飛竜達の名前
修行の旅は残り1日を残して終わり、私達は無事に王都のお屋敷に帰り着いた。
若干、4名の親子を追加して……
「ソピア! お帰り! 修行は上手く行った?」
「神様ー、お帰りだよー。」
聞くと、ケイティーとヴェラヴェラのコンビで、何回か狩りに行ったらしい。
「凄いんだよー、ヴェラヴェラの棍棒術は、オグルも殴り倒す程なんだよ。」
「ケイティーの動きでオグルが目を回したから、あたいはその隙きを突いてちょっと殴っただけだよー。」
マジか、私抜きでオグル討伐しますか。もう私要らないじゃん。
「ソピアさ……ん、あの、私、1つ目の飛び級試験に合格しました。」
マジか、クーマイルマ、超頭良いんじゃん。
「ソピアちゃーん。魔導鍵はどうしちゃったのかなー?」
ヴィヴィさんが青筋を立てています。青筋仮面が青筋立てたー。わーい。
私は、空間を割り、その穴から魔導鍵を取り出した。
「ちゃんと持ってますよー。嫌だなー、失くしたりしてませんて。」
「そ、そう。それなら良いんだけど?」
プリプリしながら、向こうへ行ってしまった。
やっぱり、追跡か盗聴の何かを仕込んであるんだな、これ。
「所で、後ろのそちらの方達は、紹介してくれないの?」
「ああ、そうそう。じゃあ、皆が居る食堂で。」
食堂へ行くと、皆居た。お師匠も居た。
メイド長さんと料理長さんも呼んで、飛竜親子を紹介した。
「えーと、こちらの親子は、私達が旅先で出会った、飛竜の親子です。」
「「「宜しくお願いしまーす!」
「ソピア様には、私達の命を助けて頂き、眷属の契を結ばせて頂きました。宜しくお願い致します。」
「「はあ、よろしく……って、えっ? 飛竜? とか聞こえた様な気がするんですけど……」」
料理長とメイド長が困惑している。
お師匠達は、またかという感じで呆れている。
「あ、うん、本物の飛竜だよ。変身術を覚えてもらいました。ウルスラさんの国でね、戦争が起こりそうに成って、成り行きで助けちゃいましたー。」
「助けちゃいましたー、じゃないわよ! もっと詳しく教えなさい!」
「あー、うーんとね、斯々然々、丸々猪猪、だよー。」
ウルスラさんの国で、国境付近の侵攻から、戦争になりそうになった経緯を掻い摘んで説明した。
「ウルスラさん! そんな危ない事にソピアを巻き込むなんて!」
「あ、あわわ、申し訳ございませんでした!」
ヴィヴィさんがまた青筋立ててるよ。せっかく変身した美貌が台無しじゃんねー。
「で、その時助けた飛竜の親子がこちら。」
「うむう、スパルティアでは、飛竜を捕獲して兵器として使用しておったとは……」
「あっ、でも、丁重に軽く脅かしたら、お帰り頂いてくれたから、実際は戦争には成って無いよ。」
「はあ、我が国の国宝をその様な事に利用するなんて、後で外交ルートを通じて厳重に抗議しないと。最悪、制裁も考えなければならないわ。」
「そんな……」
「私が勝手に手伝っただけだから、そういうのは止めて。」
ウルスラさんが困ってるじゃないか。
私を政治利用するなら、考えがあるぞ。
「ふう、まあいいわ。ここだけの話としておきましょう。今は無事を喜ぶべきね。」
「誠に申し訳ありませんでした。」
「ほーんと、良いわよねー、あなたはソピアちゃんと8泊9日もの楽しいキャンプが出来て。」
「ええ、それはもう、楽しい修行の旅でした。」
「我も言葉で話せる様になったぞ。」
「あらほんと、凄いわ。」
「私も飛行術をマスターしました。」
ウルスラさんは、部屋の中をぐるりと飛んでみせた。
そして、私の成果の変身術だ。
「えいっ!」
ケイティーに化けた。皆は目を丸くしていた。
ヴェラヴェラもケイティーに化けた。それを見た、クーマイルマとプロークと飛竜親子もケイティーに化けた。
皆で肩を組んで、ぐるぐる回って
「本物はどーれだ?」
8人のケイティーだ。見分けが付くかな?
「はっはっは、我は本物であるぞ。」
「ああ、あなたはプロークね、一人脱落。」
「ざーんねんでしたー。私が本物でしたー。プロークのモノマネ上手かった?」
他の6人がどろんと元の姿に戻った。
「くー! 咄嗟にそんな息の合ったノリが出来るなんて、悔しいわー。」
何しろ私とケイティーはズッ友だからね。以心伝心で考えている事は分かってしまうのだ。
「それにしても、皆、変身術が上手じゃのう。大したものじゃ。」
お師匠は、若い姿のままでいる事はしないんだ。何時もの爺だし、口調も爺だ。
やっぱり、自分の容姿に対する欲って、女性の方が強いんだよね。
飛竜親子の部屋は、クーマイルマの隣になった。
「ところでさ、飛竜親子の名前は何ていうの?」
家族になったんだし、名前位覚えないとね。
しかし、私の家族は人外の方が多いという現実……どうなのこれ?
「我々飛竜種には、個々に名前は御座いません。どうぞ、女神様が呼び安い様にお呼び下さい。」
「そうなの?」
「我等竜族の中でも下級種だからな。」
何でプロークはこんなに飛竜に対して上から目線なんだ? あんまりマウント取ろうとすると、逆に小物に見えるぞ。
「なっ!?」
「いえ、プローク様は、竜種の中でも上位種で御座いますから、当然で御座います。」
うっわー、飛竜の方が全然大人だ。プロークの株はだだ下がりですよ!
「ソピア様には命を助けて頂き、ウルスラ様には傷を治して頂き、そして、プローク様には変身術をご伝授頂きました。この御恩は生涯忘れる事は御座いません。」
おお、プロークの功績を特に強調して言う辺り、凄い気配りだ。本当に飛竜なのか? 人間式の気遣いが完璧じゃないか。これでプロークより知能が低いとか、信じられないんだけど。
「皆で飛竜親子の名前を考えよう。ケイティーとヴェラヴェラも手伝って。」
それから、あーでも無いこーでも無いと喧々囂々皆好き勝手に案を出し合って、4つの名前が決まった。
「えー、では、この不肖ソピアが代表して発表したいと思います。」
親飛竜は、フリーダ
子飛竜の男の子の背の高い方が、エリアス
背の低い方が、エアリス
子飛竜の女の子が、フレヤ
「うーんとね、火を吐く空飛ぶ竜なので、自由とか、空間とか、空とか、炎とか言う様な意味を込めてみました。」
「ぐぎぎ、女神から意味の有る名を賜るなどと……くそー、くそー、羨ましいぞ。」
子供か! 気を付けろ、何だか知能が下がって来てる感じがするぞ。
てゆーかさー、事ある毎に女神は止めろって言ってるのに、最早誰も守ってくれてないよね?
外で呼ぶのは絶対に止めて欲しいんだけどな。後に絶対に痛い奴の烙印押されちゃうよ。
「ロルフ様、ソピア様、お屋敷の厨房を少々お借り出来ないでしょうか?」
「お? 何か作ってくれるのか? 飛竜って料理出来るの?」
「いえ、キャンプで食べた、ソピア様の料理が大変美味しゅう御座いましたので、私も作れる様に成りたいのです。」
「あ、それなら私もマヨネーズ作りに挑戦してみたいです。」
フリーダとウルスラさんが料理に目覚めた!?
生まれて今まで、料理なんかした事の無い、野生動物と学者さんなのに? それは不安しかありません。
「心配なので、私も手伝うよ。」
「何々、何なの? 私にも見せなさーい。」
ゾロゾロと厨房へ消えていく女性陣と、食堂に残された老人と子供達。
「わしは、美味い物が食えれば何でも良いぞ。」
「私もかなー。」
「我も。」
「あたいもだよー。」
「「「ぼくたちもー。」」」
「私は、次の試験がありますので、勉強に戻ります。」
皆、銘々に自室に帰って行った。
その日の夕食には、マヨネーズをたっぷり使った揚げ物が出た事は言うまでも無い。




