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戦争?

 その日の晩餐会では、王様も出席されて歓待された。

 ちょっと旅の途中で立ち寄っただけなんだけどなー……。

 ウルスラさんは、王妃様の近くに座らされ、あれこれ質問攻めになっていた。


 ふと、プロークを見ると、王様の座る上座の壁の上に掛けられている大きな肖像画をじっと見ていた。

 その肖像画には、今の王様夫妻とは違う、若い男女が描かれていた。



 「あの肖像画は、建国の王とそのお妃である、初代王と王妃様で御座いますよ。」



 近くに来ていたメイドさんが教えてくれた。

 600年程前の時代の二人らしい。

 プロークは、知っている顔なのかな?



 『--人間の寿命とは短く儚いが、鮮やかに輝く物なのだなあ……--』



 何しみじみ語ってるの?

 そのうち聞いてみたいな、その昔話。






 翌朝、私達は寝坊した。

 ウルスラさんは目の下に隈を作っている。

 なんでかというと、皆の覚えが悪かったから。


 どういう事かと言うと、ウルスラさんが飛行術を覚えるのに難航したのと同じ理由なのだ。

 生涯を身体の防御力を高める訓練をしてきた人に、頭で考えなくても無意識に発動出来る様に、身体の芯にまでその技術が染み込んでしまっている人に対して、それとは逆に防御力をゼロにしろって教えるものだから、その恐怖感は半端無いものだったらしい。それでも、一晩掛かってなんとか、習得出来た人が数人居たとの事。

 皆頑張った。欲望は鋼鉄の常識の壁なんてブレイクしてスルーするんだ。女性の、美容に関する情熱は凄いエネルギーを持っているのを思い知った。


 だけど、私はお子様なので、日を跨ぐ程起きているのは無理なのだ。

 最初は私も一緒に習っていたのだけど、とっととお先に寝落ちしました。ウルスラさんは1人で深夜の2刻(朝4時)頃まで頑張って教えていたとの事。プロークは、私と一緒にグースカ寝ていました。

 皆がベッドに入ったのは、その後でした。


 そんなこんなで私達が起き出してきたのは、太陽も高く登った5つ刻(朝10時)頃。それも、自主的に起きたわけではなくて、メイドさんに起こされたんだ。あまりにも起きて来ないものだから、心配になって見に来てくれたらしい。

 私達3人は、身支度もそこそこに、寝ぼけ眼で集合し、朝食を出して貰って、もそもそ食べていたら、何やら庭の向こうが騒がしい。

 何事かと近くを通った偉い人(多分)を捕まえて訪ねたら、どうやら最外郭の村が隣の国に侵攻を受けたらしい。領土境界近くの村は、時々そういういざこざに巻き込まれる事があるとの事。

 何時もの事なので、小部隊を様子見に向かわせるんだって。



 「それって、間に合わないんじゃない?」



 そう思ったのだけど、実際は猟師に偽装した兵隊が、領地に出たり入ったりして挑発するだけなんだって。こっちが兵隊を送り込むと逃げて行くらしい。

 なんでそんな事をするのかというと、近くにミスリル鉱山が有るかららしい。その鉱山を含む村一帯は、古来から我が国の領土だとかなんとかいう主張らしい。

 おやおや? どっかで聞いた事の有る様な無い様な話だぞー。

 ミスリルが出たのはつい最近で、それまでは普通の地方の過疎村だったとか。


 侵略戦争なんて、大体は地政学的にあそこが欲しいとか、資源が羨ましいとか、そんな感じだよね。地下資源だったり、土地が肥沃で食料がいっぱい採れるとかね。他の国へ抜けるのに近道だったり、そこさえ守っていれば本国は被害は受けないだろうとか。そこを抑えておけば他国へ攻撃し放題だとか。まあ、そんな感じ。

 地球では多くの国がリアルタイムで見ている中でやらなければならないので、どんな正当性があってもなかなか他国の非難は免れない。リスクの方が大きいからだ。やっちゃう国もあるんだけどね。困った問題だね。


 この国の場合、ちょっかいを出すと後ろに同盟を組んでいるうちの国が控えているので、ちょこちょこ突いて様子を見ているのだろう。絶対に勝てる算段が無い内は、本格的に仕掛けては来ないだろうと思われる。



 ……と、その時までは思っていた。

 高を括っていたと言うべきか。



 「伝令! 隣国スパルティアがシャロルルア村へ侵攻を開始したとの事です!」


 「なんと! して、敵の数と被害は?」


 「敵の部隊は小部隊で凡そ40。抵抗した村民十数人が死傷、その他が捕虜に成っている模様。」


 「うぬう……」



 あの温厚そうな王様が怒っています。

 テキパキと奪還作戦を立て、部隊を編成する指示を出し、回りを見回し、こちらにチラッと視線が泳いだと思ったら、直ぐ様視線が戻って来て、こちらをガン見している。所謂二度見ってやつだね。



 「ソピア殿、他国のお客人にこの様な事をお願いするのは忍び無いのですが……」



 うん、分かるよ。軍隊を運んでくれっていうんでしょう?

 そのシャロルルア村から王都までの距離は、大体200リグル(320キロメートル)程だそうだ。1番近い町まで伝令が早馬を飛ばして1日、軍隊がゾロゾロ歩いて行くと、6日以上、ここ王都に連絡が届くのに更に1日半、王都から正規軍が出発して村まで到着するにはおよそ20日はかかる計算なんだけど、事は一刻を争うっぽいのに、もう侵攻から3日程度は経っちゃっているんだよね。さて、どうするってとこで、私が目に入った。



 「そなたの飛行術で、一度にどれほどの人数を運べますか?」



 うーん、何人運べるかなんてトライアルした事無いからなー。

 謎空間に放り込んで良いのだったら何人でも運べそうだけど。



 「いえ、何人運べるかなんて、やった事無いので分かりません。何人運んで欲しいかを言って下さい。」



 そうなんだよね、返答に困る質問が来た場合、相手が何を望んでいるのかを逆質問するに限る。それに対してイエスかノーを言えば良いだけにすれば良いのだ。



 「最低でも敵の数の倍の80。出来ればそれ以上だと有り難いのだが……」



 私は、目の前の空間に穴を開け、その真っ黒い空間を見せて



 「兵隊をこの中に収納して運んで良いなら何人でも運べますが……」



 王様も軍の偉い人も兵隊さん達も全員が首がねじ切れるんじゃないか思う程の勢いで左右に振っていた。

 そんなに怖いかこの穴? ……怖いかもね。



 「そ、その中に入っても大丈夫なものなのか?」



 王様がおずおずと聞いてきた。



 「大丈夫ですよ。私は何回か入ってるし。ただ、この中で迷子になると二度と見つけられないかもしれません。80人もだと、一人二人は行方不明に成る可能性も無きにしもあらず、と言えない事も無くは無くない様な気がする予感は否定できないと言えば嘘になります。でも、多分大丈夫です。」



 再び全員が首を左右にブンブン振っている。一周してネジが外れて飛んで行きそうな勢いだ。



 「ふ、普通に持ち上げて飛んで行く事は?」


 「うーん、80人も居ると、一人二人は途中で落っことしそうな気がしないでも無いんですよねー……」


 「落っこと……気がするのか?」


 「うん、だから、全員が入れる箱というか、何か乗り物とか有れば、それで運びますけど。」



 軍の宿舎ごと持ち上げて持って行けば良いって思うでしょ。でも建物って、結構1つの構造物として固く無いんだよね。頑丈じゃないの。持ち上げるとフニャフニャしてるの。重力のままに積んであるだけだったり、差し込んで乗っけてあるだけっていう部分が多いんだよね。つまり、剛体じゃない。出来れば、大きな船なんか有ると良いんだけどな。



 「船か! 船なら大きめのがあるぞ!」


 「有るんかい! じゃあそれに入れるだけの人数を乗せて行きます。」




 ここらの国は、海からは遠いので川船だろうけど、川船でそんなに大きなのあるのかな?

 と、思いながら案内された川の船着き場に行ってみると、結構大きな船だった。

 大陸の川って、大河なんだよね。大きいの。場所によっては向こう岸が見えない位に川幅が広い。なので、大量輸送するには比較的大きな帆船が使われている。

 川船なので、外洋には出られないみたいだけどね。竜骨キールが無いと駄目なんだっけ? 詳しくは知らないけど。

 80人も乗れるのかなと思ったのだけど、水に浮かべるわけではないので、ギュウギュウに詰めてもらえば100人位はいけそうかな。



 「食料や嵩張りそうな装備は全部ウルスラさんの倉庫へ入れて。」


 「わかりました。」


 『--我は何か手伝う事はあるのか?--』


 「大丈夫、人間の争いごとに巻き込んじゃって御免ね。安全な所に避難してて。」



 乗り込み終わった様なので、兵隊さんを満員電車みたいにギュウギュウに詰め込んだ船を私は持ち上げ、プロークとウルスラさんも持ち上げて、ふわりと浮かび上がる。

 よし、何とか持ち上がるぞ。



 「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」



 船の中から津波の様な低い声が響いた。

 まあ、空飛ぶなんて初体験だろうからね。怖がって気分が悪くなる人が居ないと良いけど。


 私は、十分な高さまで上昇してから、水平飛行に移った。

 場所は隣でウルスラさんに指示してもらう。

 音速飛行なら、20分程度だろう。船の中の兵隊さん達、狭苦しいだろうけど、ちょっとの間我慢してね。

 船まで全部を包むシェルを展開するのをウルスラさんに手伝ってもらった。私は飛行だけに専念することが出来るので助かる。



 「なんという速度だ。」



 軍隊長らしきちょっと高級そうな装備を付けている人が呟いた。

 そうだよねー、皆がこれ出来れば、すごく便利な世の中に成るよねー。



 くだんの村が見えて来た。

 上空から見ると、建物に火は付けられていない様でホッとした。

 軍人らしき人間が村の広場を歩き回っている。何人かの人が倒れていて、村の中央に積み重ねられている。

 村人の姿よりは少ない様だ。残りは何処かの建物に閉じ込められているのかも知れない。大体、伝令の通りの様だ。


 魔力のサーチで、気配を探ってみる。

 村で一番大きな倉庫みたいな建物の中に、大勢の気配が有る。きっとそこに集められているのだろう。

 兵隊は、村の外側に待機しているみたいだ。



 「あっ、こっちに気が付いたみたい。何人かがこちらを指差している。」



 私は、魔力でサーチした通りの気配を隊長さんに告げると、倉庫寄りの広場に下ろすように言われた。

 私は、指示された通りに、速やかに降下し、地面から1ヤルト程の位置で一旦停止してから、そっと地面に置くように川船を降ろした。

 と同時に、兵隊が船から飛び出す。

 倉庫へ走り込んだ兵隊さんがあっという間に見張りの敵兵を無力化し、村人を救出する。

 他の建物の中で寛いで油断していた敵兵も直ぐに捕らえられた。



 「何でこんなに早くやって来れるんだ!」



 そりゃあまあ、油断するよね。伝令が一番近い町まで行って、そこから兵を編成して、ここまで行軍して来るとしたら、8日前後かかる計算だもんね。未だ何処からの兵が来るにしても早すぎる。

 そりゃあ、油断しているわな。


 兵隊さん達、船から飛び出て、物の数分で村を奪還してしまった。

 でも、敵の本隊は村の外にまだ沢山居るので、安心は出来ない。



 「兵隊さん達、有難うごぜーますだ。敵兵の本隊が未だ村の外で哨戒をしておりますので、お気を付けなされ。」


 「うむ、把握はしておる。」


 「では、敵は竜を使役しておる事もご存知で?」


 「竜だと!?」



 えっ? 敵にも竜が居るの?

 私とウルスラさんは、思わずプロークを見てしまった。





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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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