表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/279

森を駆ける少女

 私とクーマイルマは、机を並べて別室で、まずは筆記試験から受けることに成った。

 机はくっついているけど、試験内容が違うのでカンニングの心配は無い。

 私は卒業試験、彼女は編入試験だ。


 読み書きは、森に住んでいた頃にヴィヴィさんにみっちり習ったので完璧だよ。

 ふむふむ、問:「1個銅貨1枚のりんご4個と、2個銅貨1枚の黒パンを4個買ったら合計金額はいくらでしょう?」

 小学生の算数かよ!

 答:「銅貨6枚、または、小銀貨1枚」と。


 問:「我が国の王都の外周には5つの町が在りますが、それぞれの町の名前と特徴を答えなさい。」

 答:「ヴァルター=鉱工業、マントラール=商業、エーレ=農林畜産業、カリーナ=金融業、マヴァーラ=魔導学問。」


 問:大賢者ロルフの功績を一つ書きなさい。

 なんだこれ?


 答:「無料の全寮制学校を作って、全ての子供に教育の機会を与えた事。」

 邪竜を倒して平和を作ったとか、技術革新とか色々有るんだろうけど、一番身近なのはこれかな?


 その後、計算問題がダラダラと続いたかと思うと、国歌の一節の意味を説明しろだの、法律の問題が出たかと思うと、麦は何時種を蒔いて何時借り入れなのかとか、ジャンルも難易度もバラバラな設問が合計100問も続き、全部回答し終わるまでには1つ刻(2時間)も掛かってしまった。ふう、疲れた。

 横を見ると、クーマイルマも疲れた顔をしていた。一応全部の問題には答えが書かれているみたいで、ホッとした。


 次は実技試験。

 クーマイルマは、弓を使うらしい。

 こっちの弓術は、走りながら複数の的に当てるのと、静止して遠くの的に当てる技術の2つを見るそうだ。

 彼女は、現役の弓師なので、走りながら30ヤルト先の的へ連続20射を当て、静止で70ヤルト先の的へ5つ当てた。


 私は、倉庫から剣を取り出して、自在剣(仮)で70ヤルト先の的を切って見せたら、3つ切った所でもういいですと断られた。的が勿体無いからだって。


 次は、魔力量の測定。

 魔力量って測定できるの? スカウターみたいな機械で計測するのかな? と思ったら、校庭に置いてある分銅を持ち上げて見せるだけだった。

 分銅は、石と金属で出来た重りで、教会のベルみたいな形をしている。

 小さいものは10リブラル(4.5キログラム)から、重いものはミリオリブラル(450トン)の物まである。ミリオリブラルなんて、ちょっとした家位の大きさがあるよね。そして、誰も動かした形跡が無いみたいで、地面にめり込んだまま傾いて、上の方に雑草とか、日陰部分には苔なんかも生えている。

 これ、動かした人居るんですか? と聞いたら、うちのお師匠が最初垂直に立っていたのを傾けたそうだ。持ち上がりはしなかったって。

 魔法科の学生の平均は、10Sリブラル(4.5トン)位らしい。10Sと刻んである分銅が、何度も動かしたらしい跡が地面に付いていた。学生の最高記録は、80Sリブラル(36トン)らしく、この記録は未だ破られていないとのこと。


 クーマイルマは、端から順番に持ち上げていって、100Sリブラル(45トン)までなんとか持ち上がった。流石、魔族は人間よりも魔力が強いと言われているだけはあるね。あっさり学生の最高記録を更新しちゃったよ。

 私? 私は、ミリオリブラル3個でお手玉しちゃうよ。1個しか無いから出来ないけどね。代わりに、傾いているのを真っ直ぐに立てておいた。



 これで、学力、戦闘力、魔力量の審査は終わり、後は、健康状態のチェックと、精神面の状態を見る面接審査を終えて終了。

 何故か私も健康診断と面接を受けさせられてしまった。要らなかっただろ。


 全試験と審査を終えて、別室で待っていたら、学園長がやって来て結果を発表してくれた。



 「審査結果を発表します。クーマイルマ、初等部を飛ばして中等部への編入を認める。自宅からの通学を許可する。」


 「「やったー!」」



 私達は、ハイタッチした。

 クーマイルマは、私と馴れ馴れしくしてしまった事にはっと気がついて、モジモジしていた。

 それが素の顔なんだなー。学校でそういう顔をどんどん出していって欲しい。



 「ソピア、中等部卒業相当の実力を認める。」


 「うんうん、そうでしょう、そうでしょう。」


 「サントラム高等学院への入学を認める。」


 「はあ!?」



 ちょっと待て、なんじゃそりゃー!

 ここに高等学院なんて無いだろう!



 「はて? 今度王都に出来る高等学院の話は聞いていないのですか? さっき、高等学院への入学試験を受けたでしょう。」


 「はあ? えっと、それは、サントラム学園の上級学府とかいうやつの事?」


 「ああ、それですね。正式名称は、サントラム高等学院。総長からの推薦状にも、ソピアの入学試験をよろしく頼むと書いてありましたので。」


 「あんの糞爺ー!!」


 『!--お師匠! どういう事だよ! 高等学院入学って!--!』


 『--おう、その様子じゃ無事受かったようじゃの--』


 『!--仕組んだなー!--!』


 『--なんじゃ、嫌なのか? 親友のケイティーも行くんじゃろ?--』


 『!--それは、まあ、そうなんだけどさ……--!』


 『--なんじゃ、歯切れの悪い奴じゃな、嬉しくはないのか?--』


 『!--そりゃあ、まあ、うれしいけどさ……--!』


 『--だったら問題なかろう。わしは忙しいので、これで切るぞ。--』


 『!--あー、うん……--!』



 もう、もう、もう!

 自分の知らない所で勝手に事が運ばれるのは、すっごく気に入らない! ……けど、ま、いっか。ケイティーと一緒だし。はーあ。

 クーマイルマは一緒の学校へ通えると思ってワクワク顔してるけど、ごめんね、別の学校なんだ。

 あー、しょんぼりしちゃったよ。御免ね。でも、勉強頑張れば、高等学院に入れるから。あ、でもその頃には、私達は卒業しちゃってるのか。

 ああ、益々しょんぼりしちゃってるよ。

 でもさ、ほら、同じ家に住んで、毎日顔を会わせる生活出来るんだから。



 「はい! そうですね。あたい、一所懸命頑張ります!」



 よし、立ち直ったみたいだぞ。

 通学は明日からみたいなので、今日はこれで帰りましょう。



 「あ、その前に、学生課に寄って制服と教材一式を受け取って置いて下さい。明日は4つ刻(8時)に受付へ来るように。」



 制服かー……、教材は、弓なんかも支給されるのかな? 剣士のケイティーは剣を貰ってたよね、確か。

 学生課へ行ってみると、既に手配が済んでいたみたいで、クーマイルマの制服が用意されていた。

 課のお姉さんが、サイズ直しをしてくれるって。



 「ちょっと、こちらの部屋で試着してみて下さい。きつい所はありませんか? 靴はこれです。」



 試験後の身体測定でサイズは割り出されているみたいだ。殆ど直しの必要が無く、ぴったりサイズだった。

 学生はこの制服でフォーマルな場にも出席出来るんだよ。便利だね、制服って。

 制服は、夏服、冬服、シャツ、靴下、それぞれの洗い替えと、スカーフ、冬用のコート、指定の靴、鞄、襟に付ける学年証。

 勉強や実技で使う、教科書、副読本、学園指定弓、そして、身分を証明するための学生証その他が纏めて支給された。

 結構すごい量だ、だけど、私には魔導倉庫が有る。

 それら大量の物品を倉庫へしまい込んだ。

 それを見ていたお姉さんがびっくりしていた。



 「はあー、それが噂の魔導倉庫と魔導鍵なのねー。便利な物ねー。」


 「私達の時代にもそれが有れば、どんなに楽だったか……」



 集まって来た教員達も、口々に溜息を漏らしていた。

 でもさ、教員や職員は高等学院が出来たら貰えるんじゃないのかな?

 あー、全職員にまで配布はされないのかな? あまり迂闊な事は言わないほうが良いか。


 職員のお姉さんにお礼を行って、学園を後にする。

 ひとっ飛びで王都の屋敷へ降り立つと(あ、門を通るの忘れてた)屋敷の中でクーマイルマの制服姿を皆にお披露目です。



 「懐かしいわー。今年まで私もそれ着てたから。」


 「へー、似合うじゃない?」


 「お似合いですよ。」



 皆ニコニコして、クーマイルマの制服姿を褒めた。

 ここに限って言えば、人間と魔族の諍いなんて何処にも無いのにね。

 クーマイルマの部屋に、支給品を出してあげて、明日持って行く物を鞄に入れて用意して置く様に言った。

 それから、制服を一人で着られる様に、ケイティーも呼んで、ちょっとだけ練習。

 その日は夕食を食べたら再び3人で大浴場に入って、温まって就寝。








 今日はクーマイルマの学校初日だから、送って行こうと思って早めに起きたのだが、部屋のドアをノックしても返事が無い。

 おかしいなと思って、食堂へ行ってみたが、そこにも居ない。

 ケイティーが降りてきたので聞いてみたけど、知らないという。

 メイドさんに知らないかと問うと、今朝早く、未だ日も昇らない内に出かけて行ったと言う。



 「えっ!? 一人で出かけちゃったの?」


 「はい、なんでも、女神様にご迷惑はお掛け出来ないので、走って行くと。信心深いお嬢様なんですねー。」



 マジですか。王都からマヴァーラまでは徒歩で2日の道程なんですけど。つまり、50リグル(80キロ)位は離れている距離なんだ。それを走って行くって?

 私は、飛んで送って行くつもりだったから、4つ刻(8時)に間に合うには、その半刻前(1時間前)に起きれば十分と思ってたんだ。

 慌てて、ケイティーと手分けして、街道沿いと森を突っ切る最短ルートの両方を空から探すこ事にした。

 結構ゆっくり飛んで、目を皿の様にして探したのだけど、全然見つからないで、とうとう学園まで来てしまった。

 受付に聞いてみたら、もう到着して担任教師と顔合わせ中だとか。



 「マジですか。50リグルをたった2刻(4時間)程度で走破しますか。」


 「そういえばあの子、魔族の村からエウリケートさんの居る工事現場まで、たった半日でやって来てたわよ。」



 パネーです! 魔族の女の子の脚力、パネーです。オリンピック選手並です!



 「そういえば、ケイティーも私が谷に落ちた時に、それ位の距離を一晩で走ってくれてたよねー。どっちが速いかな?」


 「いや、もうあれは走りたくないわー。屋敷に着いた後、死にました。」


 「ご冥福をお祈りします。迷わず成仏して下さい。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





cont_access.php?citi_cont_id=868232807&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ