トロルのヴェラヴェラ
私達3人は、良い案も浮かばす、村へ向けて歩き出した。
「あのさあ、トロル。」
「名前有るよー。あたいはヴェラヴェラだよー。」
「じゃあ、ヴェラヴェラ、他に仲間は来ていないの?」
「あたい一人だよー。」
「そっか、オッケー。じゃあ、私に口裏を合わせておいてね。」
暫らく森の中を歩いていると、魔力サーチに数十の反応があった。村の方角からやって来るので、恐らく村人だろう。
程無くして出会った。
「おお、無事だったか。女の子のハンターが二人だけで森の中へ入って行ったと聞いて、心配になって追いかけて来たんだ。」
「心配ないよ、トロルはもう追い払ったよ。」
「討伐じゃなくて、追い払ったのか?」
話し掛けて来たのは、村長だそうだ。第一村人から話を聞いて、討伐隊を組織して追いかけて来てくれたらしい。
だけど、討伐ではなく追い払ったと聞いて渋い顔に成った。
「追い払っただけだと、また戻ってくるかもしれん。」
「大丈夫だよ。ちゃんと言い含めて帰ってもらったから。」
「はぁ? 話した? トロルとか?」
かなり疑っている。まあ、魔物指定されてるし、意思疎通出来る相手だとは認識されて無いんだろうね。
「大丈夫だよ、ちゃんと話の通じる相手だったよ。まだ若いトロルで、好奇心に任せて人間を見に来たらしいんだけど、もう見たから帰るつもりだったって言って帰って行ったよ。」
「それを信じたのか?」
「じゃあね、また来たら私達が無料でまた来てあげるよ。指名依頼してくれればいいよ。」
「ううむ……とりあえず、周辺を調べてからじゃなあ……」
疑り深いな。まあ、その位じゃないと村長は務まらないのかも知れないけど。
その後、私達が遭遇したという場所に案内し、そこを拠点に村人の討伐隊数十人が森の中へ散っていって調べ始めた。
「ところで、森へ入ったのは2人と聞いていたのだが、3人おる様な……」
「うん、私達の仲間のハンターだよ。森の中で合流したんだ。」
「あたいは、ヴェラヴェラだよー。こいつらの仲間だよー。」
私達は、拠点で焚き火をし、魔導倉庫から食材を取り出して調理を始めた。
奮発して、ロックドラゴンの肉を振る舞った。
ケイティーも、倉庫から鍋とパンや野菜を取り出して、スープを作っていた。
「その魔導倉庫とやらは、便利なものだなあ。狩人がそれを持ては、収穫量はすごく増えるんじゃがのう。」
「だったら、子供をサントラム高等学院に通わせると良いよ。」
「しかしなあ、この貧しい村では子供は貴重な労働力なんだが……」
「その考えは良くないよ。たった数年間子供に投資するだけで、村の未来に何十倍もの見返りが期待出来るんだよ?」
「ううむ……」
「実際、投資といっても、サントラム学園は完全無料だけどね。実質村の金銭的負担は無いよ。」
「なんと! それは本当なのか?」
まだ、サントラム学園が完全無料の全寮制学校だという事を知らない人が多いみたいだね。特に地方の村では。
それもそうか、ただで学問を教えてもらえるなんて、にわかには信じられないのも無理は無いのかもしれない。特にネットもテレビもラジオもこの世界には無いんだし、新聞すら届かないこんな偏狭な村では、都市部の情報は全く聞こえて来ないのだ。なんとかしないとなあ。ラジオ位作れないかな。あー、電力無いんだった。なんか、銅板になにか加工して、鉱石ラジオっぽい物が作れた様な気もするけど、調べる手立てが無いや。やっぱり、地方にも分校を作る方向で考えないと駄目かもね。
村長達としばしまったりしていると、ポツポツと探索に行った村人が帰って来始めた。
ケイティーが忙しなくスープとサンドイッチを給仕している。
「うっめーな、何だいこの肉は?」
「ああそれ、ロックドラゴンだよ。」
「おおい、高級肉じゃねーか! もう一つくれ!」
1つ刻(2時間)もする頃には全員が戻って来ていた。
「言う通り、周辺をかなり広範囲に調べましたが、トロルの気配は全く感じられません。っていうか、お前ら何食ってんだよ、ロックドラゴンだと!? 俺にもよこせ!」
「あ、この人があなたの分も食べました。」
「てめ、ちくしょ、このやろー!!」
探索の結果報告を待って、ようやく信じてくれた村長は、やっとクエストの完了署名をしてくれた。
帰り支度をして、火の後始末をしっかりして、撤収だ。
「今日は村で泊まっていきなさい。女子供だけの夜道は危ないからな。」
「大丈夫です。私達、今日中に王都に帰らないと成らないから。」
「今からか? どんなに健脚でも徒歩で3日、いや4日はかかるだろう。」
「いえ、飛んで行きますので。」
私は、ケイティーとヴェラヴェラを持ち上げると、ふわりと空中に対空し、村長達村人へ手を振ってお別れを言うと、亜音速で王都を目指した。
「あ、駄目だよ。一旦マヴァーラへ寄って報酬貰わないと。」
そうでした。
ヴェラヴェラは初フライトが楽しいのか、上機嫌だった。
一旦、マヴァーラのハンターズへ寄ってクエスト完了手続きと報酬を貰ってから、王都へ向けて再び飛んで行く。
「クーマイルマはもう帰ってるかな。」
「うーん、王都から学校まで2つ刻(4時間)ちょっとで走り抜ける足が有るという事は、寄り道していなければもう屋敷に着いている頃ね。」
「急ごう!」
「楽しいよー、あたい、お前らと知り合えて良かったよー。」
トロルへの見方が180度変わっちゃったな。
他のトロルもこんな脳天気な連中なのか、ヴェラヴェラが特別なのかは慎重になる必要があるけどね。
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「ただいまー! クーマイルマ帰ってる?」
「はい、先程帰られて、今お食事中です。」
私達は、食堂へ急いだ。
「クーマイルマ居るー?」
「あっ! 女神様、お帰りなさいませ。」
「えっ!? 女神様どこどこ? 何処に居るの?」
「あら、こちらのお嬢さんは?」
ヴィヴィさんが新しい来客の紹介を求めてきた。
そうだね、ちゃんとしないとね。
「こちらは、トロルのヴェラヴェラだよ。」
「あらまぁ~、ヴェラヴェラさんっていうのね、変わったお名前ねー。って! ト、トロル!?」
うーん、ヴィヴィさんには言われたくない気がする。なんか名前似てるのに。
「あたい、トロルのヴェラヴェラです。よろしくおねがいしますー!」
「はあー、礼儀正しいのね。」
「はい、おばあちゃんがー、挨拶はちゃんとしろって言ってましたー。」
私達と最初に遭遇した時に挨拶されたかなー……ケイティーがからかわれただけな気がするんだけど。
「まあ、それはお大目に見てくれよー。所で、女神様は何処にいらっしゃるんだー?」
ウルスラさんとクーマイルマが私を指差す。
てゆーか、あなた達、女神と思っている相手を指差すんじゃありません!
「ちょっと待ちなさい、話がどんどん大きくなって行って収集が付かなくなりそうなので、一旦話を整理しましょう。」
森の中で軽くサンドイッチを食べちゃってるので、ここは軽い食事だけにして、勘違い2人とヴェラヴェラの3人に近くへ座ってもらって私は女神ではないと、誤解を解く事にした。
「えーと、まず、ウルスラさんの勘違いから。あなたが見た、天使の輪と神の雷だと思っている物は、私の考案した魔導で、魔導リアクターという電力を発生する装置と電撃です。決して神威ではありません。」
なんか、納得していない顔だ。歳取ると思い込みに対して頑固になるんだろうか。
「次に、クーマイルマの死者蘇生だと思っている物も、私の考案した魔導です。あなた方、というか、この世界の常識として、心臓が止まったら死亡したものとみなしていますが、それは間違いです。心臓が止まってもしばらくは生きています。私は、さっきの魔導リアクターと電撃によって、止まった心臓に衝撃を与え、再び動かしただけです。」
クーマイルマも納得していない顔をしている。若者も頑固か!
というか、地球の人間には敢えて説明の必要の無い常識の、電気だの心臓だのの知識が、それを知ら無い者にとっては、学者の専門用語並に訳の分からない単語なのかもしれない。体の中の臓器云々、電気云々の話って、地球の日本でも一般人が知る様に成ったのは、明治あたりからの学習の成果だもんね。
「と、言う訳で、私は女神なんかじゃありません。ただの異世界からの転生者なだけです。」
「異世界からの転生者!?」




