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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第4章 砂漠の国編
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第189話 突然の来訪

ちょっとごたついてるんで今後、更新が不安定になるかもです。



 俺がエナさんの来訪を知ったのは元クラスメート達を殺した帰りだった。



 サンデイラに戻った後、ナールに向けた伝令を出しつつ、姐さんの部屋に出向いて直接報告。ついでに俺の出国について話し合っている最中、ふとそのことを思い出した。



「そういや、エナさんが亡命してきたんだって?」

「……やっぱり知り合いなの? 最近、やけに女っ毛あるわよねぇ」



 ジト目で俺のことを睨み、何の意味があるのか立ち上がってツンツンしてくる。

 口調が間延びしてない。この反応は結構マジだ。



「姐さんには……関係なくないか?」

「あっそう、そんなこと言っちゃう? この私に? あんなことまでしておいて?」

「…………」



 うっぜぇ。けど、こういう絡みには覚えがある。

 マナミと話してるのを見た時のメイと同じだ。つまり……嫉妬。



 何でだ、最後までしてないのに。いや……何処で最後と区切るのかは人によるかもだけども。あれか、年齢的にあそこまでしたら引けないとかか。本当に面倒臭いなこの世界は。



「何よその目は。私に何か文句でも?」

「いいえ」

「その女は坊やの大切な人なの?」

「いいえ」

「じゃあ何よその『良いから早く教えろよ面倒臭いなこの女……』的な目は。そうやって黙ってれば私が許すとでも思ってるの?」

「いいえ」

「はぁ……さっきから何なのよその口調」



 これじゃまるで詰問だ。というか許すも何も襲っておいてその口振りはないだろ。あれで責任取れと? だったらルゥネも怪しくなるじゃないか。要らんぞあんな女。手元に部下としてくらいは欲しいけど。色々使えて便利だし。



「で? エナさんはなんて?」



 そんな茶番はさておき、俺は本題に入った。



「イクシアの様子がおかしいって逃げてきたみたい。坊やを追ってた聖神教との癒着が酷いって話よ。豚王子が放った密偵の報告書よりも深刻みたいね」



 俺が魔族化したあの戦争以降、イクシアの発言権は低くなっていると聞いた。聖神教の助力が無ければ国が傾いていたとも。

 イクシアは人族を代表する国だ。そのイクシアに多大な恩を売り付けたとなれば聖神教の力は増す。元は同じ信仰国家。まあ聖神教は国ではないが、仲は良かった。持ちつ持たれつの関係に上下関係が生じたんだろう。



 にしても、メイドが逃げるほど、か……とはいえ、エナさんも何処かの国にスパイだった筈。立場故に身の危険を感じたか、言葉通りの意味なのかによって受け取り方が変わる情報でもある。



「それと……『天空の民』を名乗る種族の存在も教えてくれたわ。魔導戦艦みたいに空を飛ぶ島や城を幾つも持った、聖神教の協力者とかなんとか……」

「天、空? 天空人? 翼でもあるのか?」

「……銀髪の人種だそうよ」

「っ、そいつらか」

「ええ、間違いないでしょうね」



 以前話した新たな敵。古代の技術力と魔導戦艦の艦隊を持った新勢力だ。



 ナールや研究者達の話ではシレンティのような人造人間の完成系……またはそれに準ずる種族か、古代人の生き残りらしいが……ここで出てくるか。



「エナさんに直接話を聞きたい。明日辺りにでもアポ取れるか?」

「脱水症状やら日焼けによる火傷やらで寝込んでるけど……まあ話だけは通しておくわ」



 そいつらの目的が何であれ、元は帝国の前政権に加担してシャムザを滅ぼそうとした奴等だ。それが聖神教に手を貸しているとなれば、あまり悠長なことをしている暇はないかもしれない。



「あの計画、前倒しにした方が良いかもな」



 ルゥネと起こした例の騒ぎのお陰で俺個人の信頼は半々程度にまで落ちた。

 過激派は「出てけ」、穏健派ですら「うーん……」、といった感じだ。ナールもレナも止めるに止められない反応。王族二人による邪魔がないなら出国は容易い。



「……どうしても、行くの?」



 部屋を出ていこうとした俺の背中に姐さんが抱き付いてくる。



 今度のも何とも困る絡み方だった。



「俺一人の戦力なんざ大した痛手じゃないだろ。ゴーレムだってどんどん発掘されてる。対して俺はこの様だ。もう姐さん達の手伝いは出来ない」

「アリスは故郷に帰るって……修行しにいくって」

「あんの野郎……」



 思わず脱力しかけた。

 少年漫画の主人公かあいつは。



「つったって、あいつはあいつで魔力が無いんだ。前提からして扱い辛いしな。悪いが俺には関係ない話だな。魔王に会って、馬が合わなければ帰ってくるさ。……家族、なんだろ?」



 離してくれ、という意味を込めて頭をポンポンすると、姐さんは察してくれたようで静かに、そしてゆっくりと離れた。



「さて、猶予は一ヶ月……いや、二週間ってとこか。俺の方はメンバーを固める。姐さんは他の部分を進めておいてくれ」

「ん……わかったわ」



 部屋を出る直前に聞こえた姐さんの声は心なしか震えていたように感じた。



 ……悪いな姐さん。会う順番が違ったら別の未来があった。その確信もある。けど俺にはムクロが必要なんだ。魔王に会って真意を確かめたい。話をしてみたいんだ。













 翌日。



 俺はエナさんと面会していた。



 国の庇護化にある病棟だ。盗み聞きされるような場所でもないし、ナールやレナ、護衛も居るが、怪しい人影はちょくちょくある。どこかの派閥か、それとも間諜か……まあ良い。



「いやーっ、助かったよーアカリちゃんが見つけてくれて! ねねユウ君っ、あのゴーレム? は何!? あそこにある戦艦は!? 近くに別の形のもあるよね!? ていうかそこのオアシス綺麗だよね! あ、オアシスって言えばそこの黒いのが古代の遺跡!? 凄いね! あれ? 何か崩れてる建物が多いような……? あれかな、戦争の影響っ!?」



 長めの茶髪髪を振り乱しつつ、一気に捲し立ててくるエナさん。



 美人系な見た目に泣き黒子、大人っぽい容姿に全くそぐわない明るい性格。



 赤く焼けた肌が見ていて痛々しく、顔や手には火傷の痕がある。



 なんでも、砂漠で行き倒れていたところを巡回中だったアカリとヘルトが保護したらしい。

 慣れない砂漠での移動……一応、フード付きのローブで日焼け対策はしていたようだが、空腹や水分不足で倒れた後は熱せられた砂の上にドボンだ。そりゃあ火傷くらいする。



 しかし、全くそれを感じさせないこの雰囲気。

 相変わらず元気というか好奇心旺盛というか……



「あー……大事ないようで何より? です」



 俺の態度にナール達がぎょっとしている。

 別にお偉いさんではないぞと言ったらホッとしたようだった。何を勘違いしたんだか。



「ユウ君が置いてくから大変だったんだよ色々! えっ、ちょっと待ってどうしたのその腕!?」

「いやあの、それはすいません。取り敢えず……俺のことはどうでも良いんで話聞かせてもらっても? イクシアの現状とか『天空の民』? だとか、こっちにも伺いたいことが山程あってですね……」

「あっ……ご、ゴメンねっ? そうだよねっ、ユウ君にも今の立場があるもんね! よしっ、お姉さんにドンと来なさいな!」

「……誰なのよこの人は。えぇ? シキ君……?」

「そうだよユウ兄。誰? ねえ誰なの? 馴れ馴れしくない?」



 レナにはメンチ切られながら足を踏まれ、いつの間にか後ろに居たメイには人を殺せそうな目で見られた。



 何もやましい相手じゃねぇよ……後お前はどこから湧いてきたんだ。え? ずっと後ろに居た? 怖い怖い、隠密系スキル得たストーカーとか怖すぎる。



 質問する前に疲れながらも、俺達はエナさんから情報を引き出していった。



 発言力を増した聖神教がイクシアの王都に聖軍を招き入れ、正規軍であるイクシア軍の兵達との間に軋轢が生まれていること、王都内での演説や何やらで信徒が爆増していること、聖軍と『天空の民』による統制が始まり、治安は良くなったものの、魔物討伐や盗賊退治、薬草等の素材採取を担当していた冒険者の仕事を奪ってしまったので人の行き来が減って活気が無くなりつつあること、ライが正式にイクシアの女王と聖騎士ノア、再生者マナミと籍を入れたこと等々。



 他にも王都内は『天空の民』が持ってきた高度な物資(アーティファクト?)で溢れており、技術力の差故か魔道具や武具屋も店を畳む事態になっているだとか、『天空の民』の王は女らしいだとかも聞いた。



 そうして時折水分補給したり、反対に俺の現況を話して小休止を挟んだりとしている内に太陽はすっかり上がりきってしまった。

 途中、苦笑いで「もう話し辛いでしょ? 無理して固く喋らなくて良いんだよ?」と言われたので、敬語は無しだ。口までこの世界に慣れたってことなんだろうが、確かに話し辛かった。嫌な慣れである。



「っと、もう昼か。どうするエナさん、歩けるんだろ? サンデイラに行くか? 飯もあるぞ」



 チラリと目配せすると、ナールとレナも了承してくれたので案内がてら誘う。

 ナール達からしても細かい事情を聞きたいだろうからもう二~三日は拘束するようだが、エナさんは貴重な情報源だ。出来ればサンデイラの方で匿いたい。多分、その辺もわかっていて頷いてくれたんだろう。



「えっ、良いの!? 行く!」

「あいよ、荷物は?」

「そこの風呂敷だよ!」

「また凄いので包んできたな……」



 ということでエナさんの着替えを待ちつつ、レナとメイから「どういう関係?」と詰められつつ、部下と共に何やら大量のメモを書いていたナールに話し掛ける。



「どう思う」

「今の証言が全て事実だと仮定すると……聖神教は人族の国を纏めるつもりなのだろう。聖神教と『天空の民』とやらの関係性はわからないが、二つの勢力が上に立ち、その下にイクシアを置く。その更に傘下に帝国やシャムザ、その他弱小国を取り込もうとしている……そんな動きに感じるな」

「……それはちょいと飛躍し過ぎじゃないか? 確かにイクシアの実権は握られつつあるようだが……」



 エナさんだけじゃなく、普通のメイドや兵士でもキナ臭いと逃げ出す者も居るって話だ。

 往来を聖騎士が堂々と歩き、外縁部は『天空の民』のゴーレムが守っている。その上経済や政にまで口を出し、挙げ句食い扶持を失う奴まで出てきたとなればわからなくもない。



 とはいえ、だ。それだけじゃ弱い。こいつはこいつで裏の情報を仕入れているし、俺の知らない情報を握ってるからこその発想ってところか。



「イクシアを傀儡にするだけなら聖軍やゴーレムによる無言の圧力は要らない。他者の仕事を奪い、民の生活を脅かし、怯えさせてまでの強行……しかし、今のイクシアには二人の勇者以外にカードが無い。その上、その二人も『天空の民』との繋がりが強いという噂もある。イクシアとしても受け入れざるを得ず、また、人族がそれで纏まるなら、とでも考えているんだろう」



 ……あのクソ勇者共は何をしてるんだ? 人を守りたいんじゃないのか。女王は? またヒステリー起こしてんじゃないだろうな。

 大体、マナミだってそうだ。エナさんはマナミが新興宗教染みた勢力を持ち始めたとも言っていた。イクシア、聖神教、『天空の民』……更に言ってしまえばその中でも派閥争いがある筈。そんなドロドロした関係や勢力を刺激するような真似、あの平和主義なマナミが望んでするとは思えない。



「……あぁ、それとシキ。勇者で思い出したが、お前が再起不能にしたらしいもう一人の勇者な。復活したそうだ。溶けた顔が治って以来、塞ぎ込むのを止め、頻繁に聖都テュフォスに行っているらしい」



 一瞬、俺の中の時が止まった。



 へぇ……あのイケメン(笑)が……。



 マナミが治したか、はたまた別の何かか……スカーレットの生い立ちからして聖神教も闇が深い。あいつの固有スキルが有用ってことで表に出し辛い部分が動いたか……?



「【唯我独尊】の勇者だよな。他者が使うスキルと固有スキル無効化の」

「そうだ。現状、唯一魔王に対抗出来る勇者だそうだな。性格に難有りと聞いた。……勇者達の人相や性格、能力を知っておきたい。報告書という形で後で提出してくれ」

「面倒なことを頼むな相変わらず……まあ良いわかった、ならコピー……ああいや、同じ情報を写して姐さん達にも渡しといてくれ。今後、奴等がどう動くかわからない以上、対策はする必要がある。……ついでに聖騎士数人とクソ勇者の女についても纏めておくか」

「……了解した。頼んだぞ、情報は幾らあっても良い」



 こういう時、ルゥネの力があれば話が早いんだがな。真偽の程も、エナさん視点の情報なのか、公的な情報なのかとかも聞かずに済む。俺の持っている奴等の情報も簡単に、淀みなく伝えられる。



「帝国の方にも回しておく。近々向こうの技術者を呼んでサンデイラとヴォルケニスの改修作業に取り掛かる予定だが、ルゥネ殿も呼ぶか? 彼女も技術者兼指示役として来ると聞いたぞ」

「余計な気を回そうとするな。俺とあいつはそういうんじゃない。あいつらだって今はまだ政権を取り戻した直後で落ち着いてないだろう。こっちに来るのも単に戦艦の修理と回収、技術の提供が目的だ。情報を渡して協力体制だけ整えておけば良い」



 帝国にルゥネが戻ったことで、シャムザと帝国は少しずつ和平交渉を進めている。

 後少しで同盟も結べるらしい。砂帝同盟……変な気を起こした奴が出ないと良いがな。





















「と、いうことだ。何か知ってるか姐さん」



 再度サンデイラに戻って報告。

 姐さんのことだ、固有スキルでイクシアの現状を覗いているかもしれない。



「……お姉さん? ユウ君ユウ君、こちらの方とはどういった関係?」

「……何よこの人、やっぱり坊やの大切な人?」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」



 ルゥネに居てほしい案件だな。余計なことに気ぃ取られないで済む。現に今物凄く気まずい。本当にやましい相手じゃないのに。



「あー……専属メイドだ。イクシアにもぐりこんでた元間諜。辞めて金持ってそうな俺のことを探してたらしい。まあどこの国のかは聞いてないが」



 帝国ではない筈、みたいなことは言った記憶がある。……あれ、思っただけだったっけな。害さえ無ければどうでも良いと思って放置してたんだよな確か。



 で、この人は今俺が世話になってる海賊団首領のセシリア。所謂砂賊ってやつだが、悪い連中じゃない。メイはさっき途中で話したよな。扱いとしてはうちの一員で……と続けていると、エナさんはキョトンとした顔で言ってきた。



「はー、これはこれはうちのユウ君がお世話になって……って、あれ? 言ってなかったっけ? 帝国だよ? パヴォール帝国っ。前皇帝様が倒されたから実質クビみたいなものだけど!」

「「えっ」」



 姐さんは素で驚き、メイは「ここにも帝国?」みたいな反応だ。

 俺も驚いた。



「ま、マジか……でも以前、何処かの弱小国家だろ? みたいな質問には……」

「まあ腐ってもスパイだからね~、簡単には教えられないよ。殺される可能性もあるわけだし?」

「……ないだろ、あんたの場合」

「それがあるんだなー。条件がバレちゃったら意味ないもん」



 二人が付いていけてなかったので補足しておく。



「この人の固有スキルは【天真爛漫】。性格がその通りになる代わりに、他者から敵意を持たれなくなるんだ。一応、常時発動型だよな? 前は気にならなかったが……存在の認識が能力の発動条件か?」

「う~ん……半分当たりで半分ハズレかな。国で調べた時は視覚による認識が条件だったよ。目隠ししてる人とか盲目の人には効かない。多分、私そのものがそういう身体になってる感じだと思う」

「ぼ、坊やも大概、強い人に縁があるわね……」

「……ホントだ。その気が失くなるっていうか……うん、持てない。凄い力だね」



 対象は違うものの、姐さんと一緒に引きつつ、感心しつつ。

 メイは試してみたらしく、渋い顔をしている。

 

 

「ま、あ……イクシアに関してはまだそれほど『見』れてないわ。坊や達に話したことで未来が変わっても困るし……」



 姐さんが困ったような顔で近くのメモ帳を渡してくる。



 内容としては俺の出国に関する未来や魔国に行った後のアドバイスだ。具体的な未来については書かれてないが、これは助かる。

 詰まるところ、まだシャムザと自分達に関する未来しか『見』てないということ。



「ナールの読み通りなら近々アクションがある筈だ。魔国やら獣人族の国やらに攻め込むにしろ、この国と帝国は実質的なアーティファクトの発掘権とアーティファクトに関する技術を独占してるんだからな。どうあろうとやっかみは増える」

「ええ、砂帝同盟でどこまで地位を確立出来るかで話は決まるわ。後はルゥネさんがどれくらい我慢出来るかね……」



 あいつは戦闘狂でありながら戦争狂でもあるからな……憂る気持ちはわかる。



「向こうには魔導戦艦も人員もないんだ、勝機がないなら流石のルゥネでも……いや、負けても死んでも楽しければ良いって性格だったな。あの一ヶ月で痛感したんだった……ちっ、面倒だが、出国前に会えれば釘は刺しとくよ。それより……首尾の方は?」



 姐さんの目がエナさんとメイに向く。

 聞かせて良いのかという意思表示だろう。



「エナさん、一応訊いておくが帝国に戻る気は?」

「いやー……ないね~。そのルゥネさん? って新しい女帝様でしょ? なんか前政権の末端の人間は次々粛清してるって聞いたよ?」

「……最悪口利きはしてやる。あいつの能力で信頼出来なかったのが前政権の奴等なんだろうさ」

「気持ちは有難いけど、ユウ君が迷惑じゃなければ側に置いてほしいかな。何てったって専属だもん。ユウ君だって片手じゃ不憫でしょ? 色々とさ」

「まあな」



 俺の世話を何かと焼いてくれるアカリは多分ヘルトの隣に居ることを望む。他の奴等も殆どシャムザに残るだろう。専門の使用人の存在は俺としても有難いところだ。



 次にメイだが……



「私は付いていくよ? 嫌だと言われても行くから」



 食い気味に言われた。



 こっちは訊くまでもないな、この様子じゃ。

 下手すれば俺より強く、成長性もある。俺に対する無駄なアプローチさえ無ければ大いに助かる人員である。



「だそうだ」

「そ、そう……元々少しは話してたけど、今日の時点で何人かは付いていくって即答してくれた子が居たわ。リストを渡すから後は自分で交渉なさい。足も巡洋艦くらいなら用意出来るし、食糧や回復薬、武装もショウ坊からの厚意で何とかなるでしょうし……そうね、大体一週間もあれば細かい日程も決められるんじゃないかしら」



 次から次へと……なんて溜め息をつきながら姐さんはそう言った。



 ムクロのような奴も居るとはいえ、『付き人』の存在がネックだ。邪神といい、最近は全く接点がないが、魔王や魔王側の人間が好意的と決め付けるのは良くない。……まあ少なくとも奴に関しては俺を魔族化させたこと以外は好意的だった。ぶん殴るって約束があるとはいえ、そこまで悪い扱いにはならない……筈。



 後は単純に姐さんの厚意ってのもある。

 帝国と魔国の境目辺りまでは送ってくれるらしい。そこからは自分達……巡洋艦はくれてやるから好きにしろと、俺達が話しているのはそういうことだ。決まってないのは俺と一緒に魔国に行ってくれる人員と物資。特に足や物資辺りの調整を姐さんに頼んでいた。



「そういやメイ。友達は良いのか? 冒険者になって各地を旅するって言ってたような気がするが」

「うん、帝国内とか帝国よりも東の方に行くんだって。誘ったんだけど、もう人同士の争いはこりごりって断られちゃった。最近はこの大陸全体が物騒だから別の大陸に渡るかもとも言ってたかな」

「あいつらの内の一人は勇者だしな。聖神教に目を付けられない内に逃げておくのも手か……それでも少し惜しいな」



 今のところ決まってるメンバーはエナさんとメイ、リュウにレド。他にも居ればその都度増える。

 アリスは里帰りで、撫子とショウさんは変わらず『砂漠の海賊団』に残り、スカーレットは保留……別れの時は刻々と近付いている。



「寂しくなるな」

「……私達の元に残る? 今なら私とレナが付いてくるわよ」

「はは、よしてくれ。姐さん達は好きだけど、やはり国というのは好かん。いや……ハッキリ言えばムクロが居ない生活なんて俺には耐えられない。今だって辛い。寂しいだけじゃない何かがあるんだよ」



 俺と姐さんが真面目に話している最中、俺の耳がエナさんとメイの声を拾った。



「ねえねえメイちゃん、ユウ君とセシリアさんってもしかして……」

「止めて止めて止めて聞きたくない聞きたくないっ」

「あらー……レナ王女様との関係も疑われてたし……やっぱりユウ君って寄生先として優秀……?」

「えっ、もしかしてエナさんってそういう目でユウ兄を?」

「あっいやいや、そりゃ求めてくれたら夜伽の相手もするよ? けど、ユウ君はそういうの望まないし、お貴族様や王族の方と違って無理難題言わないもん。うちの女帝様とも繋がりがあるみたいだし、お賃金だって弾んでくれそうだし……」



 何とも下世話な会話だった。

 姐さんも聞こえたらしく、微妙な顔だ。



「……あの豚王子は何か言ってた?」

「あぁ、新しく発掘されたっていうサンデイラに次ぐ魔導戦艦か? いや、特に何も言ってなかったな」

「はあ? 全くあの豚っ……だから豚なのよ……! 私が教えた遺跡なのにっ……戦争じゃ大して役に立たなそうと思ったから手を出さなかったのにっ……大体、サンデイラなら兎も角、隠密性と航行速度に優れただけの小型艦なんて何の役に立つっていうの……!? もう良いわ、そっちがその気なら計画に巻き込んでやるっ」

「お、落ち着けって……あいつらの信用まで落ちるからそこまで手荒なことはしない予定だったろ」



 気を取り直して姐さんと話していると、メイが「そういえば……」と割って入ってきた。

 意図した感じじゃなく、ふと出てしまったような反応だった。



「ムクロさんといい、セシリアさんといい、エナさんといい……ユウ兄って歳上好きなの? ルゥネさんとレナさんには冷たかったよね? 私、そもそもストライクゾーンから外れてる?」



 ……嫌なところを突いてくれる。

 タイミング的にも悪い。姐さんとエナさんが「えっ?」と若干嬉しそうな、「えっ? もしかして……えっ? そうなのっ?」みたいな顔をしている。



 姐さんには以前言ったような気がするんだが。これもう答えなきゃいけない雰囲気だぞ。ダメージ受けるの自分だろうに墓穴掘ったな。俺もちょっと恥ずかしい。



「ま、まあ……そう、だな。二人とも綺麗だし、可愛いし……見た目は好きだな、大分。まあ理想を言えばそこに格好良さがあると尚良いが? た、他意はないぞっ、他意はっ。あくまで容姿とか性格が好ましいというか好みなだけであってだな、価値観も合うっちゃ合うし……で、でもまあムクロとあの人には到底及ばないなっ、あの二人こそ至高よっ」



 早口で捲し立てた上、別の女すら出したのに二人にはそれはもうにんまりされた。

 何なら「今日久しぶりに一緒に寝る?」とか「良いよ、する……?」とか言われた。



 メイはorzみたいなポーズで崩れ落ちてた。



 この調子で上手くいくのか……?



 そんな俺の疑問は「「可愛い(わねぇ)(なぁ)もう……」」と迫ってくる二人によって消された。



「くっ……命より大事な男のプライドを何だと思っているんだっ」



 俺はそれだけ言うと仮面の形状を変え、全てを覆い隠した。



シリアスが長かった分、閑話ではっちゃけ足りなかったかな……? 後々直すかもです。

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