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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第1章 召喚編
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第21話 新たな仲間

グロ注意。

 

「取り敢えず……この子を治すよ」

「頼……あ、ちょっと待ってくれ」

「え?」

「何だよユウ」


 少し気になったことがあったので、治そうとしていたマナミを止める。


 ライとリュウが非難するような目でこちらを見てくるが、無視して奴隷の少女に話し掛けた。


「……君、言葉は話せるか? 耳は……聞こえているか?」


 暫くの間、返答はなかった。


 しかし、自分に言われているのだとゆっくりと頷き、「……は…………ぃ……」と、とても小さな声で返してくる。


 凄まじい精神力だ。この状態でも尚、正気を保っているとは。


「俺達は……いや、俺は君の主人だ。今から君を治す。だから暴れたり、騒いだりはしないでくれ」


 【起死回生】は最強の回復能力だが、腹が膨れる訳じゃない。


 失った血や欠損部位は取り戻せても、体力までは治らない。


 驚いて動かれでもしたら事だろう。


「……わ……はり…………まひ……た……」


 ぷるぷると震え、絞り出すかのような声。


 怯えている。


 ここまでの仕打ちを受けたんだから当然だ。


 しかし、今の発音は一体……?


「ゴメン、最後に……ちょっと口を開けてもらって良いか?」


 この質問をしたのは失敗だったかもしれない。


 少女は黙って口を開けた。


 そこには何も無かった。


 歯も無ければ舌も半分切り取られている。


 喉を潰され、歯を抜かれ、舌まで奪われ……これではまともに話せない筈だ。


 思わず息を飲み、ライ達が再び絶句する。


「……マナミ、止めて悪かった。早く治してやってくれ」


 もう見ていられなかった。


「ん……今治すからね」


 マナミは急いで少女に触れ、【起死回生】を使う。


 あっという間に顔中の痣が消え、裂傷が塞がり、変色した肌も元の白さを取り戻した。


 次に四肢や耳が生え、変な呼吸音も聞こえなくなる。


 十秒と少しで、全ての傷が治った。


 まるで逆再生しているような不思議な光景。


「これで良しっと」


 マナミが嬉しそうに頷いた為、近付いて上着を羽織らせる。


 邪魔だろうと、少女の目や身体に巻かれていた血や汚れにまみれた包帯を取ってやった。


 驚くべきことに、露になった少女の素顔は見覚えのそれだった。


「「「「日本人っ!?」」」」


 俺達全員が全く同じ反応をするほどの顔立ち。


「……き、君、もう治ったよ。目を開けてみて」


 揃って目を合わせ、混乱しつつも、ライが優しく声を掛ける。


 少女は恐る恐る目を開き、自分の身体を見下ろして静かに涙を流し始めた。


 最初は急に久しぶりの光を見たせいか、眩しそうにしていた。


 そうして腕に触れ、足に触れ、顔、口、目……確認しながら嗚咽を漏らしている。


「ホントに何でも治せるたぁ……幾らでも金儲け出来そうですな……」


 なんて驚いてる店長に胃に優しい汁物でも持ってこいと命令した直後、少女が矢継ぎ早に言ってくる。


「皆様、ありがとうございますっ、ありがとうございますっ! 本当にっ……本当に……! ありがとう、ございますっ! お陰で光を見ることがっ、歩くことがっ、物を持つことが出来ますっ……このご恩は一生忘れません! 一生を懸けて、皆様に恩返しさせていただきます!」


 誰から習ったのか、土下座までしてくる始末。


 拷問に次ぐ拷問で表情筋が死んだのか、無表情に近い顔で頭をガンガン床に叩き付けられるのを見るのは腰が引ける。


「ま、まあまあっ、落ち着けっ、なっ?」

「気にしなくて良いからっ」

「そうだよっ、私達が勝手にしたことだしっ」

「コラコラ頭突きも止めて止めてっ。自分の身体だよっ、大事にしてよっ」


 全員で焦りながら止め、顔を上げさせる。


 俺達の座っていたソファーに座らせ、「そんなっ、恐縮ですっ」と立とうとする少女を宥めること数分。


 店長が持ってきたスープと水を飲ませ、漸く落ち着いてくれた。

 

「取り敢えず、お互いに自己紹介といこうか」


 俺がそう言い、ライが全員分の説明をしてくれる。


 この目つきが悪いのが君の主人って形になる人で~とか、ちょっと悪意を感じる紹介は兎も角。


 少女は俺達の名を反芻(はんすう)して覚えると、名乗りを始めた。


「私はアカリ=カグラザカと申します。アカリが名前です。年は17。出来るのは……簡単な四則計算と文字を書くこと、炊事、掃除と洗濯等の家事っ。それと《剣術》スキルがありますっ。性交渉は経験ないですが、何でもしますっ」


 後半はまた結構な勢いで捲し立てられた。


 重い。


 そして、気まずい。


 マナミが何も言わなかったことが救いか。


 一先ず全員で「どうどうっ、落ち着いてっ」と再度宥める。


 しかし、気になったのはやはり名前だ。


 神楽坂……日本人だよな、確実に。


 でも俺達の顔を見ても特に反応はなかった。


 それにこの子……よく見ると瞳の色が金色だ。


 ジル様ともまた違う、トパーズ色の綺麗な目。


 母親が貴族で父親が言えない血筋……


「あー……君のお父さん、もしかして俺やマナミ、リュウみたいな黒髪黒目じゃなかったか?」


 そう訊くと、肯定が返ってきた。


 やっぱりか。


 俺達は揃って目を合わせ、めちゃくちゃ訊き辛かったが、ズバリ訊いてみる。


「そのお父さんは異世界から召喚された人だった?」

「はい。確か……『真の勇者』ではない勇者……役立たずの血筋……とか何処かで聞きました」


 おっふ。


 地雷だった。


 多分、拷問中のことだそれ。


「新たな勇者を喚ぶ為には邪魔だから処分したとも。……そう言えば、皆様も異世界のお方なのですか?」


 ちょっと聞き捨てならない情報が出てきた為、曖昧に返事しながら四人でサッと円陣を組んで小声の会議。


「既存の勇者を殺して新しく召喚……もしかして異世界出身の『真の勇者』には喚べる限りがあるのか?」

「……存在数に上限があるとか?」

「何にしろ、ろくでもないねこの国」

「完全に駒扱いじゃん僕達……しかも殆ど巻き込まれただけだし」


 何はともあれ、話題を変える。


 奴隷の証である首輪にするか、ちょいと値段は張るが、同じ効力+αの模様を身体に描くか。


 まあ後者だろう。仮にも勇者パーティだし。


 ってことでポンッ。


 何か判子みたいな感じで一瞬で終わった。


 俺とアカリの血は必要だったが、それだけ。


 どちらかというと金額の方に度肝を抜かれた。


「これでお互いの位置や状態が何となくですが、わかるようになります。どうでしょう?」


 店長にそう訊かれ、目を瞑って意識してみると、確かに何よりもわかりやすい気配みたいなのが伝わってくる。


 アカリの方も同様らしく、「ユウ……ユウ様……!」と何故か崇拝するかのような目で俺を見てきた。


「それ止めろって」

「嫌ですっ、私のご主人様っ」

「うわっ、抱き付くなっ」


 顔は相変わらず無表情だが、意外とお茶目な性格らしい。


 身体の全快と満腹感が心底嬉しそうで何とも止めさせ辛い。


 そんなやり取りの後、ライが「他にはもう居ないんですね?」と念を押すように訊き、帰ることとなった。












 俺の部屋にて。


「アカリ、ステータスを見せてもらっても良いか?」


 確認をとってからステータスを見せてもらう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

偽装中。正しい情報が得られません。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どういうことだと《鑑定(全)》スキルを使ってみたが、同じ結果だった。


 通常ならステータス全てを見ることまでは出来なくとも、ある程度の情報を覗くことが出来る。スキルは幾つ持ってるとか職業は何か、とか。


 しかし、今回はそもそも鑑定出来ないというもの。


 ステータスを偽装出来るスキルかとも思ったが、奴隷は基本的に許可されたことしか出来ない。


 となると、アカリは奴隷になる前からこの状態だったということ。


 十中八九、アカリの父親の偽装だろう。


 どう切り出したものかと皆で首を捻っていると、「この通り、レベルも10と低いですし、あまり使えるスキルも持っておりませんが誠心誠意、頑張りたいと思います」と言ってくる。


「ん?」

「え?」

「どゆこと?」

「成る程……?」


 人によって見える情報が変わるタイプらしい。何とも便利な偽装能力だ。


 となれば、俺の出番だろう。


 【抜苦与楽】は物体の中にある物質を消し去る能力。


 修行の間も大活躍していたからか、レベルが上がり、今では物質に続き、魔法やスキルの効果をも消せるようになった。


 後、地味だけど、「あー今抜けてる、これ抜けてるわー」みたいな感覚も手に入った。


 ドヤ顔でライ達を押し退け、アカリの肩に触れる。


「…………よし、『抜』けたっ」


 暫くして、偽装している何かを完全に取り除くことに成功。


 アカリには「……?」と首を傾げられ、ライ達には「やっぱ時間掛かるんだなあれ」、「何で肩……?」、「セクハラじゃん」等とボロクソ言われたものの、成功は成功だ。


「もう一回見せてもらって良いか?」

「? は、はい」


 無表情ながら不思議そうな顔をされた直後、ブォンッと、何処からともなく半透明の板が現れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 種族:人族

 名前:アカリ=カグラザカ

 性別:女

 年齢:17

 レベル:10

 職業:勇者・聖騎士

 称号:イクスの勇者・神に愛されし者・神に祝福されし者・固有スキル所持者・世界に絶望せし者・地獄を味わった者・生還者・不幸の権化・全属性所持者

 

 HP:562/562

 MP:555/555

 攻撃力:521

 防御力:653

 魔攻力:552

 魔防力:649

 敏捷:497

 耐性:650

 

 固有スキル

 【金剛堅固】lv1

 【吉凶禍福】lv3

 

 スキル

 《全魔法適性》lvEX

 《アイテムボックス》lv1

 《武の心得》lv2

 《魔の心得》lv2

 《剣術》lv3

 《盾術》lv2

 《鉄壁》lv1

 《魔力制御》lv1

 《魔素吸収速度up》lv5

 《魔力感知》lv1

 《気配感知》lv1

 《痛覚耐性》lv7

 《料理》lv3

 《家事》lv3

 《幸運》lvEX

 《不幸》lvEX


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何も違いは……えっ……?」


 アカリは硬直し、俺達も固まった。


「イクスの……勇者……?」

「……『真の勇者』じゃないと《光魔法》が使えないのか」

「何この不穏なスキル構成……」

「勇者でもう一つ職業があるとかそれなんてチート……?」


 この内容じゃ隠したくもなる。


 鍛えさえすれば異世界人(俺達)ともタメを張れるかもしれないんだから。


 比較対象として、巨蟲大森林でオークを倒していた時のライのステータスがこれだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 種族:人族

 名前:ライ=イナミ

 性別:男

 年齢:17

 レベル:15

 職業:勇者

 称号:真の勇者・異世界人・神に愛されし者・神に祝福されし者・固有スキル所持者・正義の権化・全属性所持者

 

 HP:621/621

 MP:593/593

 攻撃力:630

 防御力:629

 魔攻力:619

 魔防力:620

 敏捷:615

 耐性:626

 

 固有スキル

 【紫雷一閃】lv2

 【明鏡止水】lv2

 

 スキル

 《言語翻訳》lvEX

 《身体強化》lv2

 《感覚強化》lv2

 《成長速度up》lv3

 《鑑定(全)》lv2

 《光魔法》lv1

 《全魔法適性》lvEX

 《アイテムボックス》lv2

 《武の心得》lv3

 《魔の心得》lv3

 《剣術》lv5

 《盾術》lv1

 《縮地》lv2

 《空歩》lv1

 《先読み》lv2

 《見切り》lv2

 《魔力制御》lv2

 《魔素吸収速度up》lv3

 《魔力感知》lv3

 《気配感知》lv3

 《集中》lv4

 《限界超越》lv1

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今はレベルが25だから実際は違うが、並行職だからか、それほど差がない。


 態々別の世界から呼び込んだ存在とハーフとはいえ、現地の人間が、だ。


 アカリの反応を見るに偽装中は職業や称号が別のものになっていて、家事系と《剣術》スキル以外のものは見えなくなっていたんだろう。


 意図せずして強力な仲間がパーティに加わったのは喜ばしい。大変喜ばしい。


 しかし、これは……国にも隠したいレベルの逸材だ。


 今日だけで何度目を合わせたか、俺達は揃いも揃って大きく溜め息を吐くのだった。


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