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外交使節

 「さあ、施設破壊の弁償代金、耳を揃えて支払ってもらおうか!」


 「……えっとぉ、ソピアちゃん、どういう事かしら?」



 私とケイティーで斯々然々(かくかくしかじか)と説明した。

 ヴィヴィさんが現場を見たいと言うので、例の訓練場を見せた。



 「あらあ……、凄い事になっちゃってるわねぇー。建物の構造部分も逝っちゃってるのかしらぁー?」


 「逝っちゃってるのかしらぁー? じゃねーよ! どうすんだよこれ!」


 「これは、何の魔法を撃ったらこんな事になっちゃうの?」


 「黒玉だよ。」


 「黒玉って?」


 「ほら、エピスティーニの水晶部屋で使った……あ。」


 「あー、わたくしあの時、それ見てないのよ。」



 そうだった。黒玉を消した後にお師匠とヴィヴィさんが出てきたんだった。



 「それ、もう一回やって見せて欲しいなー。」


 「「「「「やめろー!!!」」」」



 味方のはずのケイティーも必死で止めてきたよ。

 ケイティーは唯一黒玉を2回見た人だもんね。怖さも人一倍知ってるんだ。



 「施設破壊は、これで2回めなんだぞ!? もう見逃すわけにはいかん!」


 「1回目の時は、試験官がやれと言ったからって、不問にしてくれたよ? 今回も試験官がやれって言ったんだよ?」


 「「被害の度合いが違うわ!」」



 魔法試験官とギルド長がハモった。

 記録係のお姉さんはどっちに付いたら良いのか分からずにオロオロしているよ。



 「これは、いっそ取り壊して、訓練場は別棟で頑丈なのを立て直したほうが良いかもしれないわね。」



 ヴィヴィさんは、既にブツブツと再建プランを頭の中で組み立てている様だ。

 建物の裏のスペースがとか、強度とか、色々考えているみたい。



 「よしっ! この建物の裏にグラウンドが在るわね? そこを厚めの防塁で囲って、屋根を付けて……全天候型の試射場を……」


 「何を勝手に、そんな建設資金あるわけ無いだろうが! 部屋の修理費用を出せって話だぞ!」



 ヴィヴィさんが、パンッ! と手を打つと、ざわついていた一同がビクッと静かになった。



 「お、おまえ! 人の話を……」


 「は? まだ何か?」


 「……この……!」


 「Cの0010538番、マンドレイク採集クエスト。売却報酬金。」


 「!!はっ、え? ……!!!」


 「Dの3015002番、ゴブリン討伐クエスト。」


 「な、なにを……」


 「Aの2020187番、洞窟探索クエスト。この子達が受けたクエストね。不審な部分が有る様なので、調べさせて頂きました。過去に遡って調べてみると、まだまだ数十のクエストが……」


 「あーあーあー! ゴホンゴホン!! ちょっと、奥の応接室へ……いらして頂けませんでしょうか?」



 ギルド長は、ヴィヴィさんを丁重に応接室へお招きしていました。



 「おい! お茶とお茶菓子をすぐに用意しろ! 一番高いやつな。」


 「ちょっと、大人のお話をしてくるわー。」



 ラウンジでケイティーと二人でお茶を飲んでいると、暫くして出て来たのは、ニコニコ顔のヴィヴィさんとは対象的に、青ざめた顔のギルド長だった。



 「あっ、ヴィヴィさん、話は付いたの?」


 「大丈夫よー。建物の改修費と試射場は私持ちで費用を出す事になったわ。」


 「えー? それじゃ、丸損じゃんー!」


 「そうでもないわよ? 王宮のこんな近くに魔法の試射場を確保出来たのは良かったわ。王宮関係者は優先的に永久に無料で使える約束を取り付けたもの。」



 うは、ハンターズの土地を無料で接収しちゃったみたいなものじゃん。



 「ハンターなんて仕事をしている人はね、叩けばいくらでも埃は出てくるものなのよ。」



 怖っ! この人怖っ!

 わ、私は叩いても埃は出ないからね!

 ヴィヴィさんからは、埃しか出無さそう、ていうか、埃の塊?



 「んー? なにかなー?」



 わーい、青すじ仮面が青筋立てて怒ったぞー。



 「ところで、あなた達は次に何のクエストを受けるつもりなの?」


 「あ、そうだそうだ! えっとね、王宮依頼の配達クエストだった。」


 「あらまあ、あれ、あなた達が受けちゃったの?」


 「いや、まだ。ランクが足らなかったので、それで昇格試験を受けてたんだ。」


 「ふーん、あれは、囮なので、結構危険な目に遭うかもしれないわよ?」


 「私達は飛んで言っちゃうから大丈夫だよ。」


 「それじゃ駄目なのよ。囮なんだから、ちゃんと囮の役目を演じてくれないと。」


 「そっかー……、って、ん? それじゃ、正式な文章を持って、ヴィヴィさんが飛んで届ければ一番安全じゃない? 囮も要らないじゃん?」


 「それが、わたくしは、外交官ではないのでその任務は出来ないし、第一忙しいのよ。それに、外交官で飛べる人は未だ一人も居ないわ。」


 「飛行椅子は?」


 「往復1000リグル(1600キロ)を飛べる航続距離は、まだないの。」



 魔力持ちの外交官じゃないと飛行椅子は使えないし、仮に使える人が居たとしても片道500リグル(800キロ)を飛べるのか怪しい。出先の外国では太陽石をチャージ出来ないので、帰ってくる事が出来ないかもしれない。

 結局、従来通りの方法を使うしか無い、というわけ。



 「私が外交官を持ち上げて飛んで行っちゃえば良いんじゃない?」


 「オフィシャルな仕事にあなたを使うのは、最初からプランに無かったのだけど……そうね、やってくれる?」


 「いいよ。じゃあ、護衛という形で私とケイティーで飛んで行こう。使節は何人?」


 「6人よ。6人運んで1000リグル飛べる?」


 「楽勝。」


 「助かるわ。では、クエストは取り下げて来ましょう。」








◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇








 てなわけで、私達は、外交官の護衛任務という名の運搬業務を行うため、王宮に呼ばれて顔合わせとなった。



 「こんな子供が? 大丈夫なんですか?」



 むっ。



 「あーら、こちらのケイティーちゃんはハンターランク2なのよー。実力は十分よ。こちらのソピアちゃんに至っては、こんな可愛い顔してこの中の誰よりも強いわ。」


 「ま、まさか? ロイヤルナイツよりもですか?」


 「うーん、戦うシチュエーションによるかもしれないけど、外で戦って勝てる人は居ないんじゃないかしら? 間違い無くわたくしやロルフ様よりも強いわね。」


 「信じられませんなー……まあ、あなたが冗談を言っている様には見えませんが……」



 ちょっと、ハードル上げないで欲しい。恥ずかしいよ。



 「じゃあ、ちょっと行ってくるね。みんな、文書は私の魔導倉庫へ仕舞っておきます? 夕御飯までには戻ってこれると思うから、大荷物は要らないよ。」



 ぞろぞろと中庭に出て来て、準備は大丈夫か確認する。



 「いやいや、そんな近所にお使いに行くみたいに。外交使節なんだから、謁見とか調印式とか晩餐会とかあるので、一応2泊3日の予定ですよ。荷物だって、相手国への贈り物等が相応に有るんですよ。」


 「じゃあ、それは全部ケイティーの倉庫に入れて上げて。」


 「わかったわ。」



 ケイティーが魔導倉庫を開いて、山の様な箱や樽等の荷物を全部しまい込むと、どよめきが巻き起こった。



 「ヴィヴィさん、魔導倉庫は皆に見せた事無いの?」


 「うーん、外交役人とは普段は接点が無いのよねー……。」



 魔導倉庫とは何だ、どうすればその鍵は手に入るのだ、それさえ有れば、文物の輸送がどれだけ楽になった筈だと、愚痴とも苦情ともつかない質問攻めに遭った。

 それは、あんたらの同僚のヴィヴィさんが作っているのだから、質問は帰ってからそちらへどうぞと躱しておいた。



 「ケイティー、今回はスピード出すから、飛行椅子は我慢してもらっていいかな?」


 「了解。久しぶりに音の速さで飛ぶのね。」


 「お……、音の速さとか聞こえたが、ふっ、まさかな。」


 「では、行きますよー。途中で気持ち悪くなったら言って下さいね。」


 「いってらっしゃーい。気を付けてねー。」


 外交官+ケイティーの合計7人を魔力で持ち上げ、地面を蹴って浮かび上がると、ヴィヴィさんが手を振って見送ってくれた。

 そのまま王城の尖塔の上の位置まで上昇し、水平飛行開始。

 王城をそんな上から見下ろした事の無い外交官達は、口々に感嘆の声を漏らしていた。


 王都の外郭城壁を超えた当たりから音速飛行開始で、すっ飛んで行きます。





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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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