第176話 突入
先週は投稿出来ずすみません。今話の前半書いたところで燃え尽きてしまいまして……
一応、微グロ注意回です。
「むっ、弾切れ! ならばっ、私専用アーティファクトその二ぃっ!」
内臓のダメージからか、やたら力が抜ける身体を無理やり動かして走り回り、二丁拳銃の弾全てをやり過ごしたその時、ルゥネがよくわからない掛け声と共に銃を捨て、スカートの中から黒い傘を二本取り出した。
「ああんっ、傘!?」
シキは戦場に似合わない、何の装飾もない黒傘の登場に驚きつつも斬りかかり、最強の斬れ味を誇る爪長剣をその黒傘、生産職だというルゥネの細い腕、それも片腕だけでいとも簡単に受け止められたことに目を見開いて驚く。
遅れて、金属と金属がぶつかった際のような甲高い音が鳴っていたことに気がつき、超高速回転している思考、培ってきた経験、片方しかない深紅の瞳がその答えを模索。
見れば刀身と接している箇所とは正反対の位置から魔粒子が噴き出ている。
そして、ギリギリとせめぎ合っている刀身と黒傘からは火花のようなものが散っていた。
「特殊な素材っ、武器! クハッ、それなら俺も同じよおッ!!」
ルゥネの力ではなく、頑丈かつ魔粒子が出るらしい黒傘の力で拮抗しているならばと、シキは吠えながら爪長剣に魔力を流し込み、同様に峰から魔粒子ジェットを三つ形成。持ち前の膂力と推進力で以て少しずつ押していく。
「力で俺に勝とうってかッ!」
シキが見せる途轍もない力に、ルゥネはニヤリと笑みを浮かべ……。
それを見た瞬間、全身に〝死〟の警鐘が鳴り響いたシキは咄嗟に胸や膝、右腕から魔粒子を逆噴射。緊急停止を図った。
そんな彼の勘は正しく、シキが離れようとした次の瞬間、スポッと持ち手が半ばから抜け、その先端から鋭い刀身を露にしたルゥネの獲物を左腕の手甲で受け止めることに成功した。
「隠し武器っ!? っぶねぇ! クハハハ!」
「ああ惜しいっ! もう少しで殺れましたのに!」
止まろうとしたとはいえ、相応の力が入っていたので爪長剣はあらぬ空間に振り切ってしまった。
その瞬間を狙い、首目掛けて突かれた暗器の前に何とか手甲を挟んだシキはキィィィンッと高い音を立てて振動している暗器の刀身と目の前で散り続ける火花、可愛らしい小顔をこれでもかと崩したルゥネの裂けたような笑顔、そして、【以心伝心】で伝わってくる「悔しいっ、けど楽しい!」という感情に高い高揚感を覚え、笑う。
「何で傘なんだァッ!? ああっ!?」
魔粒子による推進力の補助がない為に、短剣となった持ち手を容易く弾き飛ばし、反対の手に持っているもう一本の黒傘を睨むと、ルゥネは床を蹴って後退。着地する前にその黒傘の先端を向けてきた。
「曰くっ、ロマンらしいですわ! 私も使ってみてそう感じましたっ! 格好良くないですか!? ほらっ!!」
直後、鋭い先端が弾け飛び、弾丸のような速度で発射される。
シキは更なる暗器の登場に軽く目を見開き、しかし、動揺することなく爪長剣で弾き落とした。
同時に内心で「《直感》が反応したっ? 威力は刺さる程度っ……毒か何かでも注射されるってぇのかよ!」と返す。
「ご名答! 流石はっ!」
今度は先端の抜け出た空洞から弾丸を数発飛ばしながら称賛し、スカートから新たにライフルを取り出すルゥネ。
魔粒子スラスターで既に移動していたシキは飛来する弾丸を余裕で回避しつつ、合間合間に爪斬撃を飛ばして反撃。
弾丸よりも遅い代わりに、弾丸よりも数段威力の高いソレはルゥネ目掛けて一直線に突き進み、ガバッと開かれた黒傘によって弾かれた。
――あらっ? 意外と使えますわねぇこれ!
シキの脳内に、如何にも実験してみましたと言わんばかりの声音と驚愕、感心の感情が届く。
「っ、つくづくっ!」
黒傘に当たった瞬間に霧散した爪斬撃と開いた瞬間、傘の表面に現れた魔法陣のような幾何学的な模様、失敗や被弾を恐れないルゥネの強靭な肝に、シキは「手札が多すぎるっ」と冷や汗を流しながら擬似縮地で距離を縮める。
「盾ってのは思いの外、視界を潰すっ! テメェのそれは尚更だろうよ!」
「むっ、確かに! 見えないですわ!」
シキの言葉の真意を身をもって体験したルゥネは床に置いたのか、開いた黒傘から上半身だけを出して発砲牽制してきた。
対するシキは手甲で弾き落とし、爪長剣で斬撃を飛ばして迎撃していく。
シキが肉薄する僅か数秒ではあったものの、その攻防はルゥネの右頬や左腕を切り裂き、シキの左肩と脇腹の肉を抉り取った。
「「ごふぅっ……!」」
更に、これまでのダメージにより吐血。
新たな鮮血と生傷が増える。
だが近付けたと、シキは黒傘の後ろに居るルゥネを爪長剣で突いた。が、ルゥネは吐血の直後、後転の要領で後退していたらしく、最強の剣は虚空を貫き、女帝らしからぬ無様な動きでゴロゴロと離れているルゥネの姿が目に入った。
「チィッ!」
そして、舌打ちと共に黒傘を蹴り上げたシキはルゥネの代わりに転がっている大量の手榴弾を見て絶句。
いつの間に抜いたのか、大量のピンまで散乱している。
「っ、またかよっ……ウオオオオオオオッ!!!!」
思わず悪態をつき、《咆哮》で吹き飛ばす。
シキの口から発せられた衝撃波はそれらを全て排除し、爆発からシキを守った代わりに、ステータスの低いルゥネをも吹き飛ばしており、彼女まで無傷で済ませる結果となった。
しかし、ルゥネは大量の手榴弾の中に閃光弾を忍ばせていたらしく、格納庫全体を視界が潰れるほどの威力の光で覆い、最早、空気と化していた帝国兵達とシキの視界を奪い取った。
「ぐっ!?」
「~っ……こっ……ん、のおぉっ!」
光を直視してしまい、手甲で左目を抑えたシキを、吹き飛ばされていたルゥネがスカートから放出した魔粒子で体勢を整えながら狙い撃つ。
「ガハッ……!?」
「ぐああっ!?」
ルゥネは体勢こそ戻したが、勢いを殺しきれず壁に叩き付けられ、内臓のダメージを後押し、シキは放たれた高威力の弾丸を右足首に受けて負傷した。
「いっ……つ……くっ……!」
肉どころか骨すら貫通した為、シキは脂汗を流しながらもカクンと折れた膝を捨て、左脚で擬似縮地。ルゥネに追撃を図る。
「うっ、ぐ……ごはぁっ、げほっ、げほっ……ぶふぅっ……!」
一方でルゥネの方も幾度となく血の塊を吐き出してはぷるっとした唇から顎に掛けて血の色に染め、ずるずると崩れ落ちるのをライフルを杖代わりに耐え、壁に寄り掛かりながら銃口を上げた。
「クハッ……これでぇっ!」
視界が潰されたとはいえ、ルゥネは壁を背にしており、逃げることは出来ない。
そして、今までのダメージから撃てるのは精々一発程度。
ルゥネもそれがわかっているのか、悔しげな顔で「せめてもう一発!」と覚悟を決めている。
二人の距離は既に十メートルを切っていた。
勝った。
負けた。
というシキとルゥネの思考が交差した直後。
「っ……十時方向っ、一斉射撃ぃっ!」という号令と共に弾丸の雨がシキの横っ面に飛来した。
シキの目には見えないものの、ルゥネの視界にはアイとその部下達数人が目を瞑りながら銃撃している姿がハッキリと映っている。
彼らも先程の閃光弾で目をやられたらしく、アイの固有スキルから得た視覚情報で方向だけは正確に撃たれたそれらはシキの手から爪長剣を弾き飛ばし、首、肩、脇腹、腰、太腿と次々にシキの身体に穴を開けていく。
「ぐぅっ……!? ええいっ……邪魔を――」
トドメを刺す瞬間を邪魔された。
その事実はシキの怒りを一瞬で頂点にまで押し上げ、同時にルゥネへの意識をほんの僅かの瞬間、持っていかせた。
運の悪いことに、ルゥネが最後と定めていた引き金を引くのとアイが画策した奇襲、シキの意識のズレは重なっており……
結果、ルゥネにすら隠していたアイの攻撃はルゥネの狙いを大きく外させ、発砲。
「――っ!? しまっ……!」
ルゥネが後悔した時には、爪長剣を弾かれ、開いていたシキの右の掌に弾丸が直撃していた。
「ぐぎいいぃっ!!?!?」
「ああっ、シキ様っ……よくもッ!!」
「がっ……ぁああああっ!!!」
シキらしからぬ絶叫と親指しか残っていない右手に、ルゥネは思わず拳銃を取り出し、邪魔をした帝国兵の一人を撃ち殺す。
シキもその後を追うように絶叫したまま帝国兵達に爪斬撃を放った。
「な、何でっ……!? ひいぃっ!?」
全ての元凶であるアイはルゥネの凶行に硬直し、シキの爪斬撃が頭上、頭部スレスレで通過。低身長だったことで命拾いしていたが、視界いっぱいに飛び交う部下の肉片と血飛沫、あまりの恐怖で泡を噴いて気絶した。
事を終えたルゥネと視界が戻ってきたシキは邪魔者を排除するや否や互いに向き直り、獲物を構える。
「ぐぶっ……申し訳ありませんがこれは殺し合いっ! 許じで……げほっ、げほっ……ぐっ……く、くださいまし!」
血が止めどなく溢れている口ではそう言いつつも、ルゥネは意識してか、無意識でか、「よくもよくもよくもよくも邪魔をおぉっ!!! アイっ、覚えていなさい!!」と内心で強く激昂し、その声と感情をシキに伝えていた。
右手はマグマのように熱く、それでいて身体は芯から凍えるような痛みに耐えていたシキも「油断した自分が悪い」と強く自身を叱責。
至近距離で放たれた弾丸を手甲で弾きながら再度床を蹴り、肉薄した。
「いてぇだろうがこのクソ女ァッ!! 今度こそっ、その首ぃ斬り落とすッ!」
「そう易々と渡せる首ではありませんわッ!」
シキは鬼気迫る勢いで突撃し、ルゥネは弾の切れた拳銃を捨て、ライフルを構えながら返す。
やがて引き金は引かれ、ライフルの弾丸はズガアァンッと凄まじい音を立てて飛び出した。
シキの左腕は弾かれるように動き出してそれを防ぎ、同時に四本の指が消し飛んだ右手がルゥネに突き出される。
「っ、くああっ!?」
シキの狙い、攻撃がわかっていたルゥネはスカートから出した魔粒子で壁に激突してまで後退しようとした。が、シキの痛々しい右手から炎を思わせるような熱風が放たれる方が早く、その熱に堪らず目を瞑り、苦悶の声を上げた。
刹那。
シキが擬似縮地と魔粒子スラスターで跳び跳ね、急加速。
隙を晒したルゥネの首と胴体目掛け、思い切り爪を振るった。
「――――」
声にならない声と思考になってない思考がルゥネから漏れる。
とはいえ、抵抗せずにはいられなかったのか、体勢を敢えて崩すことでスカートのスラスターの向きを変え……
しかし、やはりシキの攻撃を完璧に躱すことは敵わず。
三本中、二本の刀身は見事回避。
最後の一本は上体を逸らし、加速して躱そうとしたルゥネの右胸、乳房を半ばから斬り飛ばした。
「いぎっ!? がっ、いっ…………だあああああぁぁっ!!!」
今しがたのシキに次ぐ、声が裏返るほどの絶叫が格納庫中に響く。
ルゥネの右胸だったもの、血、油のような体液が舞い、散り、落ち、想像を絶する激痛がルゥネを襲う。
涙と鼻水、唾まで飛ばして痛がるルゥネはそれでもライフルだけは手放さない。否、驚くべきことに、左腕を引き、再度爪を振るおうとしていたシキをキッと睨み付けると銃口を突き出し、発砲した。
「ぐっ!? があああッ!!」
右肩、関節部分に直撃。
――今度は神経ごと持っていかれたっ!
そう自覚し、右腕がだらんと下がるよりも早く、シキは左腕を振るう。
「ぐううぅうぅぅっ!?!!? ああああっ!」
――左肘から先の感覚がっ、無いっ!?
そう自覚し、思わず手放してしまったライフルが落ち始めるよりも早く、ルゥネは振動短剣を取り出し、振り下ろす。
「い゛っ……!? っ、まだっ……まだァッ!!」
半分以上が弾け飛んでいる右手に突き刺さる短剣を《金剛》で止めつつ吠え、頭突きを食らわせるシキ。
「んぎゃっ……!? っ、まだっ……ですわァッ!!」
渾身の頭突きを受け、鼻が潰れ、後ろに吹き飛ぶのを気合いと根性、魔粒子で耐え、新たな短剣を取り出すルゥネ。
「ぐおおおおおっ!!」
「はあああああっ!!」
二人の狂人は互いに叫び、斬り付け、刺し合いながら落ちていった。
◇ ◇ ◇
サンデイラ、ブリッジにて。
「何っ!? とうとうエンジンが止まっただと!? 何とかしろそれくらい!」
「ああんっ!? こっちだって戦ってんだよ! 下見ろっつったって……うわぁっ、何だありゃあ気持ち悪ぃ!」
「ダメだ船長っ、左舷右舷共に、全砲門箇所で弾切れだ! もう撃てねぇ!」
「報告! まだやれるからと怪我人が徘徊してるらしい! どこもやれることがねぇってのに!」
「せ、船長の姉御っ、推進力が消えた! このままだと航行がっ!」
前方にはバレルロール後、黒煙を上げながら沈黙を続けるヴォルケニス。
地上には砂漠を埋め尽くすほどの人喰いワームの群れ。
そして、周囲では仲間達の決死なやり取り、報告。
真顔でそれらを見渡していたセシリアは腰元に付けている鞭を取り出すと、バシィンッと床を叩き付け、オペレーター達を黙らせた。
「落ち着きなさいッ! ……艦内全域に放送をお願い」
どこもかしこも涙目だったり、怒鳴っていたり、唾や汗を飛ばしていたり、声を枯らしていたり……と、かなり悲惨だったブリッジ内はセシリアの毅然とした態度に一気に静まりかえり、艦内放送を担当していたオペレーターだけが忙しなく手元を動かす時間が訪れた。
やがて、オペレーターが顔を上げ、頷くとセシリアは口を開いた。
『皆……ごめんなさい。ついさっき、対空砲の弾が底を突き、左舷エンジンが停止したわ。もう撃つ手がない。それどころか、サンデイラは墜落する。それと……今現在、地上では人喰いワームが大量発生していて、早急に援護に来る筈だったヘルト達は王都の防衛に回ってるの。王都の全戦力を投入してるけど、サンデイラの魔導砲がないと厳しいって通信も入った。だから……ごめんなさい』
執拗に謝るセシリアの真意が読めず、サンデイラの全乗組員は首を傾げて続きを待つ。
重苦しい雰囲気の中、セシリアの口は再度開き、一瞬止まった。今度はサンデイラ全域に静寂が訪れる。
「…………はぁ」
そんな、脱力染みた溜め息の後、セシリアは続けた。
『こんな命令しか出来ない私を恨んでちょうだい。それと、何とかしてやるって言って何の音沙汰もない坊やも。……総員、白兵戦の用意を。もう一回、敵艦に突っ込むわ。こちらも全戦力を投入して早急に終わらせる。幸い、滑空くらいは出来る。敵の反撃は……ないことを祈って』
目が覚めるような、あるいは冷や水を掛けられたような感覚が全乗組員を襲った。
それは驚愕に恐怖、混乱と様々なもの。
しかし、セシリアの指示を理解した直後、大半の乗組員に闘志のような感情が湧き出てくる。
「何だいっ、特攻でもするのかとヒヤヒヤしたぜ船長!」
「そうだそうだ! ビビって覚悟決めちまったじゃねぇか!」
『『『うおおおおっ、やあああぁってやるぜぇっ!!』』』
『お、俺もやるっすよぉっ! シキさん達に鍛えてもらった成果っ、見せてやるっす!』
『あ、ちょっと皆っ!? 動いたら傷口が開いちゃうってば……もうっ! そういうこと言うなら少し考えてよ! 怪我人が勝手にやる気になっちゃったでしょ!?』
このままでは不味いと誰もが感じていたのだろう。
ブリッジ内のオペレーターは特攻と変わり無いセシリアの判断を獰猛に笑って見せ、各々から入った艦内通信では怯えや怒りの感情こそ混じってはいるものの、やる気に満ちた声が送られてきた。
セシリアは家族を戦地から死地へと誘わなければならない現実に苦虫を噛み潰したような顔で俯き、再度溜め息を一つ。
「はぁ……皆ならそう言うと思ったわ。だから嫌だったのに……」
やがて、「仕方ない……」と苦笑いすると顔を上げ、ビシッと敵艦ヴォルケニスを指差す。
「『総員に告げる! 白兵戦用意っ! 動ける人員は全て突入! 私も行くっ!』……操舵手っ、行けるわね!?」
「な、何とか!」
「なら良しっ!」
そうと決まれば彼らの動きは迅速だった。
あれよあれよという間に武装し、エアクラフト、兵器型アーティファクトの準備を終え、サンデイラ防衛の為に残る者以外のほぼ全員が甲板近くの廊下で待機。サンデイラは右舷エンジンをも停止しながらゆっくりと船体をヴォルケニスに向ける。
「幸か不幸か……もう速度は出ねぇ。ぶつかった衝撃で死人が出ることはないと思うぜ、船長」
黒煙と火の手がそこら中から上がっている異風な戦艦と『山』の字型の黒船。
少しずつ。しかし、確実に近付きつつある二隻の戦艦は地上で描かれている地獄絵図とは対称的にとても静かだった。
互いに対空砲を放つ訳でもなく、かといって向き合ってはいない。
幾つかのエンジンは無事なものの、滑空しているサンデイラから逃れるほどの推進力も出せなくなったらしいヴォルケニスは依然として航行を続けている。
サンデイラの滑空速度とヴォルケニスの航行速度がほぼ同じだと言う操舵手の見解に、同意するように頷いたセシリアはそのまま突っ込めと手で指示しながら最後の艦内放送を掛けた。
『全員、衝撃に備えて! ……来るわよっ!』
直後、サンデイラは上からのし掛かるようにしてヴォルケニスと衝突。
弱々しい衝突とはいえ、二隻に相応の衝撃を与え、両戦艦、意識があり、互いの存在を感知していた全ての船員が近くの壁や手すり、椅子に机等、手当たり次第に掴まって耐える。
二隻の接触面では凄まじいまでの火花が散っており、摩擦熱で装甲の一部は赤く変色。破損する部位も続出したが、ヴォルケニスの中央ブリッジから右舷部に船腹を擦って乗っかったサンデイラは落ちることなく停止。
ヴォルケニスもふらつきこそすれど、航行に問題はないようだった。
ほんの数秒の静寂。
揺れが収まったと判断した瞬間、セシリア率いる『砂漠の海賊団』は叫んだ。
『突撃ぃッ!!』
『『『『『オオオオオオォォーーっ!!!!』』』』』
大気が揺れるような雄叫びと共に男達は甲板に続くドアを蹴破る勢いで開け放ち、フックや縄を投げて突入手段を確保。その付近ではエアクラフトに乗れる者達が十、二十と浮上し、別ルートからヴォルケニスに乗り込んでいる。
「っしゃあああっ! やってやるっすぅっ!!」
その中には、かつてシキが助けたレド少年の姿もあった。
彼は以前よりも精悍な顔つきで仲間がヴォルケニスの突起に引っ掛けたロープに掴まると蔓から蔓に移る猿のように叫びながら降り立ち、片手剣を高々と振り上げている。
そんな彼の後ろには背中や腰に銃をくくりつけた海賊……否、砂賊らしい厳つい男達が続いており、先行していた盾持ち部隊は「慎重や斥候なんて言葉は知らん!」と言わんばかりに突入。怒涛の勢いで雪崩れ込む。
ブリッジを飛び出し、甲板から血気盛んな彼等を見下ろしていたセシリアはくすりと笑い、かと思えば色白金髪美人に似合わない、同じく獰猛な笑みを浮かべて走り出す。
「女帝を討ち取った子には金貨一千枚を確約するわよぉっ!! 相応の待遇と休暇! 他にも欲しいものがある子は気張って盗賊行為に励みなさい!」
仲間が用意したエアクラフトやロープには見向きもせずに甲板から飛び降りると空中で鞭を取り出し、ヴォルケニスの装甲に巻き付けた。
そうして、人の力を借りずに単騎で滑り込むようにして降りた彼女は鞭を持つ手とは逆の手でワンピースの内側、太もものホルスターに入っていたゴツい拳銃を抜くと、仲間達と共にヴォルケニス内部へと突入したのだった。
拙作をお読み頂いている皆々様、いつもありがとうございます。
今年ももう終わりということで見返して気付いたのですが、今章に入って一年以上経過していました。
文章力がなさ過ぎるのと書きたい話が尽きないせいですね。振り返ってみると無駄な話も多いですし。
春までには次章に持ち込みたいものです……
後、これまた申し訳ないのですが、忙しいのとは別に、最近やたら疲れて脳が働かないので来週も厳しいかもです。コミケもありますし……(小声)出来たら更新します。
それともう一つ。ブクマ、評価をしてもらえると作者のテンションやモチベが爆上がりします。まだしてないという方は是非お願い致します。
では良いお年を。




