなくね感が強い。付け足すと多分、アリスはその場で王様ぶん殴ったと思う。


「えぇ。ですので、処遇が決まるまで謹慎。その上、クーデターや下克上を疑われて監視の目が緩くなったらしく、部下の方達が調査隊に手を貸してくれているそうです」


 【以心伝心】で俺の内心を知ったルゥネがそう告げてくる。


 やっぱりかと頷けば良いのか、口より先に手が出るその短絡さを嘆けば良いのか。


 戦争に使いたいっつって他国の人間連れてきてんのにアホアリスに集中する奴等も何だかなぁとも思うし、それだけ脅威として捉えられてるんだろうなぁとも思う。


 ま、俺は責められる立場じゃないな。どの道、俺達が使うと言ったら使うと決まっている。例え死人が出たとしても押し通る。


 とはいえ、やはり溜め息は出てしまう。


「はああぁ……上手くいかないもんだな……」

「あ、子の件なら私のせいですわ。その……アレに穴を少々……そ、そろそろと思っていましたし……」

「計画的犯行っ!? ルゥネさんっ……恐ろしい子ッ……!!」


 恥ずかしそうにクネクネしながらの衝撃発言にない目を剥き、メイがギョッと後退った。


 あのさ、時期考えろよ……いやマジで。


 と、一瞬本気で頭に来たのは内緒にしたい。バレてるだろうけど。


「……てへへ」


 皇族らしからぬ照れ笑いに、俺は今度こそ鋼鉄以上の硬度を誇る拳骨を落とした。


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