スマートフォンを作りたい
スマホを作ろう! という事で、次の日の朝、ケイティーと共に再びエピスティーニへ。
山の中腹にある、プラットフォームへ飛び込んだ。
「ケイティー様、ソピア様、ようこそおいでくださいました。」
機械音声が聞こえる。
何時の間にそんな機能を付けたんだろう?
ケイティーは、何処で見ているんだろうと不安がっていた。
私達は、エレベーターホールへ向かうと、上矢印のボタンを押して待つ。
中に入って最上階の展望フロアのボタンを押すと、扉が閉まり、すうっと動き出す。
ケイティーは、この加速度の変化する感じが中々慣れない様だ。
展望フロアに着くと、そこには機械を操作するお師匠とアクセルが居た。
「えー……、もしかして、二人共あれから寝てないとか無いよねー……」
「お? 来たのか二人共。」
「僕の方は流石に仮眠しましたが、ロルフ様は一睡もしていませんよ。お年寄りなのに、この体力は信じられません。」
うわー、引くわー。
お師匠、興味があれば、死ぬまで勉強してるんじゃないのか?
いや、死んでも気が付かないで勉強し続けてたりして。
「えらい言われようじゃなー。」
ちゃんと自分の体を気遣えよな。
「ところで、今日はどの様な御用ですか?」
「あー、そうそう、スマホを検索して欲しくて来たの。」
「スマホ?」
「スマートフォン。携帯電話でもいいよ。」
「ほう? それはなんじゃ?」
お師匠の方が食いついて来ちゃったよ。やれやれ。
「この位の大きさの携帯出来るデバイスで、遠く離れた人と話が出来たり、文章を送ったり出来るツールなんだけど……ある?」
「うーん、見つかりませんねー。名称が違うのかも。他のキーワードはありませんか?」
「うーんと、セルラーフォン、トランシーバー、無線機、無線通信、衛星電話、テレパシー、他心通、他心知、念話、思念、精神感応……」
「はい、テレパシーがヒットしました。超感覚的知覚《ESP》の一種ですね。4大力の内、電磁力のフィールドに信号を載せて、遠隔地間で送受信する能力。脳内で微小な電気信号を知覚する事により、他者の思考を読む事が出来る。使用するには、魔導力を保持している事が条件。微弱な信号を感知または発信するので、出力よりも鋭敏な感覚が大事。知覚野の訓練により、習得が可能。……とあります。微弱でも魔力を持っていれば習得は可能みたいですね。ただし、その人の出せる出力の大きさによって知覚範囲が変わってくるみたいです。」
「どうやって訓練したらいいの?」
「それはですね、上位多次元軸の空間に思念を通すイメージで……」
「ふむふむ、そっか、魔導倉庫の空間だね。そこを知覚して、その中に音声を通すイメージで……」
『--こうか? ソピーや、聞こえるか?--』
「うわっ! なんだ? いきなり頭の中に声が!」
ジジイ! 横から聞いていただけで習得してんじゃねー。
これだから大賢者は……。
展望室の一番外側は、階段状に段差に成っていて、腰掛けられるように成っている。
そこで、地上1.875リグル(3000メートル)の超高空からの景色を見ながら、ケイティーとソピアは少し離れて座り、テレパシーの練習をしていた。
ケイティーも少し魔力を持っているので、テレパシーは習得の可能性はあるのだ。
「もしもし、もしもし、ケイティー聞こえる?」
「もしもし? あー、もう、ソピア、生声が聞こえちゃってるよ!」
「あうあうあう、失敗。もっと離れて練習しよう。」
今度は、展望室の丁度対角線の位置に腰掛けて、互いに相手が見えない様に背中向きで練習する事にした。
距離にしたら、二人の間は大体100ヤルト(100メートル)は離れている。少し位生の声が出ていたとしても、どんなに耳が良くても聞こえやしない距離だ。
(えーと、魔導倉庫の空間という事は、イマジネーション空間(ソピア命名)の事だよね、そこへ音声を通すイメージで、ケイティーの方へ……あーあー、聞こえますかー、テステス。本日は晴天なり、トラトラトラ……)
一方、その頃ケイティー側は
(鍵無しで魔導倉庫の空間を意識して、そこを私の声が飛んで行くイメージかー……ソピア、ソピア、聞こえる?……)
その時、突如ケイティーの頭の中に大音量でソピアの声が鳴り響いた。
『!!!!--あーあー、聞こえますかー、テステス。本日は晴天なり、トラトラトラ--!!!!』
「ぎゃー! うるさい! なにこれ!?」
「それがテレパシーじゃよ。聞こえるという事は、ケイティーも素質がありそうじゃな。」
「えっ? そうなんですか! やったー!」
『--ソピア! 聞こえたよ! ハローハロー! やっほー!--』
「……」
『!!!!--あーあー、ケイティー聞こえるー!? 本日は晴天なり、本日は晴天なりぃ! ウリィイイイ--!!!!』
「ぎゃあああ! うるさいー!! もっと静かに喋ってー!!」
ケイティーは、立ち上がるとソピアの後ろ姿に向けて猛然とダッシュした。
『!!!!--ケイティー! ケイチー!! ケイヒー!! ケイティリヒホ~--!!!!』
スパーーーン!!
ソピアの頭にツッコミが入った。
「うるさいってー!! 頭の中に響いてるから、耳をふさいでも聞こえるし、逃げられないってー!!」
「えっ? えっ? ケイヒーは聞こえてたの?」
「聞こえてるってばー! あなたの声が大音量過ぎて、私の声がかき消されるの!!」
「おおう……」
「とりあえず、あなたのテレパシーが届くのは分かったから、私の声が聞こえるのか集中してて。」
ケイティーは、また反対側へ走って行き、座って集中しだした。
『--ソピア、聞こえるー? ハロー! はろはろー!--』
『--……--』
『--ソーピーアー! あーあー! 聞こえますかー!?--』
『!!!!--聞こえた!! ケイティー!! 聞こえたー!! ウッヒャアアア!! --!!!!』
スパーーーン!!
「うるさいってー!!」
「おおう……」
「音量はもっと、すごーーく絞ってーー、いい?」
『!!!!--わかったよー!!--!!!!』
スパーーーン!!
「もっともっと小さくー! 蚊の鳴くような声で、お・ね・が・い!!」
『!!--わかったよー--!!』
「うーー、まだうるさいけど、このあたりで妥協しよう。それと、通信する時は、ソピアが喋り続けると音量が大きすぎて全部かき消してしまうから、なるべく聞く方に回って。」
「あううー、わかったよー。」
ケイティー以外にも聞こえるのかな?
『!!--お師匠。きこえるー?--!!』
ドーーン!!
「な、何じゃいきなり大声で。びっくりしたわい。」
お師匠が壁に頭をぶつけてひっくり返っていた。
『!!--アクセル! アクセルー!聞 こえますかー!?--!!』
ガシャーーン!!
アクセルが、操作盤に顔面を強打して、鼻血を出していた。
「あ、いや、これ、ごめんなさい! ビックリしました。急に大声が聞こえたもので。いたた……」
「ソピーよ、危ないからお前から送信するのはなるべく控えた方が良いぞ。」
「うう、アクセルー、ごめんなさいー。これ使って。」
手布を差し出した。
「大丈夫です、汚れちゃうから、大丈夫ですから。」
「顔面血だらけだから、遠慮しないで使ってー! お師匠、回復呪文お願い!」
お師匠の回復呪文で鼻血は止まったけど、そこらじゅう血だらけだった。
私は、手布で、それを拭き取って謝った。
「大丈夫ですよ。いきなりだったのでビックリしただけですから。」
「本当にご免なさい。」
「頭の中にいきなり大音量が流れるのって、耳元でわっとやられるのよりもびっくりしますね。」
私、しょんぼり。
「このテレパシーをね、魔道具として作れないかなと思ってたんだけどなー。そうすれば、誰かの声だけ大きいとか小さいとか無くなるんじゃないのかな……」
「うーむ、じゃがこれは、魔導というよりも知覚じゃからのう。言うてみれば、声がでかい小さい、耳が良い遠いみたいな、個々人の感覚の部分じゃぞ?」
「でもさ、私の居た異世界では、そういう道具があったんだよ。こっちで作れないわけは無いと思うんだけどなー。」」




