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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第1章 召喚編
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第26話 いざこざ


「さあっ、その女の子を賭けて決闘だ!」


 ……嘘だろ(白目)


 こんなのがライと同じ存在なの? こいつが魔王倒すの? マジで? 人を賭けるとか言ってはりますけど……


 ギギギ……と壊れた機械のようにライ達の方を見ると、一斉に「いやいやいやっ、こっちに振らないでっ?」と手を振られた。ジル様とリュウはニマニマしてた。他人事だと思ってこいつら……!


「と、取り敢えず幾つか言わせてもらって……い、良いか?」


 あまりの困惑とドン引き具合に上擦った声を出しながら挙手する。


「ふん、何だ? 今更命乞いか?」


 鼻で笑われた。


 命まで取るつもりだったのか……


 アカン、完全に会話が通じないタイプや。


 本気で白目を剥く勢いで硬直してしまう。


 それが悪かったんだろう。


「はっ、黒堂よぉ。奴隷買わなきゃ女一人言うこと聞かせられねぇとか随分情けねぇな? それでも男かよ」


 早瀬まで便乗してきた。


 もうやだマジで帰りたい。


 相手するのが面倒臭い+何か宇宙人と話している気分になってきた。


 更に言えば今の発言には流石のイケメン(笑)も「うんうん……うん……?」と首を傾げてるし、ミサキさん達には絶賛ゴミを見るような目で見られている。


「勘弁してくれよ……俺が何したってんだ……」

「クハッ、何もしねぇから舐められんだろうがよ」


 後ろから鋭い指摘が入った。


 まさかの裏切りである。


「ほらユウっ、言ってやってっ、ヒューヒューッ!」


 謎の応援が入った。


 まさかの煽りである。


 ジル様は兎も角、リュウ……お前は許さん。後で顔面パンチだ覚えとけ。


 内心、怒り心頭になった俺はこめかみをピクピクさせながら返した。


「お前らいい加減にしろよ、人が大人しくしてりゃあ付け上がりやがって……」


 決闘だぁ? 上等だコラ、死ぬ気舐めんなよ? パンツ一丁でしばき回したろかい。


 という冗談にしても、今になって段々イライラしてきた。


 何だこいつら。


 何なんだこいつら。


「……? 何怒ってるんだ?」

「おー怖ぇっ。マジ漏らしそうっ、くひゃひゃひゃっ!」


 一人はキョトン顔。


 一人は心底バカにした顔で言ってきやがった。


 …………。


 プッツン来た。


「アカリ、ジル様の後ろに待機だ。悪いけど、命令な」


 小声でそう言ってアカリを下がらせ、イケメン(笑)達の前に出る。


「幾つか言わせてもらう。第一に、賞品扱いしたアカリに謝れ。第二に、帰れ。第三に……これ以上俺を怒らせるな。子供じゃないんだ、怪我じゃ済まんぞ」


 努めて殴り付けたい衝動を堪え、わなわなと震えながら言うと、二人はおどけたように目を合わせ、大袈裟に肩を竦めた。


「う~ん……? は、話聞いてたかい? 決闘しろと言ったんだけど……」

「ってこった。残念だったな黒堂。テメェの意見なんざ端から聞いてねぇ。黙ってサンドバッグになりやがれ」


 どうやらイケメン(笑)は素で言っているらしく、早瀬はわかってて言っているようだ。


 まあ……早瀬とは日本で何度か揉めたことがあるからわからなくもない。


 だが、イケメン(笑)。こいつは……何だ?


 怒り過ぎて冷静になり、また逆転して怒りが甦り……の繰り返し。


 意図せずして《闇魔法》を使った時みたいな嫌な気配が辺りに漏れてしまう。


「っ……!?」

「な、何だぁ? 気色悪ぃなっ」


 怒気とジル様に習った殺気も出たのか、二人だけでなくミサキさん達まで後退りした。


 ライ、マナミ、リュウは「あ……ヤバいこれあいつキレたぞ」、「ユウ君が怒ったーっ!」、「よっしゃあやったれユウっ!」と各々好き勝手言っている。気付かなかったらしい。


 ……いや、ライの顔が一瞬ひきつった。


 ライだけは気付いたな。そりゃそうか。俺とは真逆の存在だもんな。


 そう冷静な部分が分析し、納得するのをよそに、俺の口と身体は怒りに身を任せて勝手に動いている。


「この際だからもう一つ言わせてもらおうか」


 指を差し、嘲笑うような笑みを浮かべながら言っていた。


「この世界に来て何が一番面白いってな、お前みたいのが救世主たる勇者様なことだ。人の話を聞かない、言ってることは支離滅裂、やることも子供、今も見下してる俺なんかにビビって一歩退く。……神様、人選ミスってんだろ、どう考えてもよ」


 イケメン(笑)からの返答はなかった。


 ただ無言で自分の足を見つめ、スッとその目を細めると、苛立ったように俺に向き直った。


「……シュン、やっちゃおうか」

「っ……お、おうよっ、俺達にこんな態度を取ったことを後悔させてやろうぜっ!」


 早瀬の方は割りと腰が引けていたものの。


 二人は剣を抜き、山賊のように襲い掛かってきた。


 勇者と盗賊。


 こいつらこそ真逆だろとかこいつらが手を組むのかとか二人で一人をいきなり襲うのかとか……ツッコミどころは沢山あるが、仲良く同時に獲物を振り下ろしてきたのでこちらも抜剣。二つの剣を受ける。


 ガキキィンッ! と、甲高い金属音と火花が散った。が、俺の腕は微動だにせず。


 二人のステータスはライ以下だ。


 そう確信出来るほど遅く、軽かった。


 とはいえ、簡単に防がれても尚自分達の方が上だと思っているようで、剣と同じように揃って笑みを浮かべ、相も変わらず馬鹿にしてくる。


「はっ、バカがっ! 僕達二人の攻撃を同時に受けるなんて!」

「一人が二人に勝てる訳ねぇだろっ! 足し算もわかんねぇのかよ!」


 鍔迫り合いがしたかったのか、二人はギリギリと音を立てながら剣に力を込めるが、対する俺は一歩も動かない。


 それどころか剣先がぶれることもない。


 向こうは二人掛かりで、かつ両手なのに。


 俺は片手で受けているのに。


 高揚した二人の目と俺の冷めた目が交差して漸く理解し出したらしく、顔と声に段々と焦りが帯びてくる。


「っ!? こ、このっ、さっさと諦めろよっ! しつこいんだよ!」

「な、何なんだこいつ! 俺達の攻撃を片手で……!?」


 どう料理しようか。


 てか攻撃してくるなら別々にしろよ、何で同時に? 意味ねぇだろ。


 そう考えていると。


「くっ……何かのスキルのお陰だなっ!? 食らえ! 【唯我独尊】!」

「なっ、おいっ!?」


 イケメン(笑)が自信満々の顔で自らの固有スキルを発動させた。


 何故、報告したし……


 【唯我独尊】は自分の身体を中心とした半径数メートル以内に居る全生物のスキルと固有スキルを無効化する能力だ。


 デメリットは文字通り自分が一番偉いと自惚れるような性格になってしまうこと。


 まあそれは見ての通り。


 そして、もう一つ。


 範囲内の全ての生物が対象であること。


 無効化したい一人だけを狙い打ちすることは出来ない。


 台詞や無駄に勝ち誇った顔からして何かのスキルのお陰と思ったようだが、俺とこいつらの違いは単純なステータス。


 現に発動させた後も常時発動型の《身体強化》スキルが無効化され、若干体が重くなっただけで済んだ。


 力負けする様子もない。


 寧ろ、【唯我独尊】の効果の範囲内に居る早瀬の方が明らかに弱体化した。


 素のステータスがそんなに高くないから《身体強化》スキルを無効化されると動き辛いんだろう。


「……っ! このっ、このっ……な、何だっ、何でこんなにっ……!?」


 何に拘っているのか、イケメン(笑)は何度も剣を振り下ろして獲物にぶつけてくる。


 あくまで上から捩じ伏せたいらしい。


 が、やはり無意味。俺の腕が下がることはなかった。

 

「~っ……! おっ、らあぁぁっ!」


 と、今度は持ち直した早瀬が回し蹴りを放ってきたので軽く掴んで止め、引っ張って転ばせる。


 ちょうどイケメン(笑)に当てるように引いたのが良かった。


「うおっ!?」

「ちょっ、シュンっ……!?」


 俺とライですらかなりのステータス差だ。抵抗虚しくふわりと浮いた早瀬は思わずといった顔でイケメン(笑)に掴まり、行動を阻害した。


 瞬間、やり返すように敵意の抜けた剣に向かって剣先を振り当て、弾く。


「っ……!」


 手からすっぽ抜けるように飛んでいった剣は遥か遠くに消え、当の本人は両手を振り上げる形で硬直。憎々しげに睨んできた。


「……まだやるか? 刃が欠けちまうから諦めてほしいんだが?」


 そう声を掛けながら首元に剣を伸ばすと、「て、テメェっ、調子乗ってんじゃねぇぞ!」と地面に転がっている早瀬が粋がってくる。


 俺は無言で未だ早瀬の右足首を握っている拳に力を込めた。


「いっ!? ぎぃやあああっ!? いてぇいてぇいてぇっ! 離せっ、何しやがるっ!?」


 指でゴリゴリ擦るようにして痛みを与えていたら反対の足で必死に蹴ってきたのでパッと手を離し、地面に落とす。


「ぐえっ!?」

「ちょ、ちょっとっ、止めなさいってば!」

「っ!? み、ミサキっ、離せっ、こいつはっ!」


 顔面から落っこちた早瀬の横でイケメン(笑)を後ろから羽交い締めにするミサキさん。


 残るトモヨさんとシズカさんの二人はドン引きの表情でイケメン(笑)達を見ていた。


「止めないでくれ皆っ! 彼は悪い奴だろうっ? 奴隷だぞっ? イカサマだぞっ? 間違いは正さなきゃっ……!」

「何馬鹿なこと言ってんのよっ」

「イサム、貴方……こっちの世界に来てから変よ?」

「ふえぇぇっ……何かカッコ悪いですぅ……」

「群れなきゃ何も出来ねぇ女共がっ、邪魔すんじゃねぇよっ!」


 砂だらけになりながらも怒鳴る早瀬はそっち抜けでイケメン(笑)と女性陣の口論が始まった。


「あのねぇっ、奴隷が気に食わないのはわかるけど、歴とした制度だって習ったでしょうがっ」

「それに剣と剣で戦っててイカサマって……どこをどう見てたのよ」

「と、兎に角喧嘩はダメですよっ」

「僕は勇者として悪を放っておく訳にはいかないんだっ、邪魔をしないでくれ!」


 醜い。


 「えぇ……何なのこの人達……」みたいな目と顔でライ達の方を見る。


 「えぇ……わかんないよ……」みたいな目と顔が返ってきた。


 でしょうね。


「クソ、があぁぁぁっ!!」


 軽くあしらわれたこと、無視されたことに怒ったんだろう。


 顔を真っ赤にした早瀬が飛び跳ねて身を起こし、【電光石火】の乗った剣を振り回してきた。


「おっとっ」


 少し焦ったが、思考系スキルを駆使して残像すら見える速度のそれを躱し、剣を当てて止め、いなす。


 そして、ついでとばかりに手のひらを向けて属性魔法を発動。


 『風』で作り出し、『火』で熱したそよ風だ。


 要はただの熱風。ダメージは与えられない。


 しかし、いきなり顔面目掛けてそんなもんが飛んでくれば当然驚く。


「うわぁっちぃっ!!?」


 と悲鳴を上げ、顔を押さえる。


 隙が出来た。


 一発ぶん殴れるくらいの隙が。


「お仕置きタイムだ」


 ちょっと格好付けて言いながら拳を振り上げた次の瞬間、「ユウっ、危ないっ!」とライの焦った声が聞こえてきた。


 何だと思ってそちらの方を向こうとして気付く。


 ミサキさんの拘束を無理やり解き、俺に向けて手を翳したイケメン(笑)から『火』の球を飛んできていた。


 バスケットボールくらいの大きさ。速度はパスくらいか?


 咄嗟に首を捻って躱し、「うおっ、あっぶねぇなっ!? おいっ、どっちが卑怯者だよっ!」と声を荒げる。


 イケメン(笑)はそんな俺に対して何かを言い返そうと口を開け……


 その横っ面にトモヨさんの右ストレートが炸裂した。


 身を捻り、体重を乗せた綺麗なパンチ。


 見るからに腰が乗っていた。


「あがぁっ!?」


 顎を狙ったらしく、顔の造りだけならマジでイケメンなその男は断末魔のような声を出して地面に倒れ込む。


 そして、「あっちぃなっ、舐めた真似しやが」とそこまで言い掛けた早瀬にはミサキさんが本場の回し蹴りを披露。こっちの服を着ても尚、不良とわかる悪人面の男は錐揉み回転しながら吹っ飛んでいった。


「はぁ……頭が痛いわ」

「私もよ……」

「本当っ、身内が申し訳ないですぅっ……」


 三人が慣れた様子で頭を下げてくる。


 反対に勇者と盗賊はピクピクしてて非常に対称的だった。


「あー……心中お察しする。それと助かった。俺が直接手ぇ出すのは……よくよく考えたらあんまり良くないもんな」


 変なのに絡まれると疲れがどっと来るな……なんて思いながら返す。


「まあ既に他の冒険者パーティとかと揉めてたりするんだけどねー……」

「次から次へと問題起こすのよこの二人。前は窘めたら止まる程度だったのに……【唯我独尊】と【不撓不屈】のせいかしらね」

「自分が一番偉くて正しくて……絶対にそうだって思い込んでるんですぅ……」


 【不撓不屈】は本来、心が折れなくなるとかの精神強化能力。


 しかし、イケメン(笑)の元の性格と【唯我独尊】のデメリット効果が合わさって頭のおかしい行動をポンポンするようになってるんだろう。


 何て傍迷惑な勇者だ。後早瀬は気絶しても居ないもの扱いなのか。いやわかるけどさ。


「取り敢えず……この馬鹿共にはキツく制裁を下しておくわ。ホント、悪かったわね」


 ミサキさんは本当に申し訳無さげな顔で手を合わせて謝り、二人の首をがっしり掴んで何処かに引きずっていった。


「まああれね。次はないよう……いえ、止める努力はするわ」

「お、同じく……」


 トモヨさん達もその後ろに付いていく。


 要約すれば、『それでも止められなかったらごめんね』ってことだ。


 何だかなぁ……本当に疲れる奴等だ。あの三人も可哀想に。


 俺は哀愁漂う女性陣の背中を見送った後、ぐるんっとその場で回転してライ達に向き直った。


「さて、助けてくれなかった薄情者共? 模擬戦再開と行こうじゃないか。今度はちとスパルタだぞ? 感謝しろ?」


 俺のこめかみに血管でも浮いていたのか、ライ達は一斉に肩を震わせ、反論してくる。


「いやっ、流石にあれは固まるだろっ」

「そ、そうだよユウ君っ、勇者だよっ? ライ君と同じ『真の勇者』なんだよっ? まさかあんなのだとは思わないよっ」

「元からああいう性格だしさっ」


 ジル様は「あれが勇者か……」と遠い目をしていた。


 アカリとエナさんは「もう終わりだよこの国……」と諦めたような目をしていた。


 まあジル様達は放っておくとして。


「ライ、お前はせめて助けろや。マナミも他人事みたいに言うな? そんでもってリュウ……テメェ、さっき『やれやれ~っ』とか煽ってたろ。聞こえてたぞ。よぉくわかったよ、悲しいな、友達だと思ってたのに……」


 拳をバキバキ鳴らしながら一歩踏み出す度にライ達の顔は青くなっていく。


「あまりに変な奴と会っちゃったら咄嗟に動けないって!」

「……ユウ君、と、トイレ行って良い?」

「あっ、マナミ狡いっ。それ何となく止め辛いやつっ! え、えっとえっと……僕は用事思い出したから! じゃあね!」


 ライ達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


 俺は師匠さながらに悪い笑みを浮かべて言った。


「問答無用だっ、男女平等パンチを食らいやがれっ!」


 ステータスに物を言わせて捕まえていき、拳骨の雨を降らす。


「あいだぁっ!?」

「いったあぁいっ!?」

「うぐおおおっ……!」


 悶絶して地面に転がり回る三人にはその後も模擬戦と称して日頃の鬱憤と今日のイライラをぶつけてやった。


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