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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第4章 砂漠の国編
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第142話 戦備

すいません、また遅れました……



「新入りはひたすら掃除っす! さあどんどん働くっすよ!」

「合点承知でござる!」

「ほらほらどいたどいたぁっ! もうっ、どんくさいね! 新入りはこれだから!」

「し、失礼したでござるっ!」



 撫子がレドとアニータにイビられている光景を目撃してしまった。

 彼女は船長に空いた時間(船長の就寝時間とも言う)を使って探ってもらうことで俺達を裏切る可能性は限りなく低いと判断され、拘束が解かれたばかりである。



「うわぁ……」



 内容こそサンデイラ内の廊下やらミーティングルームやらブリッジやら甲板やらをひたすら掃除させられたり、聞こえるような声量で嫌味を言われているだけなんだが、それを中学生くらいの子供が大の大人にやっているのを見るのはちょっと引く。



「埃が残ってるっす! もっと真面目に働けっす!」

「す、すまんでござる!」



 空飛ぶ戦艦の甲板に埃なんてあるのか。そして、あったところで何か問題があるのか。



「ちょっとっ、洗濯の邪魔しないでってば! そこに居られると邪魔なの!」

「またまた失礼したでござる!」



 シャワールーム空いてるんだからそこで洗濯すりゃ良いのに。誰か使ってるにしたってワンルームくらい空いてるだろう。



「「ほらキビキビ動く(っす)!」」

「し、承知っ!」

「「あ」」



 ……新人が来たってことでちょっとテンション上がってるんだろうか。



「いやー……新人は大変だなー」



 レドとアニータがこちらを認識して固まったので、火が吹けそうなレベルの恥ずかしさを紛らわすつもりで声を掛けてやると撫子は青筋を浮かべて怒鳴ってきた。



「貴殿に言われるのはムカつくでござる! しかも何なんでござるかそのだらけきった姿勢は! 昼間っからイチャイチャイチャイチャしてっ、さては男性経験皆無な拙者に喧嘩売ってるでござるな!?」

「いや、イチャイチャなんてしてないし、喧嘩も売ってないが?」



 何言ってるんだか……と呆れつつ、艦内への入り口付近に固定してある長椅子に寝転がりながらムクロの膝枕と撫で撫で攻撃を味わう。



「ねぇシキぃ、どお? 気持ち良い? 眠くなってきた?」



 相変わらず幼女モードのままで上機嫌のムクロに捕まり、何故か膝枕されること一時間と少し。



 仮面を無理やり外された状態で眠そうな船長や妙に艶々しているアリスとそのハーレムメンバー二人、剣とスラスターブーツの鍛練に来たレナ、お供として着いてきたナタリアにアンダーゴーレムに乗って偵察に行こうとしていたヘルトとリュウ、デカい物を生成しようとして外に出てきたショウさん……そして、新人イビり真っ最中だったレドとアニータ、イビられていた撫子にまで見られてしまった。

 ついでに言えばその他船員ともちょくちょく目が合っている。艦内中では今頃色んな噂が独り歩きしていることだろう。



 逃げようにもムクロの腕力から逃れられる訳もなく、その上、隣ではアカリが膝を付いて待機している。

 忠義や恩に生きている仲間からまさかの追加攻撃である。



「確かに柔くて気持ち良いし、風もあって眠くなってきたけど……どっちかと言えば死ぬほど恥ずかしい。後、アカリ。何も用ないから好きにして良いって言ってるだろ」

「はい」

「……いや、はいじゃなくて、だから何で離れ……え、もしかして好きにした結果がそれなのか?」

「はい」

「…………」



 最早罰ゲームだ。こいつらは俺に一体何の恨みがあるんだ?

 皆、引くか笑うか軽蔑の視線を向けてくるか目を逸らすかゴーレム止めるか無言でドア閉めて戻ってくか硬直するか怒鳴ってきてんだぞ。今もレナらしき人物が隠れて見てるし。



「あっ、耳掻きしてあげよっか?」

「鼓膜ごとぶち破るくらい搔かれそうだから良い」

「そんなことしないよぉ……多分」

「その多分が怖ぇんだよ」



 後、こんな罰ゲームを平気で敢行するお前が怖い。

 


「ではお飲み物は如何でしょう」

「要らん。てか風あるんだから扇ぐ必要ないだろ」



 わかってやっているのか、アカリは何処からか取り出したデカい団扇で俺を扇ぎ始めた。



 こいつらはどんだけ俺を女二人を侍らせて白昼堂々オラオラしているクズ野郎にしたいんだ。



「全く……恥ずかしくないんでござるか?」

「……お前は良いから早く掃除しろよ。それが今のお前の仕事だろ。ほら、ハリーっ、ハリーっ」

「むきいいぃっ! ムカつくぅっ、でござるぅ!!」



 パンパンと手を叩いて急かすと撫子はストレスを発散するように凄い勢いで雑巾掛けをしていく。



 甲板の端から端へ、あっちすたこら、こっちへすたこらと走る撫子。

 そして、先程から俺を見たまま動かないレド&アニータ。



 ――痛い、痛過ぎる。何て視線だ……何で俺がこんな子供達にこんな視線を一身に受けなきゃいけないんだ……あぁ、早くこの場から逃げ去りたい。船長が「たまには休むのも大事よぉ」って言ってくれた休日が台無しだ……。



「……なあムクロさんや。俺、今日は剣と防具の手入れをするつもりだったんだ。早く解放してくれないか?」

「やぁっ」



 白目剥きそう。



「はぁ……」

「……疲れてるんでしょ?」



 白目を剥く代わりに大きな溜め息を付いていると、何を勘違いしたのか、ムクロは心配そうな顔をゆっくり近付けてきてそう言った。



 悪気はないんだよなぁ……かといってあんまり嫌がるのも悪いし……



 等と思いつつも、ハッキリ拒絶しなかった俺が悪かったんだろう。



「たっぷり寝たら治るよ、ほらっ、ぎゅーってしたげるっ」

「ぐえっ、むぐっ!?」


 

 ムクロはいきなり胸倉を掴んで俺を引き寄せ、思い切り抱き締めた。



 視界が突如ひっくり返った直後にムクロの美乳に顔を埋めさせられた俺はつい変な声を漏らしてしまった。



「あーっ! ユウちゃんずりぃ! 俺も綺麗な姉ちゃんのおっぱいに顔埋めたっ……い……」

「アリス様、何でこっち見るんです……? 発展途上のまま成長の気配がない私に気にせず続きをどうぞ?」

「おら、まだぺったんこだ……早くアリス君の大好きな巨乳に育てねぇと……」

「い、いや、違うんだよ二人ともっ。だから病んだ目を向けるのと普通に落ち込むのは止めようなっ? なっ?」



 アリスの狼狽する声が聞こえる。



 それと、「……わ、私の胸も使いますか……?」と小さく呟くアカリの声も。



 が、意識が朦朧としてただの雑音にしか聞こえない。



 トクン……トクン……という一定のリズムで鳴る、優しく心地良い音で頭の中がいっぱいになる。



 リーフ達のことがあってからずっとこうだ。

 ムクロは俺を抱き締めたがり、俺はムクロの胸に包まれると眠くなる。



「む、くろ……止、め……」

「駄目だよ。シキはまだ疲れてるの。いっぱいいっぱい泣いたんだから、いっぱい寝ないと」

「俺は、もう……十分……」

「よしよし、良い子良い子……ねんねしようねぇ」

「ん……」



 俺としては十分過ぎるほど休んだつもりだ。

 目の下の隈も薄くなってきたし、感情も前より出てきてる。『砂漠の海賊団()』の前でなら〝素〟も出せる。



 なのに、ムクロの心臓の鼓動を聞くと何故か無性に眠くなっちまう。



 ムクロの言う通り、俺は疲れているんだろうか。



 ――また……殺しあいをしなきゃいけないのに……俺は…………。



 数秒後、せめてもの抵抗にムクロの腕を掴んでいた俺の手から力が抜け、そのまま意識が沈んでいった。





















 ◇ ◇ ◇






『前皇帝は『力が全て』だと謳っておりました。欲しいものは強奪し、他者は屈服させ、支配する。我らが帝国を象徴する素晴らしいお考えだと思います。従って、新たな皇帝としてこの国を統治することとなった(わたくし)、ルゥネ=ミィバはここに宣言を致します』



 〝親愛なる帝国臣民よ、決起せよ。生まれも育ちも、種族、動機も関係ない。この世は己が誇る力が全てである。力で以て全てを制し、力で以て全てを得る。それが世の理。故に……全てを失う覚悟と全てを得たいという野望があるのなら私に刃を突き立てるが良い。血で血を洗う争いを、血湧き肉踊る殺しあいを、全身の血が滾るような戦争を望むなら私の下に集いなさい〟



 その後も続く演説が垂れ流しになっている、ラジオのような魔道具の音量を器用にも鳥の足で下げた異形の少女ココは薄汚れた作業服を着て魔導戦艦の補修をしているルゥネに話し掛けた。



「やあルゥちゃん。首尾はどうだい?」

「はい? あら、ココではありませんか。ご機嫌麗しゅう」

「あ、これはどうもご丁寧に……じゃなかった、麗しゅ~」



 ない筈のスカートを幻視させる優雅な動きでニコリと挨拶を返してきたルゥネに対し、ココは日本人が恐縮したような動きで頭を下げようとし、ハッとしてから苦笑いで軽く手を振る。



「いやはや……長年の癖は抜けないもんだねぇ……」

「ふふ、慣れた仕草は自然と出てしまうものですわ」

「うへぇ、社畜なんて糞食らえ精神なんだけどなぁボク。どうせなら偉そうにふんぞり返ってたいよ」

「そうですか? 私はやはりこうして何かを造っているのが性に合っている気がします。人の上に立つことと違って、求められるのは技術と時間だけですから。楽しい楽しい殺しあいと同じですわっ」



 ルゥネが愛らしくも幼く見える金髪縦巻きツインテールや顔が汚れるのも気にせず、油汚れの付いた保護手袋で額の汗を拭いながら狂気染みたことを宣った。



「あー……技術=力ってことかな?」

「ええ、その通りです。まあそのまま技術でも間違いではありませんが……私の美学に反します。私はもっとこう、力で捩じ伏せるのが良いです」

「前世のボクよりも若い女の子が随分と楽しそうに語ってくれる。こわやこわや……」



 英雄伝に憧れる子供のように、瞳をキラキラとさせていたルゥネに冗談とも本気とも捉えられる声音で呟いたココはルゥネが弄っていた装甲板をじっと見つめると、梟のような丸い瞳を細め、再び質問を投げ掛ける。



「で、どうだい、首尾の方は。順調かい?」

「概ね順調、といったところですわね。生成、複製、模倣系の固有スキル所持者達に任せてあるので量産は十分。今は見ての通り、()()()()()()()()この魔導戦艦の改修をしているところです」



 反乱分子は一族諸とも皆殺しに、傭兵だろうと奴隷だろうと獣人だろうと強ければ召し抱える等、僅かな期間で帝国の在り方を変えていった若き女帝ルゥネ。

 皇族に相応しい強さと振る舞い、凛とした姿を民の前に見せていた彼女は皇族とは無縁の筈の場所で、皇族とは思えない服装で、皇族とは程遠い仕事を担っていた。



 美しい金の髪は何かの汚れで黒ずみ、額や頬にも煤汚れが付いている。

 人形を思わせる可憐な顔と激しく整ったボディラインを見せる身体は汗でべっとりだ。



 しかし、本人に嫌がる素振りや気にする様子はなく、自信とやる気、好奇心に満ちた瞳で魔導戦艦を見ている。



「古代の技術は素晴らしいですわ……何千、何万年と経っている筈なのに原型を留め続け、稼働までするなんて……!」

「え、壊れてたんじゃないの? 改修、だよね?」

「いえいえ。多少傷はありましたが壊れてなどいませんし、改修と言っても『魔障壁(マナバリア)』の調整と量産したアーティファクトを設置しているだけです。後は内装の改造を少し?」

「……ゴメン、ま、まな……なんだって?」

「魔障壁。マナバリアです」

「えっと……何それ?」



 本人は軽く首を傾げているつもりなのだろう。

 しかし、ココの首は縦に180℃回転して顔が反転してしまっており、非常に不気味だった。



 その異常な光景を見慣れているのか、周囲で騒ぐ者は居らず、目の前のルゥネも眉一つ動かすことはない。



「魔導戦艦に搭載されている障壁ですわ。魔力を使った壁、とでも言いましょうか……魔導戦艦がクルー達の魔力を吸って動くのはご存知ですよね?」

「こんなデカいのがたかだか数百人くらいの魔力で動かせるなんてまだ信じられないけど……まあ、一応は?」

「エアクラフトとは違い、通常、魔導戦艦には余分に吸い取った魔力を蓄えるタンクのようなものがあります。詳しい構造は未だ不明なのですが、その魔力貯蔵機には装甲の表面や各所に繋がる魔力回路に魔力を送り、粒子化した魔力……『魔素』を放出させる機能があるのです」

「へぇ、送れるのはスラスターだけじゃないんだね。それに艦内の魔力を送れるって……人間で言う心臓みたいな感じか」



 魔力を血、魔力が通るパイプ管を血管に置き換えて想像したらしいココは首を元の位置に戻し、ふむふむと頷いた。



「スラスターは単純な放出。魔素を真っ直ぐ噴射して運動エネルギーを生みます。そして、装甲の表面にうっすらとコーティングされた魔素はほぼ全ての魔法を弾く魔障壁となり、魔導戦艦の硬度を底上げしています。つまりっ、魔障壁は――」

「――ゴメン、専門的なのはよくわかんないんだけど、その魔障壁(マナバリア)っていうのは魔法を弾くバリアってことで、おけ?」

「あっ……OKですわっ」



 自分の好きなことに対しての話になると早口になる人種のようにペラペラと語り出したルゥネを遮って確認し、ココはわかりやすい回答を得ることに成功した。

 ルゥネもココの心情を察したのか、明るく親指を立てて返している。



「凄いねぇ……ただでさえ硬いのに魔法も弾くなんて……」

「後は使い方によっては艦内と甲板の気温を一定に保ったり、魔法の行使が出来なくなるくらい魔力の吸引力を高めたりすることも出来ますわね。まあ、敵味方関係なく魔力を吸われることになるので本当に使い方次第ですが……兎に角っ、古代文明万歳っ! ビバ文明の母、戦争っ! あぁっ、早く銃をぶっ放したいですわぁ……! あの振動っ、あの音っ、硝煙の臭いっ、美しく咲く赤い花達っ、つんざくような人の悲鳴っ、醜い命乞い! 全てが私を狂わせますっ、早くっ……早く戦争がしたいぃ……!!」

「はは……キミがキミの殺した皇族と同じ戦闘狂で戦争マニアなのはよくわかったよ。寧ろ、生産職であることを考えるとそれよりレベル高いかも……」



 長い前髪である程度隠れているとはいえ、ココが「うへぇ……こいつ相変わらずやべぇ……」と言わんばかりの引き顔を隠そうともしないことに、ほんの少し頬を膨らませたルゥネは軽く咳払いをして気持ちを落ち着かせ……否、落ち着かなかったのか、その直後、上気していた頬をかなり強めに叩き、極度の興奮の為、涙や涎すら出ていた顔を作業服の中から取り出したハンカチで拭って続けた。



「こほん……失礼しましたわ。戦場のことを思い出すとつい……して、異世界の戦士達の様子はどうです?」

「あー……えっと……ま、まあ、こっちも順調、かなぁ……?」



 心底ドン引きしていたココは時折声を上擦らせながらも思い出すようにして皇帝が召喚したという異世界人について話し始める。



「やっぱボク達と同じってだけあって皆結構強いよ。レベルが上がってきたらちょっとヤバいかも。皆、当然のように固有スキル持ってるし、前回イクシアで召喚された時みたいに勇者が二人も居るしね。早めにボク達に賛同してもらうか……殺した方が良いと思う」



 本気の提案、声音だった。

 それまでの空気を一変させ、真剣な表情でそう告げると、その理由について語る。



「正直、育成を任されたボク達転生者はああいう子供には弱いんだ。ボク達自身、彼等のように学校に行ってたから情も移りやすい。……それに、子供を戦争の兵士にするくらいなら殺した方が互いの為だよ。下手に力を付けられて不信を持たれたら面倒だし」

「……そうですか。因みに勇者はどちら側でしょうか? もしくは味方になり得そうですか?」



 氷のように冷たい目で質問を続けたルゥネは「何言ってんのさ」とココに呆れられた。



「そういう細かい情報はアレでやり取りしようっていつも言ってるでしょ」

「……結構疲れるんですのよ?」

「ボクは楽だもん。時間短縮にもなるし、秘密だって隠せるし」

「私、一応皇帝なのに……」



 ルゥネは大きく溜め息をつくと、徐に汚れている保護手袋を外し、ココの顔を覆う前髪を上げて額同士をくっ付けた。



「いつも言ってますが、いい加減この髪、切っては如何? 邪魔じゃありません?」

「……この距離で喋らないでよ。キミがこうして接触した方がやり易いって言うからそうしてるのにさ」

「まあ……奴隷の分際で皇帝の私に何て口を聞くんです。焼き鳥にして食べちゃいますわよ?」

「そんなこと思ってもないくせに」



 そんな会話を最後に、数分の間二人は無言になった。

 その最中、周囲では作業は続いているが、無言で額をくっ付け合っている二人に話し掛ける者は居ない。



「成る程……確かにある程度の選定は必要そうですわね……」

「後、二ヶ月ちょっとね。おっけー、わかった。じゃ、後は今心ん中で言った通りで」

「はい」

「いや~……やっぱキミの固有スキルは楽で良いね~……ボクもそういう力が良かったよ」

「私は貴女の固有スキルが羨ましいですわ。そんな力あればどれだけ殺しあいを有利に進められるか……」

「隣の芝生は青く見えるものなんだよルゥちゃんっ」



 得たい情報が得られて満足したらしいココは語尾に音符でも付いてそうなほどにんまりすると、手の代わりに生えている翼をヒラヒラさせてルゥネの元を去った。



稲光(いなみ)(めい)……ふふっ……メイ……メイですか……イクシアの勇者ライの妹が我が帝国に……これはかの国が信仰する神のお導き? それとも悪戯、というやつでしょうか。ふふふ……シャムザを手に入れた後はイクシアを攻めましょう……! その頃にはメイも十分育っているでしょうし、『真の勇者』の妹であり、本人も『真の勇者』となれば……聖神教も簡単には手出し出来ない筈……」



 ココの後ろ姿を見送ったルゥネが一人、ブツブツと呟いている。



 やがて、「時間さえあれば我が帝国は世界を……」と不気味な笑みを浮かべていた彼女は続け様、



「はっ、そうですわっ。今度のシャムザ侵攻に当たって、メイとその仲間達を連れていきましょうか……私達のことをもっと知ってもらうには良い機会です……!」



 と、さも良いことを思い付いたかのように言う。



 そうして、何やら計算していたのか、視線を虚空に彷徨わせると再びニヤニヤし始め、作業に取り掛かるのだった。



来週も厳しいかもです。

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