第220話 逃避行
すいません、遅れました。
「部下はどうしたぁ! まさかサシでやろうってのか!?」
体当たり気味に取り付いたせいだろう。
荒れ狂う風と浮遊感の中、シキは銀スカートと共に落ちていく。
『ぐぅっ……!?』
中に居るフェイはその衝撃に呻き……しかし、笑ったような声で、『はっ、そのまさかだよっ!』と返した。
直後、スカート部分の装甲が次々に下にスライドし、全長が伸びる。
変形かと思いきや、露出していく黒い内部武装こそが真打ちと気付く。
どうやら装甲の下は全てミサイルポッドや銃口になっているようだった。
『ちょうど良い位置に来てくれたねっ、良いよっ、凄く良いっ!』
それが何なのか理解出来る人間にとって凶悪以外の何でもないフォルムが顔を見せていき、蹴った反動で僅かに離れていたシキは仮面の奥でその顔を盛大にひきつらせる。
開いた傘やスカートのような形状の機体の中身が銃火器の塊とは流石のシキも想像が出来ず、反応が遅れた。
(ぜ、全身に武器を内臓した特機だとでもっ……!? 空飛ぶ武器倉庫かよっ、そりゃ爆発もするわっ)
と、納得した次の瞬間。
それらは火を吹いた。
『ははぁっ! 食らいなぁっ!』
パイロットの高笑いと同時に迫ってきた殺人兵器の数々は先程まで居たブリッジを吹き飛ばし、その威力を見せ付ける。
誘導式らしいミサイルが周囲から迫り狂い、銃弾の殆どがシキ目掛けて真っ直ぐ飛来してくる。
後方はブリッジの破片や爆発が邪魔をし、上下右左からはミサイル、前方には弾幕とこちらの退路をとことんまで断つ戦法。
弾薬に限りがあるのに、次を考えていない。
フェイが行ったのは一撃離脱の賭けだった。
『こうでもしなきゃっ、アンタは殺せない! そうだろうっ!?』
「クハハハハッ! 上等ッ!」
シキは笑いながら応えた。
「面で来られた時は一点突破が定石ィッ!」
『それをさせるアタイだと思ってるのかいっ!』
被弾覚悟の特攻とでも思ったのか、全身から放たれる弾幕が厚くなり、より近付けなくなった。
が、シキは迫る鉛の雨には目もくれずに反転。最もミサイルが集中していた空間に向かって加速を掛けた。
『っ、血迷ったか!』
狙いの外れた弾丸がミサイルに着弾し、更なる爆発を巻き起こす。
シキは手甲を盾に、光の中へ消えた。
呼応するように連鎖的に爆発が発生。その爆発でまた誘爆し……と、花のような広がったそれらが巡洋艦を包み込む。
『何かしやがったね……?』
勘がそうさせるのか、フェイは距離を取り始めた。
離れつつも弾幕は張り続ける辺り、徹底している。
しかし、後退して数秒程度で全てが無駄に終わったことを悟る。
飛んでいたミサイルは尽く散り、巻き込まれた巡洋艦は墜落を開始。付近一帯は爆煙によって一時期に見えなくなった。
にも拘わらず、一帯を包んでいた煙から飛ぶ斬撃が幾重にも、幾方向に飛び出し、切り払っていく。
ザンッ、ザンッ、ザンッ……!
やがて露になったそこには四体満足のシキが居た。
独楽のように回転している彼からは爪と爪長剣による爪斬撃が続々と射出され、残っていた煙を払っている。
エアクラフトがその場に留まらせ、MFAと装甲型スラスターが回転の力を生み、シキ本人はその回転に身を任せて斬撃を飛ばす。
シャムザ、帝国、そして、イクシアで得た全武装による凌ぎ。
シキとしては内心、「何とかなったか……」と胸を撫で下ろしているのだが、全弾近くを使い切ったフェイはそうもいかない。
『ち、着弾前に切って爆発させ……誘爆……逆に爆風を盾にして切り抜けたって……!? そんなっ……そんなバカなことがあってたまるか!』
生身の人間相手にここまでしておきながら、ダメージすらまともに与えられない。
そんな現実が、戦士の誇りを持っている奴には耐えられないんだろうとシキは感じた。
減速と逆噴射で回転を緩やかに停止、少し回った視界を周囲に向ける。
見ればジルを囲っていた銀スカートの部隊はもう居ない。
当の本人も艦砲射撃が癇に障ったのか標的を艦隊に向けており、まだ十分程度の猶予はあるように思えた。
「…………対艦装備も無しで何でああも無双出来るんだ……?」
こっちの方が早いと言わんばかりに体当たりで艦に穴を開けて回っているジルを見て、「鋼鉄……いや、オリハルコンとかアダマンタイトで出来てんのかあの人……」とドン引きしていたシキはフェイから飛んできた怒号で我に返った。
『余所見までっ……! どこまでっ……どこまでこのフェイ様を舐めりゃあ気が済むんだいっ!!』
パイロットの怒りとは裏腹に、銀スカートは空になった弾倉や赤く変色した銃口をカシュンッ、カシュンッと吐き出すように外し捨て、軽量化の為か、ミサイルポッドや開閉式の装甲までパージし始めた。
(俺相手に厚い装甲は無駄と知るか。これじゃ銀じゃなくて黒銀だな)
そうして身軽になった黒銀の飛行型ゴーレムはいつでも発射出来るようにと胸部装甲から最後のミサイルポッドを露出させ、魔力の粒子を散布するように浮遊しながらゆっくりと動き出す。
フェイが最後に出した兵装はいつぞやか向けられた、手首を高速回転させて象った指ドリルだった。
徐々に徐々に加速していたフェイの機体はパイロットの意思を受けて薄紅色の光を放ち、肉薄してくる。
(何だあの光……? フェイの魔力の光か……?)
脅威なら兎も角、危うさは感じられない。『臨界爆発』の光ではない。
ならば迎え撃つことに抵抗もない。
シキは爪と爪長剣を収納すると、深紅に染まった刀剣を抜剣。鼻で笑って見せた。
「はっ、そんなことしなくたって逃げやしねぇさっ!」
やはり誘導式。胸部ポッドから射出されたミサイルは散開して迫ってきた。
(計六発……後方180°を抑えて後退や回避の手を潰した)
ほんの一瞬だけ『無我の境地』に入り、〝死〟を忘れて推測を重ねる。
後退は出来ず、避けようとすれば爆発で体勢を崩す。全方向ではなく、一~二方向からの衝撃はシキとて耐えきれない。
そうなれば指のドリルを受けるか、ギリギリで躱す覚悟が必要になる。
やろうと思えば可能だろう。しかし、被弾は免れない。
必然的に、今度こそ取れる選択肢は突撃のみ。
シキは思いの外短かった攻防とこの戦いの幕引きに寂しさを覚え……
嗤った。
『黒夜叉っ、覚悟おおぉっ!!』
フェイの咆哮に超加速で応え、一人と一機が交差する。
瞬間。
「クハッ……真正面から受けるバカが居るかよっ、バカがッ!」
最後のミサイル爆発を背に、シキはその場でくるりと一回転。伸びてきた指ドリル……果ては機体そのものを飛び越えると、回った背後で再び加速し、機体に取り付いた。
「ぐぎゃっ……! ぃっっ……~~ってぇっ……!!?」
『っ!?』
そこそこの速度で突っ込んだ為に角をぶつけてしまい、悶絶する。
角と首を痛めたようで、「痛ってぇ……!」と二度目の弱音を吐きつつ、コックピットハッチの開閉スイッチを押した。
シューッ……と、独特の開閉音を出して開いた先にはハンドガンを構えたフェイの姿がある。
「っ、い、いつの間にボタンの位置をっ……」
「つうぅぅ……ん? あぁ、そりゃまあこんだけ戦えばな」
ハッチの開いた状態で目の前の敵を叩き潰す度胸は持ち合わせてないらしい。もしくは殺せないとわかっているのかもしれない。
「俺はな、フェイ」
「く、来るなっ」
弾丸が足元と肩を掠め、威嚇の為の射撃が額へ、仮面に直撃しても怯むことなくコックピットに飛び込んだシキはフェイの手からを銃を奪い取って投げ捨てると、全天周囲モニターに映る怪物を顎で示して言った。
「アレに追われてる。その意味はわかるな? 例え銃があったとて、お前程度にやられはせん。さっさとこの機体を潜水させろ」
艦隊の壊滅まで数分もない。得られる筈の戦果を失うのは痛手だが、相手が相手だと判断した。
幸い、古代兵器は魔力を使って動く。それ故かはわからないものの、前回の戦争でも此度の戦いでも大量の魔力が撒き散らされていた。
お陰で魔力による探知は不可能。気配もある程度なら殺せる。
そして、魔導戦艦もアンダーゴーレムも水中稼働が可能。
(じゃなきゃ姐さんが潜っていく訳がない。シエレンは飛べるくらいだ。問題はない。が、アカツキもバーシスも気にせず潜水したってことはつまりそういうこと……)
流石のジルでも数キロレベルで離れた相手……それも潜水している相手を執拗に追い掛ける趣味はないだろう。
「どうした、潜れる筈だ」
「はんっ、死にたくなければってこったろ。知ったことじゃないね。どうせ死ぬんだ。アンタも道連れに死んでやるよ」
「……どこまで肝が据わってやがんだお前は」
思わず脱力し、シートの下に座り込む。
「何のつもりだい? 何と言われようとアタイは動かさないよ……!」
例え徒手空拳でも、とでも言わんばかりに拳を構えるフェイ。
対するシキは「いや……」と手を上げて言った。
「普通に魔力切れだ。ついでに言やぁ体力も限界。血ぃ……流し過ぎた……」
世界最強の師と対等に戦う為には魔力の出し惜しみなどする余裕はなく、また、受けた切り傷も回復薬で塞ぐ暇すらなかった。
意識を失うほどではないにしろ、朦朧とはしてくる。
フェイは「はぁ?」と呆けた後、ぺたん……とシートにその身を投げた。
「あ、後もう少しだったってことかい……? 何だよそれ……」
「お前な……全身血塗れの状態で全力を出させた奴が言うことじゃないぞ……こっちはマジで死を覚悟してたってのに……」
ついでに言ってしまえば、フェイの抵抗を予測していなかったので気も抜けている。
機体は強力でもパイロットは脅威に成り得ない。結果、コックピットに入れた時点でスイッチがオフになってしまった。
(死ぬほどの大怪我じゃないってのも効くもんだなぁ……)
致命傷かどうかもわからないほどのダメージならスイッチは入ったままだったろう。
しかし、傷は浅い。全身の打撲に裂傷、一部の骨折やヒビ程度だ。今までの怪我に比べれば屁でもない。だからこそ、逆に気が抜けた。
薄ぼんやりとしてきた意識を必死に繋ぎ止める中、ルゥネ達や『崩落』と戦った時のことを思い出しながらそう結論付ける。
「良いから取り敢えず潜水してくれ……俺ぁもう寝る。ダメ、これ以上動いたら死ぬ……」
本当に限界だった。
手をヒラヒラさせるので精一杯。瞼が非常に重くのし掛かってきている。
「……アタイは敵なんだけど? 言うことを聞く義理はな――」
「――お前は俺に負けた。違うか?」
「っ……」
被せるように、それだけはハッキリと言う。
「だったら、お前は俺の……何だ?」
ルゥネの心に〝侵食〟され、帝国の価値観が混ざった今のシキにとって、負かした相手は戦利品に等しい。
ルゥネ同様、敗者は勝者の言うことを聞けば良いという考え方が渦巻いているのだ。
「…………」
そのような意図や思考を汲んだ様子はなかったが、フェイは無言でコックピットハッチを閉めると、降下し始めた。
「覚えときな黒夜叉。アタイはアンタを助ける訳じゃない。一時休戦だ。アンタが目を覚ましたらまた戦う。……全弾使い尽くしたんだ、今度こそ殺されるかもだけどね」
敗者という自覚はあったようだ。
短く、小さい本音を聞いたシキは浅く笑い、意識を落とした。
◇ ◇ ◇
やたら寒くて起きた。
海水の温度も多少関係性あるだろうけど、普通に血が足りてないだけだと思う。
「……起きたのかい」
「あ、ぁ……どのくらい経ったんだ?」
「十分も経ってないよ」
「……え、何それすげぇ気まずい」
「大層なこと言っちゃったアタイの方が気まずいよ」
ジト目で見てくるフェイと軽口を叩き合いながら回復薬をがぶ飲みし、傷を癒す。魔力回復薬の方は止めておいた。無駄に回復させて探知される可能性を高めたくない。
ジル様相手なら用心し過ぎるってこともない。数分程度なら着水して直ぐだ。まだ近い。
「ふーっ……」
一息ついた後は造血剤の出番だ。日本に戻った時、しれっと大量に買い込んでおいたんだよな。
後は肉……栄養だ。
腰のマジックバッグから次々に出てくる物にフェイは目を丸くして訊いてきた。
「どうなってんだいそれ」
「俺からすりゃこの機体の方が気になる。そういうもんだと思っとけ」
文化的な違いだ。もっと言えば地球生まれ地球育ちの俺からすれば両方共意味がわからん。
「ふーん……それとアンタね、さっきから近いっ」
起きなかったらそのままお陀仏だったな……なんて思っていると、フェイに膝で蹴られた。
足元だから蹴りやすかったんだろう。だからって蹴るなよとも思うが。
「あん? ……良いだろ別に」
言いながらピチピチのパイロットスーツに包まれた太腿をスッと撫でてみる。
想像通り、女らしい柔らかさと温かさが指先に伝わってきた。
……これで怪我の防止になるのか? 薄くね?
「っ、触んなってばっ、良かないよ!」
「ぐえっ」
また蹴られた。今度は顔面だ。
「あのなあ。言ったろ、お前はもう俺のモノなんだよ」
「はぁ? 誰も言ってないよそんなこと」
「……あれ、そうだっけか? 記憶がちょっと飛んでるな……」
「…………」
凄いジト目でゴミか何かを見るように見下ろされている。
……やっぱ何かちょっと違うんだよなぁ。どっかの怪物と比べると、これじゃない感が強い。
「あー……じゃあ覚えとけとは言ったか?」
「アタイがね」
ぶっきらぼうに返してくるが、少し頬が赤い。照れてる……というより、恥ずかしがってるような印象を受ける。
自覚はあるようだな、足りてないだけで。
「そうかい。なら同じ言葉を返す。負けた女がどういう扱いを受けるか、どんな立場に落ちたかお前の身体に理解させてやる」
「っ……」
逃げ延びた先を想像したのか、フェイの顔が耳まで朱色に染まった。
興奮してるだとかそういう目的があったとかじゃなく、こいつにはそれが一番効くと思った。
そう考えると姐さんやエナさんにもその気があるな。姐さんにはシャムザがあるから手ぇ出さんけど、エナさんなら良い忠誠心を持ってくれるかもしれない。
「ホントに勝手だね、男ってのは」
怒りという面もあったらしく、軽く睨まれた。
「あ? 俺がそうしたいと思ったからそうする。ただそれだけのこった」
帝都の空でライと戦った時、俺は改めて悟った。
この世界は力が全てだ。
力があれば何をやっても良いとまではいかなくとも、何をやっても許される。
例えばイクシアの王。何やら画策していたらしいかの王は力あるジル様に殺された。
イクシアは当然大混乱を極めたものの、最後までジル様に剣を向けることはなかった。自分達の戦力では国が滅亡するだけだとわかっているからだ。
普段は偉そうな重鎮や貴族に死人が出たという話を聞かない点からして、誰も反対……つまり、仇討ちしようとしなかった。していれば新たな死人が出ていた。
例えば冒険者や騎士。魔物の討伐や殺人の経験がある彼等はステータスが高く、往々にして態度がデカい。
ならず者、騎士とはそういう方々、と民衆に思われる程度には良い印象を持たれていない。
それが許されるのは何故か。答えは力があるから。
冒険者は普段から魔物を間引き、誰も行きたがらない危険な場所に行って薬草や鉱石といった何らかの素材を採取してくる。騎士はいざという時に国を守る武力の象徴だ。
知ってはいた。何なら軽蔑すらしていた。
だが、全て事実……世の真実だ。
理と言っても良いかもしれない。
そういう意味ではゼーアロットの固有スキルがそれを如実に表してるな。
奴の【弱肉強食】は殺した相手の能力を奪うというもの。強くなければ成しえず、弱者は強者に淘汰される。
この世界はまさに弱肉強食の世界なんだ。
「だから……お前は今後俺の為に戦え。俺の為に生きて俺の為に死ね。俺には軍という力が必要だ。個の力じゃ限界がある」
大の戦争嫌いと噂の魔王が戦力を欲しがっているとも思えないが、連合に対抗するだけの戦力は揃えておきたい筈だ。
俺単体じゃなく、俺に付いてきてくれたリュウ達の力……そこにフェイのパイロットとしての腕が欲しい。
無論、個の力と言ってもジル様やムクロ、ゼーアロットのような例外も居るがな。
「ほ、欲しいからって無理やり自分のモノにするっ……? 人としてどうなんだいっ」
せめてもの抵抗か、フェイは機体を乱暴に動かし、落ちてくる艦の残骸や魔物を避けながら返してくる。
「ハッ、面白いことを言う」
「……? 何がさ」
思わず笑ってしまった。
「お前、女である前に戦士なんだろ? 人とか獣とかじゃねぇ。一戦士としてこんなもんに乗ってんだろ?」
レドやアニータですらこの世の理を知ってるんだ。幾ら文化の違う国で生まれ育ったとしても、戦士としての誇りを持つ奴がそれを知らない道理はない。
その証拠に、フェイは押し黙った。
ほらな、と鼻で笑った直後、フェイの機体がジル様の絶叫を拾った。
『ユウウウウゥッ!!! テメェ何処行きやがったあああああっ!!? 逃げんなッ! 戦えッ! オレと戦ええぇぇーーっ!!!』
耳キンレベルの絶叫。コックピット内の音源に慣れている筈のフェイまで耳を押さえて悶絶している。
海が揺れたように錯覚したが、実際は巡洋艦が次々に墜落してきていてそれどころじゃない。
「よし……見失ってくれてるな。このまま逃げるぞ、フェイ」
「……情けない奴」
「クハッ、その情けない奴に負け続け、無様に身の程と性を知らされるのは何処のどいつかな?」
嫌味には嫌味で返しておく。
以降、ただ顔を赤くして無言になった。
色んな感情がごちゃ混ぜになってるんだろう。愛い女だ。
さて。
取り敢えずディルフィンと合流するとして……フェイの部隊とも落ち合う必要があるか。
確かフェイを入れて計七人。ゴーレムは部下から強奪したものらしいから六機の戦果。反抗心は踏み潰して隷属させるとして……欲を言えば魔導戦艦が欲しかった。
『海の国』だって喉から手が出るくらいだっただろうに全部撃墜しやがって……再利用という言葉を知らんのかねあの人は……。
ディルフィン、『アカツキ』、『バーシス』一機にリュウ、スカーレット、レド、アニータとその他……あ、ジョンも居たな。また忘れてた。
そこにフェイ達銀スカート部隊を入れれば先ず先ずの部隊にはなる。
改造強襲艦ってだけでもデカい。足の速さは何かと役に立つしな。
「ふっ……新時代の幕開けにはお誂え向きの軍隊だな」
『付き人』がどういう目的で動いているのかはわからないが、ここまでの戦力なら無下にされることもないだろう。
順調に合流出来れば魔国は直ぐ。
後は姐さん達だな。上手く帝国に戻れれば良いんだが……
俺の杞憂など露知らず、フェイは「うぅぅ……」と変な唸り声を上げながら機体を潜航させるのだった。




