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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第5章 魔国編
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第192話 拾いもの

前章ラストに登場人物紹介、用語解説回を割り込み投稿しています。殆ど作者用ですが気になる方、忘れた方等は参考にしてください。



 夜の帳が下りる頃。

 帝国の国境上空を飛ぶ巡洋艦の艦隊の姿があった。



 昼は目立つ黒とグレーでも、辺りが暗くなってしまえば別。並列して飛行している艦隊は同化とまではいかなくとも、注意して見なければわからない程度には空に隠れている。



『帝国領に入ったわ。こうして見るとシャムザより酷いわよね……』



 望遠モニターで地上の荒れた土地を見たらしいセシリアの声が通信に乗り、各巡洋艦のブリッジに居た者に届く。

 初めての航行ということもあって緊張しているのか、口調は固い。



『どうだか。それはそこで生まれ育った奴の理屈だ。向こうから見れば、シャムザの砂漠も大概だろうさ』

『もう……わかるわよそんなこと……ねぇ坊や、今夜私の部屋に来ない? 砂漠から出たのは初めてだから寂しくて……なんて思ったりして』

『……それ何度目だ? 行かんと言ったら行かん。既成事実なんか作られたら堪ったもんじゃない』

『ユウ兄! 私、そっちに行きたいんだけど! 何で皆別々の船に乗るのさ!』

『戦力分散だよメイちゃん、そうすりゃどの艦を攻撃されても対応出来るじゃん? まあ俺は基本的に何も出来ねぇんだけどさ』

『あー……オープンチャンネルでそういう話は止めてもらって良いでござるか? あ、後シキ殿、スカーレット殿が消えたでござる。気を付け――』



 そこまで通信が続いたところで撫子の声をかき消すような、『――隙ありぃ! 死ねえぇっ!』という幼い叫び声が全ブリッジを襲った。

 次の瞬間、『うおっ、危ねっ……甘いんだよ幼女!』というシキの声とゴンッと何かを殴ったような衝撃音、『いだあああっ!?』といったスカーレットの泣き喚く声が入る。



『大体いつまで付いてくるつもりだっ、さっさと降りろ!』

『う、ううぅ……や、やだ! お前を殺すまで帰らないよ~っ、べ~だっ!』

『クソうぜぇこのガキ……おい世話役っ、何してるっ、さっさと来い!』

『はぁ……やっぱりそっちに居たでござるか……承知承知、今から迎えに行くでござるよ』

『み、皆さん、いつもこうなんすか?』

『また誘惑失敗……皆が邪魔するからよ』

『セシリアさん? そうやってユウ兄に手ぇ付けようとするの止めてもらって良い? 怒るよ?』

『あら怖い』

『はぁーあ……女って……』

『あー、アリス? キミも一応女の子じゃなかっけ?』

『一応ってなんだっ、俺は女だよっ!』

『なら何で溜め息つくのさ……』



 『砂漠の海賊団』の旅路は今日も平和だった。



 皆、声や雑音しか聞こえずともどんな顔をしているか、どんなことがあったのかもわかる。

 リュウとレドは暇だったのか、バーシスとアカツキに乗って通信を聞いているようだ。



『あ、そうだ坊や? 遊んでるとこ悪いんだけど、悪い知らせよ。ルゥネさん、やっぱり間に合わないって。ヴォルケニスは兎も角、サンデイラの損傷が酷くて動かせないそうよ』

『遊んでないんだが? 命懸かったやり取りだったんだが? 短剣で刺されそうになったのをギリギリで避けてぶん殴ったところだったんだが? それとその情報の何処が悪いんだ。まるで俺があいつと会いたがってるみたいじゃないか』

『やぁねぇ違うわよ。下手したら補給の際、戦闘になるでしょ? それが悪い知らせなの』

『『『『『あぁ、それは確かに』』』』』



 満場一致の意見だった。



 実際、セシリアはルゥネから気を付けるよう通信を貰っている。

 無論それは秘密裏に、そして王都から国境の街へ、街からディルフィンへ、と繋ぎに繋いで貰った間接的な通信ではあるが。



 一応、テキオのような強力な転生者も待機している為、それほど大きな被害は出ないだろうが、戦闘は戦闘。

 帝国人の恐ろしさを身体で理解している彼等にとって、それは嫌な事実だった。話に入っていないオペレーター達までうんうん頷いている辺り、程度も窺える。



『じゃあ暗くなってきたし、今日はお開き……ん? ん~……? なぁにあれ。地上の……岩山の麓、えっと……木が三つ並んでるとこ、何か居ない?』



 唐突なセシリアの指摘。



 それぞれ『木が三つ……あ~……右下の?』、『……お、ホントだ。何だありゃあ。……オークか?』、『ゴーレムからだと見えないなぁ』と反応が返ってくる。



 揃って望遠モニターで地上の様子を見たのだろう。



 シキもオークと聞いて仮面の奥の顔を歪ませたが、スカーレットの首根っこを鷲掴みにしたままモニターに目を向ける。



「ねぇねぇ『黒夜叉』ー。あの豚さんがどうしたの?」

「煩い黙れぶち殺すぞ」

「ひぎゃっ。ち、ちょっと! 顔近付けないでよ! 怖いってば!」



 暗い中、鮮明ではないにしろかなり離れた位置が視認出来るのは望遠モニターが優秀なのか、はたまた月の光のお陰か。



 目を凝らして漸く見えてきたシルエットにビクついたシキは思わずスカーレットを盾にしつつ、モニター画面を睨む。



 日は沈み、暗闇に紛れて確認し辛いものの、確かにそれはオークだった。



 全長二メートル越えの猪が二足歩行になってボロい服を着たような、珍妙な生物。

 単体なら特に珍しい魔物ではない。何やら他の人影に追われているようだが、そこも疑問に思う点はない。何しろ魔物。それも食用だ。追われて当然とも言える。強いて言えば狩りをするにしては時間帯が少々妙だが、問題はそこじゃない。



 オークは属性魔法を使っていた。



 『火』、『水』、『風』、『土』……果ては『雷』と『氷』の属性魔法まで。



『一瞬、豚系獣人かと思ったけど……違うみてぇだな』

『……今、全属性を使ったわよ。ちょっと普通じゃないわよねぇ?』



 アリスとセシリアの声が通信に乗って全艦に渡る。

 普段は煩いオペレーター達からも静かなどよめきが広がっていた。



 球型と矢型。

 どちらも牽制だったのか、追手である複数の人影には当たらなかったが、動きは止まった。全ての属性魔法が使えるのは魔法使い系の最上級職か勇者のみ。その上、属性魔法の発動までのプロセスが異様なまでに早かった。



 目の肥えたシキ達からすれば一目でわかる。



 無詠唱。



 明らかな異常事態だった。



『……なあ。助けてやらねぇか? 気になってきたし、可哀想になってきたわ俺』

『ほ、ほっとけほっとけ、ちょっと全属性の魔法が無詠唱で使える野生の豚だ。食用なんだから大人しく食われてりゃ良い』

『残酷っ、つかそんな豚居て堪るかっ』

『ちょっ、痛っ……離してよバカ!』

『煩いっ、俺はオークが苦手なんだっ』

『おっと? シキ君さん? スカーレットちゃんに何してるのかな? 変な声聞こえたよ? 僕、ロリコンは許せないんだけど? YESロリータNOタッチの精神忘れないで?』

『何もしてねぇっ、ただ盾にしてるだけだ失礼なっ!』



 アリス、シキ、スカーレット、リュウの会話に他の者は何とも言えない顔で納得し、セシリアは溜め息をつく。



『こんな光景、『見』てないんだけど……まあ実際に見てしまった以上、見殺しにするのはねぇ? 坊や、我慢なさい』

『い、嫌だっ、俺は助けんぞっ、オークなんて!』

『大袈裟なんだよユウちゃんは。魔法が使えるってことは魔族だろ? なら仲間じゃねぇか』

『いや今のところ会った魔族二人だけなんだが!? ココは兎も角、もう一人はオークの魔族で敵だったんだが!? てかあいつら二人共、ハーフ(混血種)だぞ! 純粋な魔族なんざまだ会ってすらないんだが!?』

『『『『『だがだがだがだが煩い(っす)』』』』』

『い、痛いってば! 抱き付かないで変態!』

『シキ殿……幼女趣味なのはいただけないでござるぞ』

『ロリコンじゃねぇっつってんだろ! おらっ、世話役の登場だっ、さっさと持ち場に戻れ!』

『ふぎゃっ!?』



 移動してきた撫子にスカーレットを投げ付けた。



 実際にシキが行ったことだが、その光景が目に浮かんだらしい。

 セシリアは再度溜め息を付くと、尤もな指摘と共に指示を出す。



『……はぁ。そりゃ魔国は地形的に出入りが難しいし、何なら事実上鎖国してるし、魔王……っていうか『付き人』が国全体の魔族達に出国を禁じてるんだもの、魔族なんて奴隷か混血種くらいしか居ないわよ……さ、全艦高度下げ。盗賊か冒険者程度なら逃げてくれるわ。操舵手は間違っても当てないように』



 八隻にも及ぶ巡洋艦型魔導戦艦の艦隊はゆっくりと旋回し、降下を始めた。



 












「で、まんまと生け捕りに出来た訳だが……ユウちゃん?」



 ロープでぐるぐる巻きにされ、無言を貫いているオーク(?)を前にアリスが振り向き、呆れたような顔を向ける。



「や、止めるでござるシキ殿っ、スカーレット殿の次は拙者でござるかっ。何でそう女子(おなご)を盾にしようとするっ、最低でござるぞっ」

「こん中で一番強いのはお前だろっ、黙って俺を守れっ、オークだけは……オークだけはダメなんだっ」



 生きたまま喰われたことが余程鮮明に記憶に残っているらしく、ガタガタ震えながら撫子の背中に引っ付くシキ。

 あまり強く暴れて服が破けても嫌な撫子としては軽く振りほどこうとすることしか出来ず、大の男が何とも情けない姿だった。



「む? ……むむ? ま、まあそう褒められると悪い気はしないでござるな。何度か似た経験をしたことがある拙者としても気持ちはわからんでもないし……」

「してして撫子さん、シキは撫子さんが肉壁に一番適してるって言ってるんだよ。ほぼ不死身なんだから」

「バカっ、リュウおまっ、もう少しで肉壁に出来たってのに!」

「なっ!? シキ殿っ、ホント最低! 最低でござる!」

「うひぃっ、こ、こっち見たっ、姐さん悪いけど中に戻って良いか!? マジでオークだけはダメなんだよ俺!」

「ダメよ」

「即答っ!? トラウマになってんだぞこちとら!」



 再び浮上し、空に戻った彼等は『砂漠の海賊団』の新たな旗艦『ディルフィン』の甲板上に居た。



 「それとあんまりカッコ悪いとこ見せないで。幻滅するわ」、「理不尽っ」、「私はチワワみたいに震えてる姿も好きだよユウ兄」、「そこまで震えてねぇっ」と、下らないやり取りをする彼等をオーク(?)は珍妙なものを見るような目で見ている。



「おうおうおうおうおう、見てるだけじゃコミュニケーションは取れないんだぜ? 何とか言ったらどうなんだ? ああん?」



 アリスはそんなオーク(?)にメンチ切りながら尋問している。



「ほらほら船長さんもシキもストップ、痴話喧嘩なら別のとこで……ってちょっとちょっとアリスは何睨んでるの? もっとこう平和的にだね」

「ぶひ……」



 リュウが止めに入り、セシリア達が制止する。



「豚さんだ……豚……オーク……なっちゃん、スーちゃんお腹空いたぁ」

「ぶひっ!?」

「……この前、ショウ殿に作ってもらった豚丼食いたいでござるな」

「ぶひひっ!?」

「ツッコミが追い付かないっ! オーク? さんもぶひぶひ言うの止めてもらって良いかなっ? この人達ちょっと頭がアレだからさっ。……す、スカーレットちゃん!? 涎出てるよ涎! 食べちゃダメだってば!」



 この中だと割りと常識人の部類に入るリュウの方にオーク(?)の目が行く。



 流れとしては当然だったが、一瞬目を大きく見開いたのをシキ達は見逃さなかった。



「ぶひ、ぶひっ、ぶひひ!」



 逆に彼の方もシキ達の視線に気付いたのだろう。何やらアイコンタクトをとって頷く彼等にぶひぶひ鳴いてアピールしている。



 言葉はわかるが話せない、という(てい)で行きたいらしく、必死なのは伝わってくるのだが、全身から垂れる汗が凄い。

 思わずシキ達も目を細めて怪しむレベルでびちゃびちゃ垂らしている。



「おい豚ちゃんよ……さっき魔法使ってたのよな? 魔族なんだろ?」

「ぶひっ」

「その汗で誤魔化せるなんて思わないで」

「ぶ、ぶひ……? はっ、ぶひ!」

「何か今メイ殿に反応しなかったでござるか? はって言ったし」

「ぶひ! ぶひぶひ! ぶひひひ!」

「……スーちゃんお腹空いたよぉ」

「ぶひ!?」

「さっきからぶひぶひ煩いなこの豚……魔物の振りしてるってことは魔物として扱ってほしいんだろ? 姐さん、食っちまおうぜ?」

「そうねぇ……それと坊や? ナチュラルに私を盾にしないで?」

「いやちょっと待ってほしいですぞぉ!!」



 喋った。



 セシリアの背中に隠れ、軽く押しながら近くに寄ってきたシキに爪剣を見せられて、漸く。



 妙な声だった。

 何人もの男が同時に話したような、重なったような、奇妙な声だ。



「……何者だ」

「……坊や、人を盾にしながら格好付けないでくれる? 手も変なとこ当たってるわよ」

「あ、すまん」



 ジト目のセシリアから慌てて手を離し、改めて爪剣を構える。

 一方でセシリアは少し頬を赤らめながら胸を擦っている。



「どうだったユウちゃん、セシリアちゃんのおっぱいは」

「茶化すな」

「ユウ兄……刺すよ?」

「……今?」

「無意識に女性の胸に手を? 貴殿はどこまで破廉恥な御仁なのか」

「マジで無意識だった。腹のつもりだったんだよ。てか剣握ってんだから厳密には触ったってのも違うだろ」

「うぅ……お腹空いたぁ」

「お前はさっきからそればっかりだな」



 どうにも締まらないシキ達に代わって、リュウが前に出て話す。



「えっと……名前は?」

「無い……無い? ですぞ」

「何故疑問系? じゃあ……何者?」

「それは小生にもわからないですぞ」

「……ぶっちゃけて言うと、僕達は鑑定系のスキルを持っていてね。さっきから『見』てるんだけど……君の情報がまるで覗けないんだ。普通、ステータスとまではいかなくても何かしら……それこそ種族くらいわかるものなんだけどね」

「…………」



 再び(だんま)り。

 リュウはお手上げと言わんばかりに肩を竦め、今度はシキが真面目な口調で話し始めた。



「転生者」

「ぶひっ?」

「帝国、ルゥネ」

「ぶ、ぶひ……」

「……召喚者か」

「ぶひっ!?」

「メイ、一緒に召喚された奴等の中で何人か逃げ出した奴が居るんだったよな?」



 隠し事が苦手なのか、シキの出す単語に一々ぶひぶひビクついていたことでセシリア達も察する。



「え? う、うん……居たけど、追手を出したってルゥネさんが……あの時のレベルだと幾ら異世界人でも弱かっただろうし、死んだと思うよ?」

「まあ先ずそいつらの誰かだろうな。リュウとメイの顔を見た反応、ぶひつく単語……変身系の固有スキル……あるいは憑依系……操作系………………あぁ、合体したってのはどうだ?」

「ぶ、ぶひぃっ」

「ビンゴ。つくづく何でもありだな固有スキル……だが、だとすれば……」



 再度汗をブワッと垂れ流し、ガタガタと震え始めるオーク(?)。

 仮面の奥でニヤリと口角を上げたシキは徐に仮面を外すと顔を近付け、確認させた。



「えっ? こ、黒堂氏っ!? あっ……今のは違っ……」

「間違いないな。こいつは……いや、こいつ()は俺の元クラスメートだ」



 合体という言葉に、セシリア達の頭上には「?」が浮かんでいるが、当の本人は流石に観念したのだろう。

 オーク(?)は醜い豚面を更に歪ませながらポツポツ語り出した。



「黒堂氏の言う通り、小生はメイ氏――」

「――は? 気安く下の名前で呼ばないでくれる?」

「……い、イナミ氏の妹さんと一緒に召喚された者ですぞ。色々あって挫折した小生は帝国から逃亡し、何度も死にかけ……その度に【一心同体】という固有スキルで融合。何とか生き延びていたんですぞ……」



 そこに関しては深く語らなかったものの、どうやら三人から四人ほどの人間が固有スキルで融合して生まれた存在らしい。

 自我まで混ざっているのか、どうにも主観的な物言いをしており、少々わかり辛い。



「あー……つまりその固有スキルには瀕死の怪我を大怪我くらいに済ます副作用があったが、最後の一人と融合した状態で致命傷を受けちまい、生き延びる為に泣く泣く近くに居たオークと融合したと……オークの姿をしてるのはそういうことか?」

「そ、そうなんですぞ……」

「人と魔物の融合体とはこれまた面妖な……スカーレット殿、わかったでござるか?」

「え~? わかんない! それよりお腹空いた! 早くこの豚さん食べよ!」

「ぶひぃっ!? さっきからこの幼女は何なんですぞ! 食べるとか食べるとか食べるとか! 怖いですぞ!」

「お前のその語尾の方がよっぽど怖ぇよ。まだ撫子の方が幾分かマシだ」

「……シキ殿? どういう意味でござる?」



 その後も色々質問し、彼の粗方事情が判明した。



 融合元となった異世界人数人の固有スキルを全て使えること。

 例え融合してもステータスまでは向上せず、未だにレベルが低い為弱いこと。

 属性は追加方式らしく、全属性魔法が使えること。

 帝国から逃げるべく、イクシア方面に移動していたつもりだったこと。

 途中で何をとち狂ったのか、シャムザ方面に向かっていたこと。

 帝都やルゥネから逃げられるなら何でもするから見逃してほしいこと。

 


 等々。



 シャムザは暑そうだから避けたいらしい。オークになってからやたら暑いのが苦手になったと語っていた。



「う~ん……坊やはどうする? どうしたい?」

「……何で俺に振る。因みにここから突き落として見なかったことにしたい」

「ぶひっ!? ひ、酷いですぞ黒堂氏! 一時期は学友だった仲でござろう!? 小生ですぞ小生! オタク仲間オタク仲間!」

「知らん。こんなおぞましい豚、日本で見たら裸足で逃げ出すわ。後、少なくとも何度かお前らから話しかけてきただけで仲間ではなかっただろ。名前すら知らんぞ。俺はメイとメイのクソ兄とマナミとしかオタク談義はしてない」

「そこを弄るのはデリカシーがないですぞぉっ! や、やはり小生ら未熟な異世界人が力を付けると残忍さが増す! もっと道徳心を持ってほしいですぞ! 小学校で授業あったでしょ!?」

「んなもん、慈愛の心と共にその辺に捨ててきたわ。てか普通に話せるなら普通に話せ。殺して食うぞ豚」



 ぶひいぃんっ!



 そう鳴いて……泣いている元クラスメートは兎も角、セシリア達が「え? 慈愛の心? あったの?」とコソコソしているのもさておき。



「変なもん拾ったな……」

「放ってあげたら? 逃げたいって言ってるんだし」

「でも今、オークの姿だとどこの街でも殺して食われるんじゃねって言ったらまた鳴き出したぞ。ほら、ぶひぶひ言ってる」

「何で言うんだアホ。黙って死なせりゃ良いだろ」

「何でシキ殿はそんなに冷たいんでござる? オークだから? どんだけ嫌いなんでござるかオーク……」

「後俺はアホじゃねぇっ。良いだろ可哀想だったんだよ!」



 色々な意味で困った拾い物だった。



「えっと……フュー◯ョンした訳だから……そうだっ、ジョン! ジョンってのはどうかなっ? 名前が無いと呼ぶのに困るもんね」

「ふおおっ、良いですぞジョン! 何か格好良いですぞ!」

「……きっしょ」



 何やらリュウと意気投合している上に名付けまでしているのを、メイがゴミを見るような目で見ている。



 シキ達はそんな彼に憐れむような目を向けながら呟いた。



「帝国に居場所がなくて、シャムザはオークと融合したせいで行けなくて、イクシアや他の国は行ったら殺されるって……詰んでないかあいつ」

「しかもステータスも低いって言ってたわよね? 幾ら全属性使えても弱いんじゃあどこの街も要らない子扱いよ? ただの目立つ豚じゃない」

「第一、拙者らは帝都に向かってるでござるしなぁ。どうするんでござろうか」

「……いや、もう降りるに降りれなくね? 絶対寄生してくるじゃん」

「地上に居たら命が危なくて寄生してくる……ふむ、どっかの誰かさんみたいだな?」

「シキ殿……さっきから斬られたいようでござるな」



 結局、オークの姿をしたシキの元クラスメート、ジョン(仮名)は盛大に鳴き喚いて付いてくることが確定した。



 あまりの嬉しさにぶひぶひ言いながらニッチャア……と笑みを浮かべたことで恐怖の限界に達したシキはダウン。何故かセシリアの部屋に連れていかれ、出遅れたメイはジョンにヤクザキックをお見舞いしたという。


戦闘回でしか面白く書けないのでは……何なら戦闘回すら面白くないのでは……? と疑念を抱く今日この頃。

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