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飛竜救出

 え? 敵にも竜が居るの? どういう事?

 なるほど、たった40人程度の兵で侵攻してきた事と言い、なんか納得かも。



 「ねえねえ、プローク。何か同族の気配みたいな物は感じられない?」


 『--うむ、居るな。しかし、竜が人に使役されるとは考え難いのだが……--』



 魔力サーチではよく解らない。人も集団に成ると、大きな塊として知覚されてしまって、細かい人数までわかりにくく成ってしまうんだよね。確かに大きめの固まりは幾つか感じられるのだけど、それが竜なのか、数人の人の集団なのかが判別できない。特に、軍隊みたいに整然と並んで規則正しく行進して来られると、大きな生物みたいに感じられてしまうんだ。


 そして、今、敵の集団の気配が、一塊に成ってこちらへ移動して来ている。

 村の広場で空中にいる私達をいち早く見つけた奴が知らせに行ったのだろう。

 私はその事を隊長さんに伝えると、村の家屋に被害が出ない様に、村の外で迎え撃つ事に成った。


 敵兵は、村の前で待ち構える私達を見て驚いている様だった。

 兵の主力が村の外に居たのも、街道から来る私達を迎え撃つ為に見張っていたのだろう。

 しかし、街道から来るどころか、空からいきなり村の中へ降下して来るとは、思いも依らなかったに違いない。



 「お前ら! いったいどこから……」


 「ワープです!」



 私は腕を胸の前で組んで、偉そうに仁王立ちで答えた。

 でも、ウッソでーす! 普通に飛んで来ました。



 「普通に飛んでって……普通は飛べんわ!」



 ですよねー。



 「巫山戯おって! 竜だ、竜を出せ!」



 後ろから首に鎖を掛けられて引き出されて来たのは、飛竜ワイバーンだった。

 飛竜ワイバーンは、竜族といっても、かなり下位の種族で、人語は解するが竜の中では、かなり知能が低いのだ。聞く所によると、知能程度は人間と同程度らしい、って、えー……。

 外見的な違いと言えば、腕が無い事。翼が腕の変形だという事だ。コウモリや翼竜なんかと同じだね。それに、恐竜で言うラプトルとかレックスの様な肉食竜の顔が付いている。ディモルフォドンとかいうのが近いかも。モンハンで言えば、ティガレックスみたいな感じ。プロークよりもちょっと可愛い感じではあるけどね。

 ……そう考えると、竜って、6つの四肢ある事に成るのか。あ、6つだから、六肢か。昆虫的な感じ?


 私は、最前列に引き出されて来た飛竜ワイバーンの姿を見て絶句した。



 「ひどい……」



 飛ぶための翼の皮膜は切り裂かれ、背中には何本もの鉄の杭が打ち込まれている。

 ただの生ける火炎放射器代わりにされている様だ。



 「竜よ! 火炎を吐け! 薙ぎ払え!」



 しかし、飛竜ワイバーンはその命令に答えない。

 沈黙する飛竜ワイバーンに業を煮やした敵の兵長は、その長い首を鉄の棒で激しく打ち据えた。



 「ええい、何をしている! 敵を燃やし尽くせ!」



 ムカムカムカムカ

 プリプリノキリリンコだぞ!



 『--その様な姿にされてなお、人間に従属するか!--』


 『--プローク様、ご気配は伺っておりました。しかし、我が子が質とされ、やむを得ず……--』


 「もうキレた!!」



 私、大激怒!

 私のあまりの大声で、怒っていたはずのプロークが逆に驚いていた。



 「魔導リアクター!!」



 私の頭上に、天使の輪の様に光る円環が出現した。

 空中に浮かんだ私の身体は、オーラの様にグロー放電による青い光を纏う。

 敵兵の頭上、数ヤルトの上空に浮かび、そこから電撃を開始する。

 私はいかに切れていると言っても、我を失ったりはしない。



 『--そこの飛竜ワイバーンよ、地に伏せて居なさい。--』


 『--な、なんと?--』


 『--飛竜ワイバーンよ、その少女の言う通りにしなさい。--』



 飛竜ワイバーンが地面に伏せたのを見計らって、敵兵へ電撃をお見舞いする。

 殺しはしないよ。電圧は数百万ボルトは有るけれど、電流は僅か数ミリアンペアだよ。ちょっとビリッとする、スタンガン程度じゃないかなーっと。知らないけどねー。


 敵兵の頭上から雨あられと降り注ぐ、稲妻の奔流。

 それに触れた物は、筋肉が硬直し、自らの意思で逃げ出す事は不可能となる。

 全員気絶するまで止めないよ。



 「「「「「「「「「「あばばばばばばばばば」」」」」」」」」」



 大丈夫、ただ痛いだけだから。まさか、兵士の中に偶々心臓が悪い人は居ないよね。

 敵の兵の上空を円を描くように飛び、全員に満遍無く稲妻を落として行く。



 「全部上手に焼けましたー!」


 『--それは、神の雷であるか!?--』



 プロークでも電流を知らないのか。

 私は、飛竜ワイバーンの鎖を切り、そっと持ち上げてウルスラさんの元へ降ろした。



 「この怪我、治せますか?」


 「はい、少し時間が掛ると思いますが、おまかせください。」



 背中に突き刺さっている鉄の杭は、先に返しの付いた銛の様で、引っ張って抜く事は出来ない。一本一本返しの部分に引っかかる肉を切って、引き抜くしか無い。手間が掛かりそうだ。幸い、内蔵までは食い込んでいない様なので、直ぐに命にかかわる事は無さそうでホッとした。

 翼の皮膜は、失われてしまった部分が大きく、復元するのは無理そうだった。



 「本当に、酷いことをする。」



 気絶している敵兵達は、こちらの兵が全て取り押さえた。取り押さえると言うか、倒れているのを一人ずつ拾って荷車に載せて行っただけだけどね。

 敵の兵長は別個にふん縛って、気が付くのを待って、こっちの兵長の尋問が待っている。



 『--ソピア、この飛竜ワイバーンに代わり、礼を言う。--』


 「礼は要らないよ。友達の友達を助けるのは当たり前だからね。」



 2刻(4時間)程の時間を掛けて、背中に刺さった杭は全部取り除く事が出来た。ウルスラさん、頑張った。



 『--神よ、我が命を助けて頂き、礼を申し上げます。--』


 「やめろ! 神言うな!」


 『--ソピアは、神では無いが、その魂に神格を宿す神の御子なるぞ。--』


 「そうです。女神様、どうかいい加減にお認め下さい。」


 「断じて違う! やめてもう、ほんとお願いだから。」



 調子に乗った馬鹿が痛い目を見る未来しか見えないから、ほんとやめて。

 私が恥ずかしくて死ねるから、マジ止めろ!

 ふと周囲を見ると、村人も兵士たちも跪いて祈ってるし。死ねばいいの私? 今ここで?


 私が身悶えしている横で、ウルスラさんは淡々と飛竜ワイバーンの治療を進めている。流石にこの国の治療術は凄いね。傷口が一つ、また一つと何事も無かった様に綺麗に治って行く。流石に欠損は戻せないみたいだけど。

 飛竜ワイバーンも脱皮で完全回復出来たりするのかな? あるいは、変身術を覚えさせれば……



 『--ソピア、そんな顔しなくても、飛竜ワイバーンも脱皮で治るから大丈夫だ。--』


 「そうか! 良かった!」



 竜族の身体は便利だな。

 所で、気になる事を言っていた様な気がするんだけど。



 「そう言えばさ、子供を人質に取られているとか言ってたよね?」


 『--神の御子よ、どうか我が子を助け給へ--』


 「神の御子じゃないけど、助けましょう。」


 『--有難き、有難き、ううう……--』



 飛竜ワイバーンさん、泣いちゃった。

 ちゃんと回復したら、一緒に救出に向かおう。

 ウルスラさんとプロークは、お留守番ね。



 「嫌で御座います!!」


 『--否!!--』



 即答だよ。敵の国に乗り込むんだから、危ないでしょう。私の我儘に人を巻き込めないよ。



 「私はソピア様に何処までもお供致しますよ!」


 『--我は、そうだな、我が竜族の為だ。決してソピアに着いて行きたいとか、そういう事では無いぞ。--』



 あー、はいはい、仕方の無い連中ですね。ちょっと嬉しいけどさ。

 でも、他国との敵対行為に成りかねないから、どこの馬の骨とも分からない、流れ者の冒険者が暴れてるってていで行くよ? 大丈夫かな? 特に、ウルスラさんの言葉遣いはちょっと、お国がバレバレの様な気がするんだけど。


 ま、変身術で、誰だかわからないだろうし、当たって砕けろか。




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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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