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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第5章 魔国編
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第251話 全力勝負

すいません、遅れました(;>_<;)


 魔粒子で動くものの爆発だからか、ちょびハゲの乗っていた恐らく『海の国』の旗艦であろう戦艦の至る箇所で起きている連鎖爆発がよく見える。


 加えて魔力の通った装甲から全体の形状、ジル様が突っ込んで出来た穴も。


 そして、生命エネルギーを読み取るアンダーゴーレムのレーダーだかカメラだか両方の機能だかを小型再現した左の義眼も完全無傷な誰かさんを装甲を透視するような形で捉えている。


 生命力……HPが高過ぎるのとエネルギーの塊である〝気〟のせいだろう。


 本当に眩しい。


「クハッ……よくもほざいたな」


 規模的には小さくても、戦艦的には致命傷に近い……エンジン部の直ぐ側に開いている穴からの声。


 「二言はないな?」と続き、「ないッ! こうなったらとことんやってやるさ!」と威勢よく返す。


 今度は余計な邪魔が入ることはない。


 前回はこっちのよろしくない状況と第三勢力の強襲も相まって逃げたが、今回こそギャフンと言わせてやる覚悟だ。


 大体、ジル様は勝手が過ぎる。


 世界を自分中心に振り回せると考えているのなら大間違いだ。


 例え固有スキル無しでゼーアロット並みの強さがあろうと、人間は人間。


 種族も特性もステータスも格も違う。


 聖神教の定義で言えば正反対の答えが返ってくることは容易に想像出来る。


 だけど、俺からすれば同じように息をして話し、食って寝て楽しんで悲しんでいずれは死にゆく人間だ。


「だったらっ……!」

「やりようはあるってか! よく言ったっ!」


 穴の中から何かの部品や破片を踏みつけながら出てきたジル様は深蒼の刀剣を肩に乗せると、静かに名乗った。


「世界最強が剣聖のシルヴィア」


 この世界において名乗りは文化。


 そう教えてくれたのはこの人だったなと懐かしく思った。


 殺し合い……特に決闘間で名乗られたのなら返すのが筋というもの。


「魔王軍が一兵卒兼魔王の男シキ!」


 手甲の爪を構え、どうとでも動けるよう義手をぶらんぶらんと宙に浮かせる。


「クハッ! いざ尋常にっ!」

「勝負ッ!」


 始まりの合図を告げた次の瞬間。


 俺は爆発が起きたような音と共に吹き飛ばされていた。


 何が起きたのか。


 その挙動を見ることすら出来なかったが、恐らく一瞬で距離を詰められた。


 刀剣で攻撃された。


 角度の予測は済んでいたし、衝撃の強さも何となく掴めた。姿形の影のような残像も見えていたから義手で防げた。ダメージはない。


 逆噴射による制止も可能になりつつある。


 となればどうなるか。


 即ち超高速の空中機動戦である。


 ガキンガキンと、俺達が交差する度にけたたましい金属音と火花が散り、その反動で互いに吹き飛ばされ、スラスターと翼による推進力を糧に再度獲物をぶつけ合う。


 無言で殺しの技術の応酬を繰り返すこと数分。


「パワーは良しッ! だがっ、スピードは落ちたなッ!」


 俺の動きを確め終えたジル様にそう笑われた。


「んなのは元から負けてる部分だろっ、他で勝つッ!」


 正面からやり合う道理がないことは前回で痛いほどわかっている。


 だからこそ巨大義手による振り下ろしの爪が刀剣で軽く払いのけられようともう片方の爪で、深紅の刀剣で、蹴りでフォローし、一定の回避運動を欠かさない。


「っ、ちょこまかとっ……!」

「ハッ! 動かなきゃやられるんで……ねっ!」


 滞空する白銀の竜人を囲むように縦横無尽に飛び回り、時々は奇をてらうつもりでマジックバッグマントから取り出したグレネードランチャーでゼロ距離射撃。


「でえぇいっ、ウザってぇ!」

「うおっ!? っとぉっ……!」


 近付き過ぎたのだろう。


 見た目以上に伸びる竜の尾が空を薙いだ。


 咄嗟に急上昇は掛けていたが、義足を掠め、横に大きく体勢を崩された。


「クハッ、そこッ!」


 神速の突き。


 魔力や生命エネルギーを光らせて擬似的な視界を生み出す義眼だからか、初動すらわからない殺す気満々の剣が俺の顔面の真横を貫き、耳元で腰が抜けそうになるような音が鳴る。


 っ……本当にこの人はっ……!


 と、冷や汗と変な笑みが止まらない。


 ゾクゾクする。


 良いゾクゾクだ。


 スイッチが――






 ――入った。


「フッ……ハハハハッ! ハズレだっ、アホ師匠っ!」


 両肩、両胸からの魔粒子噴射で距離を取った俺はそのまま後退しながら義手で殴り付ける……のではなく、その直前で義手の甲に仕込んでいた赤熱長針(ヒートニードル)を射出。リーチも耐久力もない代わりに爆発的な殺傷力を発揮する暗器で以てご自慢の美少女面を思い切り突いてやった。


「誰がっ……はぎゃっ!?」


 何処をどう攻めても剣か尻尾で弾かれるか、直撃しても全く意に介していないのがどうにも癪に障っていた。


 だが。


 究極的な防御力をその身に纏わせる〝気〟は意識して扱う代物。


 義手の大きさから『面』でガードしていたところを、『点』で攻撃されれば貫かれもする。


 初めてダメージが入った。


 初めてこの人の悲鳴を聞いた。


 たかだか皮膚に数センチ食い込んで額から血を流させた程度。


 所詮は暗器に過ぎない針も根元からポッキリ折れて落ちていった。


 だというのに。


「ふひっ……身体の奥から熱くなってきたッ……! 本当にどうしようもないな俺はっ! えぇっ!? 震えちまいそうだよっ、女ァッ!」


 欠けたどころじゃない隠し武器の残骸を捨てながら思わず吠えていた。


「いっ……ぅ、くっ……!?」


 久しぶりに感じた痛みに驚いたんだろう。


 ジル様は額に手をやって唖然としているようだった。


 しかし、やがて「クハッ……」といつもの狂気的な笑いを溢し始める。


「血……? このオレ様が……? 血……血だとっ!? クハッ、クハハハハハッ!! 腐っても女の顔に何て酷ぇことしやがるっ! あぁっ!? このバカ弟子ィッ!」


 何が嬉しいのか。


 いや、わかる。


 圧倒的強者とは孤高であるということだ。


 人間性を犠牲に強くなった俺がライ達に切り捨てられたように、この人は孤独の道を行った。


 その規模は俺なんかとは比にならない。


 誰も隣に立てない。


 立とうとすらしない。


 足元にも及ばない。


 会う奴会う奴が有象無象であり、羽虫。


 だが、その羽虫が蜂のように攻撃してきたら?


 何も代わり映えのしない灰色の世界に新しい刺激、彩りが加えられた。


 だから嬉しい。


 いつからだろうか。


 この人の孤独感が理解出来るようになったのは。


「「クハハハハハッ!」」


 久しぶりのスイッチと初の戦果に高笑いしてしまい、向こうは向こうで馬鹿笑いする。


 何かが気に食わなかった。


「何がっ!」

「おかしいっ!」


 俺達は再び『海の国』の艦隊の間を縫っていくように飛び回り、ぶつかり出した。


「こいつぁ失敬っ、腐ってる自覚があったかっ! 歳食ってるもんなぁそのナリでッ!」


 義足の脛に当たる部分から足の甲に掛けて仕込んでいる赤熱刀身(ヒートソード)を露出させ、服と靴が切れ、燃え落ちる中、気にせず回し蹴りの要領で振る。


「中身の話かっ!? それならテメェはどうなんだよクソ弟子! あの女はオレ以上の年増だぞっ、この熟女好きがッ!」


 刀剣でガードされ、返すように放たれた左の蹴りをひょいっと跳び跳ねて躱す。その流れで空中横一回転……からの両足を使った二連撃を繰り出したが、今度は尻尾でくるぶしを叩かれてあらぬ方向へと向かされた。


「熟っ……ムクロのことかッ!?」


 言いながら手甲の爪で突き、鱗の生えた膝で受け止められ、義手は尻尾でぐるぐる巻きにされて抑えられ、「他に誰が居るッ!」と頭突きが飛んでくる。


 ズガアァンッ!


 空気が弾けたような音が響いた。


「いぎゃっ!? かっ……はっ……!?」


 《金剛》と魔粒子の保護、更には《空歩》を使ってまでその場で受け止めこそしたものの、脳が揺れた。


 ない筈の視界がチカチカした。


 星が舞ったように感じた。


 ボーッとする頭を何とか働かせ、せめてもの仕返しを決行する。


「み、醜い嫉妬は止めやがれっ……蜥蜴風情がぁっ!」

「バッ……嫉妬じゃねぇっつったろっ、尻の青い小僧っ子がっ!」


 予想通り、乗ってきた。


 くるりと回転しながらの尻尾攻撃を再度義手でキャッチ。万力のような力を発揮する魔導機械に物を言わせ、竜の爪のように鋭い指爪を食い込ませていく。


「っ……!?」


 読心スキルで何をされるのかを読み取ったジル様から僅かに、しかし明らかに『あ、ちょっとヤバイかも……』みたいな息が漏れた。


「そ、のっ……言い方っ……まさにババアだなっ、最強最悪っ、最恐で最狂の自称美少女様よぉッ!?」


 先程見せた大回転再び。


 義手の装甲がカシュンカシュンカシュンと小気味の良い音を立てながら伸びに伸び、今度は推進力をも足して真横を通り過ぎていった魔導戦艦の船腹に叩き付ける。


「ガッ!?」


 脳震盪が思った以上に深刻だったのか、たったの一撃で離してしまったが、ジル様は頭から恐ろしく硬い装甲にぶち当たって凄い音と悲鳴を上げると、沈黙した。


「~~っ! はっ……はっ……はーっ……はーっ……いっ……? っ、くっ……!」


 途端に肩で息をしつつ、未だ痛む頭部を押さえ、流血していることに気付いて急いで後退する。


 空を自由に舞える人竜魔気一体の飛行形態と言えば聞こえは良いだろう。


 だが、生憎ジル様は空中戦に慣れてない。


 何故ならあくまで剣士だから。


 剣聖だろうが何だろうが地に足を付けて戦ってきた人だからだ。


 技術革新で戦闘域を空へと移されたツケ。例え自己流、単身単騎でその領域に踏み込める逸材であろうと経験不足は否めない。


「ふーっ……ふーっ……に、人間で剣士っ……それだけで多少の隙があんだよっ」


 誰に言うでもなく呟きながら回復薬を追加し、一息つく。


 また一瞬で距離を詰められても面白くないので後ろへ後ろへ退がっていると、そんな俺達に気付いた周囲の艦が蜘蛛の子を散らすように飛び去っていることに気付いた。


「会合があるんじゃ……あぁ、ちょびハゲの艦は何とか着陸してたのか。……ってことはこれ全部護衛艦かよ」


 脱力しながら見れば先程俺とジル様が穴やら何やらを開けまくった一際大きい魔導戦艦が帝城の城壁内に横たわっていた。


 あれでは不時着だ。周辺に散らばっている魔力反応からして大した被害はないようだが、よく都の方に突っ込まなかったなと感心してしまう。


 ま、テキオ達がどうにかしたんだろう。


 それよりこっちだと、別の対象に気を取られていた意識をもう一度ジル様の方に向かせる。


「随分と……余裕だな?」


 普通に目の前まで来ていた。


「……アンタ、ホラー映画とかに出れるな」

「は? 何の話だ」


 マジでビビった。


 つぅかピンピンしやがってこの女……


「うんにゃ……言うほど無傷でもねぇ……ったく容赦のない奴だ。お陰で血が止まらん……こんなのは久しぶりだ、何十……いや、百年以上ぶりか……?」


 魔力も〝気〟も、殺意も闘志もまるで減少しているようには感じられないものの、それなりの怪我は負わせられていたらしい。


 獲物を持ってない方の手が自身の頭部を痛そうに撫でていた。


「言うほど、か……ならアンタが思うほど俺に余裕はないってこった」

「ほざけ。少し見ない内に色ボケしやがって」


 思わぬ言葉に思わずズッコケ掛ける。空中なのに。


「ルゥネのことか? それともエナさんとかフェイ? まさかメイも含めてるんじゃないだろうな」


 この人が見たことある繋がりで言えば姐さんもかと、今一番会いたい顔が脳裏を過った。


「チッ……確かに『付き人』の野郎が見せた未来でも似たようなことにはなってたけど、顔触れが全然違ぇじゃねぇか……お、オレも居ないし……」

「あ? 何だよアンタらしくない。もっとハッキリ話してくれ」


 聞こえてはいたものの、何処か拗ねたような口振りにイラッと来てツッコんでしまった。


「っ!? うっ、煩い煩いっ! 死ねッ!!」

「いやいきなり直球だなっ!?」


 真横に向けた魔粒子の急噴射が間に合い、ザァンッ!! と空気が裂ける音と気配がそれまで居た空間を通り過ぎる。


「前も言ったけど殺す気かっ!」

「煩い死ね黙れ死ね殺すぞ死ねぇっ!」


 子供か。


 〝気〟による飛ぶ斬撃の嵐が吹き荒れ、口を開く余裕すらなくなって回避運動に集中。上上左斜め後ろに下右と思わせて急上昇からのバク転半身ダッキングと避ける避ける避ける。


 加減速の調整と発生するG、向きによって体勢を考えないといけないのが煩わしくてしょうがない。


 しかし、ザザザザァンッ! と絶え間なく飛んでくる殺意100%の斬撃に対応するには動き回る以外の手はなく。


 結果、《空歩》&《縮地》コンボによる接近を許すことになる。


「硬いものにはッ……!」


 珍しく熱のない台詞を吐きながらの正拳突き……に近い一撃。


 三度目の正直で今度こそ初動は確認出来た。


 義手による防御も余裕を持って間に合わせることが出来た。


 が、しかし。


 ジル様が放ったのはいつだったかアリスが見せた〝気〟を流す技術を応用した拳。


 ミシッ……ピシッ、ピシッ……!


 受け止めた手首の装甲からそんな嫌な音が肩、胴体、足先に掛けて伝わってきた。


「っ!? 貴重な一点モノにっ……!」


 言っている間にその衝撃が遅れて襲来し、舌を噛む勢いで吹き飛ぶ。


 真っ直ぐ突き抜けた為か、幸い〝気〟による危険な波紋攻撃は生身の部分まで届くことはなかったが、それでも魔粒子逆噴射による制止は追い付かない。


 内部からの破壊を目的とした究極の防御無視。


 アリスがアンダーゴーレム相手に使っていたほどの技術だ。


 ――二度目はないっ……!


 ――これ以上は義手も俺の身体にもガタが来ちまうっ!


 ――とくりゃあッ……!


 分裂し、高速回転した思考が出した結論は次の直撃=死。


「クハハハッ、知ったことかよッ! おらっ、もう一撃ィッ!!」


 ジル様は調子付いて追随してきていた。


 この人にはフェイントも誘いも効かない。


 有効なのはやはり初見殺しと知らない武装……それもチャンスは一度のみ。一回でも見られれば即対応される。


 全くこの人は……!


 何処まで凄い人なんだ。


 つくづく尊敬と憧れの念が絶えない。


「ははっ……まだ慣らしだって十分じゃないってぇのにっ!」

 

 強がるように笑って返した俺は十メートル以上離れているジル様に向かってトーキックを放った。


 瞬間、義足の足首から先が接続部分である伸縮アームによって急伸し、『崩落』の肉と鉱石、何処かの誰かさんの鱗で構成されている足先は俺の膂力を乗せて飛んでいく。


「っ、こんなもので――」


 案の定というべきか、少しだけ驚いただけで容易く刀剣で弾かれる。


 故に。


「――止まる訳ねぇよなッ!」


 と、もう片方の義足も伸ばし、足先ではなくアームの部分で横向きに薙ぐ。


 ルゥネ曰く、本来なら足にも指爪を付けたかったし、更にそれを個別に伸ばして有線式のアームクローにもしたかった代物。


 素材&時間的に断念したが、俺の武装は全て超硬度を誇る。


 伸縮アームだって常人が食らえば真っ二つ待った無し。


 しかし、相手は世界最強。


 二つ目の初見殺しは身をくるりと回転させ、減速もせずに躱して見せた。


 当然……


「オレ様の距離に入ったなッ! 残った左腕も斬り落としてやるよぉっ!」


 《空歩》で空を踏み締め、《縮地》で最後の距離を詰めてくる。


 対する俺は義手の新たな特殊ギミックを展開。


 カシャンッ、カシャンッ……と端から見れば独りでに動き出した義手は上腕部を花のように開かせ、四つの仕込み腕が同時多発的にバラバラに動き出す。


 本体と合わせて計五つの腕は装甲をそのままに内部機構を弄っただけなので思考系スキルを駆使すれば個別識別も別々に動かすことも可能。


「おっ? おおっ?」


 なんて、俺の左肩目掛けて刀剣を振りながら目を丸くしたみたいな声で驚くジル様。


 魔粒子で左腕前腕を盾にさせ、《闇魔法》の〝粘纏〟を極少量だけ発動。刀身が当たるであろう部位を覆う。


「小賢しい奴っ、斬れないと思ったかッ!?」


 思う。


 そう返す余裕はなかった。


 ただ蒼い刀身が〝気〟と魔力による残像を作りながら俺の腕に振り下ろされる様を見ることしか。


「ぐっ……があああぁッ!?」


 サクッ……と豆腐か何かでも切るように少しの抵抗もなく手首と肘の中間の皮膚が、肉が、骨がソレを受け入れていく。


 先ず間違いなく半ばまで入った。


 神経をやられたかもしれない。


 が、そこまで。


 賭けには勝った。


「っ……!? くっ付くってのはそういうっ……!」


 オーク魔族のゲイルがやったように傷口を癒着させた。


 蒼い刀剣ごと吸着させた。


 これでこの人は。


 武器を失った。


「~っ……ま、だァッ!」

「ぐうぅっ、し、尻尾があるっ……かァっ!?」


 痺れるような激痛に悶絶しながらも鞭の如く迫ってきた竜の尾を先程展開した仕込み腕四つを使って受け止め、そっちの方も〝粘纏〟で吸着させる。


「っ!? だとしてもっ!」


 最後は拳。


 義手さえ壊せばと細くなった金属の腕に向かってアッパー気味の拳を放ってくる。


 破壊力だけ見れば最も厄介な攻撃。


 だが。


 義手は義手。人の腕とは違って、あらぬ方向に折り曲げても問題はない。 


「なっ……!?」


 カクンカクンッ……ガコンッ……! と、肘が正反対に曲がって拳を躱し、そのまま伸びて俺の背中を回り込むようにして左脇の方から出現。


 無防備なジル様の腹に手首を返して開いた手のひらを優しく当てる。


「ちょいと無理はあるがっ……」


 ジル様には俺の肩辺りに取り付けられたマナコンデンサー(紫色の宝石)とカパッと口を開いた手のひらの中心が怪しく光って見えたことだろう。


「くっ……クハッ……! な、何かしようったってっ……テメェごときが――」

「――犠牲も無しに勝てる相手じゃねぇことはっ……」


 足癖と諦めの悪い人だ。


 文字通りの悪足掻き。


 強がって笑い、足を振りかぶってまた蹴ろうとしてきていた。


 とはいえ。


 俺が小型魔導砲を放つ方が早い。


「この身に刻み込まれてんだよッ!!」


 被せるように吠えた直後。


 その強さを、この世界での生き方を説いてくれた張本人はルゥネ特製の超強力かつ暴力的かつ破滅的な破壊力を実現する魔力の奔流の中に消えた。


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