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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第3章 冒険者編
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第101話 仲間割れ

グロいシーンがあるので食事中の方等はご注意ください。



 やられた。



 恐らくレーセンがあの時合流しようとしていた後援部隊の誰かに俺のことを教えて町中に転移させたんだろう。


 そして、どこの町にも必ず居る聖神教の信者を唆し、仲違いを企てた。



 俺が町に残っている……いや、俺が町に戻った時点でこの町に俺にとって守りたい何かがあることをレーセン達に知られちまったからな。

 俺がどう動こうが時間は無駄になるし、もし暴れて信者達を殺そうもんなら生き残った町の住民とのいざこざが必ず勃発する。余計に時間を食うことは必然的。レーセンはyesとnoの二択とはいえ、読心スキルを持っている。なら俺の性格をある程度理解していてもおかしくない。



 ……待てよ? あいつらの反応……俺がこの町に滞在していることを知っているような感じだった、ような……?

 少なくとも驚いたりはしていなかった。



 と、いうことは……予め聖神教の教会から離れた位置にジンメンを飛ばしていた? 外からじわりじわりと内側に転移させることで逃げ道をなくし、俺をおびき寄せた……?



 ――いや、今はそれどころじゃないっ。もし仮にそうだとすれば町の中央に設置されてる教会の方に退避を……



 いやっ、いやいや……落ち着け、まずは目の前のイカれ集団の対処が先だろ……だが、どうする?

 この町は人族至上主義であるイクシアの領土。素直に正体を明かしてもこの町に住んでいる奴からは良い顔をされない。逆に認めなくてもそれは一時的な処置に過ぎない。



 ――それに聖神教の奴等がここまで騒いでるんだ。怪しまれて当然……信じてくれたとしても今後リーフ達と一緒に行動することは……クソッ、本当にやってくれた……! いずれ離れる予定だったとはいえ、折角出来た俺の居場所をっ……



 思考系スキルで瞬時に次々に推測、判断していく俺だったが、疑惑の目を向けてくるるアクア達に何て言えば良いのかわからず、やはり固まってしまう。

 何て言えば良い、どう動けば最良なのか……そう考えれば考えるほど、聖軍や聖騎士ノアを恨む気持ちが強くなり、思考が逸れていく。



 そうまでして俺を殺したいか……



 俺はただライ達と一緒に居たかっただけなのに……



 その為に死ぬ気で努力してきたのに……



 そのせいで生きたまま喰われ、魔族にまで堕ちたのに……!



 以前、暴走した時のようにどす黒い感情が溢れてくる。



 ――ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな……ッ!!



 目の前の現実も、聖軍や聖騎士ノアの存在も何もかもがムカつく。殺してやりたい……



 そう考えた次の瞬間。



 ドックン……と心臓が大きく跳ねた。



 息が荒くなり、全身の力が抜けていく。



「っ……! はぁ……っ……はぁっ……!」



 破壊衝動も殺意すらも超越した形容し難い感情が無限に涌き出てくる。



 この感じ……魔族化した後の更なる暴走の時と同じだ。



 これは俺の悪癖なんかじゃない。

 間違いなく暴走の兆候だ。



 少しすると、全身から〝闇〟が漏れ、殺気が放たれ始めた。



 そこに俺の意思はない。



 俺の感情に反応して自動的に出ているものだ。



 しかし、一度経験したからか、〝闇〟に飲まれつつも俺の思考はある程度正常を保っていた。



 ならば……俺がやることは一つ。



「っ!?」

「ひぃっ!? 何て不気味な気配を!」

「やはり魔族っ! 火炙りの用意だ!」

「お前……」

「し、シキっ……」

「っ……」

「ええいっ、何だって俺の町がこんな目に合わなきゃなんねぇんだ!」

「シキさんっ!?」



 エルティーナや信者達、リーフにアクア、フレア、ギルマスとセーラ。

 全員が様々な反応をする中、俺はスキル多用による頭痛が来るのもお構い無しに思考系スキルをフル活用し、仮面を外した。



「「「「「っ……!?」」」」」



 魔族だと信じきっていても、そう言われても、それでも黒い角が生えている俺の姿には驚いたんだろう。

 一同は一様に絶句した。



 ――このまま〝闇〟に囚われたら今度こそ俺は終わりだ。暴走してリーフ達を殺すくらいなら……。それに、目の前の目障りな奴等だって殺したところで聖軍が止まってくれる訳でもない。どのみち、もう言い逃れは出来ないんだ。俺に出来るのは全てを認め、信じてもらうことのみ……



「気配、と……さ、殺気は……少し、待って……くれ……今、け、けけ、消すっ……」



 発狂している殆どの思考を暴走の防止に回す。

 お陰で全身の震えが止まらなくなり、呂律も怪しくなる。その場に膝を付き、両手で頭を抑えてしまう。が、それでも角は隠さない。



 それは精一杯の誠意であり、魔族であることを悪いことだとは思っていないという意思表示だった。



「な、何が消すだ! お前達、奴を火炙りにしろっ!」

「そうだ! 火炙りだ!」

「「「火炙りっ! 火炙りっ! 火炙りっ! 火炙りっ! 火炙りっ!」」」



 俺と同じように正気じゃないエルティーナがそう言い放つと、信者達は口々に叫びながら属性魔法で『火』の玉や壁を作り出した。



 どうしても俺を火炙りにしたいらしい。



 一方で俺から〝闇〟と殺気が薄くなってきているのを感じとったらしいリーフ達はそれを食い止めようと信者や俺の間に立ちはだかってくれた。



「止めろっ! 魔族だから何だってんだ! 気配と殺気は消すって言ってんだろうが! 何かの間違いなんだよ!」

「シキが悪ならジンメンを飛ばしてきて町をめちゃくちゃにして、攻めてきてる聖軍はどうなのっ……!?」

「ぉぉぁ……っ!!」



 リーフは背中の大剣を抜いて盾にし、アクアは珍しく大声を上げている。フレアに至っては話せないと言うのに悲痛な声を発し、身を呈して俺の壁になってくれている。



「貴様らっ……そいつは魔族なんだぞ!? 見ろ、額の角を! 人間じゃないっ……獣人族も魔族も人の振る舞いをする魔物だ! 間違った存在を否定して何が悪い!?」

「角が生えてようが何だろうが人の言葉を理解し、人の心を持っているんならそれは人間だろ! 俺からすれば見た目が自分と違うってだけでそこまで騒ぐお前らの方がおかしいんだよっ!」

「な、何言ってんだ……? こいつ……」

「いやっ……き、気持ち悪いっ」

「まさか……こいつら洗脳されてるんじゃ……!」

「そ、そうだっ……そうに違いない! 何て卑劣な……恥を知れ魔族がっ!」



 鳥肌でも立ったのか、エルティーナは両腕を擦りながらリーフ達を説得しようとするが、リーフは毅然とした態度で返す。

 しかし、信者達はリーフの発言そのものが理解出来ないらしく、いつだかのイケメン(笑)のように洗脳というパワーワードを使ってまで俺を悪者扱いしてきた。



「……っ!」

「よ、よせアクア! 落ち着けっ!」

「放して! 言わせておけば好き勝手言ってッ!」



 何がなんでも俺を殺したいらしい。まるで宇宙人とでも話しているかのようでてんで話にならない。

 アクアも俺と同じ結論に至ったらしく、短剣を抜いて斬りかかろうとし、リーフに抑えられてしまった。



「ぐっ……!?」



 それと同時に蹲っていた俺の頭が誰かによって無理やり地面に押し付けられ、四肢を抑えられる。

 大人数なのか、無数の手で抑えつけられているような感じだ。



「なっ、ギルマス、テメェまで!」

「止めてっ、シキは何もしてない!」

「よしっ、バッカス! お前は両腕を抑えろ! 俺が首を抑える! お前達は背中と脚に乗っかってでも抑えるんだ! セーラは応援を呼んでこいっ!」

「は、はいっ!」

「まさか魔族だったなんてな……! 変だと思ったんだっ、お前がこの町に来た時期からジンメンは現れ始めた! 挙げ句には聖軍だ……お前がっ、お前がジンメンを呼び寄せたんだな!? 聖軍もお前の命を狙って……! お前のせいでこの町がめちゃくちゃになったんだっ!」

「がっ……し、知るかっ……よ!」

「ぐうっ、こいつっ、この期に及んで抵抗しやがるぞ!」

「何て馬鹿力だ!? こちとら六人がかりだってのに!」



 ギルマスだけじゃない。顔を地面に押し付けられているから確認は出来ないが、近くに居たバッカスや他の冒険者まで俺を羽交い締めにしているらしい。

 何人かに至っては俺の背中に乗っているらしく息が出来ない。両肩を抑えられているから力も入らない。何をトチ狂ったのか、ジンメンの存在や聖軍の襲来を俺のせいにする始末だ。



 ――こんな時に……何考えてんだ馬鹿共がっ!



「うおっ!? こいつっ……ぐあああああっ!?」

「なっ……ぐあっ……ぅおああぁぁっ!?」

「おいっ! 応援はまだかっ!? 早くしろっ!」

「クソッ、ギルマスとバッカスがやられるなんてっ!」



 両肩から地面に向けて一瞬だけ魔粒子を強く噴射することで何とか立ち上がった俺はいつまでも首に引っ付いているギルマスの手首を掴んで握り潰し、近くの柱に投げつけると、それに引っ張られてフワリと浮いたバッカスの腕をそのまま掴み、同じように握り潰す。

 ビチャビチャと赤黒い液体が飛び散るのも気にせずに床に叩きつけ、背中の冒険者達はその勢いで無理やり振り払った。



 揃って「うわあああっ!」と悲鳴を上げて吹っ飛ぶ冒険者達を横目に身体の状態を確認し、気付いた。



 ――ったく……って、暴走が……止まった……?



 俺が何で……と思うより、エルティーナの斬り込みは早かった。



 視界の端にエルティーナの剣が放つ鈍い煌めきを捉えた俺は反射的に持っていた長剣を盾にした。



 ガキィンッ! と音や火花を散らせた後、ギリギリと押し込んでくるエルティーナと至近距離で視線を交わす。



「っぶねぇ……まさか、この距離で……《縮地》を使うとはなっ……!」

「私も、正義足る私の剣がまさかこの距離で防がれるとは……」



 ――やっぱり見間違いじゃない……目が白く光ってやがる。ムクロも《魅了》を使う時は目が輝いてたけど……こんな薄気味悪い光じゃなかった。この光……何処かで………………そうだっ……俺が魔族化して……聖騎士ノアと対峙した時と同じっ……!



「……思わなかった、さっ!」

「くっ!?」



 ここ最近で何度も目玉が光るという異世界らしい現象を見たからか、ステータス差で格下だと下に見ていたからか……

 恐らく両方の理由により、油断してきた俺は力で圧倒していた筈のエルティーナ相手に押し負け、長剣を弾かれてしまった。



 ――油断もあったが……今の感じ、何かのスキルだな……? 斬擊というよりは衝撃だった。衝撃波を生み出してダメージを与えるタイプのスキルっ……!



「ちぃっ!」



 ――左腕が使えない今、格下相手でも油断は出来ない、か……



 長剣が弾かれたと判断するや否や、再び肩から魔粒子を噴射し、床に足裏を擦りながら後退した俺は魔法鞘から別の長剣を抜いて構えた。



 エルティーナの後ろでは先程作り出した『火』の属性魔法を浮かべている信者達の姿があるが、現在、ギルドがジンメンの即死胞子対策で全ての出入口、窓を閉め、バリケードで塞いでいるのを理解しているらしく、撃ってこない。

 悪魔だとか人類の敵だとかぶつぶつ聞こえてくるのみだ。



 そして、俺の強さの一端を知っているエルティーナが冷や汗を流しながら決死の形相で剣をこちらに向けること十秒程度。

 セーラがリーダーや少年剣士レド、その他若い男連中を連れてきた。



「ま、マスターっ、応援を……へっ? き、きゃああああっ! て、手がっ……マスターとバッカスさんの手がっ……!」

「……こりゃあ派手にやったもんだな。二度と動かねぇぞ」

「し、シキさん……」



 ステータスは高くとも俺の腕力で固い場所に叩きつけられては敵わないのか、中々起き上がってこない二人はセーラが悲鳴を上げるくらいには腕が潰れている。

 感触からして骨ごと逝ったとは思ったが……ギルマスは右手首が、バッカスは左肘がぺしゃんこだ。あれではリーダーの言う通り、二度と動くことはない。



 また、その後ろに居る明らかに冒険者ではない男連中はその惨状に顔を青ざめさせている。

 ただでさえジンメンによって恐怖のどん底に落とされているんだ、俺という新たな脅威に態々飛び込む馬鹿は信者くらいなもんなんだろう。



「……エルティーナ。貴女ならシキが悪い人じゃないことを知っている筈。何故そうまでして……」

「そうだっ。お前、こいつとそこそこ長い付き合いになるだろ! 俺達より、こいつのことに詳し――」

「――う、煩い黙れッ!!」



 セーラが腕を抑えて倒れ込んでいる二人に回復魔法を掛けている光景にチラリと目を向けたアクアとリーフが男連中と同じ顔色になっているエルティーナに疑問を投げ掛けたが、当の本人は聞きたくないとばかりに頭を振る。



「貴様らにはわかるまいっ……! 薄汚い化け物に洗脳され、良いように使われる貴様らにはっ!」

「な、お前まで何言ってっ……俺達は洗脳なんかされてねぇ!」

「されているからそう思わないだけだ! こんなっ、角が生えた人モドキが人間ぶっているんだぞ!? 何故何も感じないんだっ!?」

「またそれかっ! 角が角がって、お前らは見た目ばかり重視する! お前はこいつの人となりを多少なりとも知っている筈だって言ってんだろうがっ! 何でそこを見ようとしないっ!」



 馬の耳に念仏とでも言うのだろうか。

 いつになく様子のおかしいエルティーナが整えられていた赤い髪を振り乱し、同じようなことを言い続けるのに対し、リーフはうんざりした顔で返す。



「煩い煩いっ! 黙れ黙れ黙れぇぃっ!! 我々が正しいと言ったら正しいのだっ! 黙って我が剣の錆になれシキッ!」



 ついにはエルティーナが子供のように駄々を捏ね始め、涙を流し始めた。



 ……幾らなんでもおかしすぎやしないか? 大の大人が、とは言わないが……鬼気迫る顔で号泣しながら懇願されても内容は「見た目がキモいから早く死ね」だし……



 完全に正気を取り戻した俺だけでなく、リーフやリーダー、セーラ達も訝しげな視線を送ってきたのが何らかの琴線に触れたらしい。

 エルティーナはぶるぶると震え始め、尋常じゃない様子で泣きながら剣を振り回してきた。



「うあぁぁあああっ!! これ以上、邪魔をするというなら貴様らも殺すうぅっ!」



 その剣筋は以前見たエルティーナの騎士らしい正直な剣術から遠くかけ離れており、全くの別物だ。

 気品も力強さも感じなければ知性すら感じさせないデタラメな攻撃。



 狙いもへったくれもないそれは俺やリーフ達が何の工夫もなく、後ろに下がるだけで避けられるほど稚拙だった。



 ダメだな……話が通じない。こいつはもう……



 手遅れだ。



 そんな言葉が浮かんだ。



 いや……そうだと理解()()()()()



 人はここまで醜くなれるのかと神に問いたくなるほどの醜態を晒しながら子供以下のことを宣う自称正義の騎士。



 パーティメンバーとしてそこそこの付き合いになるが、ここまで来ると不気味過ぎて悪魔や悪霊の類いに取り憑かれたとしか思えない。



 ――《直感》まで……なら……楽にしてやるか。



 普段のエルティーナ、というよりさっきまではまだ話が通じる様子だった。



 しかし、今では見る影もない。それならば殺した方が時間を無駄にしなくて済む。



 そう判断した俺は明確な殺意と共に魔法鞘に長剣を納め、瞬時にショーテルと入れ換えた。



 エルティーナは一度だけショーテルと魔法鞘を見ている。受けさえしなければ普通の剣と然程変わらないことも知っている。



 だが、それだけだ。



 ――数打ちゃ当たる戦法って言えばそれまで……とはいえ、体力の続く限り振り回せば幾ら《縮地》持ちでもいずれ当たるし、殺せる……ッ!



「……そうか。顔見知りを斬るってのはこういう気持ちになるのか……喋る相手、環境に殺された子供達……色々斬ってきた俺が言うのもなんだが、良い気分ではないな」



 半身の状態で少し前のめりになるように構えた俺に己の死のイメージを見たのか、エルティーナはビクリと肩を震わせて止まった。



「殺るのか?」



 ギルマスとバッカスに回復魔法を掛けているセーラの横で、信者達を牽制していたリーフがこちらを見ずに問いかけてきた。



 リーフの心情を察する材料が声音だけしかなくとも、その質問に込められていたのは「本当に殺すのか?」という純粋な疑問だけだった。



 エルティーナを殺そうが生かそうが俺達は気にしない。

 でも、それはお前が本当にしたいことなのか? そうする以外の選択肢はないのか?



 言外にそんな言葉が聞こえてくるようだった。



「そう、だな……じゃあ最後に二つ言わせてくれ」



 俺はリーフの問いに答える訳でもなく、エルティーナに声をかけた。



「一つ、生きたいのなら後ろのお仲間達と一緒に黙ってろ。二つ、楽に死にたいのなら動かない方が良い。下手に動かれたら狙いが逸れる。……っと、三つになったか?」



 確かに俺自身の納得と決意の為の忠告ではあった。



 エルティーナは既に会話が通じる相手ではなくなってしまったし、後ろの奴等も俺が構えたと同時に『火』の属性魔法をいつでも撃てるような体勢にしていたとしても、この場においてこれ以上にない譲歩だった筈だ。



 それでも。

 聖騎士ノアの影響がここまで大きいのは予想外だった。



 少なくとも、そんな忠告をするほどエルティーナ達に意識を奪われるほどには。



 否。



 ()()()()()()()()()()()()()()受付の方から漂ってくる白い胞子に気付かないほどには。



 思えば、エルティーナ達は俺の足を止める為だけの駒に過ぎなかったのだろう。



 ジンメンが散布する胞子には即死以外の特徴がある。



 それはとある条件が絡むと即死並みの恐ろしさを誇るものだ。



 そう、ちょうど今のように密封された空間かつ、火を使った時。

 その特徴は真価を発揮する。



 現在、ギルドは()()()の胞子対策として出入口や窓を全て封鎖しており、限りなく密封されている。

 そして、信者達は俺を火炙りにすべく、『火』の属性魔法を発現させている。



 仕組まれたかの如く……いや、実際に仕組まれたことなのはわかっている。

 しかし、それ以外の言葉で現状を示す語彙力を俺は持っていない。



 まるで仕組まれたと思うほど、今、この空間は条件を満たしている。



 そのことに俺が気付いたのは事が起きた後だった。



「し、死ぃねええぇっ!」

「……そうか。なら死ね」



 自分は今から死ぬ。殺されに行く。

 そうわかっているような躊躇いを見せたエルティーナは一瞬の硬直の後、家宝の剣を大きく振りかぶり、襲い掛かってきた。



 それに対し、俺は確かな殺意を胸にショーテルを抜き――



 ――ズガアアアアンッ!



 という空気が震えるほどの凄まじい爆発音と目が潰れるほどの眩い光に飲まれた。



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