第117話 約束
シキは上も下も、右も左もない……正確には何処までも続く黒い闇の空間で座り込んでいた。
「もう嫌だ、こんな世界……日本に……あの頃に戻りたい……ライもマナミも優しくて、あいつ……鳴が居て、母さんや父さんも居る……あの頃に……」
どうやらシキはフレアとの約束も守れずに、寧ろ自分が油断していたせいでアクアに守られ、死なせてしまったこと、今現在に至るまで味わった度重なる辛い出来事によって精神が限界を迎え、完全に折れているようだった。
ありもしない過去へのタイムリープという妄想の中にはライやマナミと笑っている光景やライ達の他に唯一仲の良かった存在であるライの妹の姿がある。
「日本に居れば……まだ馬鹿やってた、よな……ライとマナミがイチャイチャしてる横で俺もメイに迫られて、付き合ってたり……そうだ……この世界さえ来なければ……こんな世界無ければ良かったんだ……そうすれば俺は…………」
この世界に来たせいで体験してしまった苦い思い出が思い浮かんでは消えていく。
今度は妄想等とは打って変わり、ジルやエナ、アリス、そして、ムクロといった自分を受け入れてくれた存在も含まれている。
「けど、そう、か……そうしたら……ジル様にもエナさんにも……アホアリスにも……ムクロにだって会えなかったんだよな……」
ジルは言わずもがな、全てを教えてくれた師匠であり、最愛、憧れの人だった。
エナは『闇魔法の使い手』と知ってもニコニコと微笑んでくれた優しい人だった。
アリスは少し頭の足りない点が気になるが、ライ以来の心の許せる友人だった。
ムクロは……
「《魅了》されたから好きなだけ……その、筈……なのにっ……何でこんなに……」
やはり、この世界には辛いことしかない。
もう死にたい。
そう思い掛けた直後。
頭に声が響いてきた。
「やあユウ君、久しぶり~。元気してた? ……あはっ、してるわけないよねぇ」
否。
頭の中、と感じたが、やけに近い。
疑問に感じて頭を上げると目の前に『付き人』のクロウが居た。
好青年風の笑みを張り付けた、相変わらずの美男子だ。
「……死ね」
「酷いっ、確かに僕も君を虐めたけど、死ねはちょっと……」
「煩い、死ね……」
「あちゃあー、ちょっと不味いかと思って出てきたけど……これは思った以上に重症だね」
何故、彼が居るのか。
何故、光のない世界で彼の姿が見えるのか。
疑問は浮かぶものの、相手は師が認める真の世界最強、『付き人』だ。今更突っ込もうとは思わない。
一方で殺したいと思うほど憎かった相手が現れても動こうとすらしないシキを見たクロウは困ったように笑い、少し考えた後、何かを思い付いたように、ぽんっと手を叩いた。
「そうだっ、君が最も大事だと感じる人が今、何を考えているか聞かせてあげるよ」
「…………」
最早、シキは言葉も返さず俯いてしまった。
しかし、クロウは気にせず手をかざし、巨大な画面のようなものを作り出した。
そこに映るのは二人の女性。
一人はジル。
何処かの戦場の跡地だろうか、大量に重なる赤黒い屍の上で返り血の一滴すら浴びていない真っ白な髪が風に揺られる中、相変わらずの可愛らしい小顔には酷い仏頂面が貼り付けられている。
『ちっ、ここも雑魚ばっか……つまんねぇ…………そういやユウの奴、元気でやってるかな……クハッ、案外オレ様に会えなくて泣いてたりして……オレのこと大好きだもんなぁあいつ……』
タイミング良くシキのことを思い出した途端、仏頂面は鳴りを潜め、ニヤニヤとした意地の悪い顔へと変わった。
しかし、悪意は感じられず、純粋に懐かしい日々を思い出すような遠い目をしている。
もう一人はムクロ。
レドとアニータが絶望したような顔で座り込んでいるすぐ隣。小川に綺麗な脚をバタつかせている彼女は木々の間から優しく差す陽光に真っ黒の隈と血のように赤黒い髪を晒しており、子供のように無邪気な笑みを浮かべていた。
『ふふんっ、ふふーんっ……早くシキに会いたいな~……そしたら、おんぶしてもらって~……血ぃもらって~……頭ナデナデしてもらって~……逆にナデナデしてやるんだぁ……えへへぇ……』
その映像、様子はあまりにリアルで、一年ぶりにテレビの生中継でも見ているかのような感覚を覚えた。
ジルの声を耳にした瞬間、凄まじい反応速度を見せていたシキは画面を見つめ、ポロポロと涙を流しながら静かに問う。
「これ、は……?」
「現在進行形の彼女達。……あ、君のことをぶつぶつ呟いてるのは僕があの子達の心にちょっぴ~り促したからだからね? 断じて二人は君のことを常に考えてるとか思っちゃダメだよ?」
「死ね」
「酷いっ!」
クロウと短く会話しつつも、シキの瞳は二人に向けられたままだ。
『あいつのことだから……いつか本当に強くなって会いに来たりしそう、だな……つってもオレには勝てる訳ねぇし……でもでもっ、また奇をてらった策で負かされて……それから…………』
「おっと……これ以上はちょっと可哀想だから止めるよ」
「……死ね」
「君、さっきからそればっかりだね!」
死体と死体に囲まれ、また、それらの死体の山の上でふんぞり返っている化け物とは思えない乙女な顔をし始めたジルの映像は少し焦った様子のクロウに止められてしまった。
シキは仕方なく、大の字に寝転がってむにゃむにゃ言い始めたムクロに集中する。
『むにゃ……うへっ、シキ……さ…………愛――』
「――うおぉっと! 何口走ろうとしてんのかなこの子は!? しかも寝言っ! いつの間に寝たんだよ!」
「…………」
何やら、今度は大分焦っているクロウだったが、シキが不思議がることはなかった。
ムクロには既に究極の不思議ちゃんかつイカれ女のレッテルが貼られている。今更、意味もなく、あるいは何故か愛されていようと気にしないし、気にする余裕もない。
「……………………」
「……何か反応が欲しいんだけど」
再び俯いたシキにクロウは思わず突っ込む。
しかし、シキの顔が上がることはなかった。
「…………不味ったな、ここまでとは……前に見た未来と全然違うし、思いの外耐えるからイケると思ったのに…………っそのこ……ぶっ殺…………セ…………るか……?」
苦い表情で呟き始めたクロウをよそに、シキの心は揺れていた。
――そうだ……俺はジル様に啖呵切って負けて……その前だって死にたいだなんて許さないみたいなこと言われて、それで……
脳裏に浮かぶのはジルとの別れの時のこと。
ジルは心が折れ、死を望んでいた自分を叱り、泣きながら発破を掛けてくれた。
――ムクロにも死なないでって言われた……ジル様にもムクロにも……死ぬなって言われてたのに、俺は……
「……お?」
「この空間、俺の意思で出られるもの……ですか?」
「へ~……まだ敬語使うんだ」
生きる理由を見つけ、瞳に光が戻ったシキが立ち上がったこと、そして、魔族化させた張本人に対して、敬意を払おうとする彼にクロウは目を丸くした。
「殺してやりたい、せめて一発でも良いからぶん殴りたい。そうは思います。けど、今はまだその時じゃない。俺は弱いから……あんたみたいな人にも教わらなきゃここが何処なのか、どうやって出るのかもわからない。それに、あんたは……何かを俺にやらせたくて魔族化させた……そんな感じがします。多分、それは俺の為になることで……あいつのこと、でしょう?」
「さて、どうだろうね」
シキはクロウが画面に映るムクロをとても優しい目で見ていたことに気付いていた。
しかし、対する美青年は返答せずに濁したので、少し胡乱げな視線を向けつつ、辺りを見渡す。
「ここは君の心の中さ。あの戦場を覆うほどの〝粘纏〟を出した君は自らが作り出した殻の中に閉じ籠った。この空間は謂わば外界から君を守る盾……いや、心の結界とでも言うのかな? ん~……要は君の心が産み出したものだからね、君が心の底から出たいって思えば出られると思うよ」
「……リーフとマナミは無事、ですか? 外の様子は……」
「うん、君が死ねって思った相手以外は。尤も、ジンメンは逃げちゃったし、勇者君はカ……じゃなかった、聖剣に守られてる。聖騎士ちゃん達も神が与えた狡い盾で無事だけど、他の雑魚は全滅だね。〝粘纏〟で窒息させるとかエグいよねぇ君」
「…………」
色々突っ込みどころはあったが、努めて無視したシキは《闇魔法》を使ったにしては身体の調子が悪くないことに首を傾げた。
「ん? あぁ、君さっき角が伸びたでしょ。あれはまた一歩、魔族化した証なんだ。だから《闇魔法》を使える限界も伸びてる。後は聖剣も君の暴走阻止に一役買ってるよ。まあどっちかというと聖剣の力ってのが大きいかな。なかったらまた魔物になってたね」
当然のように告げたクロウは「あ、そうそう」と続けた。
「わかってると思うけど、《闇魔法》は君の感情がトリガーとなって発動する。魔力が0でも、『負』の感情さえあれば使える力。君の悲しみと虚しさ、拒絶という感情は全てを飲み込み、くっ付けるさっきの〝粘纏〟を出した時点で消えた。もう悲しくないだろ?」
「……確かに」
内心、意識が朦朧としていたとはいえ、友人の頭が弾け飛ぶという凄惨な光景を目撃したにしては些か平然としている自分に嫌悪感を抱いていたのだが、『負』の感情を代償にしたのだと聞けば少しは安心出来る。
「前みたいに代償としての消費が追い付かないくらいの感情の爆発は暴走を招く。今回は一度暴走したことや応用技を覚えたことで何とか踏み留まったって感じだと思うよ。……知り合いの首が消し炭になって暴走しないのも何かアレだけどね」
「……防御力の差です。俺はあいつらとは……現地人とは、違う。同じ異世界人と比べれば紙装甲でも現地人からすれば狂戦士系統の職業ではあり得ないレベルの防御力……あいつは斥候職でした。ステータスも高くはない。だから……」
「仕方ない、と?」
「……はい」
「ん~そういうことじゃないんだけどねー……」
クロウは困ったように頭を掻いたものの、最後は「ま、どーでも良いや」と締め括った。
「じゃあ最後に、策はあるのかい?」
リーフ達が来てくれたお陰で逃走用の魔力こそ回復しているようだが、魔力は全快時の一割、精神的な疲労も蓄積されている状態で勝算、あるいは逃走の目処はあるのか。
最後、と言っているように消えるつもりらしく、クロウの瞳は酷く真剣だった。
「あいつらが互いを大事に思っているなら、レーセンという不確定要素が居る、という前提条件に目を瞑れば……いや、それを抜きにしても恐らく成功するでしょう。あいつらはそういう生き物だ。俺の予想通りに動くのは確定事項です」
これまでのライ達を見る限り、そこに疑いはない。
だが、レーセンの存在とそのやり方を思えば迷う気持ちは生まれる。
「……言い切ったね。でも良いのかい? そんな策を使ったら――」
「――俺はもう黒堂優じゃない。魔族の……冒険者のシキです。未練はこの手で断ち切る」
尚も言い切るシキの様子にクロウは違和感を覚えたらしい。
覚悟ならある、という類いの意思を持つ者とは別の何かを感じ取ったのだろう。
「そう。……僕に何か言いたいことでも?」
思わず、といった様子でそんな疑問を投げ掛けてきた。
そして、返ってくる。以前と同じ決意……憎悪にも似た執着の心が。
「……あるに決まってるだろ。どんなに気を遣われようが、助けられようが……あんたはいつか絶対にぶん殴る。それだけは変わらない」
「あはっ……前も言ったよね? 魔国で待ってるって。……んじゃ、ばいばい」
お前にされたことは忘れないからな、というシキの宣言に、彼は含み笑いを漏らすと闇の中へ消えていった。
――幻覚でも幻聴でもない……奴のことだ、姿形だけ見えるようにして《念話》スキルで……みたいな感じか。
暫しの間、再び静寂が訪れ、そんなことを思う。
とはいえ、それも数秒のこと。
直ぐに切り替えて雑念を捨てると、自らの心が作り出したこの闇の空間に意識を集中させた。
シキの想いに応じ、全ての存在を拒絶、飲み込んでいた〝闇〟が晴れていく。
鼻や口以外の全身を〝粘纏〟で覆われ、身動きはおろか、話すことも出来ずにいたリーフが無傷の状態で現れた。
レーセンの剣が抜かれた後、座り込んでいたようだが、どうやらマナミは固有スキルを使ったままでいてくれたらしく、全てが止まっている間に服や防具までもが修復されている。
「お……おお? な、何だったんだ今のは……ってそうじゃねぇっ、アクアっ……!」
アクアの遺体に飛び付くリーフを横目に聖剣の光と共に現れたライ、『神の盾』を突き出した聖騎士ノアとレーセン、二人に抱えられたマナミの姿を視認する。
対の存在であるが故か、ライはシキの想いを感じ取ったらしく、聖騎士ノア達の方に聖剣を向けており、対する二人はそれを完全に無視して魔力回復薬とそれに類似するであろう何らかの薬を飲んでいる。
――ちっ、あいつらだけ止めたままに……いや、そんな器用なことは出来ねぇか……マナミだけ助けるのも無理。あそこまで広げると0か100みたいな極端な制御しか出来ない……解放しちまった以上、取り敢えずタイミングを見てライに……
チラリ……
と、一瞬。
ほんの一瞬だけだが、シキは思考を続けながら凍てつくような視線を近くで倒れていたミサキに向けた。
蹴りを入れた瞬間、報復が恐ろしくなりでもしたのか、逃げようとしていたらしいミサキは自分がシキに致命的な隙を作らせたせいで町の人間、それもシキの知り合いを殺してしまうことになったこと。端的に言えば聖騎士ノア達の加担をしたことに……殺したいと憎んでいたシキではなく、何の罪もない人間の頭を消し飛ばす殺人行為に加担した自分に恐れをなし、地面に転がっていた。
恐怖と後悔、自分のせいじゃないとでも言いたげな若干の否定が混ざった複雑な表情のミサキはシキの紅い瞳に気付くと悲鳴を上げてまで盛大に驚き、震え出した。
――予定を変更してあのミサキも使うか。……あいつに向けられない分の殺意は全部、バカ女に向けてやる……例えライの女でも殺すつもりで……
幸いなことにミサキはシキから受けた拷問によるトラウマを刺激され、動けなくなっている。それに加えて少し漏れてしまった殺気。
青を飛び越え、白い顔にまでなっているが、どうせ殺す相手だ。寧ろ好機、と考え、再びライと聖騎士ノア達を注視した。
「ノア! 何てことを!」
「……何かと思えば外れも外れ……〝粘纏〟持ちでしたか。レーセン、先程の者は?」
「町の冒険者かと」
「余計なことをしてくれましたね……状況はどうです」
「はっ、我々以外は全滅している模様です。何人か生き延びている者も居るようですが、気配が酷く弱い。持って数分でしょう。ジンメンに関しては完全に逃走したようです」
「っ……たかだか一匹の、それもただくっ付けることしか出来ない魔族に全滅とは……」
ライは激怒し、聖騎士ノアとレーセンはシキを助けたアクアに怒りを覚えながらも冷静にこちらの様子を窺っている。
――ライの手前、人質にすることは出来ないとはいえ、奴等とマナミを離さないとこちらの生存率が下がる……そして、チャンスは一度のみ。魔法鞘だって見つかってない……クソっ、何もかもが上手くいかねぇ……! つっても流石に命には代えられない……魔法鞘は捨てるしかないか……
ここまでライを怒らせた上、ライを働かせる為に、あるいはシキへの回復支援を止めさせる為にマナミに手を出せばライが完全に敵対戦力となってしまうことは想像に難くない。
ただでさえ、敵対行動と捉えられてもおかしくない行動を平然と行っている男だ。異世界から召喚された『真の勇者』の一人が脱落した以上、残った最後の一人が脱落どころか魔族側に寝返ってしまうことは聖騎士ノア達からすれば許容出来ないのだろう。
マナミを抱き抱えながらも確保しただけで脅迫にも油断を促す材料にもしない二人を見てそう判断したシキは「リーフ……鞘はもう良い。あの爺を少しの間だけ足止め出来るか」と小声で問うた。
「……アクアまで殺されたんだ、こうなったらやるしかねぇ。何か策があんだろ?」
「あぁ、一回しかチャンスはないが確実にアクアを殺った白騎士と使えねぇクソ勇者をぶっ飛ばせる。上手くいきゃあ即死だな。問題は……」
「あの爺さんか。確かにあれは厄介だ。つっても俺の腕じゃ持って数秒ってところだな」
「体勢を立て直す時間がありゃあ十分。どんなにヘマしても気絶までは持っていける」
「そうか……ならお前は逃げろ」
《聞き耳》スキルも持っているらしく、「何やら我々を嵌める算段があるらしいですぞ」と囁いているレーセンを睨みながらリーフの提案に驚き固まるシキ。
「勇者と再生者は知り合い、さっきの黒いモヤモヤ……そして、お前の正体。嫌でも色々わかってくるさ。……俺が殿をやる。一人でここまで暴れてくれたお前が死ぬ必要はねぇ」
「……だとしても」
「お前だってわかってる筈だ。仮に勇者様と聖騎士ノアを倒しても俺や再生者様を連れてあの爺さんから逃げるのは不可能だってよ。現状、俺は存在そのものが足手まといになってる。お前が嫌だと言うんなら今すぐにでも死んでやる。そうすればお前を縛るものが一つ減るだろ?」
「…………」
思わず無言でリーフを見つめてしまう。が、返ってきたのはいつぞやか見た死を覚悟した目だった。
その目が嫌で、死んでほしくなくて……それとなく逃亡を促したのに結局、こうして自分を助けに来てくれた。
それがどうしようもなく心を荒ぶらせて、どうしようもなく理解出来なくて、どうしようもなく嬉しい。
絶対に殺されると、死んでしまうとわかっているのにリーフの言葉を嬉しく感じることに自己嫌悪すら覚える。
しかし、リーフの考えは確かに正しい。
聖騎士ノアを倒せば恐らくライは聖騎士ノアに代わって追ってくる。
ライを無視すれば聖騎士ノアはライを出し抜き、追ってくる。
二人を倒せたところで、レーセンは追ってくる。
どう足掻こうとそんな状況で二人も連れていくのはそれこそ不可能だった。
言ってしまえばマナミを連れていくことも難しい。
最善はリーフとマナミを確保し、無傷で逃亡することだが、あくまで理想に過ぎない。
マナミという人質無しでもライが邪魔をしてくれているので、最悪、リーフを連れての逃亡になる。とはいえ、飛べない上に図体が大きいリーフを連れたままレーセンから逃れるのも非常に厳しい。そして、それら全てを理解しているからこそ、リーフは自分を置いていけと言ったのだ。
面等な二人を排除した上で、レーセンが数秒でも止まっていればシキ一人での逃亡は出来る。
シキ自身も内心ではわかっていた。
故に頷く。
最早、アクアまでもがフレアの後を追っていってしまった。元より、リーフは町で、町の為に死ぬと言っており、その覚悟もあった。
ならば……
「わ、かった……先ずは、奴等を分断する。勇者と白騎士、盲目爺と再生者で分けられれば勝ったも同然だ。タイミングを見て特攻頼む」
「……おうよ。死んでも数秒は稼いでやる。お前は死ぬなよ」
「フレアとアクア……あんたに助けられた命だ。簡単にはくれてやれないな」
あんたがそう言ったんなら絶対に実行出来る。否、既に助けられたようなものだ。
言外に告げられた信頼に、リーフはニヤリと笑う。
「んじゃ……」
「「最期(最後)の」」
「大暴れと」
「「いくか……ッ!」」
文字通り、シキは最後、リーフは最期となる反撃が始まった。
グダってきてるからせめて戦闘は次話くらいで終わらせたい……と思い始めて早数話。詰め込み過ぎましたね。ただこうなると次章も半端じゃない量に……最終章まで何話必要になるやら。




