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レールガン

 「お師匠ー、お師匠ー、近接戦闘術教えてー!」


 「何じゃソピー、いきなり。」



 朝食を食べながらお師匠にそう言うと、突然何を言い出すんだという風に聞き返してきた。

 そう言えば、ここの所私が教えるばっかりで、お師匠に教えてもらったのは魔導倉庫だけだったよね。

 それも、私だけが習得していない。

 知識の交換条件という契約の筈なのに、私の方が支出が多いぞ。



 「近い距離での戦闘魔導を教えて欲しいの。」


 「あらあ、ソピアちゃん、近接戦闘は、魔導師の領分じゃないわー。それは、剣士のお仕事よー。」


 「分かってるんだけど、私の場合、どうしても中遠距離から超遠距離に偏ってて、眼の前まで近寄られると焦っちゃって何も出来ない事が多いの。森の中とか複雑な地形だと、気が付いたら目の前まで接近されている事が多くて。」


 「つまり、溜めの時間が無くて威力の高い、素早く打てるマジックミサイルが有ればいいのね? 何かあったかしら?」


 「そんな事せんでも、ソピーなら魔力で掴んで一捻りじゃろう。」


 「私もそう思っていたんだけど、実際に狩りに出てみると、意外とそう都合よく行かない場面が多くて。」



 剣士の間合い位に近寄らせてしまった敵に激しく動き回られて、ちょっとでも集中出来る心の余裕が作れなくて、慌ててしまう場面が多々有る事などを説明した。

 青玉だと、生成に凡そ4秒程度はかかってしまう。目の前に敵がいる状況で、悠長にそんなに長く集中している時間など、とてもじゃないけど無いのは身に染みた。



 「そうねー、どんな攻撃魔法でも、集中時間は取られるわね。パーティーでその時間を稼いでくれるのは、盾役の騎士とか剣士の人の役目なのよね。どんなに火力が高かろうが、二人きりでどんな場面でもこなせる、オールマイティーな活躍をするのは無理なんじゃないかしら?」



 もしも、二人きりでどんなクエストでもこなせる様に成りたいのなら、ケイティーにものすごく強く成ってもらうしか無い。

 それか、私が剣士の仕事を肩代わり出来る様になるかだ。



 「私が、剣士の領分に踏み込むしか無いのか、な……」



 私の呟きにお師匠が反応した。



 「おまえ、元々そんな感じじゃなかったか?」



 はっと思った。そうだった。元々複雑な魔導を覚えられないので、魔力を使った物理攻撃で何とかしようと工夫していたんだった。

 私は、魔力だけなら誰にも負けない自信が有ったからだ。


 だったら、剣を魔力で振り回すか?

 それでも良いんだけど、私のパワーで振り回したら、あっという間に剣を破壊してしまいそう。

 それに、振り回すならハンマーの様な打撃武器の方が良いのかな?

 剣だと、振り回すよりも突き刺す方が確か威力が高いはず。刀でも、振り回して斬りかかる線の動きよりも、突き刺すという点の動きの方が、躱され難いし次の攻撃に移るタイムロスも短く、リーチも長くなって有効だとかなんとか。

 最も、それは人間が振り回した場合の話しだよね。魔力で振り回すなら、リーチ云々は関係無い。

 でも、それだと、究極の点攻撃の弓矢、更に言うと、スリングショットや銃砲って事に成ってくるんだよね。

 火薬を使うのなら近距離で使える、銃の生成には成功しているんだけど、未だ魔力だけで火薬に代わる爆轟現象を再現する事には成功していない。もしそれが作れるのであれば、短銃みたいな物も再現出来るんだけどなー。


 それと、弾丸とか火薬とかを魔導倉庫から一々取り出すのは、開閉手続きが多くて時間がかかるので、戦闘時にはあまり好ましくない。

 出来れば、常に身に着けていられる程度の大きさ、重さの物で、高い攻撃力を出したい。



 「じゃったら、やはり、剣か短槍でチクチク突き刺すのが妥当じゃろう?」


 「なんか、それじゃ面白くないんだよねー。魔導師らしくないじゃん。」


 「面倒臭い奴じゃのー。」


 「近距離用の魔導スリングショットか、砲撃並の速度を出せる方法を探りたい。」


 「火薬なら、小型化出来るんじゃがのう。」


 「でも、あれは門外不出なんでしょう? 魔導でもありませんわ。」


 「そうなんだよねー。」


 「魔導だけで爆轟を起こすのに成功したのは、唯一水素ガスの爆発のみじゃったな。」


 「しかし、あれは不安定すぎて扱いが難しいのでしょう?」


 「うーむ……」


 「……」


 「………」


 「…………」


 「実はね、爆轟以外で爆轟以上の加速を得る方法が有る事は有るんだ。」


 「なんじゃと!」


 「でもね、システムとして、かなり大規模になりそうなんだ。今回の小型化とは逆なんだよね。」


 「えっ、それを聞いてしまっては、やらねばならんじゃろうが!」



 ほらね、こうなるんだ。

 私のやりたい事からどんどん離れていくよ。

 ギブ・アンド・テイクが成立していないじゃん。

 お師匠側の負債がどんどん膨らんでいっているけど、どうするつもり?



 「じゃあ、ヴィヴィさんが出かけたら、荒れ地に行ってみようか。」



 やれやれと言う風に、お師匠にそう言うと、ヴィヴィさんがグズり出した。



 「あーん、わたくし、今日は仕事休みます! いつも仲間はずれは嫌ですー。」


 「駄目だよ、ずる休みは。」


 「良いのです! 王命でこっちの方が優先順位が高いのです!」



 大人なんだから、そんな駄々捏ねても駄目、とキツ目に言ったら、文字通りドアから飛び出して行って、スープを飲み終わる程度の時間で戻って来た。



 「休暇届を出してきましたわ。これで大丈夫!」


 「人家の上空で音速は出さないって約束したでしょう?」



 顔を背けやがった。



 「じゃあ、道具を用意して荒れ地へ行きましょうか。」






 と、言う訳で荒れ地へやって来ました。

 的はー……またロックドラゴンかな?

 ごめんね、ロックドラゴン。


 私は、魔導倉庫から、大小様々なサイズの弾丸と金属インゴットを取り出した。

 この鉄球は、以前に貰ったインゴットを溶かして固めたもので、パチンコの玉大からゴルフボール大まで各種。

 球形から砲弾型、細長いのや短いのまで色々な形の試作品がある。

 私は、その中からインゴット一つと、比較的大きな1アルム程もある鉄塊を選んで持ち上げた。結構な重量がある。



 「狙いは、あの向こう側に見えているロックドラゴン。装置の大きさは、約100ヤルトでいいかな。」


 「何が始まるのか、興味深いのう。」


 「わたくしもですわ。」


 「ちょっと離れててね。」



 私は、目の前にインゴットを翳すと、ありったけの魔力で加熱して行く。

 赤く輝いていた鉄は、黄色へ、そして、白へと変わって行き、鉄は固体から液体、そして気体へと変貌を遂げる。

 鉄がガス化しても、まだ加熱は終わらない。

 やがて、輝く金属のガスは、青いプラズマ状態へ移行し、真空の魔導チューブの中を円環状に回り始める。



 「ふう、魔導リアクター完成。」



 そして、そこからMHD発電により取り出された莫大な量の電子流は、一直線に伸びる100ヤルトもの長さの砲身へ流し込まれる。

 砲身の元側から先端へ、一直線に向かい、先端で折り返して戻ってくる電流回路をショートさせる様に金属の砲弾を置くと、電磁誘導《ローレンツ力》によって、一直線に加速して行く。それは、加速の上限が有る火薬以上の加速力を得る。

 砲身や電極との物理的接触抵抗も無く、打ち出されたその弾体の速度は、なんとマッハ17、射程距離は……おそらく200キロにも及ぶだろう。



 キュドドーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!!!!



 莫大なジュール熱と空気との摩擦熱によって、一部をプラズマ化させた砲弾は、ロックドラゴンの頭部に命中。

 有り余った運動エネルギーは、山体の一部を削り取り、斜面は崩落、 ロックドラゴンは完全に蒸発していた。



 「……」


 「………」


 「…………」



 私達3人は、暫らく呆然とした後、ある事をしていないのに気が付いた。

 そう、ピクニックだ。

 平地にフェルトの絨毯を敷いて、サンドイッチとジュースの入ったバスケットを置いて、お師匠は本を出して読書。ヴィヴィさんは、寝転がって頬を撫でる爽やかな焦げ臭い香りの風と戯れる。私は、跡形も無くなってしまったロックドラゴンにそっと涙を流す。



 「ロックドラゴンの肉、勿体無かったね……」


 「「そういう問題じゃない!」」



 お、二人は正気を取り戻したようDEATH。



 「うーーん、テラヤバス。」


 「なんてこと……なんてこと!」


 「こりゃあ……、冗談ではなく、本当に邪竜でも1発で倒せそうじゃ。」



 ヴィヴィさんが意味も無く走り回っている。

 お師匠はわりと冷静だね。

 これはー、もう一回邪竜でも出てきてくれないと、使う機会は全く無さそうDEATHね。


 あ、これの名前はね、『電磁加速砲(EML)』っていう……って、誰も聞いていないか。




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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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