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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
第1章 召喚編
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プロローグ

長文駄文が苦手な人はバックブラウザ推奨。



 それは突然起きた。


 気づいた時にはいつの間にか地面で光っていた魔法陣らしきものが爆ぜた。少なくとも俺はそう感じ、意識を落とした。


 次に俺が目を覚ました時、日本では決して見ないであろう法衣のような服を着用し、口々に「勇者様だ!」、「成功だ!」等と言っている人々に囲まれていた。


 いきなりの出来事に思わず固まっていると、その人混みの中から特に豪華な服を着たピンク髪の少女が出てくる。


 その少女は笑顔でこう言った。


「召喚に応じて下さいましてありがとうございます勇者様方! どうかこの世界を救って下さい!」


 パニックになりながらも理解した。


 あぁ、これは異世界召喚だ……と。


 俺の横には周りをキョロキョロと見渡している男女が2人。後ろには同じく混乱の最中といった様子で「おい! ここは何処だよ!」とか言っているクラスメートの不良男。前には俺達とは違う学校のイケメンが同じ制服の女3人と不安そうに寄り添っている。


 その後ろでは凄い勢いで首を回し、ここは何処だと言わんばかりの形相をしているサラリーマン風の男。周りを見渡して「ん? ここは……? まさか! 異世界!? 来たー! ついに僕の時代が来ちゃいました!? ぐふふ……ハーレム王に僕はなる!」とかぶつぶつ言ってるオタク。


 俺を含め、計10名の日本人が居た。


 年齢も性別もバラバラ。特に共通点はなさそうだ。


 そして、周囲には異国風の服装に異国風の顔立ちをした大量の人々。


 興奮冷めやらぬ状態でこちらを見ては隣と話しており、嬉しそうな……けれど何処か値踏みするかのような視線が気になった。


 百人は居るだろうか。息切れしている人も居る。汗が凄いのも顔色が悪いのも大勢……


 その更に奥には大理石のような柱が幾つか建っていて、自然豊かな山々や森、街が広がっているのが見える。


「神殿……? ドッキリとかじゃないのか?」


 口から漏れた自分の声は酷く乾いていて、多分に願望が混じっているのがわかった。















 俺こと黒堂優(こくどうゆう)はごく普通の高2の学生だ。


 身長が百八十センチを少し越えていて、がっしりした体格。それと、ちょっと目が合っただけで「ヒィッ!」と悲鳴を上げられるくらい悪い目付きが特徴。あまりに目立つからか、親にはだて眼鏡を強制された。


 そんな俺は現在、学校に遅刻しそうになっていた。


 スマホの時計を見てみれば朝礼まで十分もない。見なければ良かったと後悔した。


 同じように急いでいる様子の別の学校の生徒を尻目に目の前の交差点の信号が赤になり、急ブレーキを掛ける。


「はぁ……はぁ……おいまたかっ……何でいつもここの信号は俺が来た瞬間に赤になるんだよ……」


 全力疾走からの急停止で負担の掛かった足の回復に勤めながらぶつぶつ文句を垂れていると、後ろからキキーッとブレーキを掛けて自転車が近寄ってきた。


「あれ? 優じゃないか。おはよう。何ぶつぶつ言ってるんだ?」


 声を掛けてきた人物は稲光(いなみ)(らい)


 稲光が姓名で、雷が名前だ。


 思いっきり電気みたいな名前をしたその男はジャ〇ーズ顔負けの整った顔立ちをお持ちのイケメンだった。


 ハーフらしい母譲りの淡い茶髪、茶色の瞳。日本人らしからぬ高い鼻に柔和な顔立ち。その上、百七十センチ強の高身長。性格も正義感溢れる熱血漢って漢字の勇者みたいな奴。


 言っちゃなんだけど、その顔を見る度に何となくイラッと来る。


 まあ、これでも幼馴染みだ。キャーキャー持て囃されてるのを見て「うへぇ……」となることはあれ、嫉妬はない。本人も苦労してるし。でもやっぱりイケメンなのはいけないな。無駄に張り合おうとしてしまう。


「あぁ、雷か。おはよう。いやな? またこの信号で足止めを食らったからさ……」


 俺はうんざりした顔で交差点を見つめた。


 高校生活が始まって一年と少し。その期間、ほぼ毎日と言って良いほど止められれば嫌にもなる。


「いつも言うけど偶々だろ。偶然じゃないから何なんだって話だよ。それとも、ここの信号はお前を困らせたがってるとでも?」


 少し笑いながら言われた。


 内心「絶対そうだ」とぼやくが、そんなことを口にするのもどうかと思ったので、「うーん……」と唸るだけに留めておく。


「そんなことより」


 友人に懐疑的な視線を送りながらいつもの話題を振る。


「お前ん家、学校まで十キロくらいあったよな? いつも思うし、言ってるけど……電車で来いよ暑苦しい」

「朝の運動って考えれば軽いでしょ」

「いやいやいや、朝のが付くにしては運動量おかしいって」

「いやほら、俺達って部活してないじゃんか。これくらいはしないと何か不安にならない?」

「ならんわ。まだピチピチの17歳だぞ」


 体力オバケかつ運動神経抜群の超人には付き合ってられん……そう思ったのも束の間、信号が青になったので走り出す。


「ん? あっ……と、お前に合わせてたらこっちまで遅刻だ。悪いけど先に行くよ」


 時間を忘れてたらしい。


 急に駆け出した俺を見て一瞬怪訝な顔をした雷は颯爽と自転車を漕ぎ、あっという間に俺を追い越した。


「何だよ友達甲斐のない奴だなっ」

「はっはっは、何とでも言うが良いさーっ。じゃ、また後でなーっ」


 何て平和な一日だろう。


 何故かそう思ったのをよく覚えている。









 何とか間に合った。


 肩で息をしつつ鞄を置く。


 見れば時計の針は遅刻まで残り二十数秒を指し示していた。


 安堵の溜め息をしながら席に着いた途端、そんな俺の様子を見ていた、前の席の女子が苦笑気味に話しかけてくる。


「おはよ。今日も遅刻ギリギリだったね。もうちょっと早く来れば良いのに……」


 癒野(ゆの)愛美(まなみ)。俺と雷の共通の友人で、三人でよく遊びに行く仲だ。


 身長は百五十半ば。日本人らしく黒い髪をお下げにしていて、その落ち着いた性格や雰囲気から地味で目立たないが、可愛らしい顔立ちをしていることを俺達は知っている。


「ん、おはようさん」

「やだもうっ、おじさんみたいっ」

「どしたん急に。いきなり刺すじゃん」


 そうこうしている内にチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたので会話を止める。


「はいじゃあ皆席に着け~」


 その後、ホームルームの連絡的なものを聞き流し、「はぁ……今日も面倒な授業の始まりか……」等と思いながら、授業に入っていった。


 いつも通りボーッと聞き流し、ボーッと外を眺め……昼休み。


「癒野さん、一緒に良い? 優も一緒で良いよな?」


 家から持ってきた弁当を出していると後ろからそんな声が聞こえた。内心、「雷の奴……女子かよ」とツッコミを入れながらも適当に返事しておく。


 癒野さんは財布らしきものを持って立とうとしていた時に声が聞こえたようだ。立ち上がった後、こちらに振り向き何故かちょっと困ったような申し訳なさそうな顔をしていた。


 そんな様子を見るに……今日は購買だな。


「あ、稲光君ゴメン……私、今日はお弁当じゃなくて……今から買いに行くからちょっと遅れるけど良いかな?」

「全然大丈夫だよ。寧ろ俺達も一緒に行こうか? たまには外で食べるのも――」

「――おい、勝手に俺を入れるな」


 何故か俺まで連れていこうとしてきたので注意する。


「別にそれくらい良いじゃないか」

「面倒だし、行く必要性を感じん」

「……お前、さっき俺に友達甲斐がないとか言ってなかったか?」

「はぁ……良いか雷。人っていうのは時と場合によって意見を変える身勝手な生き物なんだよ。俺はその本能とも言うべき考え方に忠実に従っているだけだなんだよ。な?」

「な? じゃないよ。そもそもお前、普段からそんなこと言ってるからモテないんだぞ?」


 この野郎、俺のことを貶したな? 自分はイケメンでモテるからって調子に乗りやがって。モテないのは関係ないだろ。別に普段から女子にそういうこと言ってる訳じゃねぇし。


 雷が呆れたからか、やっぱり俺が悪いのか、周囲からも「あいつ愛想ないよね相変わらず……」、「稲光君が折角誘ってあげてるのにさっ」と責めるような視線を向けられた。


 雷はイケメンだ。


 性格も良い。


 当然、モテる。


 運動も出来て頭も良いから女子だけでなく、男子からの人望もある。


 そんなイケメンを幼馴染みだからと雑に扱う俺は彼等からすれば異端なのだろう。


 いつもこれだ。


 虐められてる訳じゃないけど、かといって快く思われてもいない。


 それが俺。


 そして、態々訂正するのも煩わしいと俺が思っていることを雷も癒野さんもわかっているから何も言わない。


「あ、あはは……じゃあ行ってくるね」

「全く……」


 二人は苦笑いしながら教室を出ていった。


 辺りは直ぐ様喧騒に包まれ、ワイワイガヤガヤと騒がしくなる。


 その中には相変わらず俺を貶すような声もあったが、少しすれば話題も変わっていったのがわかった。


 雷と癒野さん……正直お似合いだよなと思う。


 唯一の友人と言って良い二人が付き合うとなると、それはそれで気まずいけど、素直に祝福したい。


 ま、だからといって思うところがないかと訊かれれば答えはNOなんだが。


 






 夕方。オレンジ色に染まった空、それに呼応するかのように同じ色になっているとある街のとある道……と言うと何か神秘的だな。目で見ると普通の光景だけど。


 俺達は雷、俺、癒野さんの順に並びながら帰路についていた。


「明日の体育怠いなー……二人組を作ってくださいが俺に効果抜群なのよ……」

「それはお前が積極的に友達を作ろうとしないからだろ。……それと、明後日の数学と入れ替わりでなくなったよ」

「そうだったよね、確か」

「え、マジか。聞いてなかったわ。チッ……それも怠いなぁ……」

「ねー」

「癒野さんは体育よりマシなんじゃないの?」

「まあそれはそう」

「……ないくせに胸張るなよ」

「何か言った黒堂君? セクハラだよ?」

「知らんわ」

「酷いっ」


 二人と他愛ない話をしながら歩いていると例の信号が見えてきた。


 もう既に赤になりそうな雰囲気が漂ってると感じるのは俺だけだろうか。


「おいおい、そんなあからさまに嫌そうな顔するなよ」


 うんざりしていた俺に気づいたのか雷が話しかけてくる。


「そりゃしたくもなるさ。どうせまた俺が着いたら赤になるんだから」

「ん~でも怪我とかする訳じゃないし、そこまで気にすることないんじゃないかな……言うて赤になるだけだし」

「そうだよ、赤になるだけなんだから別に良いじゃないか」

「いや帰る時はな? それが用事がある時とか急いでる時に毎回、赤になってみろよ。うんざりするから」

「あ~毎回はちょっと……」

「まあ確かにそれは面倒だけども。普通にお前が早く出れば良いじゃん」

「……ぐうの音も出んわ」

「出せよ」

「ふふっ、二人って仲良いよねー」


 そんなこんなで信号の前に着いた頃。


 俺が言ったように、まるで見計らったようなタイミングで赤になった。


「はぁ……またこれだよ」

「……偶然だろ」

「じゃあ私、こっちだから」


 俺や雷とは別方向に住んでる癒野さんがこちらに手を振りながら横の横断歩道を渡り始める。


「ん、癒野さん、また明日ね」

「じゃあな」

「うん、またね」


 雷と一緒に手を振り返していると、向こう側から別の学校の生徒らしき人物が何人かこちらに渡ってくるのが見えた。


 イケメン一人に女三人が姦しく、オタクっぽいぽっちゃり男が一人寂しそうに歩いている。


 同じ制服だが、距離的に同じグループでもなさそうだ。


 そう思った次の瞬間、妙なことに気がついた。


 癒野さんの足下に謎の模様が浮き出ている。


 ……何だろあれ?


「は?」

「うん?」


 俺、ライは途端に顔を見合せ、目をぱちくりさせ、擦りながらもう一度よく見てみる。


 厳密には癒野さんとすれ違った学生……イケメン野郎の足元を中心に出ていた。


 何とも表現の難しい幾何学的な模様。


 紋章とも違う。


 強いて言えば……それは魔法陣だった。


 フィクションとかでよくあるアレだ。


 ピンクとも赤ともとれる不思議な色からは感じたことのないような力が放たれているような気がした。


 どう考えても普通ではないこの状況に反応出来ずにいると、その魔法陣はどんどん大きくなっていき、俺と雷は魔法陣の円環内に入ってしまった。


 俺と雷はイケメン野郎側に視線を向けていたからその異常にいち早く気づいたが、癒野さんは俺達に向かって手を振っていたので、自分の足元の異常に気づいていなかったらしい。


 少ししてから俺と雷の足元に視線を落とし、「ん?」と首を傾げ、俺達の足下にある方が端っこだと気づいたのか、視線が少しずつ下に動いていき、最終的に自分の足元に目を落とし、俺達と同じように固まった。


 この異常事態に気付いた誰かが叫ぶ。


「な、何だよこれ!?」


 そんな混乱の境地にある声を機に、魔法陣の光は瞬く間に強くなっていき……


 気付けば異世界だった訳だ。


 ウォシュレットトイレどころかトイレットペーパーもないってよ。


 ティッシュもないし、何よりスマホも使えない。


 現代人は普通に死ねるよなこれ。


以降の話は修正中なので文が変だったら未修正の部分です。

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