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帰国

 連絡の付かなくなったケイティーだが、丁度時同じくして私達と同じ考えに至った様だ。



コンコンコンコンコン。



 その時、部屋のドアをノックする音がした。



 「ひっ。」



 ケイティーは、慌てて口を抑えた。

 ドアの外では、複数の男の話し声が聞こえる。



 「留守か?」


 「いや、部屋に入って行ったのを見た者が居る。」


 「居るはずだ。」



 ヤバイヤバイどうしよう!

 クローゼットもベッドの下も、隠れられそうな場所は無い。

 窓を開けてみると、ここは2階だが、城の作りでは階高がかなり高く、一般家屋の3階程度の高さがある。

 窓の外にはベランダは無く、人の掴まれる様な出っ張りも無い。壁伝いに隣の部屋へ逃れるのも無理だった。

 地面は芝生なので、ぎりぎり飛び降りられるかどうか……

 ドアを叩く音が段々激しくなって来た。ここは意を決して飛び降りて逃げようか。


 ケイティーがそう思った瞬間、黒服の男達は勝手にドアを開けて入って来た。

 乱入して来た男達が部屋の中を見回すが、既に蛻の殻だった。

 見ると、窓が開いている。

 男達は、窓へ駆け寄り、下を見るが、誰の姿も見えなかった。



 「追うんだ!」



 男達が走り去って行く。

 ケイティーは、それを確認して、ほっと溜息をついた。

 彼女は、下へ逃れたのではなく、飛行椅子を出して上へ逃れたのだった。

 一つ上の階の窓からそっと中を覗くと、慌ただしく走る回る人達が居る。

 さらに上階まで上がって行くと、広いバルコニーがあったので、そこにそっと降り立ち、椅子を倉庫へ仕舞う。

 その時、ケイティーの頭にソピアの声が響いた。



 『!--ちょっと! ケイティー、聞こえる!?--!』


 『--ああ、ソピア! あのね、今何が起きているの? そっちは今どうなっているの?--』


 『--……--』



 通信が途絶えた。今朝からのテレパシー通信、飛行椅子、魔導倉庫、等、魔力を使いすぎた為かも知れない。

 しばらく休んで魔力を回復しないと、ソピアと連絡も取れない。

 どうしたらいい? 自分で考えなければ。


 窓から中を覗くと、パーティー会場の様な広間だった。

 というか、パーティー会場でした。結構な広さの空間で、天井は2階吹き抜けの様な高さ。豪華なシャンデリアが幾つも下がっており、天井には神話世界の絵が描かれ、壁には歴代の王の肖像画が掛けられ、柱の上のアーチの上には天使の彫刻が飾られている。まるで、美術館の様な一室だ。

 国中の貴族を招待して、舞踏会を開いても大丈夫そうな空間だ。多分、1千人規模の人数を収容出来るのではなかろうか。現に、見た感じだけど、国中の貴族が一堂に会しているかの様な人数だ。とても、6人程度の使節団を歓迎する為の、ただの昼食会とは思えない様なセッティングだった。

 中央に並べられたテーブルには白い布が掛けられ、沢山の料理が並べられている。その周囲には、幾つもの丸テーブルが置いてあった。


 ここが昼食会の会場?

 中では料理のセッティング等で忙しそうにメイドさん達が走り回っていた。



 「時間的にそろそろ調印式が終わる頃ね。」



 少し待っていたら、貴族や王様、使節団の人達が入って来た。

 部屋の角の方に居た貴族に黒服の男達が何やら慌てた風に報告をしている。

 あっ、さっき私の部屋に押し入って来た男だと、ケイティーは気が付いた。

 耳を澄ませて、会話をなんとか聞き取る。



 「逃げられました!」


 「人を増やして必ず見つけ出すんだ。」



 男達は部屋を走り出て行った。

 少しすると、立食パーティー形式の昼食会が始まった。

 王や貴族達が、使節団の人達と握手を交わし、歓談をしている。

 やがて、宴も酣になって来た頃、近衛兵が整列し、細長いラッパを吹き鳴らした。

 会場に居る者は、何かの余興でも始まるのかと一斉にそちらを振り向く。

 ケイティーは、その隙きにそっと室内に侵入して、目立たない様に一番後ろの死角へ身を潜めた。


 会場の前側にある大きな扉が開いて、金ピカの祭礼用鎧に身を包んだ近衛兵に、恭しくエスコートされて入場して来たのは、ソピアだった。

 皆、女神降臨の話は耳に入っていた様だ。会場全体から、感嘆の声が響き渡り、その場で誰に強制された訳でも無く、各々膝を着いて頭を下げる。ただ一人を除いては。



 「ブーーー!!!あはははは! ソピア、何その格好!」



 しんと静まり返った部屋の中で、ソピアを除く全員が膝を着いているのに、1人突っ立って腹を抱えて爆笑している少女が居た。

 彼女は、全員の注目を集めてしまい、はっと我に返った。



 「あ、ケイティー!」


 「ヤッバ!!」


 「あの少女を捕まえるんだ!」



 私は、ケイティーが無事な事に喜び、ケイティーは、見つかってしまった事に慌て、ある貴族は、直ぐに捕まえる様に謎の黒服の男達に命令をした。

 一斉に黒服の男達がケイティーへ襲いかかる。

 だけど、ケイティーもランク2ハンターの端くれ、そう簡単には捕まらない。

 壁を蹴って、追って来た男の頭上を空中回転して飛び越えたりしている。すごい、ジャ○キー・チ○ンみたい。


 だけど、急にケイティーの動きが止まった。

 ウルスラが、魔力で拘束したのだ。

 黒服達に捕らえられ、何処かへ引っ張って行かれてしまった。

 ウルスラの方を見ると、満面の笑顔だった。


 私はというと、王様や司祭に拝まれ、貴族や神官達に順番に祈られ、手を取って涙を流され、握手した途端に失神する外国の女子に困惑し、周囲を大量の花で飾られ、我が使節団に冷ややかな目で見られる事凡そ半刻(1時間)綺麗に髪を結い上げられ、化粧を施され、ドレスアップしたケイティーが、メイドさんに案内されて、会場後ろの入口から入って来た。

 私の近くまで来て、お互いに顔を背けてプッと吹いた。



 『--何よその格好。何処かの神話の女神のコスプレかと思ったわ。--』


 『!--ケイティーこそ。何処の貴族のご令嬢なのかな?--!』



 テレパシーで内緒話をしていると、ケイティーを捕まえる様に言った貴族がやって来た。



 「いやー、そちらのお嬢様を昼食会にお呼びに行かせたのですが、行方不明に成られたと言うので捜させていたのですよ。女性はドレスの着付けもあるでしょうし、困っておったのです。」



 この人、太閤殿下で、現国王の従兄弟らしい。超偉い人だったー!

 私を大勢の人で取り囲んで居たのは、誰がお世話をするかで取り合ってたんだって。結論として、皆平等にお世話をしようとして、寝室に大勢で押しかけてしまったらしい。

 聞き耳を立てていたのは、神の言葉を一言一句聞き漏らさない様にしていたからだそうです。

 だから、神じゃねーってば。

 お風呂に入れてくれたメイドさん達は、私の体の水滴をを拭った布だの、髪を梳いたブラシに残った抜け毛だの、切った爪だのを大事に持ち帰って見せびらかせていたらしい。だから、次々と色々な人がやって来てたのか。

 ケイティーとやってた三文芝居は、直ぐに見抜かれていたらしいよ。

 うむむむ、もうこの国には来られないな。


 ケイティーが、部屋が荒らされていた理由は? と聞くと、それは知らなかった。きっと、掃除の者が熱心な信者で、何かを記念に持って帰ろうと出来心を起こしたのではないかとの事だった。ケイティーの部屋も? と聞くと、どちらが私の部屋なのか、掃除婦には知らされていなかったので、両方荒らしてしまったのでは、との事だった。後で担当の者をきつく叱っておくと言っていた。

 まあね、部屋には特に私物は置いていなかったので、被害はこれといって無いんだけどね。

 後で聞いたら、枕カバーとかシーツとかネグリジェとかを取って行ってたらしい。


 昼食会も恙無く終わり、さて、帰国の段になって、司祭様が、是非教会にもお顔をお出し下さい。信徒にご加護をお与え下さい、何か信託を下さいとゴネまくられたのだけど、キリが無いのでまた今度と断っておいた。


 宮廷前庭で、出国の手続きをしていると、大きな荷物を持ったウルスラさんが走って来て、一緒に連れて行って欲しいと行ってきた。それを聞いた教会や魔術師達も、我も我もと言い出して収集が付かなくなったので、また今度と断ろうとしたら、いいえ、今です、何時行くの? 今でしょう! と押し問答に成ってしまった。

 王様助けてとそっちの方を見ると、親指を立てながら、白い歯を見せて笑ってたよ。ヴィヴィさんに良いのか聞いたら、良いわよー受け入れ体制整えておくわー、だって。この世界の人、結構ざっぱだな。


 仕方無いので、ウルスラさんだけ、という条件で、荷物を倉庫へしまってあげて、一人増えて8人を持ち上げて離陸。

 やっぱり、王宮を上から見下ろすアングルは珍しい様で、キャーキャー言っていた。

 音速巡航で帰国後、自分の国の王宮の中庭に降りたら、興奮で顔を真赤にしていた。

 お出迎えのヴィヴィさんに飛び付いて、ピョンピョンクルクル回っていた。うーん、これで立派な王都の女子だね。



 「あっちの国、あの後大丈夫かなー?」


 「大丈夫よー、あなたのお蔭で経済効果凄い事に成ってるみたいだから。」



 だそうです。




--爆笑は、『広辞苑』第7版からは、大勢でという単語が取れ、一人で爆笑するという表現が認められるようになっています。きっと、爆睡、爆食い、爆買い等の言葉が生まれたからなんでしょうね。--




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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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